IS~無い物だらけの物語~(休載中)   作:大同爽

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急に書きたくなったので更新♪


第33話 波乱の幕開けな月曜日

「やっぱりハヅキ社製のがいいなぁ」

 

「え? そう? ハヅキのってデザインだけって感じしない?」

 

「そのデザインがいいの!」

 

「私は性能的に見てミューレイのがいいかなぁ。特にスムーズモデル」

 

「あー、あれねー。モノはいいけど、高いじゃん」

 

 月曜日の朝。俺と一夏が教室に入ると、クラス中の女子がわいわいとにぎやかに談笑をしていた。みんな手に持ったカタログを見ながら意見を交換していた。

 

「そういえば織斑君と梨野君のISスーツってどこのやつなの? 見たことない型だけど」

 

「あー。特注品だって。男のスーツがないから、どっかのラボが作ったらしいよ。えーと、もとはイングリッド社のストレートアームモデルって聞いてる」

 

「あ、俺も一緒だ」

 

 どうやら一夏と俺のは同じ会社のものらしい。でも、同じ会社のものでも俺と一夏のISスーツでは見た目がかなり違う。ダイビング用のスーツのような見た目だが、一夏のものはおなかが出ている。それに対して俺はある理由から上と下の境目が見えないようになっている。特注品の男性用ISスーツのさらに特注品というわけだ。

 ちなみにISスーツと言うのは文字通りIS展開時に体に来ている特殊なフィットスーツの事だ。それ無しでもISを動かすのは可能だが、反応速度がかなり鈍ってしまうらしい。

 

「ISスーツは肌表面の微弱な電位差を検地することによって、操縦者の動きをダイレクトに各部位へと伝達、ISはそこで必要な動きを行います。また、このスーツは耐久性にも優れ、一般的な小口径拳銃の銃弾程度なら完全に受け止めることができます。あ、衝撃はきえませんのであしからず」

 

 そうすらすらと解説しながら山田先生が現れた。

 

「山ちゃん詳しい!」

 

「一応先生ですから。……って、や、山ちゃん?」

 

「山ぴー見直した!」

 

「今日が皆さんのスーツ申し込み開始日ですからね。ちゃんと予習してきてあるんです。えへん。……って、や、山ぴー?」

 

 入学からだいたい二か月。現在山田先生には8つくらいのあだ名があるらしい。慕われているということなのだろうが、年上相手にあだ名というのはどうなのだろうか。

 

「あのー、教師をあだ名で呼ぶのはちょっと……」

 

「えー、いいじゃんいいじゃん」

 

「まーやんは真面目っ子だなぁ」

 

「ま、まーやんって……」

 

「あれ?マヤマヤの方が良かった?マヤマヤ」

 

「そ、それもちょっと……」

 

「もー、じゃあ前のヤマヤに戻す?」

 

「あ、あれはやめてください!」

 

 珍しく山田先生が語調を強くする。なんだろう?そのあだ名に嫌な思い出でもあるのだろうか。

 

「と、とにかくですね。ちゃんと先生とつけてください。わかりましたか?わかりましたね?」

 

 山田先生の言葉に、はーいとクラス中から返事が来るが、たぶん返事をしただけだ。山田先生のあだ名はこれからも増えていくだろう。

 

「諸君、おはよう」

 

「お、おはようございます!」

 

 そこに我等が担任、織斑先生の登場だ。さっきまでのざわついていた教室内の雰囲気がピシッと静まり返る。

 ちなみに織斑先生にはあだ名はない。織斑先生にはあだ名をつけないのか、と訊いた俺に対する女の子たちの解答は、「な、梨野くんは私たちに死ねというの?」だった。そんなに恐ろしいか。

 

「今日からは本格的な実戦訓練を開始する。訓練機ではあるがISを使用しての授業になるので各人気を引き締めるように。各人のISスーツが届くまでは学校指定のものを使うので忘れないようにな。忘れたものは代わりに学校指定の水着で訓練を受けてもらう。それもないものは、まあ下着で構わんだろう」

 

 いや構います!と思ったのはおそらく俺だけじゃないだろう。少なくともうちのクラスの女子はこれで忘れることはないだろう。

 ちなみにIS学園の指定水着は紺色のスクール水着、体操服はブルマーだ。俺はここ以外の学校を知らないので詳しくはないが、何でもそれらの服は絶滅危惧種らしい。以前一夏が教えてくれた。あ、もちろん俺と一夏は男物の水着と体操服は短パンだ。

 さらに言えば、学校指定のISスーツはタンクトップとスパッツを合わせたようなシンプルな物だ。何故学校指定の物があるのに各人で用意するかというと、ISは人それぞれの仕様へ、百人いれば百通りに変化する物であるから、早めに自分のスタイルを確立するのが大事だそうだ。当然、全員が専用機を貰える訳じゃないから、どこまで個別のスーツが役に立つのかは難しい線引きでもあるが、そこはそれで花も恥じらう十代の乙女の感性を優先させているそうだ。以前セシリアが、女はおしゃれの生き物ですから、と言っていた。

 さらに、専用機持ちの特権である『パーソナライズ』を行うと、IS展開時にスーツも同時に展開されて、着替える手間が省ける。ちなみにその時着ていた服は一度素粒子にまで分解されてISのデータ領域に格納されるそうだ。

 ただ、この方法はエネルギーを消費し、戦闘開始時には万全な状態で挑めない。だから、緊急時以外は普通にISスーツを着てISを展開するのがベターなのだ。

 

「では山田先生、ホームルームを」

 

「は、はいっ」

 

 連絡事項を言い終えた織斑先生が山田先生にバトンタッチ。ちょうど眼鏡を拭いていたみたいで、慌てながらかけ直してわたわたとしている山田先生。そんなに焦らなくてもいいのに。

 

「ええとですね、今日はなんと転校生を紹介します! しかも二名です!」

 

「え………」

 

「「「えええええっ!?」」」

 

 いきなりの発表にクラス中がいっきに騒がしくなる。まあ、噂好きの女子たちが自分達の知らない情報がいきなり入って来たら騒がしくもなるだろう。しかも転校生が同時にふたり。驚きもするさ。

 

(でも、こういう時って他のクラスとかに分散させないのだろうか)

 

 そんな俺の思考は教室の扉の開く音に掻き消された。

 

「失礼します」

 

「……………」

 

 クラスに入って来た二人の転校生を見て、さっきまでのざわめきがピタッと止まる。

 しかし、それも仕方がない。

 なぜなら、その転校生のうちのひとりが、男子だったのだから。

 

 

 ○

 

 

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れなことも多いかと思いますが、みなさんよろしくお願いします。」

 

 転校生の一人、男子の方。シャルルはにこやかにそう言って礼をした。

 クラス全員があっけにとられている。

 

「お、男……?」

 

 誰かがそうつぶやいた。

 

「はい。こちらに僕と同じ境遇の方々がいると聞いて本国より転入を――」

 

 人なつっこそうな顔。礼儀正しい立ち振る舞いと中性的に整ってる顔立ち。髪は濃い金髪(濃さで言えば、シャルル>俺>セシリア)を首の後ろで丁寧に束ねている。俺も華奢な方だと思うが、そんな俺よりもさらに華奢な体型で、足もスラッと長い。

 印象は『貴公子』といった感じで、嫌みのない笑顔だ。

 

「きゃ……」

 

「はい?」

 

「きゃあああああああああーーーーーっ!」

 

 いきなり歓喜の叫びをあげる女子達。あまりの衝撃に俺の横の窓がビリビリと揺れた気がする。

 

「男子!三人目の男子!」

 

「しかもうちのクラス!」

 

「美形!守ってあげたくなる系の!」

 

「地球に生まれて良かった~~~!」

 

 うん、うちのクラスは今日も元気だ。この騒ぎで他のクラスから誰も来ないのは、今がHR中だからだろう。教師の皆さんご苦労様です。

 

「あー、騒ぐな。静かにしろ」

 

 面倒くさそうに織斑先生が言う。仕事としてというより、こういう十代の反応が鬱陶しいのだろう。

 

「み、皆さんお静かに。まだ自己紹介が終わってませんから~!」

 

 山田先生が宥めている最中、もう一人の転校生は、ただ黙ってそこに立っているのに強い存在感を放っていた。それはその転校生が変わった見た目をしていたからだろう。

 白に近い輝くような銀髪を腰近くまで長く下ろしているロングストレートヘアー。綺麗だが整えている感じはなく、ただ伸ばしっ放しと言う印象を受ける。そして一番気になるのが左目を覆っている眼帯だ。それは医療用のものではなく、以前見た戦争映画に出てくる大佐がしていたもののような黒眼帯。そしてもう片方の右目は赤色だが、その温度は限りなくゼロに近いような冷めたものだった。

 その印象は『軍人』というのが相応しかった。その身長はシャルルよりも小さいのだが、その冷たいまでの鋭い気配が同じ背丈であるかのように思わせていた。

 

「……………………」

 

 当の本人は未だに口を開かず、腕組みをした状態で教室の女子達を下らないかのように見ている。だがすぐに視線を動かし、その視線を織斑先生に向けていた。まるで上官の命令を待っているかのようだった。

 

「……挨拶をしろ、ラウラ」

 

「はい、教官」

 

 いきなりその佇まいを直した転校生にクラスの全員がぽかんとした顔をする。それに対して『教官』と呼ばれた織斑先生はさっきまでとは違った面倒くさそうな顔をした。

 

「ここではそう呼ぶな。もう私は教官ではないし、ここではお前も一般生徒だ。私のことは織斑先生と呼べ」 

 

「了解しました」

 

 そう答えるラウラはピッと伸ばした手を体の真横に付け、足をかかとで合わせて背筋を伸ばしている。どう見ても軍人、あるいは軍事関係者なその動き。そして織斑先生を『教官』と呼ぶあたり、彼女はドイツの軍人なのだろう。

 以前織斑先生に少しだけ聞いた話だが、織斑先生さんは一年ほどドイツで軍隊教官として働いていた事があったらしい。それ以上のことは教えてくれなかった。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

「……………………」

 

 クラスメイト達が沈黙し、続く言葉を待つが、彼女はそれ以上口を開かない。

 

「あ、あの、以上……ですか?」

 

「以上だ」

 

 入学式での一夏と同じ、しかし、まったく違う雰囲気の返答に泣きそうな顔になる山田先生。正直見ててかわいそうになる。

 

「おい」

 

「ん?」

 

 そんな中、ボーデヴィッヒが席に着いてる一夏に話しかける。

 

「貴様が織斑一夏か?」

 

「そうだけど…」

 

「そうか」

 

 一夏の返答を聞いた途端目尻を吊りあげるボーデヴィッヒ。

 バシンッ!

 

「……………」

 

「う?」

 

 一夏へのいきなりのビンタに、誰もが唖然とする。

 

「私は認めない。貴様があの人の弟であるなど、認めるものか」

 

 話が見えない。弟という単語から織斑先生がらみのことだと考えられるが、情報が少なすぎて、呆気にとられる。

 

「いきなり何しやがる!」

 

「ふん……」

 

 一夏の叫びにも返事をせず、来たとき同様スタスタと一夏の前から立ち去るボーデヴィッヒ。空いてる席に座り、腕を組んで微動だにしなくなる。

 

「あー……ゴホンゴホン!ではHRを終わる。各人はすぐに着替えて第二グラウンドに集合。今日は二組と合同でIS模擬戦闘を行う。解散!」

 

 そう言って行動を促す織斑先生。

 

 

 俺の女装がみんなにばれた次の日は、さらに波乱の幕開けを予感させる転校生の登場だった。

 ちなみに、どさくさで忘れていたが、シャルルの席は俺の隣となった。




波乱の転校生登場!
ちなみに席順を調べたけどよくわかんなかったんでシャルルは航平くんの隣にしました。
転校してきたら開いてる席なんて一番後ろしかないでしょうし。
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