IS~無い物だらけの物語~(休載中)   作:大同爽

60 / 98
スランプ中なので若干短めです。


第60話 初バレー

「あ、航平、一夏。ここにいたんだ」

 

 鈴をセシリアたちに任せ、俺と一夏の前に現れたのはシャルと――

 

「な、なんだそのタオルおばけは」

 

 一夏の言葉通り、シャルの横には全身にタオルを巻いてミイラと化した謎の人物Xがいた。タオルからはみ出すツインテールの髪が銀髪だし、おそらくラウラかな?てか、よくここまで来れたな。身動きとりずらそうなのに。

 

「ほら、出て来なって。大丈夫だから」

 

「だ、だ、大丈夫かどうかは私が決める……」

 

 タオルの中から聞こえるくぐもった声は案の定ラウラだった。

 その声はいつもの自信は感じられず、弱々しいものだった。

 

「ほーら、せっかく水着に着替えたんだから、一夏や航平に見てもらわないと」

 

「ま、待て。私にも心の準備というものがあってだな……」

 

「もー。そんなこと言ってさっきから全然出てこないじゃない。一応僕も手伝ったんだし、見る権利はあると思うけどなぁ」

 

「「?」」

 

 シャルとラウラのやりとりに俺も一夏も首を傾げる。いったい何だといのだろうか、この状況は。

 

「うーん、ラウラが出てこないんなんら僕だけで航平や一夏と遊びに行こうかな」

 

「な、なに?」

 

「うん、そうしよう。航平、一夏、行こっ」

 

 言うなりシャルは俺と一夏の手を掴んで歩き出す。

 

「ま、待てっ。わ、私も行こう」

 

「その格好のまんまで?」

 

「ええい、脱げばいいのだろう、脱げば!」

 

 そう叫びながら体に巻いた数枚のバスタオルを脱ぎ捨て、水着姿のラウラが現れる。

 

「わ、笑いたければ笑うがいい……」

 

 黒のビキニ。しかもところどころにレースのあしらわれた、まるで大人の下着のような水着。さらにいつもの飾り気のないストレートの銀髪は左右一対のアップテールにまとめられている。これは一言で言えば――ただただ可愛かった。

 

「おかしなところなんてないよね、一夏、航平?」

 

「お、おう。ちょっと驚いたけど、似合ってると思うぞ」

 

「おう。すっげー可愛い」

 

「なっ……!」

 

 俺たちの言葉が意外だったのか、顔を真っ赤にしながらラウラが数歩後ずさる。

 

「しゃ、社交辞令ならいらん……」

 

「いや、世辞じゃねえって。なあ、航平?」

 

「ああ。俺たちは思ったことをそのまま言ってる。とっても似合ってるぜ。スゲー可愛い」

 

「普段と違う髪型ってのもあって可愛いと思うぜ」

 

「か、かわっ!!」

 

一夏の言葉に、ボンッと音の出そうなほどの勢いで顔を赤く染めるラウラ。

 

「うん。僕も可愛いって褒めてるのに全然信じてくれないんだよ。あ、ちなみにラウラの髪は僕がセットしたの。せっかくだからおしゃれしなきゃってね」

 

 なるほど。道理で普段のラウラじゃしなさそうな髪型なわけだ。

 

「へえ、そうなのか。あ、もちろんシャルも水着似合ってるぞ」

 

「う、うん。ありがとう」

 

 俺の言葉にシャルが嬉しそうに微笑みながら照れくさそうに髪をいじる。

 

「ナッシ~!」

 

「おっりむらくーん!」

 

「さっきの約束!ビーチバレーしようよ!」

 

 と、少し離れた位置にあるバレーのネットの位置から本音とともに女子三人がやってくる。

 

「おう。それじゃあ、ここにいる面子でやるか」

 

「うん、そうだね」

 

「片方のチームに男子二人ってのはパワーバランス悪いし、俺と航平は別々になった方がいいな」

 

「そうだな」

 

「「じゃ、じゃあ私は(僕は)ナッシー(航平)と!」」

 

 一夏の提案と同時に左手に本音が、右手にはシャルがくっつく。と、同時に本音とシャルが俺を挟んで互いをじっと見つめ合う。

 

「よろしくねー、デュッチー」

 

「うん、布仏さん。一緒に頑張ろうね」

 

「………二人とも、痛い……」

 

 にこやかに言い合う二人は、なぜか俺の腕を両方向からぐいぐいと引っ張る。二人の間にはなぜか心なしか火花が散っている気がする。……気のせいだよね?同じチームだしね。

 

「じゃああとのメンバーもテキトーに分けるか」

 

 一夏の言葉によってチーム分けは進み、一夏チームは一夏&ラウラ&岸原さん&相川さん、航平チームは俺&本音&シャル&谷本さん、となった。

 

「俺ちゃんとルール知らないんだけど」

 

「んじゃ、お遊びルールでいいね。タッチは三回まで、スパイクは連発禁止、キリのいい十点先取で一セットねー。細かいルールは気にしない方向で」

 

「おう。じゃ、そっちのサーブで」

 

一夏が放ったボールを谷本さんが受け取る。心なしか谷本さんの目が怪しく光ったように感じた。

 

「ふっふっふっ、七月のサマーデビルと言われたこの私の実力を……見よ!」

 

 と、掛け声とともにジャンピングサーブ。

 

「任せて!」

 

 相川さんが言葉とともに飛んできたボールを上にあげる。

 

「ナイスレシーブ!」

 

 それをジャンプした一夏がアタックする。

 

「わあー!わあー!わあ~!」

 

 一夏の打ったボールは本音の方に飛んでいく。それによってワタワタと慌てる本音。

 

「て、てりゃ~!」

 

 目を瞑って突き出した本音の拳(ダボダボの袖に隠れてわからないけどたぶん拳)に奇跡的にボールが当たり、上がる。

 

「よっと!」

 

 それをシャルがレシーブする。

 

「よっしゃ!ここは俺が!」

 

 それをネット際にいた俺がジャンプし、アタックする。

 我ながら初めてにしてはいいアタックを放てたのではないだろうか、と、思っていたのだが、俺の放ったボールの先にはラウラがいた。ラウラの運動神経ならこれは返されるだろう。

 ――と、思ったのだが……

 

「へぶっ!」

 

 俺のアタックはラウラの顔面にクリティカルヒットした。

 

「お、おい!大丈夫かラウラ!」

 

「大丈夫っ!?」

 

 俺たちは急いでラウラのもとに駆け寄る。

 

「か、かわ、可愛いと……言われてしまった……可愛いと……」

 

 ……大丈夫そうだった。いや、大丈夫じゃないのか?

 顔を赤く染めたラウラは、普段の彼女では考えられない締まりのない顔をしていた。顔が赤いのはボールが当たったせいだけではないだろう。

 

「ラウラ!大丈夫か!?」

 

 一夏の言葉にラウラは一夏の方を見て、その瞬間二人の目が合う。その瞬間今まで以上に顔を赤く染め、脱兎のごとくラウラは旅館の方に走り去って行った。

 

「な、なんだ?どうしたんだ、ラウラ!?」

 

 走り去っていくラウラに呆然と言う一夏。

 

「まだ照れてたんだ」

 

「ラウラって、意外と……」

 

「おりむーも罪な男だね~」

 

 俺とシャル、本音は苦笑いを浮かべつつ呟く。当の本人の一夏は理解してないみたいだけど。

 

「うーん、まあ、続けるか。ラウラの様子は後で見ておくよ」

 

「うーい」

 

「さんせーい」

 

 そこから数の上で三対四のバレーとなったが……ぶっちゃけ本音がマイナスなので実質三対三だった。

 そんなこんなで楽しいバレー勝負をし、気付けば時間的にもいい時間になっていた。

 

「あ、そろそろお昼の時間かな? 二人とも、午後はどうするの?」

 

 シャルの問いに、

 

「うーん、もう少し泳ぎたいんだが食べた直後はつらいし、ちょっと休んでからまた海に出るつもりだ」

 

「俺もそんな感じだな。せっかくの海だし泳がないとな」

 

「そっか。じゃあ、お昼に行こ」

 

 シャルの提案に俺たちは頷き、ゾロゾロと旅館に向かって歩き出す。

 

「そう言えばナッシーたちの部屋はどこになったのー?」

 

「あー、それ私も聞きたい!」

 

「私も私も!」

 

 本音の質問にその場の全員が興味深げに訊いてくる。

 

「「織斑先生の部屋だぞ」」

 

 合わせたわけではないが、一夏とハモりながら答えた。それまでわくわくとしていた女子たちが凍り付く。

 

「だからまあ、遊びに来るのは危険だな」

 

「そ、そうね……。で、でも織斑君たちとは食事時間に会えるしね!」

 

「だね!わざわざ鬼の寝床に入らなくても――」

 

「誰が鬼だ、誰が」

 

 背後からの声に一同、ギギギギギ……ときしんだ音でも出そうな様子で振り返る。

 

『お、お、織斑先生……』

 

「おう」

 

 そこにはラウラのものとはまた違う印象の黒い水着を身に着けた織斑先生がいた。

 

「お疲れ様です、織斑先生。その水着似合ってますね」

 

 本当は先日ナナコの時に買うのを見ていたので知っていたが、俺はその場にいなかったことになっているし、そもそもその時は着ているところを見ていないので素直に感想を言う。

 

「ふんっ。煽てても何も出ないぞ」

 

 つっけんどんに返す織斑先生だが、冗談抜きに煽ててるわけでもお世辞でもない。

 テレビで見るそこらへんのモデルなんかよりもよっぽどいいスタイルをしている。正直見惚れてしまった。

 まあ、俺の見惚れるはあまり他意のない、綺麗な人がいればなんとなく目が行く、といった感じの〝見惚れる〟なのだが、俺の横の男の〝見惚れる〟は違う意味のように感じた。

 

「そら、お前たちは食堂に行って昼食でもとってこい」

 

「織斑先生はこのまま海にいるんですか?」

 

「まあな。私はわずかばかりの自由時間を満喫させてもらう」

 

 どうやら教師陣はあまり自由時間はないようだ。先生というのも大変だ。

 

「じゃあ、俺たちは昼飯に行ってきます」

 

「集合時間には遅れるなよ」

 

「はい」

 

 織斑先生の注意に頷きつつ俺たちは旅館へと向かう。

 

「なあ一夏。一夏ってお姉さん系……って言うかむしろ織斑先生が好みなのか?」

 

「え!?な、なんだよ、航平。いきなり……」

 

 俺の素朴な疑問に一夏は焦ったように言う。

 

「いや、なんとなく。みんなの水着姿見た時となんか反応が違ったように思ったし、あと、前に綺麗な先輩に会ったって嬉しそうに言ってたし」

 

 まあその綺麗な先輩って俺なんだけどね。

 

「みんな大変そうだね。ライバル多いし、しかも強敵揃い。そこに織斑先生まで入ってくるんなら極めつけだね」

 

 シャルの言葉に頷きつつ俺は心の中で四人の人物の顔を思い浮かべつつ合掌。

 

「確かにすげえよなぁ、織斑先生は」

 

「……一夏、たぶん勘違いしてる」

 

「え? そうなのか?」

 

「なあ、シャル。アイツらの一番の敵は一夏自身だと思うのは俺だけか?」

 

「……だね。はは……」

 

 苦笑い気味にシャルは頷く。

 

「相変わらずのおりむーだねー」

 

「だな」

 

「ちなみにナッシーも人のこと言えないところあると思うよー」

 

「えっ!マジで!?」

 

 本音のショックな指摘に驚愕しつつ俺たちは更衣室へと向かったのだった。

 

 

 ………あれ?そう言えば箒見なかったような気が……。




お久しぶりです。
こっちでもスランプ中なのであまり書けない僕です。
感想を!オラに温かい感想を寄せてくれ!
………冗談です。
特になければいいです。
ただ感想をもらえるとまた頑張ろうって気になるのでもらえるととてもうれしくなります。
それではまた次回!

追記
本音の航平の呼び方が一部違っていたので修正しておきました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。