IS~無い物だらけの物語~(休載中)   作:大同爽

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第40話 デュノアさんちの家庭事情

「さて、どこから話したらいいかな」

 

 シャルルが男装をやめ、俺たちの前に現れてから数分。一夏の入れたお茶を飲みつつ、少しリラックスしたところでシャルルが口を開いた。

 

「………僕が男装をしてIS学園にやって来たのは、航平と一夏の情報を手に入れるためだったんだ。実家の方からそうしろって言われて……」

 

「実家って…あのデュノア社の――」

 

「そう。僕の父がそこの社長。その人から直接の命令なんだよ」

 

 俺の言葉の最中にシャルルが頷きながら言う。

 

「命令って……親だろう?」

 

「なんでそんな――」

 

「僕はね、二人とも。愛人の子なんだよ」

 

 シャルルの言葉に俺も一夏も絶句する。いくら俺がアホでものを知らないとはいえ、『愛人の子』の意味くらいは分かる。

 

「引き取られたのが二年前。ちょうどお母さんが亡くなったときにね、父の部下がやってきたの。それで色々と検査をする過程でIS適正が高いことがわかって、非公式ではあったけれどデュノア社のテストパイロットをやることになってね」

 

 おそらくあまり言いたくないであろう話を健気に喋ってくれるシャルル。その様子に俺も一夏も黙って聞いていた。

 

「父にあったのは二回くらい。会話は数回くらいかな。普段は別邸で生活をしているんだけど、一度だけ本邸に呼ばれてね。あのときはひどかったなぁ。本妻の人に殴られたよ。『泥棒猫の娘が!』ってね。参るよね。母さんもちょっとくらい教えてくれたら、あんなに戸惑わなかったのにね」

 

 そう言って愛想笑いを浮かべるシャルルの声は全く笑っていなかった。流石にそれに愛想笑いを返せるほど俺はアホではない。むしろ、顔も見たことのないデュノアの社長とその本妻に対する怒りが沸き上がって来て、ぐっと拳を握りしめた。

 

「それから少し経って、デュノア社は経営危機に陥ったの」

 

「え?だってデュノア社って量産機ISのシェアが世界第三位だろ?」

 

 一夏の言葉と同じことを俺も思っていた。

 

「そうだけど、結局リヴァイヴは第二世代型なんだよ。ISの開発っていうのはものすごくお金がかかるんだ。ほとんどの企業は国からの支援があってやっと成り立っているところばかりだよ。それで、フランスは欧州連合の統合防衛計画『イグニッション・プラン』から除名されているからね。第三世代型の開発は急務なの。国防のためもあるけど、資本力で負ける国が最初のアドバンテージを取れないと悲惨なことになるんだよ」

 

 そう言えばセシリアが以前、第三世代型の開発に関して言っていた。

 

『現在、欧州連合では第三次イグニッション・プランの次期主力機の選定中なのですわ。今のところトライアルに参加しているのは我がイギリスのティアーズ型、ドイツのレーゲン型、それにイタリアのテンペスタⅡ型。今のところ実用化ではイギリスがリードしていますが、まだ難しい状況です。そのための実稼動データを取るために、わたくしがIS学園へと送られましたの』

 

 とのことだ。つまり、おそらくはボーデヴィッヒさんが転校してきたのも同じ理由だろう。

 

「話しを戻すね。それでデュノア社でも第三世代型を開発していたんだけど、元々遅れに遅れての第二世代型最後発だからね。圧倒的にデータも時間も不足していて、なかなか形にならなかったんだよ。それで、政府からの通達で予算を大幅にカットされたの。そして、次のトライアルで選ばれなかった場合は援助を全面カット、その上でIS開発許可も剥奪するって流れになったの」

 

「なんとなく話はわかったが、それがどうして男装に繋がるんだ?」

 

「簡単だよ。注目を浴びるための広告塔。それに――」

 

 そこでシャルルは俺たちから視線を外し、苛立ちを含んだ声で続けた。

 

「同じ男子なら、突然現れた二人の特異ケースと接触しやすい。可能であればその使用機体と本人のデータを取れるだろう……ってね」

 

「それって――」

 

「そう、白式のデータを盗んでこいって。もし無理なら航平のデータを盗めって言われてるんだよ。僕は、あの人にね」

 

 話を聞く限り、その父親は一方的にシャルルを利用しているだけだ。使い捨ての駒のように。そしてそのことはシャルル自身も分かっている。シャルルが妙に自分の父親のことを他人行儀に話す理由が分かった気がした。

 

「とまあ、そんなところかな。でも二人にばれちゃったし、きっと僕は本国に呼び戻されるだろうね。デュノア社は、まあ……つぶれるか他企業の傘下に入るか、どのみち今までのようにはいかないだろうけど、僕にはどうでもいいことかな」

 

「「…………………………」」

 

「ああ、なんだか話したら楽になったよ。聞いてくれてありがとう。それと、今までウソをついていてゴメン」

 

 深々と頭を下げるシャルルに俺は黙って見ているしかなかった。正直混乱しかけている。が、一夏が肩を掴んで顔を上げさせていた。

 

「いいのか、それで」

 

「え……?」

 

「それでいいのか?いいはずないだろ。親が何だっていうんだ。どうして親だからってだけで子供の自由を奪う権利がある。おかしいだろう、そんなものは!」

 

「い、一夏……?」

 

 戸惑いと怯えの表情をしてるシャルル。それでも一夏は続ける。

 

「親がいなけりゃ子供は生まれない。そりゃそうだろうよ。でも、だからって、親が子供に何をしてもいいなんて、そんな馬鹿なことがあるか! 生き方を選ぶ権利は誰にだってあるはずだ。それを、親なんかに邪魔されるいわれなんて無いはずだ!」

 

 なんだか、一夏の言葉に熱が入っている。まるで自分のことのように話している。

 

「ど、どうしたの?一夏、変だよ?」

 

「あ、ああ……悪い。つい熱くなってしまって」

 

「いいけど……本当にどうしたの?」

 

「俺は――俺と千冬姉は両親に捨てられたから」

 

「あ……」

 

 一夏の言葉に俺はさらに驚愕し、シャルルは何かを理解したらしい。

 

「その……ゴメン」

 

「気にしなくていい。俺の家族は千冬姉だけだから、別に親になんて今更会いたいとも思わない。それより、シャルルはこれからどうするんだよ?」

 

「どうって……時間の問題じゃないかな。フランス政府もことの真相を知ったら黙っていないだろうし、僕は代表候補生をおろされて、よくて牢屋とかじゃないかな」

 

「それでいいのか?」

 

「良いも悪いもないよ。そもそも僕には選ぶ権利がないから、仕方がないよ」

 

 俺と一夏の問いにシャルルが痛々しい微笑を見せながら答えた。その顔はまるで絶望すら通り越した表情だった。俺はその表情が見ていられなくてつい、口を開いてしまった。

 

「だったらここにいればいい」

 

「え?」

 

「ここにいればいいだよ!そんな嫌な親のところに帰る必要なんてない!シャルルがここにいたければここにいればいいんだよ!」

 

「でも、そんなことできるわけ――」

 

「特記事項第二一、本学園における生徒はその在学中においてありとあらゆる国家・組織・団体に帰属しない。本人の同意がない場合、それらの外的介入は原則として許可されないものとする」

 

 シャルルの言葉を遮るように一夏が口を開く。

 

「――つまり、この学園にいれば、すくなくとも三年間は大丈夫だろ? それだけ時間あれば、なんとかなる方法だって見つけられる。別に急ぐ必要だってないだろ」

 

 一夏の出した案は確かに使えるかもしれない。でも――

 

「ダメだ」

 

「え?」

 

 俺の言葉に一夏が俺の顔を見る。

 

「それじゃあダメだ。そのやり方じゃその場しのぎにしかならない」

 

「でも……じゃあどうするんだよっ?」

 

 俺の言葉に一夏が訊く。

 

「………一つだけ、俺に考えがある」




はいと言うわけでデュノア社の裏事情でしたー。

ここでこの場を借りて言わせていただきますが、ぶっちゃけシャルルの事情解決させずにいることが僕は納得できてませんでした。
たぶん同じように納得していなかった人ってたくさんいらっしゃると思います。
なので航平くんにはどうにか解決していただきたいと思います。
航平くんがどう解決するのか。
次回もお楽しみに~。
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