「「失礼します」」
セシリアと鈴はそう一声かけ、職員室の扉を開ける。
職員室の中は日曜のため出勤しているのは片手で数えるほどの教師しかいなかった。
「山田先生、お願いしていた書類をお願いします」
「あ、はい。ちょっと待ってくださいね」
「ちふ…織斑先生、聞いていた書類を受け取りに来ました」
「少し待て」
二人に声をかけられた先生はそれぞれ反応し、自分の机の引き出しを開ける。
「ほら、これだ」
「どうぞ」
それぞれの相手に千冬と真耶が渡す。
「「ありがとうございます」」
それぞれ書類と封筒を受け取った鈴とセシリア。
「それでは、失礼します」
「失礼します」
「あ、ちょっと待ってくれるか」
職員室から出て行こうとする二人に千冬が声をかける。
「なんでしょうか?」
千冬の言葉に二人が立ち止り、セシリアが訊いた。
「……その…なんだ。梨野の様子はどうだ?」
少し言いずらそうに言った千冬の言葉にセシリアと鈴が顔を見合わせる。
「えっと、どうと訊かれましても……」
「特に変わった様子はなかったですけど?」
「そうか……」
二人の言葉に千冬が少し考え込む。
「あの、どうかしたんですか?」
「航平さんに何かあったんですの?」
「……いや、なんというか。やつのことは私や山田先生が面倒を見ていたわけだし、一応私がアイツの身元保証人なわけだしな。梨野がちゃんと記憶が無くても生活できているのか気になっただけだ」
千冬は努めて冷静にしゃべろうとしているが、少し照れているようだった。
「あー、照れてますね?私が大丈夫なんでしょうかねって言っても、『心配する必要はない』っていつも言ってるのに。織斑先生もやっぱり心配してるんじゃないですか。先生って素直じゃないですよねー?」
そんな千冬を楽しげに笑う真耶。しかし、真耶の言葉によって急に職員室内の温度が二、三度下がった気がする。
「山田先生。デスクワークばかりでは肩が凝ってしまうでしょう。どうですか?これから一緒に組手でも」
「え、遠慮しておきます!」
千冬が笑顔で言った言葉。しかし千冬の目は全く笑っていなかった。その眼を見た途端真耶は全力で断る。
「山田先生?」
「な、なんでしょうか?」
「以前にも言ったかもしれんが、私はからかわれるのが嫌いだ」
「はっ、はいっ!すみません!」
千冬の言葉にすぐさま謝る真耶。依然同じことを言われたときに食らったヘッドロックを思い出し、頭を押さえている。
「んんっ!…まあそんなわけだから、少し気にしてやってほしい」
話題を変えるために咳払いをする千冬。
「「はい」」
千冬の言葉にセシリアと鈴が頷く。
「時間を取らせて悪かったな」
「「失礼しました」」
千冬と真耶に礼をし、二人は職員室から出る。
「……アンタのクラスの山田先生って変わってるわね。あの千冬さんをからかおうとするなんて恐れ知らずじゃない」
職員室を離れてから少ししてから、鈴が口を開く。
「そうですわね、少し抜けているところがある方ですわ」
鈴の言葉にセシリアも笑って頷く。
「見ててハラハラすることもありますわ。この間も廊下で転んで持っていた書類を廊下でばらまいてしまって、周りの人に手伝ってもらいながらあたふたしながら拾っていましたわ」
「なんか微笑ましい先生ね」
セシリアの山田先生おちょっこちょいエピソードに笑う鈴。
「そんなおっちょこちょいな先生なら、書類が間違えて入ってなかったりして」
「それは流石にないと思いますわよ」
そう言いながらも封筒を開けセシリアは仲を確認する。
「……大丈夫ですわ。ちゃんと揃っています」
書類の枚数を数え、あっていたことにほっと胸をなでおろすセシリア。そして、書類を封筒に戻そうと、封筒を開いたところでセシリアの手が止まる。
「ん?なんですのこれ?」
そう言いながら、封筒を逆さにし、封筒の中から、何かを取り出す。
「ん?何何?」
鈴も興味を持ったのかセシリアの手を覗く。
「これは……写真ですわね」
封筒の中から現れたのは一枚の写真だった。
「この両方の写真に写ってるのは千冬さんね」
写真には二人の人物が映っていた。そのうち一人はいつものスーツ姿ではなくラフな、おそらく私服と思われる格好の千冬が映っていた。
「もう一人の方たちは……見たことのない方ですわね」
写真には千冬のほかにもう一人、金髪の女性が映っていた。
千冬よりも背が高く、長い腰のあたりまである金髪の女性。服装はIS学園の制服。箒のものと同じタイプのものでほとんど改造をしていないようだった。リボンの色は赤色。
写真の中で女性はまるで写真に写ることを嫌がるように、でも、千冬に引っ張り込まれ、いやいやながらも恥ずかしそうなはにかんだ笑みを浮かべていた。
「なんか、千冬さんと親しそうね、この人」
「そうですわね。それにこの写真で見る限り、なかなかおきれいな方ですわね。プロポーションもいいですし」
写真では、膝のあたりまでしか映っていないが、そのスタイルの良さはまるでどこかの雑誌のモデルのようだった。
「うちの制服ってことはこの人もIS学園の生徒の方なのでしょう」
「さあ。てか、そもそもなんでこの写真がアンタの封筒に入ってたの?」
「……この写真が山田先生の持ち物で、たまたま入ってしまったんじゃないですの?」
「まあ、それしか考えられないよね。それにしても――」
二人は視線を写真の女性に戻す。
「――ものすごい美人ね、この人」
「確かに……」
「ますます気になってきたわね。この人誰なんだろう」
写真を凝視すがこれ以上何かこの女性の情報はない。試しに写真を裏返す鈴。
「ん?なんか書いてある」
そこには丸い女性の字で日付とともに「織斑先生&ナナコ」と書かれていた。
「〝ナナコ〟ってこの人の名前でしょうね」
「この日付って今年よね。しかも私たちが入学する一か月前ね」
「ですわね……」
「はっ!てことはこの人まだこの学園に在籍してるんじゃない?リボンも赤だし!」
「まあ、そうでしょうね」
鈴が興奮気味に言った。
「よしっ!こうなったらこの人を探しましょっ!」
「はいっ!?」
「そうと決まったら聞き込みよっ!」
「はあ。頑張ってください」
「何言ってんのよ?アンタもするのよ」
「へっ?」
鈴の言葉にセシリアが素っ頓狂な声を上げる。
「な、なんでわたくしまで…」
「アンタだって気になるでしょ?」
「そりゃ、まあ、そうですが……」
「よしっ!なら決まり!」
「というか、知りたいなら山田先生に直接――」
「じゃあ、さっそく寮の一年生用食堂に行くわよ!この人のこと知ってる人がいるかもしれないし!」
そう言うや否や、セシリアの腕を掴んで走り出す鈴と
「ちょ、話を聞きなさいっ!」
文句を言いながら引きずられるように鈴とともに走るセシリアだった。
○
「よかった、お昼に間に合って」
もうすぐ十二時になろうという頃、俺は買い物を終え、寮に戻ってきていた。
「ずいぶん早かったねー。ほしいものは買えたのー?」
横で俺とともに歩いている布仏さんが訊いた。
「おう。思いのほか早く買い物終わってな。もうすることもないし、とっとと帰ってこようと思ってな。昼めしも間に合いそうだったし」
「そっかー。私も行きたかったなー、買い物」
布仏さんが寂しそうな顔をする。
「用事があったんだからしょうがないじゃん。また一緒に行こうぜ?」
「……うん!」
しかし、俺の言葉にすぐに満面の笑みを浮かべる。
「そう言えば、用事って何だったんだ?」
「んー?生徒会かつどー」
「ん?なんだ、生徒会に怒られるようなことしたのか?」
布仏さんって、おっとりしてるし、そんな問題行動するわけでもないんだと思ってたんだけど…。
「んーん、違うよー。私が活動に参加してたのー。なんたって、生徒会役員だからねー」
「ん、誰が?」
「私が」
「なんだって?」
「生徒会役員」
「……ええっ!!!」
今世紀最大の衝撃!あの布仏さんが生徒会だったなんて!でも、正規の手続きで布仏さんが生徒会には入れるんだろうか。はっ!ま、まさか……。
「……布仏さん」
「何ー?」
「賄賂はダメだよ」
俺の言葉を聞いて布仏さんがずっこける。
「なんでそうなるのさー!」
「えっ!?だってあのめんどくさがりの布仏さんが、まったりのほほんとした布仏さんが生徒会に入るには、何かよからぬことをしたんじゃ……」
「ぶー!ナッシーひどいっ!」
ブーブー言いながら僕の背中を拳で叩く。正直それほど痛くない。
「わ、悪かったよ」
「ふーんだ」
どうしよう、へそ曲げちゃったよ。
「あ、そう言えば今日のお土産にお菓子買ってあるんだけど食べる?」
「そ、そんなので許したりしないからねー」
くっ、ダメか。ならば…。
「布仏さん、今日行った先でおいしそうなクレープ屋を見つけたんだけど、今度一緒にどう?ご馳走するぞ?」
「……ま、まあ?ナッシーがどうしてもって言うんだったら一緒に行ってあげてもいいけどー?」
「あー、布仏さんとクレープをどうしても一緒に食べたいなー」
「もう、しょうがないなー。許してあげるよー」
さっきまでのしかめっ面はどこへやら。ものすごくうれしそうな顔になる布仏さん。
「~~~♪~~~♪」
楽しそうに鼻歌歌いながらスキップをする布仏さん。そんなにクレープが楽しみなのか。奢るこっちとしてもそんなに楽しみにしてくれるのは嬉しいが、行くのはまだまだ先になると思うんだけどな。
「でもさ、それならなんで布仏さんは生徒会には入れたんだ?」
「んー?それはね、生徒会って会長が役員を自分で指名できるのー。私は生徒会長と知り合いだから指名してもらったのー」
あー、なるほど。納得納得。
「持つべきものは権力持った知り合いってわけだ」
「まあ、そういうことだねー」
そんなことを言っているといつの間にか食堂に着いていた。
「さーて、何食べようかなー」
ルンルン気分のまま食堂に入って行く布仏さん。
と、食堂の一か所に人垣ができていた。
「ん?なんだあれ」
「行ってみよー」
そう言って俺の袖をつかんで引っ張って行く布仏さん。
「どうしたのー?」
人だかりに声をかける布仏さん。
「あ、本音に梨野くん」
人垣の外側にいたクラスメイトの相川さんが振り返る。
「なんかね、セシリアと凰さんが写真の人捜してるんだって」
「写真?」
「うん。なんでも山田先生に貰った封筒の中に入ってたんだって。織斑先生と一緒に映ってて、しかもものすごいブロンド美人」
……何だろう、ものすごい嫌な予感。
「へ、へー。じゃあ俺たちもその写真見せてもらおうかなー」
「うん。見たいー」
俺の言葉に布仏さんが頷き、俺とともに人垣の中心へ。
「よ、よう、二人とも。俺たちにも写真見せてくれ」
人垣の中心にはテーブルに写真を置いて座ってそれを凝視する鈴と、その横で少し疲れた顔してセシリアが紅茶をすすっていた。
「あら航平さん」
「よう、セシリア。なんかお疲れみたいだな」
「ええ、まあ。鈴さんが写真の女性を探しと言ってさっきまで聞き込みして回ってましたの」
「なんというか…お疲れさま」
鈴ってこうと決めたときのフットワーク軽いよな。
「それで、例の写真ってそれか?」
「そうよ」
俺の問いに鈴が頷く。
「見してー」
「いいわよ。はい」
布仏さんが差し出した手に鈴が写真を渡す。
「へー、この人かー。確かに美人だねー」
「俺にも見せてもらってもいいか?」
「うん。でも、この人どっかで見たような気がするなー」
「へ、へー」
布仏さんの言葉にドキドキしながら写真を受け取る。
「…………………」
予感的中。俺は足元が崩れるような感覚に見舞われた。
やっぱり原作にないところを書くのは難しいですね。
千冬さんとかが難しい。
セシリアの喋り方もやりずらいっすね。誰に対してどう話してたかがわかんなくなります。
不自然なところ、キャラ崩壊あれば申し訳ないです。
追記
写真の枚数が二枚になっていたのを修正。