六月も最終週。IS学園は月曜日から学年別トーナメント一色となっている。その慌ただしさは驚くべきほどで、今もだ一回戦が始まる直前まで全生徒が雑務や会場の整理、来賓の誘導を行っている。
それらが終わった生徒達はすぐに各アリーナの更衣室へと走る。男子組の俺たち三人は例によってだだっ広い更衣室を貸し切り状態。おそらく反対側の更衣室には全女子生徒を収容し、大変な事となっているだろう。
「しかし、すごいなこりゃ……」
更衣室のモニターからアリーナの様子を見ていた一夏が呟く。俺もそちらに目を向けると、一夏の呟きの意味が分かる。そこには各国政府関係者、研究所員、企業エージェント、その他諸々の顔ぶれが並んでいる。
「三年にはスカウト、二年には一年間の成果の確認にそれぞれ人が来ているからね。一年には今のところ関係ないみたいだけど、それでもトーナメント上位入賞者にはさっそくチェックが入ると思うよ」
「ふーん、ご苦労なことだ」
一夏の言葉に同意する意味で俺は首を振る。そもそも俺はそんなこと気にしている場合ではない。
「ふたりはボーデヴィッヒさんとの対決だけが気になるみたいだね」
「まあ、な」
「お、おう。そうだな……」
シャルルの言葉に俺はあいまいに頷く。
実は俺のパートナーがボーデヴィッヒさんだということをふたりには言っていないのだ。俺のパートナーの話題になった時には無理矢理話題を逸らしたり、場合によっては逃げた。
「てか、いい加減教えろよ航平」
「え、えーっと、何を?」
「何をって…。航平のパートナーに決まってるじゃないか」
「あ、あー、うん。パートナーね?うん。パートナー……」
やばい、どうする?どうしよう?どうすればいい?今更、ボーデヴィッヒさんと組みました、なんて言えねえよ。よし、ここは――
「じ、実はまだ決まってなくてさー。もうここは天に運を任せて抽選に任せようかなーってね」
「………嘘だね」
俺の言葉にジト目で言うシャルル。なぬ?
「な、なんで?」
「だって航平、他の子から誘われたときに『もうパートナー決まって、申請しちゃったんだ』って言ってたじゃない」
「うっ」
くっ!聞かれていたか。
「あーっと、それはー、そのー……」
まずいな。これ以上はごまかせそうにない。どうする!?
「って、あ!対戦相手が決まったみたいぞ!」
俺の言葉にふたりもモニターを見る。
「「――え?」」
二人の顔が驚愕の表情になる。その理由を理解したとき、俺はダッシュで逃げた。
一回戦で俺&ボーデヴィッヒペアと戦う相手は、一夏とシャルルだった。
○
「で?作戦とかあるのか?」
「ない。強いて言うなら私の邪魔をするな」
「あ、はい」
「それと、織斑一夏は私の獲物だ。なんなら二人とも私一人で十分だ。お前は端で見ていればいい」
「いや、流石にそれは…。加勢できそうならしてもいいでしょうか?」
「ふんっ。好きにしろ」
「おう」
俺たちはアリーナへ向かいながら作戦会議…とも言えないような会話をする。ほんとこの人俺のこと頭数に入れてないな。他の子よりもいい、くらいにしか思ってないんだろうな。
「では、行きますか」
「………」
アリーナのゲートを通る瞬間俺の言った言葉は無視された。まあだと思いましたよ。
中途半端になるんで今回はここまでです。
次回からバトル突入です。
バトル苦手な僕としては難産が予想されます。
できる限り頑張ります!