「うぅ~~~~~みだぁぁぁぁぁ!!!!」
着替え終えた俺たちは更衣室から出ると、目の前には白い砂浜と延々と続くと思える青い海が広がっていた。
思わず興奮から叫ぶ俺。
ちなみに一夏は紺色のトランクスタイプの水着のみ。俺は先日ナナコとして買ってきた黄緑色のトランクスタイプの水着に加え、同じく買ってあった長袖で黒のUVウェアーだ。
「あ、織斑君と梨野君だ!」
「えっ、うそっ!?私の水着変じゃないよね!?」
俺たちが出てきたことで女子たちがなぜかざわつく。
とりあえずそれは気にせず俺たちは砂浜へと歩を進める。
「「あちちちっ」」
ふたりして声を揃えて同じようにその場で足踏みする。すぐに砂の熱にも慣れ、普通に歩けるようになる。
学園の周りにも海はあるが、やはりそれとは違う。見ているだけでわくわくする海。
「よしっ!泳ぐ前に準備運動だ!」
「おう!」
俺の言葉に一夏も力強く頷き、入念に体をほぐす。海で泳いでいて足がつって溺れたりしては困る。腕を伸ばし、足を伸ばし、背筋を伸ばして――
「い、ち、か~~~~っ!」
うわっ!いきなり隣から大きな声がしたと思ったら鈴が一夏の背中に飛び乗る。
「相変わらず真面目ね。ほらっ、終わったんなら一緒に泳ぎに行きましょ」
一夏の背中にくっついている鈴の姿はさながら猫のようだった。
鈴の水着はスポーティーなタンキニタイプ。オレンジと白のストライプでへその出ているものだった。
「こらこら、お前もちゃんと準備運動をしろって。溺れても知らないぞ」
「あたしが溺れたことなんかないわよ。前世は人魚ね。たぶん」
そういいながら一夏の背中をするすると登り肩の位置までいって肩車状態になる鈴。その姿はまるで猫か猿のようだった。絶対前世は人魚じゃないな。
「おー、高い高い」
周りを見渡してご満悦な鈴。
「あっ、あっ、ああっ!?な、何をしていますの!?」
と、そこにやって来たセシリア。手には簡単なビーチパラソルとシート、そしてサンオイルのボトル。
セシリアの水着はブルーのビキニ、腰にはパレオが巻かれている。
「何って、肩車」
「降りてください!一夏さんには私にサンオイルを塗ってもらうことになっているんですの!」
「「「え!?」」」
セシリアの言葉に周りの女子たちが沸き立つ。
「私サンオイル取ってくる!」
「私はシートを!」
「私はパラソルを!」
「じゃあ私はサンオイル落としてくる!」
わざわざ落とすなよ、もったいない。
「ナッシー、私にもサンオイル塗って~」
「お、本音」
ざわつく中俺の横にはいつの間にか本音が現れた。
「てか、本音はその恰好なら必要ないじゃん」
本音の格好はまるでいつもの寝巻のようにキツネ着ぐるみだった。
「コホン。そ、それでは一夏さん。お願いしますわね」
そう言ってしゅるりとパレオを脱ぐセシリア。
「え、えーと……背中だけだよな?」
「い、一夏さんがされたいのでしたら、前も結構ですわよ?」
「いや、その、背中だけで頼む」
「でしたら――」
セシリアはいきなり首の後ろで結んでいたブラの紐を解いて、水着の上から胸を押さえてシートに寝そべった。
「さ、さあ、どうぞ?」
「お、おう」
「長くなりそうだから、先に泳いでるぞ」
「お、おう……」
俺の言葉に一夏が返事をし、セシリアへと向き直る。
「ナッシー、ビーチバレーしよ~」
「いいけど、まずはひと泳ぎしてきていいか?ビーチバレーにはちゃんと付き合うから」
「んー……わかった~。でも、ちゃんと一緒に遊んでね~」
「おう。もちろんだよ」
腕に抱き着いて来る本音の頭を撫でる。
「あれ?でもナッシーって泳げるの?」
「なあに、まかせろ。俺は水泳百級だ!」
そう言いながら海に向かって俺は走り出した。
「ひゃっふぅぅぅぅぅぅ!!」
ザッバ~~ン!と海に飛び込み織斑先生から習った泳ぎを披露する。
「「「おお~~~!!」」」
浜では数名の女生徒たち(本音含む)が俺の泳ぎに拍手をする。
「どうよ!そんなわけで軽く遠泳してくるから~」
そう言って俺は大海原へと泳ぎだした。
○
数分泳いだころ、こちらに向かって泳いでくる人物二人を見つけた。鈴と一夏だった。
「お~い。一夏~、り――」
ふたりに向かって手を振りながらふたりに近づいて行くが、途中で違和感に気付く。鈴がもがきながら沈んでいくのだ。
「もしかして……溺れてる!?」
急いで泳ぎながら潜水。沈んでいく鈴を見つける。パニックになっているのかもがいている。
急いで水をかきながら鈴へと手を伸ばす。
(とどけ~~!!)
足で水を蹴り、鈴へと伸ばした手が鈴の手を掴む。
そのまま鈴を抱きながら海面へと上昇する。
「鈴!大丈夫か!?」
「ごほっ!けほっ!う、うん。大丈夫……」
咳き込みながらもなんとか返事をする鈴。
「鈴!航平!」
一夏も心配そうな顔でやってくる。
「大丈夫だ。意識もはっきりしてる」
一夏を安心させるために笑顔になる俺。
「とりあえず一夏、鈴を運ぶのを手伝ってくれ」
「おう。任せろ」
一夏に鈴を背負わせ、俺は横から支えるように泳ぐ。
「……航平」
「ん?喋ると水飲むぞ」
「だ、大丈夫よ。そ、それより………あ、ありがと……」
ぽそぽっそとした声ではあったが、俺も一夏も聞こえた。ふたりで顔を見合わせてニッと笑う。
「気にするなよ」
俺は鈴の頭を撫でる。恥ずかしそうにしながらも、鈴はその手を払わなかった。
あれ?おかしいな。
なぜか鈴とのフラグもどきが………
どうしてこうなった?