しかもちょっと短いです。
「あぁ~、疲れた」
買い物を終え、学園に帰ってきたのは気付けば夕食前になっていた。一夏にナナコの正体がばれないように帰る時間をずらし、ナナコの状態で部屋に帰れば一夏に遭遇する恐れがあったために千冬さんの部屋で着替えたのだ。
現在俺は買ってきた荷物を持って食堂へ移動している。俺より先に帰った一夏は今頃夕食を食べているころだろう。
「おう、航平」
と、食堂に着いたところで食道から出て来た一夏とセシリア、鈴、ラウラと会った。
「今日は大変だったな。せっかくの休日を丸潰れで書類書きだったんだって?」
「まあな。でも、今日買いに行くはずだったものは千冬さんと真耶さんが買ってきてくれたから助かったけど」
今日の買い物で千冬さんと真耶さんに遭遇した後、そのまま一夏たちと合流。千冬さんたちは買い物に行けなかった俺の買い物を済ませに来たということにしたのだ。
「お前らも買い物に行ってたんだってな」
「おう。向こうで千冬姉たちにもあったぜ。お前が一緒に行くはずだったシャルロットにも。お前の代わりにナナコ先輩が一緒にいたぜ」
「そ、そうか」
一夏の言葉に俺は苦笑いを浮かべる。
「私もお兄ちゃんと買い物がしたかったぞ」
「また今度な」
ラウラが呟くのを笑って答えつつ、ふと時計を見る。
「おっと、そろそろ夕食を食べないと時間がなくなる」
「お、ホントだ。悪いな」
「いいよ。それじゃあな」
そうして一夏たちと別れる。別れ際、鈴が俺に
「アンタも大変ね」
と、苦笑いで言われたのを頷きつつ食堂へ行く。
残っていたメニューからカレーを選び、トレイを持って空いた席を探す。と、特徴的なキツネの着ぐるみを見つける。
「となりいいか?」
「………どうぞー」
俺のの方をちらりと見てそっけなく本音が答えた。
「ありがとう」
礼を言いつつ本音の隣に腰を下ろす。見ると本音の隣には更識さんが座っている。
「………今日はお楽しみでしたねー」
「はっ?」
本音の謎の言葉に俺は首を傾げる。
「お楽しみって何が?」
「とぼけちゃってー。でゅっちーとお買い物デートは楽しかったのって訊いてるんだよー」
本音は不機嫌そうに俺の顔をジト目で睨む。
「確かに買い物に入ったけど……って、なんで知ってるんだ?」
「私たちが今朝たまたま二人が出て行くのを見かけたから、そのまま後を付けたの」
「お前ら休日に何してんだよ」
更識さんの言葉に若干呆れながらも俺は二人に言う。
「だいたい、見てたんならわかるだろ?俺女装して行ったんだぜ?楽しめたと思うか?」
「ぶー。それなりに楽しそうに見えた―!」
「えー……」
俺としては各国やいろんな組織に狙われてるなんて言われて、途中からは一夏に遭遇して楽しむ余裕なんてなかったのに。
「私だってナッシーと買い物行きたかったのにー!なんで誘ってくれなかったの!?」
「だって、本音は前に相川さんたちと買い物済ませたって言ってたじゃないか」
みんなで行った駅前の喫茶店のケーキがおいしかったと満面の笑みで報告してくれた。
「そんなことは関係ないんだよ!」
「いや、関係あるだろ……」
買い物が済んでるなら行く必要ないだろ。
「とにかく!私もナッシーと買い物に行きたかったのー!一緒に水着とか買いたかったのー!」
「……今日だいたいずっとこの調子」
「なんていうか……お疲れさま」
疲れた顔の更識さんを労う。
「そのー……なんだ。次に買い物行くときは一緒に行こうな、本音」
「つーんだ」
俺の言葉にそっぽを向く本音。あーあー、へそ曲げちゃったよ。
「………あっ、そうだ」
そこで俺はふと思い出す。
「今日の買い物でさ、本音にと思って買ったものがあったんだ」
「っ!」
あ、反応した。気のせいか着ぐるみの耳がぴっくっと動いたような気がした。
「今日水着と一緒にタオルとか買おうと思って見てたらいいのがあってさ」
俺は俺の水着を買った店と同じ袋を本音に渡す。
「……………」
無言のまま袋を受け取り、中身を取り出す本音。
「これは……」
それは二頭身のキツネのキャラクターの描かれたハンドタオルだ。キツネのキャラクターはどこかぼんやりとしている印象のあるキャラクターだった。
「どうだ?かわいいと思わないか、このキャラクター。このキツネがどことなく本音に似てる気がしてさ、つい買っちゃったんだ。よかったら使ってくれ」
「…………」
無言で手の中のタオルを見つめる本音。
「………気に入らなかったか?気に入らなかったなら俺が使うから――」
そう言いながら手を伸ばした俺の手は空を切る。取ろうとしたタオルは本音が持ったまま俺が掴めないように逸らしていた。
「ふ、ふん。しょうがないから貰ってあげるよー」
「そうか?いらないなら無理に受け取らなくても――」
「無理にじゃないのー!」
「そ、そうか……」
不機嫌そうではあるが、一応は気に入ってくれたようだ。
「その……悪かったよ、本音。次に買い物行くときは絶対に誘うからさ。機嫌直してくれよ」
「………駅前喫茶のジャンボパフェ……」
「ん?」
「次に一緒に出掛けた時に駅前の喫茶店でジャンボパフェ奢ってくれるって約束してくれるなら許してあげる」
「ああ、いいぜ。パフェくらい奢ってやるぜ」
「………ん。ならいいよー」
ふっと、いつもののほほーんとした雰囲気に戻って本音が微笑む。
ほっと一安心しつつ食べかけのカレーを再開したところで、更識さんが心配そうに俺の顔を見つめる。
「……よかったの?」
「何が?」
更識さんの言葉に首を傾げる。
「だって……そのパフェって……2000円もするのよ」
「………マジで?」
最近後に書き始めた作品の方がお気に入り件数が上で嬉しいような悲しいようなな僕です。
こっちも人気でるように頑張ります!