IS~無い物だらけの物語~(休載中)   作:大同爽

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ヒッヒッフー、ヒッヒッフー
難産の末のお話です


第47話 vs一夏&シャルル

「……………」

 

「……………」

 

 アリーナに入場と同時に俺には二人分の視線が突き刺さる。言う間でもなく一夏とシャルルだ。特にシャルルの視線が怖い。ものすごい冷たい視線だ。背筋に寒気が走るような視線だ。

 

「ふ~~ん」

 

「あのー、シャルル?」

 

「タッグが誰か言わないから、誰と組んだのかと思ったら…。君は僕たちと敵対することがお望みだったんだね?」

 

「いや、あのなシャルル――」

 

「何かな梨野君?」

 

 あれ?いつもは航平って呼ぶのに、なぜか名字で呼ばれた。なんで?

 

「えっと、シャルル、一夏。あのな――」

 

「まさか一戦目で貴様と当たるとはな、織斑一夏。待つ手間が省けたというものだ」

 

 俺がわけを話そうとするが、ボーデヴィッヒさんに遮られる。

 

「そりゃあなによりだ。こっちも同じ気持ちだぜ」

 

 あ、一夏が返事しちゃったから、なんか俺が口をはさめる雰囲気じゃなくなった。

 そしてそのまま試合開始のカウントダウンが始まる。5、4、3、2、1――スタートの合図が鳴った。

 

「「叩きのめす」」

 

 一夏とボーデヴィッヒさんが示し合わせたかのように第一声を発し、一夏が瞬間加速を行う。

 

「おおおっ!」

 

「ふん……」

 

 だがそんな一夏にボーデヴィッヒが右手を突き出す。先日の戦いでも見せた謎のシールド――AICだ。正式名称はアクティブ・イナーシャル・キャンセラー。シュヴァルツェア・レーゲンの第三世代型兵器だそうだ。先日の戦いの後、セシリアから教えてもらった。

 

「くっ」

 

 攻撃を止められたことで一夏が悔しげな声を漏らす。AICが出ることはわかっていただろうに、なぜ突っ込んできたのだろうか。

 

「開幕直後の先制攻撃か。わかりやすいな」

 

「……そりゃどうも。以心伝心で何よりだ」

 

「ならば私が次にどうするかもわかるだろう」

 

 言葉とともにボーデヴィッヒさんの肩についている巨大リボルバーが回転、一夏へと向く。

 

「させないよ」

 

 しかし、その攻撃を阻むようにシャルルが一夏の頭を飛び越えて現れる。同時にシャルルが両手に持っている六一口径アサルトカノン《ガルム》による爆破弾の射撃をボーデヴィッヒさんに浴びせる。

 

「ちっ……!」

 

 カノンの攻撃ををシャルルの射撃によってずらされ、一夏へ向けて放った砲弾は明後日の方へと行ってしまった。さらに畳みかけるシャルルの攻撃に、ボーデヴィッヒさんは急後退をして間合いを取る。

 

「逃がさない!」

 

 シャルルは即座に銃身を正面に突き出した突撃体勢へと移り、左手にアサルトライフルを一秒もかからずに呼び出した。

 これがシャルルの得意とする技能『高速切替』だ。事前呼び出しを必要とせず、戦闘と平行して行えるリアルタイムの武装呼び出し。シャルルの器用さと瞬時の判断力があってこその技能である。でも――

 

「俺のことを忘れてもらっちゃ困る!」

 

 ボーデヴィッヒさんの追撃を遮るべく、俺は実体シールドを展開し、銃弾を弾きながらシャルルへと接近、右手に展開した近接ブレードで斬りかかる。

 

「それじゃあ俺も忘れられないようにしないとな!」

 

 ボーデヴィッヒさんのAICから解放された一夏がすぐさまシャルルに向けて瞬間加速。ぶつかる瞬間にくるりとシャルルが宙返りし、お互いの位置を入れ替えた。俺は参加していないが、ふたりで行っていた特訓の賜なのだろう。

 ガギンッ!

 俺と一夏の近接ブレードがぶつかり合い、火花を散らす。

 お互いに刀を打ち合い、スラスター推力を上げていくが、訓練機の俺では専用機一夏には性能面で一歩遅れている。徐々に後方へと押されていく。

 

「くっ!」

 

 押され続けたことで焦れた俺は大きく刀を振りかぶるが、それが判断ミスだった。

 

「シャルル!」

 

「うん!」

 

 ギィィンッ!左手を添え、真横にした≪雪片弐型≫で一夏が俺の一撃を受け止める。と、同時に一夏の背後にずっと控えていたシャルルが一夏の両脇から両手を伸ばす。その両手には六二口径連装ショットガン≪レイン・オブ・サタディ≫が握られている。

 

(あ、まずった)

 

 という俺の思考は、急に感じた遠心力に掻き消される。

 シャルルのショットガンが連射される前にボーデヴィッヒさんのワイヤーブレードのひとつが俺の脚をとらえ、アリーナの脇まで俺を投げ飛ばしたのだ。ただ、この行為に俺を心配しての要素はおそらくないのだろう。なぜなら彼女は俺を投げる瞬間

 

「邪魔だ」

 

 の一言とともに一夏たちに急接近していった。ただ単に俺の存在がこの場で邪魔だったのだろう。

 

「へぶっ!」

 

 ボーデヴィッヒさんに投げ飛ばされたせいで、俺はアリーナの壁近くまで転がって行き、顔面で着地した。

 すぐさま立ち上がり、ボーデヴィッヒさんの援護に向かおうとした俺にボーデヴィッヒさんの声が飛んでくる。

 

「貴様はそこで見ていろ。こいつらは私一人で十分だ」

 

「でも――」

 

「二度も言わせるな。私の邪魔をするんじゃない」

 

 ボーデヴィッヒさんの冷たい言葉に俺もいい加減頭に来た。

 

「ああそうかよ!じゃあ勝手にしな!俺はここで見学させてもらうからな!あんた一人で二人とどこまで戦えるのか見させてもらうよ!」

 

 そう言って俺はその場に胡坐をかいて座る。近接ブレードの展開も解除だ。

 

「ふんっ。それでいい」

 

 ボーデヴィッヒさんは満足げに言うと、一夏と向かい合う。

 

「えらく舐められたものだな」

 

「事実だ」

 

 言葉と同時にふたりが動く。

 一夏は≪雪片弐型≫を右手に乗せ、左手はボーデヴィッヒさんのプラズマ手刀を扱ってる手自体を払っている。そして両足は姿勢維持に加えて、ワイヤーブレードを蹴るのにフル稼働状態。なかなかに大変そうだ。

 

「うおおおおおっ!」

 

 ギンッ!ガィンッ!ガッ!ガギンッ!

 零距離での高速格闘。一夏の刀が、ボーデヴィッヒさんのプラズマ手刀が、一夏の脚が、ボーデヴィッヒさんのワイヤーブレードが舞い、弾きあい、火花を散らす。はたから見ていると、なかなかにすごい状態だ。

 

「はあああああ!」

 

 その状況に割って入ったのはシャルルだった。一度は俺の方まで来ようとしたシャルルだったが、俺が戦う気が失せているのと、一夏の状態を考え、一夏の加勢に入ったらしい。

 

「っ!」

 

 シャルルの放つアサルトライフルによる攻撃を避け、ボーデヴィッヒさんが一夏から距離を置く。

 一夏の横にやって来たシャルルはさらにショットガンとマシンガンを呼び出す。

 

「ここからが本番だよ」

 

「ああ。見せてやるとしようぜ、俺たちのコンビネーションをな」 

 

 

 

 ○

 

 

 

「あーあー、梨野君完全にやる気なくしてますね」

 

「あいつは変なところで頑固だからな。ボーデヴィッヒの態度が頭に来たんだろう」

 

 教師のみしか入れない観察室で、モニターに映し出されている戦闘映像を眺めながら真耶と千冬はため息をつく。

 

「それに比べてすごいですねぇ。二週間ちょっとの訓練であそこまでの連携が取れるなんて。やっぱり織斑君は才能ありますね」

 

「ふん。あれはデュノアが合わせているから成り立つんだ。あいつ自体は大して連携の役には立っていない」

 

 映像の中の一夏に視線を向けつつ、千冬は辛口の評価を下す。真耶は苦笑い気味に言う。

 

「そうだとしても、他人がそこまで合わせてくれる織斑君自身がすごいじゃないですか。魅力のない人間には、誰も力を貸してくれないものですよ」

 

「まあ……そうかもしれないな」

 

 ぶすっとした態度で告げる千冬の言葉が、真耶も最近では照れ隠しであることを理解している。

 

「それにしても学年別トーナメントのいきなりの形式変更は、やっぱり先月の事件のせいですか?」

 

「詳しくは聞いていないが、おそらくそうだろう。より実戦的な戦闘経験を積ませる目的で、ツーマンセルになったのだろうな」

 

「でも一年生はまだ三ヶ月目ですよ?戦争が起こるわけでもないのに、今の状況で実戦的な戦闘訓練は必要ない気がしますが……」

 

 真耶の言うことはもっともだ。だが、その疑問を投げかけることは千冬も予測していたようだ。

 

「そこで先月の事件が出てくるのさ。特に今年の新入生には第三世代型兵器のテストモデルが多い。そこへ謎の敵対者が現れたら、何を心配すべきだ?」

 

「――あ!つまり、自衛のため、ですね?」

 

「そうだ。操縦はもちろん、第三世代兵器を積んだISも守らなくてはいけないしかし教師の数が有限である以上、それらは原則自分で守るしかない。そのための実践的な戦闘経験なのさ」

 

「ははぁ、なるほどなるほど」

 

 真耶は疑問が解けたようで頷いている。

 そこから二人はモニターに視線を戻す。そこには一対二でありながら互角に渡り合うラウラの姿があった。

 

「強いですねぇ、ボーデヴィッヒさん」

 

「ふん………」

 

 ラウラの実力にしみじみと言う真耶に対して、千冬はつまらなそうに声を漏らす。

 

「変わらないな。強さを攻撃力と同一だと思っている。だがそれでは――」

 

 一夏にも、航平にも勝てない。

 しかし、そこから先は決して口には出さない。言ってしまったら真耶にどんな顔をされるかわからないからだ。

 ワアアアっ!

 会場が一気に沸いた。その歓声が観察室にまで響いてくる。

 

「あ!織斑君、零落白夜を出しましたね!一気に勝負をかけるつもりでしょうか」

 

「さて、そんなにうまくいくかな」

 

「またまた、そんな気にしてないような態度をしなくても――」

 

「山田先生。今度久しぶりに武術組み手をしようか。せっかくだ、家族の語らいとして航平も入れて、二対一の組手をしましょう」

 

「えっとー、その一の方はもしかして……」

 

「もちろん山田先生です」

 

「いっ、いえいえっ!遠慮しておきます!最近は航平君、織斑先生に稽古してもらっているそうですし、私なんかが相手になりませんから!それに、ええとっ、生徒たちの訓練機を見ないといけませんからっ!」

 

 慌てて首を振ってついでに手も振る大忙しの真耶に、千冬は低い声で畳みかける。

 

「私は身内のネタでいじられるのが嫌いだ。そろそろ覚えるように」

 

「は、はい……。すみません……」

 

 見ていてかわいそうになるほどしぼんでしまう真耶。それがあまりにもだったのか、千冬がぽんと軽く頭を撫でる。

 

「さて、試合の続きだ。どう転がるか見物だぞ」

 

「は、はいっ」

 

 

 

 ○

 

 

 

「これで決めるっ!」

 

 零落白夜を発動させた一夏がボーデヴィッヒさんへと直進。

 

「触れれば一撃でシールドエネルギーを消し去ると聞いているが……それなら当たらなければいい」

 

 突撃する一夏にボーデヴィッヒさんのAICによる拘束攻撃が連続で襲いかかる。右手、左手、そして視線。それらの不可視攻撃に一夏は急停止・転身・急加速で何とかかわしていた。

 

「ちょろちょろと目障りな……!」

 

 ボーデヴィッヒさんは立て続けの攻撃にワイヤーブレードも加え、その姿勢は熾烈を極めた。だが、ボーデヴィッヒさんは忘れているようだ。この戦いが一対一ではないことを…。

 

「一夏! 前方二時の方向に突破!」

 

「わかった!」

 

 射撃攻撃でボーデヴィッヒさんを牽制しつつ、抜かりなく一夏への防御も行う。つくづく思うがシャルルは何でもこなす器用な奴だ。

 

「ちっ……小癪な!」

 

 ワイヤーブレードを潜り抜け、一夏はボーデヴィッヒを射程圏内へと収める。

 

「無駄だ。貴様の攻撃は読めている」

 

「普通に斬りかかれば、な。――それなら!」

 

 一夏は足元へと向けていた切っ先を起こし、体の前へと持って来る。

 

「!?」

 

 おそらく、斬撃が読まれるなら、と突撃で攻めることにしたのだろう。斬撃よりは腕の軌道が読まれにくく捕まえるのが難しくなるだろう。でも――

 

「無駄なことを!」

 

 そんな一夏の攻撃をボーデヴィッヒさんはAICを使い、一夏はピシッ!と全身の動きが止まった。

 

「腕にこだわる必要はない。ようはお前の動きを止められれば――」

 

「……ああ、なんだ?忘れているのか?それとも知らないのか?俺たちは――ふたり組なんだぜ?」

 

「!?」

 

 ボーデヴィッヒさんは慌てて視線を動かすが、もう遅かった。既に懐に入ったシャルルは零距離で素早くショットガンの六連射を叩き込んだ。次の瞬間には、ボーデヴィッヒさんの大口径レールカノンは轟音と共に爆散した。

 

「くっ……!」

 

 悔しげな表情のボーデヴィッヒさんを見ながら、俺は確信する。

 ボーデヴィッヒさんのAICには致命的な弱点がある。それは『停止させる対象物に意識を集中させていないと効果を維持出来ない』ということだ。現にシャルルの攻撃によって一夏の拘束は解除されている。

 

「手助けは?」

 

「いらん!!」

 

 俺の言葉に俺を睨みながら返事をするボーデヴィッヒさん。お~怖い怖い。

 

「一夏!」

 

「おう!」

 

 シャルルの掛け声に一夏は再度、《雪片弐型》を構え直すが、

 キュゥゥゥン………。

 

「なっ!?ここにきてエネルギー切れかよ!」

 

 途中のダメージが大きかったのか、零落白夜のエネルギー刃は音とともに消えてしまう。

 

「残念だったな」

 

 言葉とともに両手にプラズマ手刀を展開したボーデヴィッヒさんが一夏の懐に飛び込む。

 

 

「限界までシールドエネルギーを消耗してはもう戦えまい!後一撃でも入れば私の勝ちだ!」

 

 ボーデヴィッヒさんの言う通り、おそらく一夏のシールドエネルギーは後一撃でも食らえば0になるだろう。そのため、一夏はボーデヴィッヒさんの攻撃を避け、弾き続ける。

 

「やらせないよ!」

 

「邪魔だ!」

 

 援護に入ろうとするシャルルの攻撃もボーデヴィッヒさんはワイヤーブレードを使って牽制。

 

「うあっ!」

 

「シャルル! くっ――」

 

「次は貴様だ! 堕ちろっ!」

 

 一夏が被弾したシャルルに気を取られた一瞬の隙をボーデヴィッヒさんは逃さず、一夏の体を正確に捉えた。

 

「ぐあっ……!」

 

 ダメージを受けた一夏は力が抜けたように床へと落ちる。

 

「は……ははっ! 私の勝ちだ!」

 

 高らかな勝利宣言とともにとどめを刺そうとするボーデヴィッヒさん。しかし、またもや彼女は大事なことを忘れていた。

 

「まだ終わっていないよ」

 

 それは、一瞬で超高速状態へと移ったシャルルであった。

 

「なっ……!『瞬時加速』だと!?」

 

 シャルルの瞬間加速は予想外だったようだ。初めてボーデヴィッヒさんが狼狽する。

 

 

「今初めて使ったからね」

 

「な、なに……? まさか、この戦いで覚えたというのか!?」

 

 これはまた驚いた。シャルルが器用なのはわかっていたが、これはもう特徴というより、技能のひとつだろう。

 

「ふっ……。だが私の停止結界の前では無力!」

 

 そう言ってシャルルにAICを使おうとボーデヴィッヒさんは発動体勢へ。その直後、動きが止まったのは――ボーデヴィッヒさんだった。

 ドンッ!

 

「!?」

 

 いきなりあらぬ方向から射撃を受けたボーデヴィッヒは、すぐに視線を巡らせる。その先にいたのはシャルルが途中で捨てた残弾ありのアサルトライフルを構えた一夏だった。

 これはおそらく特訓の時にやっていた使用許可の下りている銃なのだろう。

 

「これならAICは使えない!」

 

「こ、のっ……死に損ないがぁっ!」

 

 そう吼えるボーデヴィッヒさん。しかしその瞳からはまだ冷静さは消えていなかった。命中精度のあまりよろしくない一夏の射撃は無視し、シャルルに集中する。AICの矛先を前方に向ける。

 

「でも、間合いに入ることは出来た」

 

「それがどうした! 第二世代型の攻撃力では、このシュヴァルツェア・レーゲンを堕とすことなど――」

 

 そこまで言って、ボーデヴィッヒさんは何かに気付いたようにハッとする。

 そう。単純な攻撃力だけなら第二世代型最強と言われる武器がる。そして俺は知っている。その武器がずっとシャルルが装備している楯の中に隠されていることを。

 

「この距離なら、外さない」

 

 盾の装甲がはじけ飛び、中からリボルバーと杭が融合した装備が露出する。六九口径パイルバンカー《灰色の鱗殼》。通称は――

 

「『盾殺し』……!」

 

 流石のボーデヴィッヒも焦っているようだ。

 

「「おおおおっ!」」

 

 ボーデヴィッヒさんとシャルルの声が重なる。シャルルは左手拳をきつく握り締め、叩き込むように突き出す。先程一夏がやったのと同じ、点の突撃だ。

 さらに、その攻撃に瞬間加速を加え、接近していく。

 

「!!!」

 

 ズガンッ!

 

「ぐううっ……!」

 

 ボーデヴィッヒさんの腹部に、パイルバンカーの一撃が叩き込まれた。その直後に、ボーデヴィッヒさんは吹っ飛んでアリーナの壁に激突する。

 その時点で俺は立ち上がる、が、誰もこちらを気にしていない。アリーナの全員の目は追撃を仕掛けようとするシャルルへと向いている。

 

「はあああ~~~っ!」

 

 パイルバンカーを構え、ボーデヴィッヒさんに接近するシャルル。しかし、それよりも早く俺は瞬間加速し、

 ガキンッ!

 展開した近接ブレードでシャルルのパイルバンカーを斬り上げ、その軌道を変える。

 

「「「っ!?」」」

 

 突然の俺の乱入に一夏やシャルルだけでなく、ボーデヴィッヒさんも驚きの表情を浮かべる。

 

「せいっ!!」

 

 気合いの一声とともにぐるりと回転し、遠心力とともに全体重の乗った蹴りをシャルルへと繰り出す。

 

「ぐっ!」

 

 咄嗟に両手をクロスさせ、俺の蹴りを受けてシャルルが数メートル飛んでいく。

 

「くっ、貴様……邪魔をするなと言ったはずだ…!」

 

 助けに入った俺を睨むボーデヴィッヒさん。俺はそんな彼女に向き直り

 

「この……馬鹿野郎が!!!」

 

「がっ!!」

 

 言葉とともにボーデヴィッヒさんの頭に近接ブレードを叩きこむ。俺の一撃を食らって顔面から地面に崩れ落ちるボーデヴィッヒさん。

 

「貴様…なにをする!!」

 

「すこしは頭冷やせ!!」

 

 俺の言葉にボーデヴィッヒさんが黙る。

 

「黙って見てりゃ、ひとりで何とかするんじゃなかったのかよ。全然なんもできてねえじゃねえか。もう、これ以上は見ていられない。いい加減飽きた!」

 

「なっ!?」

 

 俺の言葉に驚愕の表情を浮かべるボーデヴィッヒさん。

 

「今度はお前がそこで見てろ!あいつらの相手は俺だけでやる!」

 

「なっ!?貴様…!ふざけるな――」

 

「えいっ!!」

 

 立ち上がろうとするボーデヴィッヒさん。しかし俺は、片手に持った近接ブレードを爆散し少ししか残っていないボーデヴィッヒさんの大型カノンに地面と縫い付けるように突き刺す。

 

「参加したきゃこれを自力で外すんだな」

 

「くっ!こんなもの……」

 

 何とかはずそうとするが、残念ながら体勢的にも一苦労だ。しかもボーデヴィッヒさんは現在シャルルのパイルバンカーにより相当なダメージを受けている。それも合わせれば、自力で俺のブレードを抜くのは時間がかかるだろう。

 

「まあ、頑張れ。俺はお前と違って弱いから。ふたり相手に一人で十分だ、なんていうつもりはない。せいぜいお前の頭に上った血がどうにか治まるくらいの時間は稼いでやる」

 

 そうボーデヴィッヒさんに告げると、俺は一夏とシャルルに体を向ける。

 

「てなわけで悪いがここからは俺が相手になる。安心しろ。こいつと違って俺はお前ら相手に俺一人で十分、なんて天狗にはなっていない。とりあえずは今できる最大級に頑張るさ」

 

 俺の言葉に一夏もシャルルもいまだに状況が掴めないと言った顔をしているが、とりあえずは武器を構える。

 

「それじゃあ――行くぞ!」

 

 気合いとともに踏み出した俺。瞬間加速しようと背中に意識を持って行った俺は

 

「ああああああっ!!!!」

 

 背後から聞こえたボーデヴィッヒさんの身が張り裂けんばかりの絶叫に急ブレーキをかけさせられた。




はい、というわけ難産の末のバトルでした。
次回はラウラの暴走シーン。
次回も頑張ります。
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