「実は俺、女装が特技なんだ」
「…………え?」
俺の言葉にシャルルの緊張に強張っていた顔がきょとんとした顔に変わる。
「……へ?」
少し考え込むように数秒の間を空け、シャルルが首を傾げる。
「俺、女装が――」
「いや、聞こえてなかったわけじゃないからね?」
もう一度言おうとした俺の言葉をシャルルが遮る。
「僕が訊きたいのは、なんで今それを?」
「あ、いや、なんていうか……バランス?」
「バランス?」
俺の言葉に更にシャルルが混乱しているようだ。
「うん。俺の恥ずかしい特技言っておけば、シャルルの秘密を聞いてもお互い痛み分けになるかなーと思って」
「ぼ、僕の秘密って?」
「うん。シャルル、お前ってさ――」
俺はシャルルの顔をじっと見つめる。シャルルはまだ混乱しているようだ。
「――女だろ?」
じっと見つめているシャルルの顔が困惑から驚愕に変わる。どうでもいいけど今のシャルル、この教室に来てから百面相だな。
「そ、それってどういう……」
「お前が転校してきた初日からさ」
シャルルの疑問に答えるために俺は口を開く。
「俺、お前の行動とかお前との会話の中になんか違和感を感じてたんだ。なんていうの?噛み合ってない感じっていうのかな。不自然な感じがしたんだ」
「うん」
「でも、なんかその違和感が見覚えがあるというか、身に覚えがあったんだ」
「…………」
「で、その違和感の正体知るためにこれまでシャルルのそばで観察してたんだけど」
「!」
俺の言葉にシャルルの顔が何かに納得した顔になる。
「で、まあ、違和感の正体に気付いたのはつい昨日なんだけどさ」
「そ、その違和感の正体って?」
シャルルが訊く。
「うん。俺、女装が特技だって言ったじゃん?その違和感がさ、俺が女装の練習し始めたころに感じた不自然さに似てたんだ。なんていうか、男の俺が女のようにふるまっても、どうしたって不自然になるんだ。その不自然さがシャルルにもあったんだ。まあものすごくちょっとのものなんだけど」
「そっか……」
「他にも、普段親しいのにたまに妙によそよそしくなるしさ。そのよそよそしくなるのも俺か一夏が『一緒に着替えようぜ』みたいに誘った時だし。それへの反応もなんか不自然だし」
「…うっ」
そのことはシャルル自身も不自然だと自覚していたらしい。
「だから、妙に俺たちと一緒に着替えたがらなかったり、俺が女装したときみたいな不自然さがあるから、もしかしてシャルルって女の子なのかな~って」
「………」
俺の言葉にシャルルはただただ驚いている。
「で?」
「え?」
「いや。シャルルは女?男?」
「ああ……」
俺の言葉に黙ってしまうシャルル。
「さっき言ったけど、俺の話が終わってもできることなら今まで通りでいてほしい。それは俺にも言えることだ。俺はシャルルにどんな秘密があってもお前とは友達でいつづける」
「航平……」
俺の言葉にシャルルが下を向いていた顔を上げる。
「……僕に秘密がある前提で話してるね」
「……あっ」
やべ。シャルルがちゃんと男で、全部俺の勘違いって可能性を考えてなかった。
「あー、その、ごめん。お前が男で、全部俺の勘違いなら好きなだけ殴ってくれていいから」
「いや、別に殴らないよ。それに……」
そこでシャルルは少しうつむき、でも、何か覚悟を決めたような表情で顔を上げる。
「航平の言う通りだよ」
「じゃあ……」
俺の言葉にシャルルが頷く。
「僕は……女の子だよ」
○
「おう、シャルル遅かったな。あれ?航平?」
シャルルの告白後、どうせなら同室の一夏にも話すべきだと提案した俺の言葉に同意したシャルルとともに一夏の部屋にやって来た。ちなみに俺はシャルルの男装の理由はまだ聞いてはいない。言いずらいことな聞かないつもりだったのだが、シャルルが話すというので聞かずに一夏の元にやって来たのだ。
「一夏。ちょっといいか?」
「ん?どうかしたのか?」
「ちょっと聞いてほしいことがあるんだ、僕のことで」
一夏は首を傾げたが、俺とシャルルの顔を見て大事な話なんだと理解したようだ。
「とりあえず中で話そう」
「そうだな。廊下で話すようなことでもないし」
一夏に招かれ、部屋の中に入る。
一夏とともに一夏のベッドに腰掛けた俺と、その向かいの自分のベッドに腰掛けたシャルル。
「…………」
「…………」
「…………」
三人の間には沈黙が流れる。
「………あの――」
「二人とも、ちょっと待っててくれるかな?」
沈黙に耐えかねたのか口を開こうとした一夏の言葉を遮ってシャルルが立ち上がる。
「お、おう」
「自分の好きなタイミングでいい。俺らはちゃんとお前の話を聞くから」
「うん」
俺たちの返事を聞いて、シャルルは安堵の表情とともにIS学園のジャージを持って洗面所に入って行く。
バタンッ。という扉の閉まる音とともに一夏が大きく息を吐く。
「……なあ、航平」
「ん?」
「シャルルの話ってなんなんだ?お前は知ってるのか?」
「………お前よりはな。でも俺も全部を知ってるわけじゃない。それに――」
一夏の言葉に頷くが俺は言葉を続ける。
「――話すのシャルルだ。俺がお前にいう訳にはいかない。だから、待っててやってくれ」
「……そうか」
一夏も頷いている。ちゃんとわかってくれたらしい。
それから待つこと数分。扉の開く音が聞こえた。シャルルが出てきたようだ。
「お待たせ」
言葉とともに向かいのベッドに腰を下ろすシャルル。そこにいたのは――
「これが本当の僕だよ」
――一人の少女だった。
はい、というわけでシャルルちゃんでした~。
一夏のラッキースケベつぶしてやったぜ~♪