IS~無い物だらけの物語~(休載中)   作:大同爽

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疲れた体に、ポ○リス○ット


第18話 特訓にて

「え?」

 

「へ?」

 

 放課後の第三アリーナ。俺たちは今日もセシリアにIS操縦を教わる予定だったが、予想外の光景がそこにはあったものだから思わず間抜けな声が出てしまった。一夏も同じだったのか俺と似たような声を出していた。

 

「な、なんだその顔は……おかしいか?」

 

「いや、その、おかしいっていうか――」

 

「篠ノ之さん!?ど、どうしてここにいますの!?」

 

 そう。俺たちの目の前にいるのは箒だった。しかも、俺と同じIS『打鉄』を装着、展開している。

 ちなみに今更だが、打鉄は純国産ISとして定評のある第二世代の量産型。安定した性能を誇るガード型だから初心者にも扱いやすい。その事から多くの企業並びに国家、党IS学園においても訓練機として一般的に使われている。…以上、教科書からの引用。

 

「どうしてもなにも、一夏に頼まれたからだ」

 

(そうなの?)

 

 小声で隣の一夏に訊くと、一夏もなんだか微妙な顔をしている。身に覚えがないらしい。

 

「くっ……。まさかこんなにあっさりと訓練機の使用許可が下りるだなんて」

 

 悔しそうな顔をするセシリア。きっと「一夏さんと二人っきりになれるかも♡ルンルン♡」みたいなことを考えていたのだろう。……俺いるんですけど?

 

「では一夏、はじめるとしよう。刀を抜け」

 

「お、おうっ」

 

 やる気満々に刀を抜く箒。一夏も雪片弐型を構える。

 

「では――参るっ!」

 

 ――と、そこにつんざく声が響く。

 

「お待ちなさい!一夏さんのお相手をするのはこのわたくし、セシリア・オルコットでしてよ!?あなたは同じ打鉄である航平さんのお相手をすればいいじゃないですの!」

 

 言うが早いか一夏の前に割った入ったセシリアは、真っ向から対峙する。

 

「ええい、邪魔な!ならば斬る!」

 

「訓練機ごときに後れを取るほど、優しくはなくってよ!」

 

 そこからは二人の戦闘が始まった。てかセシリア。一夏も一緒だったとはいえ、俺も訓練機でお前との戦い、健闘したと思うんだけど。

 

「どうする、一夏?」

 

「ん~、そうだなー……」

 

 俺と一夏は目の前で行われる先頭をぼんやりと見つめる。

 

「はああああっ!」

 

「甘いですわ!」

 

 箒が近接ブレードで描く美しい軌跡。セシリアの≪スターライトmkⅡ≫から放たれる弾丸の輝き。それらを眺めながら、俺たちは多分同じことを考えていた。

 ……終わるまで待っていよう、と。

 と言うか、二人の間に入る勇気がない。なんだか鬼気迫るものを感じる。横槍を入れるととんでもないことになりそうだ。

 

「一夏!それに航平!」

 

「何を黙って見ていますの!?」

 

「うえっ!?何を黙ってって……」

 

「な、なんか邪魔しちゃ悪いし。なあ?」

 

「お、おう」

 

 俺の言葉に一夏が横でうなずいている。

 

「一人づつどちらかに味方すればいいだろう!」

 

 なるほど、それもそうだ。

 

「……じゃあ、航平。…じゃ~ん、け~ん――」

 

 俺たちが向き合ってじゃんけんで決めようとすると、それを遮るように

 

「じゃんけんなんかで決めるんですの!?」

 

 セシリアの声が響く。え?だってこの方が公平じゃん。

 ちなみにこのとき俺たちが黙ってしまったことがまずかったたらしい。数分後、俺&一夏vs箒&セシリアのタッグマッチをさせられた。普段仲悪いのに、こんな時だけ息ぴったりだし。

 

 

 ○

 

 

「では、今日はこのあたりで終わることにしましょう」

 

「お、おう……」

 

「うっす……」

 

 ぜえぜえと息が切れている一夏。織斑先生のトレーニングメニューのおかげで俺は一夏ほどの疲労はない。。それに対してけろりしとしているセシリア。やっぱり、代表候補生だけあって俺たちとは経験が違うようだ。俺たちはISを使って日が浅いせいか、まだISでの体力配分が下手なようだ。

 

「ふん。鍛えていないからそうなるのだ」

 

 一夏に向けて叱咤する箒。箒も多少疲れているようだが、一夏ほど疲労困憊と言うことはない。

 

「一夏。終わったしピットに戻るか」

 

「おう」

 

 そう言って、二人でピットに向かう。その後をついてくる人物が一人。

 

「……で、箒。なんでこっち側に来るんだ?」

 

 後ろを振り返り、一夏訊いた。

 

「私もピットに戻るからだ」

 

「いや、セシリアの方に――」

 

「ぴ、ピットなどどっちでも構わないだろう!」

 

 そりゃそうなんだけどね。でも、それならセシリアの方でもいいじゃないか。

 と、思ったが、言ったら面倒なことになりそうだったのでやめておいた。

 

「ふう……」

 

 展開を解除。と同時にISの補助がなくなるので、体が重くなったように感じる。

 

「一夏は無駄な動きが多すぎる。だから疲れるのだ。航平の方が自然体で動けているが、航平もまだまだ無駄がある」

 

 ピットに戻ると、箒が言った。やっぱりそうか。その辺も意識してこれからの特訓をしないとな。

 箒から指摘されたことを頭の中で反復しながら、用意してあったスポーツタオルを取り出し汗を拭く。あ~、シャワー浴びたい。

 ここから一番近いシャワールームは部活棟にあるのだが、寮と反対側なので行く意味がない。それに、そもそも男用のシャワーがないので、女子と一緒に浴びることになってしまう。そんなことになったら大問題だ。

 

「箒、ものは相談なんだが……」

 

「なんだ、言ってみろ」

 

「今日、先にシャワー使わせてくれよ」

 

 一夏と箒は一緒の部屋で暮らす上での線引きをしたらしい。と言うか、箒が一方的に決めたらしい。その中にはシャワーの使用時間も入っているらしく、箒は七時から八時、一夏は八時から九時となっているらしい。

 俺と布仏さんはその辺無頓着で、シャワーの使用も空いてたらどっちが使ってもいいということになっている。同じ部屋で暮らす上でのルールも特には……あ、最近追加したんだった。「シャワー後にはちゃんと服を着て出てくる」である。つい先日起きた『布仏さんバスタオル事件』のせいである。

 

「っていうか箒、剣道部に入るんじゃなかったのか?毎日俺たちに付き合ってたら部活で他の女子に出遅れるぞ」

 

「そ、それはお前が気にする必要はない。……こっちの方で出遅れる方が問題だ……」

 

「え?何?」

 

「な、何でもない!」

 

 一夏は聞こえてなかったようだが、俺にはばっちし聞こえていた。まあ、セシリアというライバルが出てきた今、部活どころではないだろう。

 

「で、シャワーなんだが――」

 

「一夏っ!」

 

 バシュッとスライドドアが開いて凰さんが現れた。

 

「おつかれ。はい、タオル。飲み物はスポーツドリンクでいいよね」

 

 そう言って一夏にタオルと飲み物を渡す凰さん。いいなー、俺ものど乾いた。

 

「はい、アンタにも」

 

 そう言って俺にも飲み物を差し出す凰さん。

 

「え?いいの?」

 

「この間の道案内のお礼よ」

 

 なんて律儀な。あの程度の道案内くらい気にすることないのに。でも、この厚意は嬉しいのでありがたく受け取っておこう。

 ちなみに、冷えてないドリンクだが、これが正解らしい。以前、トレーニング後に織斑先生に飲み物を貰った時も冷えてないスポーツドリンクだった。なんでも、熱を持った体に冷たい水分は自殺行為に等しいらしい。ということを、冷たい方がいいと言った俺に、「人の厚意はありがたくもらっておけ」というありがたーいお言葉とありがたーいげんこつと共に織斑先生に教えてもらった。先生のげんこつの方が冷たい飲み物より体にダメージを与えてる気がするんですけど。

 

「一夏さぁ、やっぱあたしがいないと寂しかった?」

 

「まあ、遊び相手が減るのは大なり小なり寂しいだろ」

 

「そうじゃなくてさぁ」

 

 にこにこ、と言う音が聞こえてきそうなほどの笑みを凰さんは浮かべている。

 

「鈴」

 

「ん?なになに?」

 

「何も買わないぞ」

 

 ずるっと凰さんが姿勢を崩した。凰さんがこんな顔してる時に一夏は何か売りつけられた過去でもあるのだろうか。

 

「あんたねぇ……久しぶりに会った幼なじみなんだから、色々と言うことあるでしょうが」

 

 凰さんの言葉に一夏が考えているようだが特に思い浮かばないらしい。

 

「例えばさぁ――」

 

「あー、ゴホンゴホン!」

 

 わざとらしい咳払いで凰さんの言葉を遮ると、箒は『私は別に興味はないのだが』と言うような態度で(でも本当は興味あるんだろうなあ)話し始めた。

 

「二人とも、私は先に帰る。一夏、シャワーの件だが、先に使っていいぞ」

 

「おお、そりゃありがたい」

 

「お疲れ様ー」

 

「では、また後でな。一夏。航平は、とりあえずはまた明日」

 

 一夏への『また後で』と俺への『また明日』を、ものすごく強調――俺と一夏への言葉の差を際立たせるように――して、箒は一足先に出て行った。

 

「……一夏、今のどういうこと?」

 

 箒が出ていくと、さっきまであんなにも上機嫌だった凰さんが不機嫌なのを隠そうとしているのか、引きつった笑みを浮かべていた。

 

「ん?いや、いつもはシャワーは箒が先なんだが、今日は汗だくだから順番を変わってくれって頼んで――」

 

「しゃ、しゃ、シャワー!?『いつも』!?い、一夏、アンタあの子とどういう関係なのよ!?」

 

「どうって……前に言っただろ。幼なじみだよ」

 

「お、お、幼なじみとシャワーの順番と何の関係があんのよ!?」

 

「あれ?知らなかったのか?」

 

「何をよっ!?」

 

 俺の質問に俺に顔を向けながら質問で返す凰さん。

 

「一夏と箒って同じ部屋なんだよ」

 

「……は?」

 

 俺の言葉に凰さんがぽかんとした顔をする。

 

「ちょっと、一夏っ!どういうことよっ!あんたの同室って同じ男の、この線の細い金髪のイケメンじゃないのっ!?」

 

 あ、俺のことそういう風に思ってたんだ。イケメンは嬉しいけど線の細いって……。

 

「いや、俺たちの入学ってかなり特殊なことだったから、航平と一緒の部屋を用意できなかったんだと。だから、今は箒と一緒の部屋で――」

 

「そ、それってあの子と寝食を共にしてるってこと!?」

 

「まあ、そうなるか。でもまあ、箒で助かったよ。これが見ず知らずの相手だったら緊張して寝不足になっちまうからな」

 

「………………」

 

「うん? どうした?」

 

「…………ったら、いいわけね………」

 

「「?」」

 

 うつむき加減の凰さんが何を言ったのか聞き取れず、俺と一夏は耳を傾ける。角度の加減で凰さんの表情もよく見えない。

 

「だから! 幼なじみならいいわけね!?」

 

「うおっ!?」

 

「うわっ!?」

 

 いきなりガバッと顔を上げるので、俺たちは驚いて身を引く。一夏なんかは、もう少し体を近づけていたら頭突きを食らっていただろう。

 

「わかった。わかったわ。ええ、ええ、よくわかりましたとも」

 

 なぜか一人で納得し始めた凰さん。何がわかったんだ?

 

「一夏っ!」

 

「お、おう」

 

「幼なじみはふたりいるってこと、覚えておきなさいよ」

 

「別に言われなくても忘れてないが……」

 

「じゃあ、後でね!」

 

 確認を取らずに『後で』と言ってピットから出て行く凰さん。俺と一夏は呆然と立ち尽くしていた。

 なんかまた面倒なことになりそうだなあ。

 

「……なあ、航平」

 

「……何?」

 

「女の、それも幼なじみの考えることはわからんな」

 

「……そうだな」




次回!修羅場るかも!
こうご期待!
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