IS~無い物だらけの物語~(休載中)   作:大同爽

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今回は短めです。


第62話 天災遭遇

 合宿二日目。昨日のような自由時間ではなく、今日は真面目にちゃんと授業だ。丸一日を使ってのISの各種装備試験運用とそのデータ取りだ。特に専用気持ちは装備もたくさんあり、大変だろうと思われる。俺は学園の打鉄を使用しているので一般生徒とやる予定になっている。

 

「ようやく全員集まったか。――おい、そこの遅刻者」

 

「は、はいっ」

 

 織斑先生に呼ばれて身を竦ませたのは、凄く意外な人物、ラウラだった。

 あのラウラが、と意外に思いながらも俺はラウラに視線を向ける。

 

「そうだな、ISのコア・ネットワークについて説明してみろ」

 

「は、はい。ISのコアはそれぞれが――」

 

 織斑先生の言葉に頷いたラウラはすらすらと解説していく。そこはやはり軍人だけあって解説も適切、教科書に載っている言葉のように正確だった。俺や一夏ではこうはいかないだろう。

 

「さすがに優秀だな。では遅刻の件はこれで許してやろう」

 

 織斑先生の言葉にふうと安堵のため息を漏らすラウラ。きっとドイツで織斑先生に相当しごかれたんだろうな。

 

「さて、それでは各班ごとに振り分けられたISの装備試験を行うように。専用機持ちは専用パーツのテストだ。全員、迅速に行え」

 

 生徒全員が返事をする。流石に一年生全員が並んでいるとなんとも迫力がある。ちなみに俺たちは現在IS試験用のビーチにいる。四方を切り立った崖に囲まれた、ちょっとした秘密のビーチみたいだ。

 ここに搬入されたISと新装備のテストが今回の合宿の目的だ。

 ISの稼働を行うので当然みなISスーツ姿だ。海辺なだけに水着に見える。

 

「ああ、篠ノ之。お前はちょっとコッチに来い」

 

「はい」

 

「お前には今日から専用機を――」

 

「ちーちゃ~~~~~~~~~~ん!!!」

 

 ずどどどど……!と土煙とともに人影が崖を駆け下りて来る。その人影は昨日見た人物で……

 

「……束」

 

 そう。昨日会った人物、篠ノ之束博士であった。

 

「やあやあ! 会いたかったよ、ちーちゃん! さあ、今すぐにハグハグしよう! そして愛を確かめ――ぶへっ」

 

 とびかかって来た篠ノ之博士の顔面を片手でつかむ織斑先生。しかもその指は顔に思いっきり食い込んでいた。

 

「うるさいぞ、束」

 

「ぐぬぬぬ……相変わらず容赦ないアイアンクローだねっ」

 

 おお、織斑先生のアイアンクローから抜け出した。やっぱりただ者じゃないのだろう。

 そこから今度は箒の方を向く博士。

 

「やあ!」

 

「……どうも」

 

 姉妹のはずだが、なんだかよそよそしい。そう言えば以前教室で博士の話題になった時にも変な反応をしていた気がする。確か「あの人は関係ない」だったか……。

 

「えへへ、久しぶりだね。こうして会うのは何年ぶりかなぁ。おっきくなったね、箒ちゃん。特におっぱいが」

 

 ゴンッ!

 

「殴りますよ」

 

「殴ってから言ったぁ!しかも日本刀の鞘で叩いた!ひどいよ!箒ちゃんひど~い!」

 

 今のはしょうがないんじゃないだろうか、と思いながらも俺たちは呆然としながらふたりの様子を見ていた。

 

「おい束。自己紹介くらいしろ。うちの生徒たちが困っている」

 

「えー、めんどくさいなぁ。私が天才の束さんだよ、はろー。終わり」

 

 織斑先生の言葉に本気でめんどくさそうにしながらテキトーな自己紹介をする篠ノ之束博士。が、今の自己紹介でポカンとしていた一同もこの人物の正体に気付いたようでこそこそと話し出す。

 

「はぁ……。もう少しまともにできんのか、お前は。そら一年、手が止まっているぞ。こいつのことは無視してテストを続けろ」

 

「こいつはひどいなぁ、らぶりぃ束さんと呼んでいいよ?」

 

「うるさい、黙れ」

 

 一夏も知っているようだし、このふたりも旧知の仲なのだろう。

 

「え、えっと、あの、こういう場合はどうしたら……」

 

「ああ、こいつはさっきも言ったように無視して構わない。山田先生は各班のサポートをお願いします」

 

「わ、わかりました」

 

「むむ、ちーちゃんが優しい……。束さんは激しくじぇらしぃ。このおっぱい魔神め、たぶらかしたな~!」

 

 言うなり、山田先生に飛びかかり、その豊満な胸を鷲掴みにする博士。

 

「きゃああっ!?な、なんっ、なんなんですかぁっ!」

 

「ええい、よいではないかよいではないかー」

 

 なんかさっき言ってたことがもう関係なっていた。

 て言うか見たところ博士はスタイルがよさそうだった。それこそ山田先生とそれほど変わらないくらいはありそうだったので、なんというか巨乳二人のくんずほづれつはなかなかに……ね。

 

「やめろバカ。大体、胸ならお前も十分にあるだろうが」

 

「てへへ、ちーちゃんのえっち」

 

「死ね」

 

 どかっと本気の蹴りにより砂浜へ顔面から突っ込む篠ノ之博士。本当にこの人がISを作った人物なのだろうか。正直ただの変な人にしか見えない。

 

「それで、頼んでおいたものは……?」

 

 ややためらいがちに箒が尋ねると、顔の埋まっていた篠ノ之博士はガバッと起きあがる。

 

「うっふっふっ。それはすでに準備済みだよ。さあ、大空をご覧あれ!」

 

 ビシッと空に向かって指差す篠ノ之博士。その言葉に箒が、そして俺も含めた全員が空を見上げる。

 

 ズズーンッ!!

 

「おわっ!」

 

 突如、上空から銀色のコンテナが降ってきた。すさまじい衝撃とともに砂浜の砂が舞う。

 次の瞬間コンテナの正面が開き、その中身を表す。そこにあったのは――

 

「じゃじゃーん!これぞ箒ちゃん専用機こと『紅椿』!全スペックが現行ISを上回る束さんお手製のISだよ!」

 

 真紅の装甲のそれは篠ノ之博士の言葉に答えるようにゆっくりと出てくる。

 ………えっ?待って。今あの人なんて言った?現行ISを上回る?それって、最新最高性能のISってこと?

 

「さあ! 箒ちゃん、今からフィッティングとパーソナライズをはじめようか! 私が補佐するからすぐに終わるよん♪」

 

「……それでは、頼みます」

 

「もう~また堅いよ~。実の姉妹なんだから、こうもっとキャッチーな呼び方で呼んで――」

 

「早く、はじめましょう」

 

 篠ノ之博士の言葉にとりあわず、促す箒。

 

「ん~。まあ、それもそうだね。じゃあはじめようか」

 

 ピッとリモコンを押す篠ノ之博士。直後、紅椿の装甲が開き、と同時に操縦者を受け入れるように膝をつく。

 

「箒ちゃんのデータはある程度選考していれてあるから、あとは最新データに更新するだけだね。さてと、ぴ、ぽ、ぱ、っと♪」

 

 コンソールを開いた途端に、高速で指を滑らせる篠ノ之博士。さらに空中投影のディスプレイを六枚ほど呼び出し、膨大なデータに目配りをしていく。それと同時進行で、先程と同じく六枚呼び出した空中投影のキーボードを叩いていた。もはや人間業とは思えない速度でキーボードの上を走る十本の指。

 

「近接戦闘を基礎に万能型に調整済みだから、すぐに馴染むと思うよ。あとは自動支援装備も付けといたからね! お姉ちゃんが!」

 

「それは、どうも」

 

 相変わらず箒の態度は素っ気ない。他の人のことをとやかく言いたくはないが、もうちょっと仲良くてもいいんじゃないだろうか。

 

「ん~、ふ、ふ、ふふ~♪箒ちゃん、また剣の腕前が上がったみたいだねえ。筋肉の付き方を見ればわかるよ。やあやあ、お姉ちゃんは鼻が高いよ」

 

「………………」

 

「えへへ、無視されちゃった。――はい、フィッティング終了~。超早いね。さすが私」

 

 態度は相当ふざけてるが、その技術はやはり天才だった。

 

(そう言えば、こいつは近接特化なのかな。腰に一本ずつ日本刀みたいな近接ブレードがある以外何も装備してないし)

 

 そんなことを考えていると、俺の横にいた数名の女子が口を開く。

 

「あの専用機って篠ノ之さんがもらえるの……?身内ってだけで」

 

「だよねぇ。なんかずるいよねぇ」

 

 その言葉に反応したのは、意外なことに篠ノ之博士だった。

 

「おやおや、歴史の勉強をしたことがないのかな? 有史以来、世界が平等であったことななんか一度もないよ」

 

 指摘を受けた女子たちは気まずそうに作業に戻る。それをどうでもいいことのように作業に戻る篠ノ之博士。

 

「あとは自動処理に任せておけばパーソナライズも終わるね。さてと、次は――名無しのゴンベイく~ん!!」

 

「おわっ!?」

 

 突如として自分の作業をしていた俺にすさまじい跳躍を見せて抱き着いて来る(というかチョークスリーパー)篠ノ之博士。

 

「ヘイヘイ、ゴンベイ君。ちょ~っと君のこと調べさせてくれないかな~。ていうか勝手に調べちゃうよ~。えい♪」

 

「はっ!?ちょっ!えっ!?」

 

 篠ノ之博士がまたもピッとリモコンを押すとコンテナの奥から謎の直方体の物体が出てくる。俺の間横にやって来たそれの上に放り出された俺は体を起こそうとするが、すぐさま投げ出されていた両手両足首が固定される。

 

「は~い、じゃあちょっとチクッとするよ~」

 

 言葉とともに医療用サイズの注射器を俺の右腕に刺し、直後容器の中が赤い液体で満たされる。というか俺の血だった。

 

「はいオッケ~!じゃあ次は二、三本髪の毛もらうよ~!」

 

「あいたっ!」

 

 結構がっつり引っこ抜かれた。確かに抜かれたのは二、三本だったが、容赦なくいかれた。

 

「はいオッケ~オッケ~~!!」

 

 俺から採取された血液&髪の毛を俺を固定している謎の台座に開いた引き出しに放り込む篠ノ之博士。と同時篠ノ之博士の目の前に二枚の空中投影ディスプレイとキーボードが現れる。

 

「ふむふむ、どれどれ~」

 

 キーボードを叩きながら二枚のディスプレイを交互に見ていく篠ノ之博士。

 

「あの~、誰か助けて~」

 

 画面に注目してしまってほっとかれてしまってる俺は動けないままきょろきょろと周りを見る。が、残念ながら俺の周りにいた人たちは目を逸らしてそそくさと作業に戻っていく。本音ですら俺に向かって手を合わせてどこかに行ってしまった。どんだけみんな篠ノ之博士に関わりたくないんだよ。

 

「おい、束」

 

「あ、織斑先生。よかった、助かった」

 

 俺の横にやって来た織斑先生に安堵する俺。

 

「どうだ?何かわかった?」

 

「って、千冬さんもそっち側かいっ!」

 

 マジかよ!あなたは篠ノ之博士の暴走を止める側じゃいんですか!?

 

「そっち側も何もお前の精密検査は私から束に頼んだことだが?」

 

「そっち側どころか首謀者!?」

 

「それで?どうなんだ、束」

 

「えっとね~――」

 

「スルー!?いい加減放してほしいんですけど!本郷猛気分になってきたんですけど!改造人間にされそうなんですけど!?」

 

 俺の叫びが砂浜にこだましたのだった。




お久しぶりですが短めですみません。
最近忙しくてなかなか更新できなくて悶々としています。
でも頑張ります!
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