一日に何話もかけたと思ったら。今度は一日開いてしまいました。
頑張りまっせ!
というわけで5話始まるよ♪
「うう………」
放課後、俺の目の前には机の上でぐったりとうなだれている一夏の姿があった。
「い、意味が分からん……。なんでこんなにややこしいんだ……?」
どうやら次の月曜のオルコットさんとの決闘に向けて、基礎だけでも覚えようと意気込んでみたものの、授業内容がわからなかったのだろう。ISの授業では専門用語の意味を分かっている前提で授業が進む。必読の参考書で勉強していなかった一夏は、今日一日ほとんどまったくなにもできなかったことだろ。俺は鬼教官にみっちり勉強させられたおかげで何とかやっていけている。
「大丈夫か?」
「大丈夫じゃない。辞書がほしい」
その気持ちはわからなくもないISの専門用語はどれも難しいものばかりだ。辞書があれば楽に勉強できるような気もするが、生憎そんなものはない。
「ああ、織斑くん、梨野くん。まだ教室にいたんですね。よかったです」
「え?」
「はい?」
呼ばれてそちらに顔を向けると山田先生が書類を片手に立っていた。
「えっとですね、二人の寮の部屋が決まりました」
そう言って部屋番号の書かれた紙と鍵を俺たちに渡す。
「俺らの部屋、決まってないんじゃなかったですか?前に聞いた話だと、一週間は自宅から通学してもらうって話でしたけど」
「俺も一週間ほどは今まで通り宿直室をって話だったんじゃ」
「そうなんですけど、事情が事情なので一時的な処置として部屋割りを無理矢理変更したらしいです」
ありがたい話だ。宿直室を俺が使っていて、先生方が使えなくて迷惑をかけているんじゃないかと忍びなく思っていたのだ。
「ただ、とにかく寮に入れることを最優先にしたみたいで、お二人は別々の部屋になってしまったんです」
てことは、俺のルームメイトは女子と言うことか。それは大丈夫なんだろうか。
「それは、大丈夫なんですか?」
一夏も同じことを思っていたみたいだ。
「一ヶ月もすれば部屋割りの調整もできると思うので」
俺はいいのだが、相部屋の人はいいのだろうか。男子と一ヶ月近く同居というのは。
「部屋はわかりましたけど、荷物は一回家に帰らないと準備できないですし、今日はもう帰っていいですか?」
「俺も宿直室の荷物移動させないと」
「あ、いえ、荷物なら――」
「私が手配しておいてやった。ありがたく思え」
そう言いながら織斑先生が教室にやってきた。
「「ど、どうもありがとうございます……」」
「まあ、梨野の方は宿直室にあった梨野の私物を全部移動させただけだし、織斑の方は、生活必需品だけだがな。着替えと、携帯電話の充電器があればいいだろう」
大雑把な。
「じゃあ、時間を見て部屋に行ってくださいね。夕食は六時から七時、寮の一年生用食堂で取ってください。ちなみに各部屋にシャワーがありますけど、大浴場もあります。学年ごとに使える時間が違いますけど……えっと、その、お二人は今のところ使えません」
「え、なんでですか?」
俺が訊く前に一夏が訊いた。
「アホかお前らは。まさか同年代の女子と一緒に風呂に入りたいのか?」
「「あー……」」
確かに無理だ。そんなことすれば大問題だ。
「えっ、二人とも、女の子とお風呂に入りたいんですか!?だっ、ダメですよ!」
「い、いや、入りたくないです」
一夏の返事に俺も全力で首を縦に振る。ここで肯定してしまったら、ど変態認定されてしまう。
「ええっ?女の子に興味がないんですか!?そ、それはそれで問題のような……」
そうじゃねぇよ!どう答えれば正解だったんだ。
山田先生がきゃあきゃあと騒ぐものだから女子の中でどんどん伝わっていき、女子の話に花が咲いていた。
「織斑くんと梨野くん、男にしか興味ないのかしら……?」
「黒髪の織斑くんと金髪の梨野くん……これはアリね!」
「中学時代の織斑くんの交友関係を洗って!すぐにね!明後日までに裏付けとって!」
なんのこっちゃ。
「えっと、それじゃあ私たちは会議があるので、これで。織斑くん、梨野くん、ちゃんと寮に帰るんですよ。道草くっちゃだめですよ」
校舎から寮まで五十メートルくらいしかないのに、どうやって道草をくえというんだろう。
「とりあえず、寮に行くか?」
「そうだな。俺、今日は疲れた」
織斑先生と山田先生が教室から出ていくのを見送って、俺たちは帰る準備を始める。部屋まで行けば女子の視線にさらされることもないだろうしいくらかはましだろう。
○
「えーと、俺は1025室だから、ここか」
一夏が部屋番号を確認しながらドアの前に立つ。
「そっか。俺は1033室だからもうちょい先だな」
「おう、あとで一緒に食堂行こうぜ」
「いいぜ。じゃあ六時ごろにまた来るから」
「じゃあまた後でな」
一夏と別れ俺は自分の部屋を目指す。
「1033室。ここか」
部屋番号を確認し、ドアに鍵を差し込む。あれ?開いてる。あ、同室の人もう来てるのかな?
ガチャ。
部屋に入ると、まず目に入ったのは大きめのベッド。それが二つ並んでいる。宿直室に置かれていたものと同じものらしく、見ているだけでふわふわとしているのが分かる。窓側の方のベッドを見ると大きな人間サイズの狐のぬいぐるみが転がっていた。なんだろう?同室の人の持ち物だろうか?
「ん?」
よく見ようと近付くといきなりそのぬいぐるみが起きあがった。
「!?」
正直何が起こったのかわからなかった。なにあれ、高性能なロボ?おもちゃ?
「あ、いらっしゃ~い。遅かったね~」
こちらを向いたその顔はちゃんと人間だった。というか着ぐるみみたいな服を着ていただけだった。あー、びっくりした。
「確か同じクラスの布仏さんだっけ?」
「うん。布仏本音、よろしくね、ナッシー」
「ナッシー?」
「うん。梨野航平だから、ナッシー」
どうやら俺のあだ名らしい。
「どうでもいいけど、語尾にナッシーってつけたらゆるキャラみたいだよね~」
「ゆる…へ?」
布仏さんが同意を求めるようにと言っているが、何の事だかよくわからなかった。
「あれ?知らない?梨の妖精のマスコット」
「俺テレビってあんま見てなかったし、記憶ないから」
「ああ~、じゃあしょうがない」
布仏さんはのほほーんと笑っている。布仏さんがのほほーん、なんか面白いな。
「とりあえずこれからよろしく――」
ズドンッ!
『って、本気で殺す気か! 今のかわさなかったら死んでるぞ!』
廊下から何かを突き破るような音と一夏の叫び声が聞こえた。
「なんだろ?ちょっと見てくる」
「いってらっさ~い」
ベッドの上で手を振っている布仏さんの見送りを背に声の聞こえた方へ俺は向った。
廊下に出てみるとラフな格好の女子たちが一夏を囲んでいた。
「どうしたんだよ一夏」
囲んでいる女子の間をぬって一夏のところまで行くと、いくつか穴の開いて木刀の突き刺さっているドアの前で一夏がへたり込んでいた。
「あ、航平!ちょうどよかった!助けてくれ」
「は?助ける?誰から?」
「箒から!」
「箒って…篠ノ之さんか?」
俺は黒髪ポニーテールの少女を思い出す。
「なんであの人から助けるんだ?」
「そ、それが、部屋に入ったら箒がいてさ」
「あー、同室だったわけね」
「で、間の悪いことに箒がシャワーを浴びてたらしくてバスタオル一枚で……」
「あらら」
なんとも間の悪い。
「じゃあドアに刺さってる木刀といくつかの穴は?」
「箒が木刀であけた穴とそのまま刺さってる木刀」
「まじか」
すごいな。このドアそれほど脆いものでもないだろうに。
「つまり、シャワーを浴びていた篠ノ之さんのところに何も知らない一夏が部屋に入ってしまった。で、『きゃー、一夏さんのエッチ!』なことになったと」
「大体そんな感じだ。というか記憶ないのにあの漫画知ってるんだな、お前」
「織斑先生とか山田先生がこれくらいは一般常識だって何個か漫画とか小説貸してくれたんだ」
どうでもいいけど、あの漫画の主人公。あれあきらかにわざとだろ。犯罪だぞ。
「というわけで、助けてナシえもん!」
某漫画の主人公のごとく俺に泣きついてくる一夏。
「まったく、しょうがないな~一夏くんは」
俺はかがんでいた体勢から立ち上がる。
「おーい、篠ノ之さん。落ち着いたか?落ち着いたなら一夏を部屋に入れてあげてほしいんだが?このまま一夏を廊下にほっぽり出したままっていうのはかわいそうじゃないか?」
「………」
無言。あ、木刀が室内に引っこんでいった。
「ん~、まだ落ち着かないようならしょうがない。一夏、俺の部屋に来るか?」
「え?いいのか?」
「落ち着くまではしょうがないだろ。それともここで女子の視線にさらされたままでいるか?」
「……悪いがお前の部屋に世話になる」
そう言って一夏が立ち上がる。
「それじゃあ行こうか」
一夏を連れて1033室に行こうとすると、
ガチャッ。
「……入れ」
「お?」
ドアが開く音が聞こえて、剣道着を纏った篠ノ之さんが入るように言ってきた。
「よかったな。入っていいって」
「お、おう」
「じゃあ俺はこれで。頑張って仲直りしろよ」
そう言って自分の部屋に戻る俺。
………。なんでだろ。少しも前に進めない。しかもなんか後頭部が痛い。
ゆっくりと振り返る俺。俺の後ろ髪を掴んでいる一夏。
「……何?」
「頼む、航平も一緒に来てくれ」
「はぁ?」
なんで俺まで。
「とにかくお前も来てくれ!」
「おい!」
一夏に引っ張られて1025室に一緒に入る。いい加減髪を放せ。禿げる。というか俺が一緒にいたからって何も解決しないだろうに。
部屋に入ると俺の部屋と同じ作りの部屋。大きなベッドが二つ並んでおり、窓側のベッドには篠ノ之さんが座っていた。
「あ、奥側のベッド狙ってたのに」
「そんなことどうでもいいだろ」
一夏のつぶやきに俺が突っ込みを入れる。
「えっと、篠ノ之さん。扉に穴開けるほどやるのはやりすぎじゃないですかね?下手すれば一夏が大怪我してたよ?」
「………………………」
無言。俺の言葉にムスッとした顔をしていた。俺の言い方が悪かったかな?それとも何か俺嫌われること言ったかな?あ、ちゃんと挨拶してなかったからかな?
「あ、えっと、遅れたけど、同じクラスの梨野航平です。よろしく」
「……篠ノ之箒だ」
お、返事してくれた。
「えっと、とりあえず、ちゃんと話し合いで解決してくれ。暴力はナシ」
「……言われずともわかっている」
「そっか」
よかったよかった。これで解決。ビバ平和。
「じゃあ、俺はこれで。一夏、俺は戻るぞ?」
「お、おう」
そう言って俺は1025室を後にする。
「ただいまー」
「おかえり~。何だったの~?」
戻ってきた俺を布仏さんがにこやかに出迎える。
「…………」
「どったの?」
「あ、いや、なんでもない」
ボーっとしてしまった俺を不審に思ったのか、布仏さんが首をかしげている。
「えっと、一夏が同室になった奴と不幸な事故で騒ぎになってしまったらしい。ちゃんと話し合いで解決するように言ってきたから大丈夫だと思う」
「そっか~」
納得したのか布仏さんがベッドに寝転がり近くにあった雑誌を開く。リラックスしてるのか足をぶらぶらしている。
「えっと、布仏さんはいいのか、男子の俺と同室って?」
「ん~?べつにいいよ~」
「……そうか」
本人がいいなら別にいいか。男の俺があーだこーだ言うのもあれだし。
布仏さんの返事に無理やり自分を納得させ、もう一方のベッドに俺も寝転がる。
(一夏の方はちゃんと解決したかな?)
俺はふと思ったがちゃんと話し合いで解決すると言っていた二人を信じてそれ以上考えるのをやめた。
その後聞いた話によると竹刀で叩かれたと一夏が嘆いていた。話し合いはどうした、話し合いは。
山田先生も書いてて楽しいけど布仏さんも書いてて面白いですね。
次回はどこまでかけるか。お楽しみに。