へたくそですがご了承ください。
「そ、それは本当ですの!?」
「う、ウソついてないでしょうね!?」
教室に向かう途中、廊下まで聞こえる大きな声が教室から聞こえてきた。
「なんだ?」
「さあ?」
「今の声って、セシリアと鈴か?」
一夏の問いにシャルル(男装バージョン)も首を傾げ、俺も声の主しかわからなかった。
「本当だってば! この噂、学園中で持ちきりなのよ? 月末の学年別トーナメントで優勝したら織斑君と交際でき――」
「俺がどうしたって?」
「「「きゃああっ!?」」」
一夏の問いにクラスの女子達が取り乱した悲鳴を上げる。え?なんで?俺ら教室に入っただけだぜ?
「で、何の話だったんだ?俺の名前が出ていたみたいだけど」
「う、うん?そうだっけ?」
「さ、さあ、どうだったかしら?」
あははうふふと話を逸らそうとする鈴とセシリア。ぶっちゃけ超怪しい。
「じゃ、じゃああたし自分のクラスに戻るから!」
「そ、そうですわね!わたくしも自分の席につきませんと」
問いただす間もなく移動し始める二人。
「なんなんだろうな?」
「「さあ~」」
まったく意味が分からない俺たち三人であった。
○
「一夏、航平、今日も放課後特訓するよね?」
「ああ、もちろんだ。今日使えるのは、ええと――」
「確か「第三アリーナだ」」
「「「わあっ!?」」」
廊下で一夏とシャルルの三人で歩いていた俺たちは、そこにいきなり入ってきた予想外の人物に三人そろって驚く。
その驚きぶりが気になったのか、いつの間にか横に並んでいた四人目、箒は眉をひそめている。
「……そんなに驚くほどのことか。失礼だぞ」
「お、おう。すまん」
「す、すまん…」
「ごめんなさい。いきなりのことでびっくりしちゃって」
「あ、いや、別に責めているわけではないが……」
折り目正しく頭を下げて謝るシャルルに、さっきまで眉をひそめていた箒が申し訳無さそうな顔になる。
「と、ともかく、だ。第三アリーナへと向かうぞ。今日は使用人数が少ないと聞いている。空間が空いていれば模擬戦も出来るだろう」
それは助かるなー、と思いながら俺たちはアリーナに向かう。と、そこに向かうにつれてあわただしい様子が伝わってくる。廊下を走っている生徒の姿も見かける。どうやら騒ぎの元は第三アリーナのようだ。
「なんだろう?」
「何かあったのかな?こっちで先に様子を見ていく?」
シャルルはそう言って観客席へのゲートを指す。俺たちは頷いてそこへと向かった。
「誰かが模擬戦をしてるみたいだね。でもそれにしては様子が――」
ドゴォンッ!
「「「「!?」」」」
突然の轟音に驚いて視線を向けると、その煙を切り裂くように影が飛び出してきた。
「鈴!セシリア!」
特殊なエネルギーシールドで隔離されたステージから観客席側に爆発が及ぶ事は無いが、それと同時に俺たちの声は向こう側には届かない。
鈴とセシリアは苦い表情のまま爆発の中心部へと視線を向けている。そこにいたのは漆黒のIS『シュヴァルツェア・レーゲン』を駆るボーデヴィッヒさんの姿だ。
よく見ると鈴とセシリアのISはかなりのダメージを受けている。機体の所々が損傷し、ISアーマーの一部もなくなっている。ボーデヴィッヒさんも無傷とまではいかないまでも二人に比べるとその損傷は軽いものだった。
「何してるんだ?――お、おい!」
こちらの声が聞こえないので仕方がないが、鈴とセシリアは軽く目配せの後にボーデヴィッヒさんへと向かって行く。二対一の模擬戦のようだが、追い込まれているのは有利なはずの鈴とセシリアだった。
「くらえっ!!」
ジャカッ!と鈴のIS『甲龍』の両肩が開く。そこに搭載された第三世代型空間圧作用兵器・衝撃砲《龍咆》の最大出力攻撃。だが、訓練機のアーマーを沈めてしまうであろうその攻撃を、ボーデヴィッヒさんは回避しようというそぶりを見せない。
「無駄だ。このシュヴァルツェア・レーゲンの停止結界の前ではな」
衝撃砲の不可視の弾丸がボーデヴィッヒさんを狙う――が、その攻撃は届くことが無かった。
「くっ!まさかこうまで相性が悪いだなんて……!」
右手を突き出しただけで衝撃砲を完全に無力化し、そのまま攻撃に移る。
肩に搭載された刃が左右一対で射出され、鈴のISへと飛翔する。それは本体とワイヤーで接続されているため、複雑な軌道を描いて迎撃射撃を難なくぐり抜け、鈴の右足を捕らえる。ブレードとワイヤーの両方の特性を持つ武器のようだ。
「そうそう何度もさせるものですかっ!」
鈴を援護する為に射撃を行うセシリア。同時にビットを射出し、ボーデヴィッヒさんへと向かわせる。
「ふん……。理論値最大稼動のブルー・ティアーズならいざ知らず、この程度の仕上がりで第三世代型兵器とは笑わせる」
セシリアの精密な狙撃とビットによる視界外攻撃をかわすボーデヴィッヒさん。先程と同様に腕を突き出す。今度は左右同時に出し、交差させた腕の先では目に見えない何かに捕まえられたかのようにビットが動きを停止していた。
「動きが止まりましたわね!」
「貴様もな」
セシリアは狙い澄ました狙撃を、しかし、ボーデヴィッヒさんの大型カノンによる砲撃で相殺される。すぐに連続射撃をしようとするセシリアだったが、ボーデヴィッヒさんは先程捕まえた鈴をぶつけて阻害した。単純だが実に効果的な攻撃だった。
「きゃああっ!」
空中でぶつかり、一瞬姿勢を崩した二人へボーデヴィッヒさんが突撃を仕掛ける。その速度は弾丸並みで間合いを素早く詰めた。
「アレは!」
「『瞬時加速』――!」
一夏や俺が使う格闘特化の技能の一つ。
しかし、格闘戦をやるなら鈴に分がある。《双天牙月》による回転連撃を行うと思っていた俺だが、鈴は連結を解いてしまった。
理由はすぐに分かった。ボーデヴィッヒさんの両手首に装着した袖みたいなパーツから、超高熱のプラズマ刃が展開して左右同時に鈴へと襲い掛かっていたからだ。
「このっ……!」
前進し続けるボーデヴィッヒさんに後退しながら距離を置きながら鈴は刃を凌ぐ。アリーナの形状に合わせた機動で追い詰められないようにしている鈴だったが、再びボーデヴィッヒさんのワイヤーブレードが襲い掛かってきた。しかも今度は両肩だけでなく腰部左右に取り付けられているワイヤーブレード計六つが鈴に向かって三次元的な動きで襲い、同時にプラズマ手刀の猛攻も襲う。いくら格闘戦に慣れている鈴でもそれらすべてを捌くことは難しい。
「くっ!」
またも、鈴はまた衝撃砲を展開して、その砲弾エネルギーを集中させる。
「甘いな。この状況でウェイトのある空間圧兵器を使うとは」
その言葉通り、衝撃砲は弾丸を射出する寸前にボーデヴィッヒさんの実弾砲撃によって爆散した。
「もらった」
「!」
肩のアーマーを吹き飛ばされて大きく体勢を崩した鈴に、ボーデヴィッヒさんがプラズマ手刀を懐へ突き刺す。
「させませんわ!」
間一髪のところで二人の間に割りに行ったセシリアは、《スターライトmkⅢ》を楯に使って一撃を逸らす。同時に以前、俺と一夏に使った弾頭型ビットをボーデヴィッヒさんに向けて放出する。
ドガァァァァンッ!
半ば自殺行為のミサイル攻撃。その爆発はセシリアと鈴を巻き込み、二人を床にたたきつける。
「無茶するわね、アンタ……」
「苦情は後で。けれど、これなら確実にダメージが――」
セシリアの言葉が途中で止まる。
煙が晴れ、二人の視線の先にたたずんでいたのはボーデヴィッヒさんだった。至近距離の大爆発すらも大したダメージにはならなかったようだ。
「終わりか? ならば――私の番だ」
ボーデヴィッヒが言うと同時に瞬時加速で地上に移動。セシリアに近距離からの砲撃を当てる。
さらにワイヤーブレードが飛ばされた二人の体を捕まえてボーデヴィッヒさんの元にと手繰り寄せ、そこから先は一方的な暴力が始まった。
「ああああっ!」
二人の体にボーデヴィッヒさんの拳が叩き込まれる。
「くそっ!あいつを止めないと!」
俺はアリーナのバリーの元まで行くがそれ以上先に進めない。何か、何か手は――
「そうだ!一夏!『零落白夜』!!」
「おう!!」
俺の言葉にすぐさま一夏が白式を展開、同時に≪雪片弐型≫を構築し、『零落白夜』を発動させる。
「おおおおおっ!」
掛け声とともに本体の倍になった実体剣から放出するエネルギー剣を一夏がアリーナを取り囲むバリアーへと叩き込む。
それと同時に俺も打鉄を展開。一夏の空けたバリアーの間を二人で突破する。
そして射程内に入ると同時に一夏が瞬間加速。ボーデヴィッヒさんに刀を振り下ろす。
「その手を離せ!!!」
「ふん……。感情的で直情的。絵に描いたような愚図だな」
一夏の刃が届くその寸前。一夏の体がびたっと止まる。
「俺もいるぜ!」
一夏の陰から飛び出すように俺も瞬間加速。大きく剣を振りかぶる。
「くっ!」
俺の登場にボーデヴィッヒさんが悔しげな声とともに俺たちから距離を置く。
「一夏!二人を頼む!」
「お、おう!」
一夏は返事とともにボーデヴィッヒさんが離した鈴とセシリアを抱えて移動する。
「くっ!貴様!」
「悪いがお前の相手は俺がしてやるよ」
『大丈夫か航平!』
ボーデヴィッヒさんと向かい合っている俺の耳にプライベートチャネルで一夏の声が聞こえる。
『大丈夫だ!お前が二人を安全な場所に運ぶくらいの時間は稼いでやる!』
一夏にそう返しつつ俺は手の中の近接ブレードを握り直す。
「だあっ!!」
「ふんっ!」
俺の掛け声ととみに放った一閃をボーデヴィッヒさんはプラズマ手刀で受け止められる。
「ほう。貴様のその太刀筋――」
「言っただろ。俺の師匠はブリュンヒルデだ」
言葉とともにボーデヴィッヒさんと距離を開ける。
「ただの有象無象だと思ったが。少しお前にも興味がわいたぞ梨野航平」
「そりゃどうも」
「……では、今度は私の番だ」
その言葉とともに肩の大型カノンが回転し俺の方を向く。
ズドンッ!
すんでのところで回避し、弾丸の土煙に紛れてブレードを上段に構えて斬りかかる。が、俺の一撃が当たる寸前に先ほどの一夏のように動きを止められる。まるで見えない腕に掴まれているように体が思うように動かない。
「終わりだ」
停止した俺に肩の大型カノンが俺の方を向く。――ああ、やばい!
『航平っ、離れて!』
シャルルからのプライベートチャネルとともにアサルトライフルでの弾雨が降り注ぐ。
「ちっ……。雑魚が……」
俺を拘束していた謎の力が消え、体に自由が戻る。俺はすぐさまボーデヴィッヒさんとの距離を置く。
「大丈夫だった、航平?」
「おう。助かった」
シャルルに礼を言いつつ視線をボーデヴィッヒさんに向ける。
「一夏、二人は?」
「大丈夫だ。二人とも意識はある」
「よかった」
一夏の言葉に俺もシャルルも安堵しつつ、シャルルはボーデヴィッヒさんへの銃弾を放ち続ける。
「面白い。世代差というものを見せてつけてやろう」
シャルルの弾丸を避け、防ぎ、例の謎の力で止めていたボーデヴィッヒさんだったが、反撃に転じるように体を低くかがめる。
「行くぞ……!」
「くっ!」
ボーデヴィッヒさんがまさに飛び出そうとする瞬間、俺たちの間に影が入ってきた。
ガギンッ!
金属同士が激しくぶつかり合う音が響き、ボーデヴィッヒさんは割り込んできた相手を見るとすぐに加速を中断する。
「……やれやれ、これだからガキの相手は疲れる」
「千冬姉!?」「織斑先生!?」
その人物の登場に俺と一夏は同時に、それぞれその人物の名を呼ぶ。その影の正体は普段と同じスーツ姿の織斑先生だった。ISどころかISすら展開していない。しかしその手にあるのはIS用近接ブレードだった。一七〇センチはある長大なそれをISの補佐なしで軽々と扱っている。つくづく俺の家族兼師匠は人間離れしている。
「模擬戦をやるのは構わん。――が、アリーナをのバリアーまで破壊する事態になられては教師として黙認しかねる。この戦いの決着は学年別トーナメントでつけてもらおうか」
「教官がそう仰るなら」
素直に頷き、ボーデヴィッヒさんはISの装着状態を解除し、アーマーが光の粒子となって弾けて消える。
「お前たちもそれでいいな?」
「はい」
「あ、ああ……」
呆けていた一夏が素で返事をする。
「教師には『はい』と答えろ。馬鹿者」
「は、はい!」
「僕もそれで構いません」
俺たち三人が頷いたのを見て、織斑先生は改めてアリーナ内すべての生徒に向けて言った。
「では、学年別トーナメントまで私闘の一切を禁止する。解散!」
パンッ!と織斑先生が強く手を叩いたその音は、まるで銃声のようにアリーナに響き渡った。
というわけでバトルシーンでした。
バトル描写へたくそなんでお見苦しかったかもしれません。
もうすぐトーナメントとか出てくるんで、僕は今ちょっとげんなりしてます。