なんか久々な気がしますが、二日ってそれほど経ってない気もしますね。
首を長ーくして待っていてくれていた方。それほど待っていなかった方。
どちらもひっくるめて、二十四話始まるよ♪
学園の地下五十メートル。そこはレベル4権限を持つ関係者しか入れない、隠された空間だった。
機能を停止したISはすぐにそこへ運び込まれ、解析が開始された。航平の様子を見に行った後、すぐさまここやって来た千冬は、それから何度もアリーナでの戦闘映像を見ていた。
「………………」
室内は薄暗く、ディスプレイの光で照らされた千冬の顔はひどく冷たいものだった。
「織斑先生?」
ディスプレイに割り込みでウインドウが開く。ドアのカメラから送られてきたそれには、ブック型端末を持った真耶が映っていた。
「どうぞ」
許可をもらってドアが開くと、真耶はいつもより幾分かきびきびとした動きで入室した。
「あのISの解析結果が出ましたよ」
「ああ。どうだった?」
「はい。あれは――無人機です」
真耶の返答に先程までひどく冷たい顔をしていた千冬は、睨むかのように無人機のISを見ている。
航平が千冬に質問した通り、無人機は未だに世界的に見ても完成していない技術。遠隔操作か独立稼動のどちらか、あるいは両方の技術が今回の謎のISに使われている。その事実は、すぐさま学園関係者全員に箝口令が敷かれるほどだった。
「どのような方法で動いていたかは不明です。織斑くんの最後の攻撃で機能中枢が焼き切れていました。修復も、おそらく無理かと」
「そうか……。例の星水爆弾の方はどうだった?」
「はい。爆発の威力のせいで爆弾の破片も残っておらず、詳細はわかりませんでした。ただ、爆弾の威力が資料のものよりも強くなっていました」
「………コアはどうだった?」
「……それが、登録されていないコアでした」
「そうか」
やはりな、と続ける。どこか確信じみた発言をする千冬に、真耶は怪訝そうな顔をする。
「何か心当たりがあるんですか?」
「いや、ない。今はまだ――な」
そう言ってディスプレイに戻された千冬の顔は、教師の顔ではなく、戦士の顔に近かった。
かつて世界最強だった伝説の操縦者。その現役時代を思わせる鋭い瞳は、ただただディスプレイの中の映像を見つめ続けていた。
●
「はい、ナッシー。あ~ん」
「あ、あーん」
俺が大きく開けた口に布仏さんが一口大の大きさにした白身魚のフライを箸で運んでくれる。
「おいしー?」
俺と布仏さんの周りから四人分の八つの目からの視線が突き刺さるように注がれ、正直言って味を感じている余裕もない。しかし、満面の笑みで訊かれればこう答えるしかない。
「う、うん。おいしいよ」
「そっかー。じゃあ次はねー……」
今俺たちがいるのは寮の一年生用食堂。さっきは四人分の視線、なんて言ったが、実際には食堂内にいる全員がこちらを見ている気がする。その中でも特に視線を感じるのが、近くにいる一夏、箒、セシリア、凰さん、の四人だ。
周りからの視線が痛い。はっきり言って地獄だ。
(なんでこうなった?)
俺はつい数十分前のことを思い出す。
○
「お、航平!」
一年生の寮。その食堂のところまで帰ってきた俺は夕食にやって来ていた一夏、箒、セシリア、凰さんの四人に会った。
織斑先生との話の後、小一時間ほど眠り、空腹を感じたのでとりあえず寮に戻ることにした俺は保健室から引き揚げてきたのだ。
「お体はもういいんですの?」
「ああ、体の方は――」
セシリアが問いに答えようとした俺の耳に声が聞こえてくる。
「ナッシー!!!」
俺を呼ぶ声はどんどん大きくなりながらこっちに向かってくる。どこから聞こえるのか、声の元を探そうとした時、背中に衝撃とともに誰かが抱き着いてくる。
「ナッシー、ナッシー、ナッシー!大丈夫だったー!!?」
前に言ったかもしれないが、俺のことをナッシーと呼び、いきなり背中に抱き着くような人は一人しかいない。布仏さんだ。俺の背中に顔をうずめて頬擦りをしている。しかし、俺には背中を振り返る余裕がない。なぜなら…
「うおっ!?大丈夫か、航平!お前ものすごい顔してるぞ!?」
一夏が心配そうに俺の肩に手を置いてを揺らす。
「布仏さん、一夏。心配してくれているのはありがたいんだが、いったん放してくれ。ちょっとの刺激がものすごく痛い」
「あ、悪い!」
そう言って手を放す一夏。布仏さんも背中から降りてくれた。あー、死ぬかと思った。
「えっと、とりあえず今はこんな感じ。全身に軽い打撲で数日は地獄だろうってさ。おかげでここまで来るのにも苦労したよ」
「それで、さっきから歩き方が不自然だったのだな」
箒が納得したように頷く。それは俺も自覚している。なんかぎこちなく歩くロボットみたいだった。途中で会った山田先生は「アシモみたいですね」と笑っていた。なんだ、アシモって。
「そう言えば、みんな見舞いに来てくれたんだってな?ありがとう」
「いやいや、俺をかばってのことだし。お前には二度も助けられちまったな」
「気にするなよ」
申し訳なさそうな顔をする一夏に、笑って答える。
「そう言えば、千冬さんとの話は何だったの?重要な話だからってあたしたち追い出されたんだけど」
「ああ。今日のことの説明…って言ってもまだ調査中で、分からないことだらけらしいけどな。あと――」
凰さんに答える途中、あの爆弾のことを思い出す。
「――機密が絡むからあまり詳しくは言えないんだけど、あの爆発物のこと。あれがちょっと特殊なものだったらしくて。なんでお前はあれを知ってたんだ?みたいなことを」
「そう言えば、航平はあれが何かわかってたみたいな行動だったよな?なんで知ってたんだ?」
「……わからない。たぶんだけど、俺が記憶を失う前にあれを見たことがあったとかなんだと思う」
「そうか……」
なんとなくその場の空気が暗くなる。
「と、とりあえず。俺は平気だから、そのことは置いといて。飯にしない?俺おなかすいちゃったよ」
「……そうだな。飯にしようか」
俺の言葉に一夏も笑顔で答える。他の四人も頷いている。
「さーて、今日のごはんはなんだろなー♪」
無理矢理、テンションを上げて食堂に入って行く。
「お、今日の日替わり、フライ定食だって。俺これにするかな」
一夏が入り口近くのメニューを見ながら言う。
「へえ、じゃあ俺もそれで」
そんな感じで全員あまり時間もかからずに決まり、選んだ料理を持って六人で同じテーブルに着く。
「じゃあ――」
「「「「「「いただきまーす」」」」」」
声をそろえて合掌し、みな食べ始める。
「……っよ!……っほ!」
体が痛いので食べるのも一苦労だ。いちいち気合い入れないといけない。それでも、ご飯なんかはポロポロと机の上にこぼしてしまう。
「ねえ、ナッシー。食べずらいの?」
隣に座る布仏さんが心配げな顔で訊く。
「ん?ああ、まあな。でも、大丈夫だから」
そう笑顔で答えてみるが、正直食べずらい。フォークか何か貰ってこようかな。その方が食べやすいかもしれない。
「……じゃあ、私が食べさせてあげよっかー?」
「えっ?」
今何とおっしゃいましたか布仏さん。
「うんうん、そうしよう。じゃあ、トレー貸してねー」
勝手に決めて俺のトレーを自分の方に寄せ、自分も俺に体を寄せてくる。って、近い!
「えっと、布仏さん、近い。てか、自分で食べられるから」
「でも、食べずらそうだよー?こぼしてるし」
そう言いながら俺の手元のテーブルに顔を向ける布仏さん。俺も見る。うん、こぼれまくっている。
「いやいや、箸だからだよ。フォークとかなら大丈夫だよ」
「でも、取りに行くの面倒じゃない?はい、あ~ん」
俺の返事を聞かずにさっそく自分の箸でご飯を一口ほどの量をつまみ、俺の口の前まで運ぶ、笑顔で。
「…………」
「あ~~ん!」
俺が黙っていても、構わず俺の口の前でご飯の乗った箸を軽く揺らす布仏さん。これは何を言っても無駄だろう。
「……あ、あーん」
大きく開けた俺の口にご飯を運ぶ布仏さん。口を開けた途端布仏さんの笑顔が二割増しになった気がする。
「次は何がいいー?」
「……じゃあ、そこのエビフライで」
「はーい」
○
こんな感じでかいがいしく俺の世話を焼いてくれる布仏さん。しかも満面の笑み。なんでそんなに嬉しそうなの?
「ねえ、一夏。あいつら何なの?付き合ってんの?見せつけてんの?」
「いや、航平曰く違うらしい。ただの同室のクラスメイトだって」
「その割には仲いいですわよね」
「私だって、同室だがこんなことしたことないぞ……」
「ん?なんか言ったか箒?」
「な、なんでもないっ!」
なんか一夏たちが盛り上がってるな。
「ん?そう言えば一夏と凰さんは仲直りできたの?試合の決着ついてないんじゃないの?」
ふと気付き、一夏と凰さんの顔を交互に見る。
「おう、おかげさまでな。あの約束のことも解決だ」
「おっ!じゃあ何?二人って付き合うことになったの?」
「え?なんで?」
「え?」
一夏が俺の言葉に首を傾げる。
「え、だって約束の意味聞いたんだろ?」
「おう、聞いたぞ?」
「あれって、プロポーズだったんだろ?」
俺が言った途端、箒とセシリアの表情が険しくなる。落ち着きなよ二人とも。ん?凰さんまで微妙な顔してる。なんで?
あ、もしかしてあれか?告白断った相手とこうして仲良く飯食ってんの?メンタル強いな一夏。
「あー、お前もそう思ってたのか!」
「は?」
一夏の反応は俺の予想したものではなかった。
「いや、俺もそう思ったんだけどさ。鈴に聞いたら、タダ飯であってたらしいぜ。誰かに食べてもらったら上達するからってさ。な?」
「ま、まあね」
一夏の言葉に凰さんが引きつった笑顔で答える。……あー。
「凰さん……」
「な、何よ!?何か言いたいことでもあるの?言ってみなさいよ!」
「え!?言っていいの!?」
「いや、やめて!わかってるから!」
俺の声が聞こえないように耳をふさぐ凰さん。やっぱりそうなんだな。どうやら凰さんは怖気づいたみたいだ。まあ、しょうがないのかもしれない。覚えている限り告白とかしたことない俺が言うのもなんだが。
「なんだよ鈴。変な奴だな」
一夏は理由が分かっていないようだ。俺もたいがい鈍感な方だと思うが、確信をもって言える。一夏よりはマシだろう。
「でもまあ、俺も航平と同じように考えちゃってさ。お互い深読みだったな」
「お、おう。そうだな」
本人が言わないことを俺が言う訳にはいかない。頷いとこう。
「そう言えば、鈴も俺にISのこと教えてくれるらしいんだ。同じパワータイプだし、相性いいしな。航平もどうだ?」
「えっと、それはお願いできるならうれしいけど……」
頷きながら凰さんの方を見る。
「い、いいわよ別に。アンタもついでに見てあげるわよ」
やっぱりというかなんというか、しぶしぶだな。
「じゃあ…、よろしく、凰さん」
「鈴でいいわよ。あ、“さん”とかいいからね。あたしもアンタのこと呼び捨てにするから」
「じゃあ、よろしく、鈴」
「ナッシー、はい、あ~んっ!」
なんだ?さっきまで笑顔だった布仏さんがなんだか不機嫌そう。この短時間に何があったんだ?
「どうしたの、布仏さん?」
「なーんーでーもーなーい~!!」
絶対なんかある。でも、何でもないというならこれ以上訊くわけにもいかない。
「ナッシー、あーん」
「あーん」
不機嫌そうではあるが食べさせてはくれる。うん、ちょっと視線にも慣れてきたからか、味を感じる余裕も出てきた。
「布仏さん」
「何?」
「ありがとう。おかげで大変な思いしなくてすむし、おいしく食べられるよ」
俺の言葉を聞いて、布仏さんが俺の顔を見て動きを止め、パチパチと何度か瞬きをする。
「エヘヘヘヘ~。どういたしましてー」
うわ、いっきに上機嫌になった。なんで?そう言えば前に一夏が言ってたな。「女の子の気持ちは秋の空以上によくわからない」って。あの時は「お前が鈍感なだけだろ!」って思ったけど、撤回するよ、一夏。俺にも女の子の考えがよくわからない。
「ねえねえ、ナッシー次は?次は何食べたい?」
「そうだなあ、じゃあ次は――」
布仏さんの言葉に考える俺。
「まったく、見せつけてくれますわね」
「他所でやりなさいよ、他所で」
俺と布仏さんを見ながらぶつぶつ言いながらやけに激しく箸やフォークでおかずを突き刺す鈴とセシリア。刺し箸は行儀悪いんだよ、鈴。
「んんっ!一夏。お前も今日は大変だっただろ?どうだ?私が食べさせてやろうか?」
「なんでだよ?」
箒は箒で一夏に食べさせようとしている。一夏は元気だから必要ないのに。
「ちょっと、抜け駆けはダメですわよ、箒さん!!」
「そうよ!一夏!私が食べさせてあげる!ほら、口開けなさいよ!」
「いいえ、私ですわ!」
ヒートアップする三人。
「おいおい、落ち着けよ」
止めに入る一夏。よし、加勢するか。
「そうだぜ。他の人に迷惑だろ?」
「「「お前たちの(あなたがたの)(アンタたちの)せいだ(ですわ)!!!」」」
声をそろえて俺をにらむ三人。なんでだよ。
いいな~、女子にあーんってされるとか。
うらやましい限りですよまったく。
次回で一巻の内容が終われるかな?頑張ります!
では、次回もお楽しみに~♪
追伸
題名入れてなかったので入れ直しました。