前回の話は書ききる前にアップしてしまいました。
まあ数行のことでしたが…。
結論。俺と一夏が先に入って、俺たちの後にシャルルだけ入るという方法を取ることにした。
「ふううぅぅぅ~~~……」
「はああぁぁぁ~~~……」
俺と一夏は湯船に体を付けると間の抜けた声を出す。
このIS学園、充実した設備ばかりだが、それは大浴場も例外ではない…らしい。ぶっちゃけ俺はここ以外のところを知らないからなんとも言えんが一夏は大興奮だった。あまりの興奮に体洗いながら大声で笑っていた。
「……というか、さっきから思っていたんだが」
「ん~?なんだ~?」
湯船に体を付けてほっこりとしている俺に一夏が口を開く。
「そうしてると女にしか見えないな」
「ん?」
言われて俺は水面に映っている自分の顔を見る。今俺は長い髪を後頭部でアップしている。
「なんていうか、肌キレイだし。後姿だけじゃ一瞬ドキッとするぜ」
「ん~、まあ女装が特技ですから」
頑張って磨いたかいがありますよ。
「まあ、こんだけ気持ちいいとどうでもよくなるな~」
「な~」
一夏の言葉に同意する形で俺たち二人はさらに首まで湯船につかる。
「あー……生き返る~……」
る~……る~……る~……。
おー、エコーだ。響くね~。
「…………あっ!」
あっ!…あっ!…あっ!
一夏の叫びが響く。
「どうしたの~?」
「風呂上がってからでいいから来いって千冬姉に言われてた!」
「お~、大変だな~」
「悪い。俺先にあがるわ」
「お~~」
ペタペタペタと歩いて行く一夏。俺はそちらに顔を向けずに風呂の縁に頭を置いてボーっとする。
カラカラカラ……。
どうやら出て行ったみたいだなー。でもそんなのもどうでもよくなるなー。
(あ~、このまま寝てしまってもいいかも)
カラカラカラ……。
(ん?誰かはいってきた?あ、一夏が忘れ物でもしたかな?)
ぴたぴたぴた。
こっちに近づいて来るな~。風呂に忘れ物かな?
「お、お邪魔します……」
おう?なんか一夏の声がいつもより高い。風呂場だからか?……いやいやいや、さっきは普通だったぞ?
気になって風呂の縁に頭を置いたまま視線を上に持って行く。
そこにはさかさまのシャルルがいた。……いやまあさかさまなのは俺が逆向きに見てるからなんだけどね。でも、一番の問題はそのシャルルが一糸まとわぬ姿だということだ。いや、一糸まとわぬとはいっても当然タオルは当ててるよ?
「…………」
まず俺は体を起こす。シャルルには背を向けたままだ。そこから顔をジャブジャブと顔を洗う。うん。目が覚めた。
もう一度後ろを見る。
「って、シャルル!?」
「……あ、あんまり見ないで。航平のえっち……」
「はい!すいません!」
あれ!?俺なんで謝ってんだ!?
わからないけどとりあえず回れ右だ!
「どどどどどどうしたんだ?あ!あれか!一夏が上がったから俺も上がったと思ったか!?悪い!今すぐ上がる!」
「ま、待って!少しでいいから……その、一緒に……それとも、僕とじゃイヤ……?」
「いやとかじゃないけど……」
そう、イヤとかじゃない。まずいのだ!俺だって記憶がないけど健全な思春期男子。それなりにそういうのも興味あるわけで。今だって心臓が痛いほどドクドクと高鳴っている。
「そ、その、話があるんだ。大事なことだから、航平に聞いてほしい……」
「お、おう」
そんな風に言われたら断れない。これは聞かないわけにはいかない。
そのままでいると、シャルルが近づいてきて湯船に入る。俺はできるだけシャルルが背後になるように徐々に回転していく。
「その……前のことなんだけど……」
「ま、前のって?」
「僕がここに残れるかどうか……」
「あー……」
「あれから織斑先生に相談して、これからのことが決まったんだ」
そこでシャルルは言葉を区切る。
「僕ね、ここに残ることが出来そうなんだ」
「そ、そうか…」
うん、あれだ。頭に入ってこない。えっと、整理しよう。つまり、シャルルはこのまま学園に残るってことだ。うん、いいことだな。でもなんで今?
「航平。僕、航平には感謝してるんだ」
「…おう」
「僕がここにいるって決められたのも、僕が残れるようになったのも……」
「……………ん?」
あれ?なんでかシャルル黙った?
「しゃ、シャル――」
声をかけようとしたところで背中に手を置かれ、そのまま後ろから抱きしめられた。背中に華奢な、しかし柔らかい感触が密着して、俺の心臓が口から飛び出しそうな勢いで跳ね上がる。
「航平がいてくれたから、航平が相談にのってくれたから、僕はここにいたいって思えた。ここに残れるようになったんだよ」
「そ、そうか……」
俺としては俺が千冬さんや真耶さんからしてもらったことをしてもらった様なことをしただけだった。自分がしてもらってうれしかったから、他人にもそうであろうとしただけだ。
「ねえ。これからは、僕と二人きりの時は、シャルロットって呼んでくれる……?」
「それが本当の……?」
「そう、僕の名前。お母さんがくれた、本当の名前」
「そっか。じゃあ――シャルロット」
「ん」
嬉しそうにシャル――ロットが返事をする。
「と、ところでさ――」
「ねえ、航平」
「お、おう!?」
できれば離れてもらおうとしたのに遮られた。
「一つ約束してたの覚えてる?」
「…………え?」
何のことだ?約束?したっけ?
「やっぱり覚えてなかった…」
「すまん。どんな約束だったっけ?」
「あのね――」
後ろから抱き着かれたまま俺の耳元にシャルロットが口を近づける。そこから言われた言葉に、俺は一瞬凍りついてしまった。
○
「今日は、ですね……みなさんに転校生を紹介します。けど紹介は既に済んでいるといいますか。ええと……」
山田先生の言葉にクラスがざわつく。そりゃそうだ。要領を得ない説明だもんな。でも、実は俺はその言葉を目の前で聞いていないなぜなら…。
「じゃあ、入ってください」
「失礼します」
「し、失礼します」
山田先生の言葉に返事をして教室に入る。
「シャルロット・デュノアです。皆さん、改めてよろしくお願いします」
「梨野ナナミです。いろいろあって一週間ほどこの格好で過ごすことになりました。皆さんよろしくお願いします」
俺たち二人の登場にクラス内がざわつく。
「ええと、梨野君はいろいろあって一週間だけ期間限定で梨野さんということで。あと、デュノア君は本当はデュノアさんでした。……はぁぁ……また寮の部屋割りを組み立て直す作業がはじまります」
心情お察しします、真耶さん。
ってあれ?待てよ?深く考えてなかったけど、これまずくないか?
「え?デュノア君って女?」
「おかしいと思った!美少年じゃなくて美少女だったわけね」
「梨野君はなんで女装?」
「とうとう目覚めた?」
「って、織斑君、同じ部屋だったから知らないってことは――」
「ちょっと待って!昨日って確か、男子が大浴場使ったわよね!?」
あ~やっぱりそうなるよね?
バシーンッ!
「一夏ぁっ!!!」
突然教室のドアを蹴破って鈴が登場。その顔は恐ろしいほど怒りに染まっている。
「死ね!!!!」
ISを展開し、それと同時に衝撃砲が…って
「待って!?これ俺もやばくね!?」
しかし俺の叫びもむなしく、発射された衝撃砲。
ズドドドドオンッ!
「ふーっ、ふーっ、ふーっ!」
怒りのあまりに肩で息をする鈴。――ん?あれ?生きてる?
「…………」
「ボーデヴィッヒさん!?」
なんと俺と一夏を助けるために鈴との間に飛び込み、IS『シュヴァルツェア・レーゲン』を展開してAICで相殺したようだ。よく見ると大型レールカノンがない。
「助かったぜ、サンキュ――むぐっ!?」
「…………は?」
突然の出来事に頭がついて行かない。なんで…なんでボーデヴィッヒさんは一夏にキスしてるんだ?
あまりの展開に俺以外の人も目が点になっている。この場にいる全員が口をあんぐりとあけ、呆然としている。
「お、お前は私の嫁にする!決定事項だ!異論は認めん!」
「……嫁?婿じゃなくて?」
「え?そこ?」
一夏の冷静なつっこみに、つい俺もつっこんでしまう。
「日本では気に入った相手を『嫁にする』と言うのが一般的な習わしだと聞いた。故に、お前を私の嫁にする」
へ~そうなんだ。知らなかった。
「ところで、大丈夫だったか?」
「お、おう。なんとか」
ボーデヴィッヒさんの言葉に頷く一夏。
「そうか、よかった」
そう頷きながら俺にも顔を向けるボーデヴィッヒさん。
「そっちも大丈夫だったか、お兄ちゃん?」
「お、おう。俺もなんとか……」
おい、ちょっと待て。今なんて言った?
『お、お兄ちゃん!?』
ボーデヴィッヒさんの言葉に教室内がさらに驚愕にざわつく。
「え?ボーデヴィッヒさん?」
「私のことはラウラと呼べ、お兄ちゃん」
「………………」
妹?俺の?ラウラが?記憶ないけど、俺にも家族が…。
「ラウラ……」
「ん?なんだ、お兄ちゃん」
首を傾げるラウラを俺はギュッと抱きしめる。
「ラウラ!俺の妹よ!!今まですまなかった!!心配かけたな!!このダメな兄を許してくれ!!!」
そのまま俺は号泣。まさかこんなところで俺の過去の手がかりが見つかるとは!
「いやいやいや!!なんかいろいろおかしいだろ!!」
号泣する俺の鳴き声と一夏の全力のつっこみがIS学園に響き渡った。
記念すべき50話目。
長かったっすね。
とりあえずきりがいい数字になるようにしました。
つまり一巻25話づつの二巻までで50話ですね。
そう考えるとここからまだまだなげぇ~。
でも頑張ります!