IS~無い物だらけの物語~(休載中)   作:大同爽

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昨日のうちにアップするつもりが寝堕ちてました。
てなわけで始まるよ♪


第14話 角錐ってどんなの?

「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、梨野、オルコット。試しに飛んでみせろ」

 

 四月も下旬、遅咲きの桜も散りきった頃。いつも通り織斑先生の授業を受けていた。

 

「早くしろ。熟練したIS操縦者は展開まで一秒とかからないぞ」

 

 せかされて、まだISを展開していなかった俺と一夏は意識を集中する。

 ISは一度フィッティングしたら、ずっと操縦者の体にアクセサリーの形状で待機している。俺が学園から貸し出されている『打鉄』は俺の右手に待機状態の黒いリングのようなブレスレットとしてついている。

 ちなみに一夏は右腕にガントレットとして、セシリアは左耳にイヤーカフスとして。

 

「集中しろ」

 

 おっと、そろそろ展開しないと叩かれる。

 俺は右腕を曲げ、ガッツポーズするように胸へと引き、拳を握り、左手でブレスレットを包むように握る。

 

(来い、打鉄)

 

 そう心の中でつぶやく。刹那、右手首から全身に薄い膜が広がっていくのが分かった。約0.7秒の展開時間。俺の体から光の粒子が開放されるように溢れ、そして再集結してまとまり、IS本体として形成された。

 ふわりと体が軽くなる。各種センサーが意識に接続され、世界の解像度が上がっていく。一度瞬きをすると、俺の体はIS『打鉄』に包まれ、地面から数十センチのところを浮遊していた。

 同じく、一夏はIS『白式』を、セシリアはIS『ブルー・ティアーズ』を装備して浮かんでいる。ちなみに、俺と一夏との対戦で損傷したビットは、もう完全に修復が終わっているようだ。

 

「よし、飛べ」

 

 言われて、セシリアは即座に飛んだ。俺も少し遅れたがすぐに急上昇し、セシリアと同じ位置で静止する。

 一番遅れて一夏も後に続いてくるが、俺たちよりも上昇速度が遅い。

 

「何をやっている。スペック上の出力では白式の方が上だぞ」

 

 通信回線から織斑先生のお叱りの言葉を受ける一夏。

 

「おーい、大丈夫か?」

 

「お、おう、なんとか。しかしさあ、急上昇や急下降は昨日習ったばかりだぞ?『自分の前方に角錐を展開させるイメージ』で行うようにって言われても、全然感覚が掴めないし」

 

「それは、まあ、確かに」

 

 大体、角錐ってどんな形だっけ?

 

「一夏さん、イメージは所詮イメージ。自分がやりやすい方法を模索する方が建設的でしてよ」

 

「そう言われてもなぁ。空を飛ぶ感覚自体がまだあやふやなんだよ。なんで浮いてるんだ、これ」

 

 そう言いながら一夏は白式の翼状の二対の突起を見る。確かに、どう考えてもあの翼は飛行には関係ないな。翼の向きと関係なく飛ぶし。

 

「説明しても構いませんが、長いですわよ? 反重力力翼と流動波干渉の話になりますもの」

 

「わかった。説明はしてくれなくていい」

 

 今の時点で俺も無理だ。絶対に頭痛くなる。

 

「そう、残念ですわ。航平さんはいかがです?」

 

「聞いてもいいけど、墜落すると思うから、そのときはよろしく」

 

「あら、それは困りますわね。ふふっ」

 

 楽しそうに微笑むセシリア。その表情は嫌味でも皮肉でもなく、本当に単純に楽しいと言う笑顔だった。

 あの試合以降、何かと理由をつけて俺たちのコーチを買って出てくれる。しかも俺にも声をかけてくれるのだが、どちらかといえば一夏の方を熱心に誘っている。まあ、教えてくれるのは俺たちとしてはありがたいし、流石に代表候補生だけあってセシリアは優秀だった。

 これって、……そういうことなのかなぁ~。

 

「一夏さん、よろしければまた放課後に指導してさしあげますわ。そのときはふたりきりで――」

 

「一夏っ!いつまでそんなところにいる!早く降りてこい!」

 

 いきなり通信回線から怒鳴り声が響いた。地上を見ると、そこには山田先生がインカムを箒に奪われておたおたしていた。ISのハイパーセンサーの補正のおかげで、今の俺たちは望遠鏡並みの視力なのだ。それによって地上二百メートルから怒り心頭な箒の顔がよく見える。これは確かに悪用されたら大変だな。

 

「ちなみに、これでも機能制限がかかっているんでしてよ。元々ISは宇宙空間での稼動を想定したもの。何万キロと離れた星の光で自分の位置を把握するためですから、この程度の距離は見えて当たり前ですわ」

 

 ほうほう。さすがは優等生。ちなみに地上で怒っているもう一人のコーチは、

 

『ぐっ、とする感じだ』

 

『どんっ、という感覚だ』

 

『ずかーん、という具合だ』

 

 といった具合だ。正直よくわからない。箒って本当にIS動かせるのだろうか。箒のレベルがいまいちわからない。

 ちなみに、セシリアはそんな箒の説明にいちいち突っ込んでは言い争いをしている。俺たち(特に一夏)に対して態度が柔らかくなったのに、箒には硬くなったな。

 ………うん。やっぱりそう言うことなんだろうな。そういうことだから箒をライバル視してるんだろうな。

 

「織斑、梨野、オルコット、急下降と完全停止をやって見せろ。目標は地表から十センチだ」

 

「了解です。では一夏さん、航平さん、お先に」

 

 言って、すぐさまセシリアは地上へ。うん、やっぱりうまい。

 

「うまいもんだなぁ」

 

「なあ」

 

 俺たちが上空でセシリアを称賛している間に完全停止も難なくクリアーしたらしい。

 

「じゃあ、次は俺だな」

 

「おう。頑張れよ」

 

 俺がうなずくと、『任せとけ』とでも言わんばかりに一夏が俺に笑顔で親指を立てる。

 地上に体を向け、一気に降下していく一夏。

 ギュンッ――ズドォォンッ!!!

 地上には着いた。グラウンドにクレータができたが。

 巨大な穴の中心に一夏が倒れていた。クラスメイト達はくすくすと笑っている。

 

「……えっと、織斑先生。俺はどうしましょう?正直この後に降りるの無理っす」

 

「……急降下と完全停止はいいから、普通に降りてこい」

 

「はい」

 

 織斑先生のお許しを貰い、降下してきた俺が見たのは

 

「情けないぞ、一夏。昨日私が教えてやっただろう」

 

 腕を組み、目じりをつり上げている箒。昨日教えたって、あの擬音のことですか?箒って冗談とかいうんだな。もっと堅物だと思ってた。

 

「貴様、何か失礼なことを考えているだろう」

 

 たぶん一夏も似たようなことを考えていたのだろう。てか、箒も鋭いな。

 

「大体だな一夏、お前というやつは昔から――」

 

「大丈夫ですか、一夏さん? お怪我はなくて?」

 

 箒の一夏への小言がさらに続きそうなところを、セシリアが割って入る。

 

「あ、ああ。大丈夫だけど……」

 

「そう。それは何よりですわ」

 

 うふふと、また楽しそうに微笑むセシリア。

 

「……ISを装備していて怪我などするわけがないだろう」

 

「あら、篠ノ之さん。他人を気遣うのは当然のこと。それがISを装備していても、ですわ。常識でしてよ?」

 

「お前が言うか。この猫かぶりめ」

 

「鬼の皮をかぶっているよりマシですわ」

 

 バチバチッ!

 

 なんだろう。一瞬二人の間に火花が散った気が。こえ~。絶対にこの戦いに巻き込まれたくない。

 

「おい、馬鹿者ども。邪魔だ。端っこでやっていろ」

 

 箒とセシリアの頭をぐいいっと押し退けて、織斑先生が一夏の前に立つ。

 

「織斑、武装を展開しろ。それくらいは自在にできるようになっただろう」

 

「は、はあ」

 

「返事は『はい』だ」

 

「は、はいっ」

 

「よし。では始めろ」

 

 言われた一夏は横を向く。正面に人がいない事を確認した一夏は、突き出した右腕を左手で握る。そしてすぐに光が溢れた後に収まると、一夏の両手には《雪片弐型》が握られていた。

 

「遅い。0.5秒で出せるようになれ」

 

 うまくいったのに褒めない織斑先生。ねえ、先生。ときには飴も必要ですよ?

 

「次に梨野。お前も武装を展開しろ」

 

「はい」

 

 返事をし、一夏と同じく横に向き、そこに誰もいないのを確認して右手に刀をイメージする。すぐに展開し、俺の右手には近接ブレードが出てきた。

 

「ふむ。それなりに展開も速い。まあ、及第点だな」

 

「ありがとうございます」

 

 訓練した成果が出てるのかな。

 

「最後にオルコット、武装を展開しろ」

 

「はい」

 

 セシリアは左手を肩の高さまで上げ、真横に腕を突き出す。一夏や俺のように光の奔流の放出する事は無く、一瞬爆発的に光っただけで、セシリアの左手には狙撃銃 《スターライトmkⅢ》が握られていた。

 俺や一夏より圧倒的に速い。しかも、銃器には既にマガジンが接続されて、セシリアが視線を送るだけでセーフティーが外れている。一秒と立たずに展開、射撃可能まで完了していた。

 

「さすがだな、代表候補生。――ただしそのポーズはやめろ。横に向かって銃身を展開させて誰を撃つ気だ。正面に展開できるようにしろ」

 

「で、ですがこれはわたくしのイメージをまとめるために必要な――」

 

「直せ。いいな」

 

「――、……はい」

 

 反論しようとするセシリアだが、そこは流石は織斑先生。一睨みでセシリアを黙らせた。

 

「オルコット、近接用の武装を展開しろ」

 

「えっ。あ、はっ、はいっ」

 

 何か頭の中で文句を言っていたのだろう、いきなり振られてびっくりして反応が遅れるセシリア。

 銃器を光の粒子に変換――確か『収納(クローズ)』というらしい――そして新たに近接用の武装を『展開(オープン)』。

 しかし、手の中の光はなかなか形にならない。

 

「くっ……」

 

「まだか?」

 

「す、すぐです。――ああ、もうっ!《インターセプター》!」

 

 武器の名前をヤケクソ気味に叫ぶセシリア。それによってイメージがまとまり、光は武器として構成される。

 しかし、これは教科書の頭の方に書かれているような、いわゆる『初心者用』の手段である。それを使わなければいけないなど、代表候補生のセシリアには屈辱的だっただろう。

 

「……何秒かかっている。お前は、実戦でも相手に待ってもらうのか?」

 

「じ、実戦では近接の間合いに入らせません! ですから、問題ありませんわ!」

 

「ほう。織斑や梨野との対戦で初心者に簡単に懐を許していたように見えたが?」

 

「あ、あれは、その……」

 

 ごにょごにょまごついて言葉の歯切れが悪いセシリア。そんなセシリアを俺と一夏が眺めていると、いきなりキッと睨まれた。

 そして、すぐに個人間秘匿通信(プライベート・チャネル)が俺たちに送られてくる。

 

『あなたたちのせいですわよ!』

 

 なんでだよ。

 

『あ、あなたたちが、わたくしに飛び込んでくるから……』

 

 だって、俺らの武器、近接用しかなかったから。

 

『せ、責任をとっていただきますわ!』

 

 なんのだよ。

 ちなみに、俺も一夏も通信の返事をしていない。一方的に送られてきているだけだ。

 

「時間だな。今日の授業はここまでだ。織斑、グラウンドを片付けておけよ」

 

 この穴を埋めるの一夏だけでやるのか。大変だな、こりゃ。

 一夏が箒を見ると、フンと顔を逸らして手伝う気は無し。

 セシリアは――既にいなかった。

 

「……なあ、航平」

 

「……おっと、布仏さんが呼んでいる!てなわけでアデュー!」

 

 全力で逃げる俺。ちなみに布仏さんは別に俺のことを呼んではいない。

 

「させるか!」

 

「ぐはっ!」

 

 後ろに引っ張られる感覚と共に俺はひっくり返って転ぶ。一夏に髪を掴まれたらしい。

 

「頼むよ。手伝ってくれ」

 

「……わかったから。そんな泣きそうな顔するなよ。あと髪を放せ」

 

 くっそー。こういう時とシャワー後は髪長いと不便だな。

 

 結局俺は一夏に付き合わされ、グラウンド整備をやる羽目になった。

 てか、箒もセシリアも一夏のことが本当に好きなのだろうか。ここで手伝えば一夏と二人きりになれるチャンスだし、一夏の好感度も上がるのに。もしかして全部俺の勘違いなんだろうか。




次回は鈴が出せるかな。
頑張ります。
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