あと、ちょっと短めです。
放課後、俺とシャルロットは教室の掃除を行っていた。夕暮れの茜色に染まる教室には俺たち以外の姿はない。というのも本当ならIS学園は俺たち生徒が掃除をしなくても、毎日専属の業者が掃除をし、教室や廊下や天井に至るまでピッカピカにするのだ。
なので本来ならする必要のない掃除は生徒への罰則となっているわけで、俺たちはその罰則を受けているのだ。
「なんだかあの日みたいだな」
「え?」
「ほら。俺がシャルロットの男装を見抜いた日。あの日もこんな感じの夕日だったなって思ってさ」
「ああ……」
掃除をする手を止めて窓の外に目を向ける俺の横でシャルロットも顔を向ける。
「あのときはびっくりしたよ。急に『俺の特技は女装だ』なんて言うんだもん」
「ア、アハハハ~。ちょっといきなりすぎたかな……」
シャルロットは楽しそうに笑い、俺は苦笑いを浮かべる。
あの時俺は相当テンパっていたので少々脈略が無かったかもしれない。
俺がぼんやりと外を眺めている間も着々と掃除を進めていく。俺もちゃんとやらないと。
「ん、んん~!」
「あっ、無理すんな。机は俺が運ぶぜ?」
普通の机なら平気だっただろうが、その持ち主が悪かった。その机は岸里さんのものだろう。彼女は教科書を全部置きっぱなしにしている。よくやるよ。俺なんかその都度持って帰ってその日に予習復習しないと授業に着いて行けないってのに
「へ、平気だよ。一応これでも専用機持ちなんだし、体力は人並みに――」
と、言葉を続けたシャルロットだったが、流石に重量に負けて足を滑らせる。俺は咄嗟に後ろからシャルロットの体ごと支える。
「あっぶね~。……大丈夫だったか?」
「う、うん」
「無理すんなよ。ダメなら俺に頼れよ」
「……あ、ありがとう」
どうしたんだろうか。光の加減とかじゃなくシャルロットの顔が赤いような…………あっ!
「わ、悪い」
気付けば俺は後ろからシャルロットを抱きしめる形となっていた。そりゃ男に後ろから抱きしめられたら顔赤くしたり視線をさまよわせたりするよな。
俺は慌ててシャルロットから離れる。
「あっ……」
ん?なんか残念そう?
「……別によかったのに……」
「何が?」
「な、なんでもないっ」
「???」
変なの。
首を傾げる俺と、何かをごまかすようにいそいそと掃除に戻るシャルロット。おっと、俺も掃除掃除。
「……そういえばさ…」
俺は掃除する手を止めずにふと口を開く。
「ひゃいっ!?」
裏返った声で、しかもそこそこ大きな声でシャルロットが返事をしたものだから俺も驚いてしまった。
「ど、どうしたっ?なんかあったか?」
「な、なんでもない。なんでもないよ?ちょ、ちょっと考え事してたから、それだけ」
「ふーん。そっか」
頷きつつ俺は机を運んでいく。この机を全部運び終えたら今日の掃除は終了。とっとと終わらせてしまおう。
「あ、でだ」
「う、うん」
「前に『二人っきりの時はシャルロットって呼んで』って言ってただろ?でも、みんなお前が女だって知ってるんだからその呼び方も普通だよな。なんか別の呼び方考えるか?」
「えっ。い、いいの?」
「シャルロットがよければだけど」
俺の言葉にシャルロットがぶんぶんと首を振る。
「う、うんっ。全然大丈夫っ。せ、せっかくだし、お願いしようかなっ」
そんなに食いついてくれるとは、ただの思い付きだったけどよかった。
ちなみに思いついた理由は昨日更識さんに借りた刑事ものの漫画であだ名で呼ぶのかっこいいなって思ったからだ。
「そうだな……じゃあ、シャルなんてどうだ?」
「シャル。――うん!いいよ!すごくいいよ!」
「おう、そんなに気に入ってくれるんならよかった」
「ま、まあ、ね。シャル……シャル、かぁ。うふふっ」
ここまで嬉しそうにしてくれるとこっちも嬉しい。
「あ、そうだ。なあシャル」
「ん~?何かな?」
嬉しそうにほわほわしているシャルの横で俺は最後の机を運ぶ。これで…よし!
「今度日曜って、暇?」
「………え?」
お久しぶりです。
ちょっと今回のは短かったですね。
次回はもう少し長めにします。