IS~無い物だらけの物語~(休載中)   作:大同爽

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修羅場だよ♪


第17話 ラーメン、つけ麺、―(自主規制)―

「お前のせいだ!」

 

「あなたのせいですわ!」

 

 昼休み、開口一番に箒とセシリアが一夏に文句を言ってきた。

 

「なんでだよ……」

 

 文句を言われた一夏は身に覚えが無いように言う。

 なぜ怒っているのかはわからないが、おおよそ何に怒っているかはわかる。

 この二人、午前の授業で山田先生に注意五回、千冬さんに三回叩かれていた。

 織斑先生の授業でぼーっとするなんて、猛獣の前で裸で寝そべって『さあ、召し上がれ♪』と言っているようなものだろう。

 ぶっちゃけ、自業自得だ。

 

「とりあえず学食行かないか?」

 

「そうだな。話なら飯食いながら聞くから」

 

「む……。ま、まあ一夏がそう言うのなら、いいだろう」

 

「そ、そうですわね。行って差し上げないこともなくってよ」

 

 俺の提案に一夏が同意すると、箒とセシリアが渋々(のようだけど絶対行きたいに違いない)同意する。

 

「ねえねえ、私も行ってもいいー?」

 

 布仏さんもやって来て、俺の背中に乗っかった。

 

「……布仏さん。毎回思うんだが。なんで君は俺の背中に乗るんだ?」

 

「んー。なんとなく?」

 

「やめるという選択肢は?」

 

「ないかなー」

 

「……さいですか」

 

 どうやらこれからも俺の背中には布仏さんが乗っかってくるらしい。俺はそのたびに悶々とすることになる。記憶なくても一応俺思春期むんむんの男の子なんですが。

 

「……航平ってのほほんさんと仲いいよな」

 

「ん?そうかな?まあ、同室だしな」

 

 初めの頃とかどぎまぎしっぱなしだったんだよなー。いちいち行動が無防備だし、一度シャワーの後にタオル一枚で登場した時はまじで焦った。

 ちなみに、一夏は布仏さんのこと、「のほほんさん」と呼んでいる。のほほんとした布仏さんを表したよくできたあだ名だ。

 

「いや、そう言うんじゃなくて……。やっぱりなんでもない」

 

 なんだよ、最後まで言えよ。気になるじゃん。

 

「まあ、とりあえず行くか」

 

 一夏の言葉で俺たち、さらにそこから数名のクラスメイトもついてくることになり、学食へと移動した。

 俺は券売機でつけ麺を購入。ここのごはんどれもおいしいなー。三年間に学食メニュー制覇目指すか。

 ちなみに、一夏は日替わりランチ。毎日中身が違うし、リーズナブルでいいよね。箒はきつねうどん。セシリアは洋食ランチ。この二人いつもそれだな。もっと、いろいろ試そうぜ。

 

「待ってたわよ、一夏!」

 

 どーん、と俺たちの前に立ちふさがったのは噂の転校生、凰さん。字は前の休み時間に一夏に聞いておいた。「凰鈴音」と書くらしい。一夏は略して「鈴」と呼んでいる。

 

「まあ、とりあえずそこどいてくれ。食券出せないし、普通に通行の邪魔だぞ」

 

「う、うるさいわね。わかってるわよ」

 

 ちなみに凰さんの手にはお盆を持っていて、ラーメンがのっている。

 

「のびるぞ」

 

「わ、わかってるわよ! 大体、アンタを待ってたんでしょうが! なんで早く来ないのよ!」

 

 一夏に文句を言う凰さん。蚊帳の外な俺たち。

 おっと、俺の順番だおばちゃんに食券渡さないと。

 

「それにしても久しぶりだな。ちょうど丸一年ぶりになるのか。元気にしてたか?」

 

「げ、元気にしてたわよ。アンタこそ、たまには怪我病気しなさいよ」

 

 どういう希望だよ、それ。

 

「どういう希望だよ、そりゃ……」

 

 一夏も思っていたらしい。まったく、俺たちの…というか一夏の周りにはなんでこう自分勝手な感じの子が多いんだろう。

 

「あー、ゴホンゴホン!」

 

「ンンンッ! 一夏さん? 注文の品、出来てましてよ?」

 

 大げさに咳き込む箒&セシリア。

 

「向こうのテーブルが空いてるな。行こうぜ」

 

 凰さんも含めて俺たち全員に促す一夏。十人近くいるから移動にも時間がかかる。

 

「ああ、そう言えば、昨日はありがとうね」

 

「どういたしまして」

 

 移動中凰さんが礼を言ってきた。

 

「あらためまして、梨野航平だ。よろしくな」

 

「凰鈴音よ、よろしく」

 

「一夏と知り合いだったんだな。しかも代表候補生で専用機持ち」

 

「まあね」

 

 そう言っている間に席に着く。

 

「鈴、いつ日本に帰ってきたんだ?おばさん元気か?いつ代表候補生になったんだ?」

 

「質問ばっかしないでよ。アンタこそ、なにIS使ってるのよ。ニュースで見たときびっくりしたわよ」

 

 なぜだろう。同じテーブルにいるのに疎外感が半端ない。

 

「一夏、そろそろどういう関係か説明してほしいのだが」

 

「そうですわ!一夏さん、まさかこちらの方と付き合ってらっしゃるの!?」

 

 俺と同じく疎外感を感じたのか箒とセシリアが多少棘のある声で訊いた。他のクラスメイト達も興味津々なようだ。

 

「べ、べべ、別に私は付き合ってる訳じゃ……」

 

「そうだぞ。なんでそんな話になるんだ。ただの幼なじみだよ」

 

「………………」

 

「?何睨んでるんだ?」

 

「なんでもないわよっ!」

 

 一夏の否定の言葉に怒る凰さん。何怒ってんだろ、この人。

 

「幼なじみ……?」

 

 怪訝そうな声で聞き返す箒。

 

「あー、えっとだな。箒が引っ越していったのが小四の終わりだっただろ?鈴が転校してきたのは小五の頭だよ。で、中二の終わりに帰ったから、会うのは一年ちょっとぶりだな」

 

 なるほど。通りで親しげなわけだ。

 

「で、こっちが箒。ほら、前に話したろ? 小学校からの幼なじみで、俺の通ってた剣術道場の娘」

 

「ふうん、そうなんだ」

 

 凰さんはジロジロと箒を見る。箒も負けじと見返している。

 

「初めまして。これからよろしくね」

 

「ああ。こちらこそ」

 

 そう言ってあいさつを交わす二人の間で火花が散ったように見えた。幻覚かな。

 

「ンンンッ!わたくしの存在を忘れてもらっては困りますわ。中国代表候補生、凰鈴音さん?」

 

「……誰?」

 

「なっ!?わ、わたくしはイギリス代表候補生、セシリア・オルコットでしてよ!?まさかご存じないの?」

 

「うん。あたし他の国とか興味ないし」

 

「な、な、なっ……!?」

 

 言葉に詰まりながらも怒りで顔を赤くしていくセシリア。なんでセシリアは自分のことを知らないと怒るんだろう。

 

「い、い、言っておきますけど、わたくしあなたのような方には負けませんわ!」

 

「そ。でも戦ったらあたしが勝つよ。悪いけど強いもん」

 

 ふふんと言った調子の凰さん。なんだろう。妙に確信じみているし、しかも嫌味っぽく聞こえない。なんというのか、素で言ってる感じだ。

 

「………………」

 

「い、言ってくれますわね……」

 

 箒は無言で箸を止め、セシリアはわなわなと震えながら拳を握りしめている。

 それに対して、そんなものどこ吹く風でラーメンをすする凰さん。

 

「一夏」

 

 凰さんが不意に一夏に話しかけると、一夏が何故か焦ったような顔をしていた。また変なこと考えてたな。

 

「アンタ、クラス代表なんだって?」

 

「お、おう。成り行きでな」

 

「ふーん……」

 

 どんぶりをもってごくごくとスープを飲む凰さん。おーう、豪快。

 

「あ、あのさぁ。ISの操縦、見てあげてもいいけど?」

 

 お?凰さんもコーチに名乗り出るとは。でも、そんなことになったら絶対黙ってない人が、若干二名。

 ダンッ!

 音の正体はもちろん黙っていない若干二名こと箒&セシリア。テーブルを叩いた二人はその勢いのまま立ち上がる。

 

「一夏に教えるのは私の役目だ。頼まれたのは、私だ」

 

「あなたは二組でしょう!?敵の施しは受けませんわ」

 

 うわ、顔が怖い。般若の面みたい。そう言えば、般若の面って鬼女のお面なんだったな。

 

「あたしは一夏に言ってんの。関係ない人は引っ込んでてよ」

 

「か、関係ならあるぞ。私が一夏にどうしてもと頼まれているのだ」

 

 どうしてもとまでは言ってないんじゃないかな。

 

「一組の代表ですから、一組の人間が教えるのは当然ですわ。あなたこそ、後から出てきて何を図々しいことを――」

 

「後からじゃないけどね。あたしの方が付き合いは長いんだし」

 

「そ、それを言うなら私の方が早いぞ!それに、一夏は何度もうちで食事をしている間柄だ。付き合いはそれなりに深い」

 

「うちで食事? それならあたしもそうだけど?」

 

 おっと、自信に満ち溢れていたの箒の顔が凰さんの一言で凍り付いた。

 

「いっ、一夏っ!どういうことだ!?聞いていないぞ私は!」

 

「わたくしもですわ!一夏さん、納得のいく説明を要求します!」

 

「説明も何も……幼なじみで、よく鈴の実家の中華料理屋に言ってた関係だ」

 

 一夏の言葉に今度は凰さんの余裕の表情がむすっとした表情に変わる。

 対照的に、箒とセシリアはほっとした表情になる。

 

「な、何?店なのか?」

 

「あら、そうでしたの。お店なら別に不自然なことは何一つありませんわね」

 

 布仏さんを除くクラスメイトの女子も同じように緊張と緩和を繰り返している。あれ?なんで布仏さんは落ち着いてるんだろう。落ち着きのないクラスメイト達と布仏さんとの違いはなんだろう。

 ………うん、わからん。

 

「親父さん、元気にしてるか? まあ、あの人こそ病気と無縁だよな」

 

「あ……。うん、元気――だと思う」

 

 ん?一夏の言葉に凰さんの表情が一瞬陰った。

 

「そ、それよりさ一夏、今日の放課後って時間ある?あるよね。久しぶりだし、どこか行こうよ。ほら、駅前のファミレスとかさ」

 

「あー、あそこ去年潰れたぞ」

 

「そ、そう……なんだ。じゃ、じゃあさ、学食でもいいから。積もる話もあるでしょ?」

 

「――あいにくだが、一夏は私や航平と一緒にISの特訓をするのだ。放課後は埋まっている」

 

 待ってください箒さん。いつの間にそんなことになったんですか?俺知らないんですけど。

 

「そうですわ。クラス対抗戦に向けて、特訓が必要ですもの。特にわたくしは専用機持ちですから?ええ、一夏さんの訓練には欠かせない存在なのです」

 

 さっきまで悔しそうにしてたのに、今や攻勢に転じた二人はここぞとばかりに一夏の特訓を持ち出す。特訓はいいけどちゃんと確認取ろうよ。

 

「じゃあそれが終わったら行くから。空けといてね。じゃあね、一夏!」

 

 ごくんとラーメンのスープを飲み干し、一夏の答えも聞かずに凰さんはさっさと片付けに行ってしまった。もちろん、テーブルに戻ってくるなんてことはなかった。そのまま凰さん学食から去って行った。

 

「一夏、当然特訓が優先だぞ」

 

「一夏さん、わたくしたちの有意義な時間を使っているという事実をお忘れなく」

 

 どちらも一夏は断ることができなさそうだ。

 

「………なあ、布仏さん」

 

「んー、何?」

 

 ズルズルと麺をすする俺と、ランチセットのサラダをぱくつく布仏さん。

 

「俺、記憶喪失でよくわからないこと多いから、間違ってるかもしれないから確認するんだけどさ…」

 

「うん」

 

 そこで俺は食べきった麺の濃い目のつけ汁に横にあった小さな壺からだし汁を足し、味を調節。一口すする。うん、うまい。

 

「……これって、『修羅場』だよな?」

 

「うーん、これくらいなら、まだ修羅場って程じゃないんじゃないかなー」

 

「………そっか」

 

 できることなら本当の修羅場にならないことを願っています。もしくは、修羅場になっても俺が巻き込まれてしまいませんように。

 

 俺は嫌な予感を飲み込むように、スープを飲み干した。




ラーメンっておいしいですよねー。
これを書いてるのが深夜なのですが書いてておなかすいてしまいました。

次回もお楽しみに~。
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