IS~無い物だらけの物語~(休載中)   作:大同爽

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僕は死にましぇ~ん!!

……はい?……ええ。内容には全く関係ありません。
てなわけで始まるよ♪


第19話 001回目のプロポーズ

「というわけだから、部屋代わって」

 

「ふ、ふざけるなっ!なぜ私がそのようなことをしなくてはならない!?」

 

 寮の部屋の一室、1025室。時刻は八時過ぎ。夕食後に一夏に無理やり連れてこられ、出されたお茶を飲んでいると、凰さんがやって来た。

 んー、この二人相性悪いかも。

 

「いやぁ、篠ノ之さんも男と同室なんてイヤでしょ? 気を遣うし。のんびりできないし。その辺、あたしは平気だから代わってあげようかなって思ってさ」

 

「べ、別にイヤとは言っていない……。それにだ!これは私と一夏の問題だ。部外者に首を突っ込んで欲しくはない!」

 

「大丈夫。あたしも幼なじみだから」

 

「だから、それが何の理由になるというのだ!」

 

 さっきからこの調子だ。

 

(なあ、俺いる意味あるの?)

 

(頼むからいてくれ。俺一人じゃこれ以上ヒートアップしたらまずいかも)

 

 俺がいても止められるというものでもないだろ。

 

(俺からも訊くんだが。鈴のやつ。すでに荷物をもってきてる気がするんだが、目の錯覚か?幻覚か?)

 

(安心しろ、一夏。俺にも見えてるから。なんだったら俺から聞いてみる)

 

 そう言って、俺は凰さんに顔を向ける。

 

「なあ、凰さん」

 

「うん?」

 

「前にあった時もそのボストンバッグ持ってたけど、それで、荷物全部?」

 

「そうだよ。あたしはボストンバッグひとつあればどこでも行けるからね」

 

 なんというフットワークの軽さ。箒も女子にしては荷物少ないと思うがそれにしても少ない。布仏さんに荷造りさせたら、荷物の半分はお菓子になるだろうなあ。いや、むしろ大半がお菓子だな。

 ちなみに、前に一夏と一緒にセシリアの部屋に招かれたときは一瞬ここが寮であることを忘れてしまった。家具はベッドから鏡台、テーブル、イスに至るまで全部特注品のインテリア。壁紙や照明まで替えていた。ベッドも天蓋付きのものに替えていた。あんなものどうやって部屋に入れたんだろう。同室の子はスペースをほとんど取られてすっげえかわいそうだった。あまりにもかわいそうだったので、もっと慎ましく生きろ、他人に迷惑をかけるな、と一夏と共に説教してやると、わかってくれたのかスペースをできるだけ空け、同室の子からはものすごく感謝された。

 

「とにかく、今日からあたしもここで暮らすから」

 

「ふ、ふざけるなっ!出て行け!ここは私の部屋だ!」

 

「『一夏の部屋』でもあるでしょ?じゃあ問題ないじゃん」

 

 そう言って同意を求めるように一夏の方に顔を向ける凰さん。そして凰さんに出て行けと言って欲しいように一夏を見る……というか睨んでいる箒。

 

「俺に振るなよ……」

 

 二人に同意を求められた事に一夏が困った顔をする。一夏も大変だな。助けたほうがいいかも。

 

「なあ、二人とも。とりあえず落ち着いたら?凰さん、部屋のことは君の独断では決められないんじゃない?」

 

「悪いけど、部外者は黙っててくれる?」

 

「お前だって部外者だろ!」

 

「関係者よ。私も幼なじみだし」

 

「だから、何なのだその理由は!」

 

 ダメだ。止めに入ってもすぐに二人の言い争いになる。

 

「とにかく!部屋は代わらない!出て行くのはそちらだ!自分の部屋に戻れ!」

 

「ところでさ、一夏。約束覚えてる?」

 

「む、無視するな!ええい、こうなったら力づくで……」

 

 激昂した箒はいつでも取れるようにベッドに立てかけてあった竹刀を握る。

 

「あ、馬鹿――」

 

「まずい!」

 

 完全に冷静さを失った箒が、防具も付けていない凰さんに竹刀を振り下ろす。咄嗟に、座っていた一夏のベッドから立ち上がり、二人の間に割って入ろうとした俺の前に、誰かの手が差し出され、行動を制される。

 パシィンッ!

 ものすごい音がした。

 

「鈴、大丈夫か!?」

 

「大丈夫に決まってるじゃん。今のあたしは――代表候補生なんだから」

 

 見ると、確実に頭にヒットしたと思われた箒の一撃は、ISの部分展開された凰さんの右腕によって受け止められていた。俺を制したのも凰さんだった。

 

「…………!」

 

 驚いているのは誰よりも箒だった。いくらISの展開が早くても、その判断を下すのは操縦者なのだ。つまり、ISの展開速度は人間の反射速度を超えることはない。

 そしてさっきの打撃は素人が土壇場で対処できるようなレベルのものではない。つまり、凰さんはそれができてしまうほど強いという単純かつ明快な答えである。

 

「アンタも大丈夫だった?危ないよ、飛び込んできたら」

 

「お、おう。ありがとう」

 

 なぜか礼を言ってしまった。助けに入るつもりだったのに。

 

「ていうか、今の生身の人間なら本気で危ないよ?」

 

「う………」

 

 凰さんの指摘が効いたのか、箒はバツが悪そうに顔を逸らす。

 

「ま、いいけどね」

 

 細かいことは気にしないというような態度で、凰さんはISの部分展開を解く。スマートな装甲を纏った右腕がぱぁっと光り、元の状態に戻った。

 

「え、えーと……」

 

 気まずそうに俺の顔を見る一夏。俺に振るな、という思いを込めて全力で首を横に振る。

 

「鈴、約束っていうのは」

 

「う、うん。覚えてる……よね?」

 

 凰さんは急に顔を伏せて、ちらちらと上目遣いで一夏を見る。なんだか恥ずかしそうだ。

 

「えーと、あれか? 鈴の料理の腕が上がったら毎日酢豚を――」

 

「そ、そうっ。それ!」

 

「――おごってくれるやつか?」

 

 え?タダで?いい人だな、凰さん。

 

「………………はい?」

 

 あ、この反応。どうやら違うようだ。

 

「だから、鈴が料理出来るようになったら、俺にメシをごちそうしてくれるって約束だろ?」

 

 んー、たぶん違うと思うぞ一夏。凰さんのこの反応を見てみろよ。

 

「いやしかし、俺は自分の記憶力に感心――」

 

 パアンッ!

 

「……へ?」

 

 いきなり凰さんが一夏をひっぱたいた。いきなりの展開に俺と箒も呆然としている。

 

「え、えーと」

 

 叩かれた一夏は状況が分からずにゆっくりと顔の向きをゆっくりと元に戻す。

 

「…………………」

 

 凰さんは肩を小刻みに震わせ、怒りに充ち満ちた眼差しで一夏を睨んでいた。しかも、その瞳にはうっすらと涙が浮かんでおり、唇はそれが零れないようにきゅっと結ばれていた。

 

「あ、あの、だな、鈴……」

 

「最っっっ低!女の子との約束をちゃんと覚えてないなんて、男の風上にも置けないヤツ!犬に噛まれて死ね!」

 

 そこからの凰さんの行動は素早かった。床に置かれていたバッグをひったくるように持って、ドアを蹴破らんばかりの勢いで出て行く。

 バタンッ!

 大きな音が響いて、俺も一夏もやっと我に返った。

 

「……まずい。怒らせちまった」

 

「その約束の内容を知らないから何とも言えないけど。お前、約束の内容を何か取り違えてるんじゃないか?」

 

「そうなのかな?」

 

「どんな内容だったんだ?」

 

「えっとだな……」

 

 俺が訊くと一夏は話し始めた。要約するとこうだ。

 

 二人が小学校のころ、放課後に二人で教室にいたときに、凰さんが唐突に言ったらしい。「料理が上手になったら、毎日私の酢豚を食べてくれる?」と。それを聞いた一夏は「ただで毎日酢豚をくわせてくれるなんて、いいやつだな」と思い、了承したらしい。

 

「んー。それを聞いても、やっぱり俺もタダでご馳走してくれるって解釈しかできそうにないな」

 

「だよな?」

 

 あの約束に、一体どんな意味が…。男の風上にも置けないと言われるほどの約束だったのか。

 

「一夏」

 

「お、おう、なんだ箒」

 

「馬に蹴られて死ね」

 

 どうやら箒はその約束の意味が分かったらしい。

 

「はあ……」

 

 一夏が大きくため息をついた。

 

 

 ○

 

 

 

「ただいまー」

 

「おかえりー」

 

 部屋に戻ると布仏さんが出迎えてくれた。

 

「……なあ、布仏さん。変なこと訊いてもいい?」

 

「んー?何ー?」

 

 ベッドに座り、こちらを向いて、細長いスナックをチョコレートでコーティーングしたお菓子を端を咥えて後ろから押し、リスのようにカリカリと食べている。ものすごいスピードでお菓子が短くなり、布仏さんの口の中に消える。そしてすぐに新たなお菓子を咥える。というのを繰り返している。

 

「男が女の子から『毎日私の料理を食べて』って言われる場合、これってどんな意味だと思う?」

 

 俺が訊いた途端、咥えていたお菓子がポキンと途中で折れて布仏さんの膝の上に落ちる。あれ?なんか表情も固まってるような。

 

「お菓子落ちたよ?」

 

「あ!うん」

 

 膝の上に乗っているお菓子を拾い上げぱくっと食べる布仏さん。表情はいつも通りな気もするが、なんだかまだ固い気がする。

 

「えっと、『毎日私の料理を食べて』の意味だよねー?」

 

「おう。どんな意味があるんだ?」

 

「んー。やっぱりそれはプロポーズじゃないかなー?」

 

「………え?」

 

 え?プロポーズ?まじで?てかどのへんが?

 

「え?タダ飯食べさせてくれるとかじゃないの?」

 

「違うよー」

 

「なんで毎日その子の料理を食べることが結婚に繋がるの?」

 

「だって、その子の料理を毎日食べようと思ったらその子と一緒にいないといけないじゃない?そんなの毎日一緒にいたいって言ってるってことだよー」

 

「…………はっ!」

 

 なんてこった!そんな意味だったのか!てことは凰さんって……。

 

「なるほど、納得した」

 

 うんうんとうなずく俺を布仏さんがじーっと見ている。

 

「………ねえ。なんでいきなりそんなことを?誰かに言われたの?」

 

 あれ?なんか布仏さんの様子が変。いつもぼんやりとした目が、今はなんだか睨むような半眼な気がする。

 

「うん。言われたよ――」

 

「っ!」

 

 俺の言葉に布仏さんの目元が一瞬ぴくっと反応する。

 

「――一夏が」

 

「………え?」

 

 そこからつづけた俺の言葉に一瞬の間を空け、布仏さんがぽかんとした顔になる。

 

「だから、言われた…っていうか、昔言われてたんだって、一夏が。セカンド幼なじみの凰さんに」

 

「あ、そういうことなんだー」

 

 さっきまで雰囲気から一変、いつもの布仏さんののほほーんとした雰囲気に戻っていた。さっきまでの雰囲気あれに似ていた気がする。一夏が箒と仲良くしてるの見てるセシリアとか、一夏がセシリアと仲良くしてるのを見てる箒とか、一夏と凰さんが仲良くしてるのを見てる箒とセシリアみたいだった。気のせいだったのかな?そんなわけないよな。

 

「うんうん。おりむーなら納得だー」

 

 止まっていたお菓子を食べる手をまた動かし始める。

 

「それを一夏はタダ飯食わせてくれるって意味に思ってたらしくて、それを言ったら凰さんにひっぱたかれてた」

 

「あららー。それは災難だったねー」

 

「なんかこれからもっと面倒なことになりそう」

 

 俺はつぶやきながらベッドに寝転がる。

 

「なあ、布仏さん。もう一個確認するけど、一夏を好きな奴って凰さんだけじゃないよな?俺の勘違いじゃないよな?確実にややこしいそうな奴がもう二人いるよな?」

 

「うん、いるねー。しののんとセッシー」

 

「…………」

 

 そっかー、やっぱりかー!

 

「できることなら、これ以上の修羅場に巻き込まれないといいけど…」

 

「あははー。頑張ってねー、ナッシー」

 

 布仏さんが笑っているが、正直笑い事じゃないんだよなー。

 

「……なあ、俺もお菓子もらっていい?」

 

「いいよー。どれがいー?」

 

「なんでもいいよ。甘いもの食べたい気分なんだ」

 

「う~~ん………。あ!じゃあどうせならポッキーゲームでもする?」

 

「なにそれ?」

 

 

 その後、ゲームの内容を聞いて俺が全力拒否したことは言うまでもない。




あー、かわいい女子とポッキーゲームしたいっす。
ちょいちょい僕自身がかわいい子とやってみたいことをたまに入れま~す。

次回もお楽しみにー。
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