IS~無い物だらけの物語~(休載中)   作:大同爽

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第64話 責任

一夏と箒が戻って来てから約三時間。いまだ一夏は目覚めず、箒も項垂れて一夏の傍らにいる。

俺+専用機持ち組は千冬さんから待機を命じられ、同じ部屋に集まり、今後のことについて話していた。

 

「で?どうするの?」

 

 鈴が口を開く。

 

「どうって……」

 

「まあ、ちふ――織斑先生は今福音を補足するのに作戦室にこもりっきりだろうから、何か行動を起こすなら今だろうな」

 

 俺の言葉に鈴が頷く。

 

「だから確認するの。みんなはこれからやることに参加する気があるのか。……私はやるわよ。このまま黙ってなんていられない」

 

 悔しそうに歯を喰いしばる鈴。そんな鈴を

 

「俺も行く」

 

 しっかりと見据えて言う。

 

「大事な仲間が大怪我して帰ってきたんだ。それに、あいつをこのまま野放しにはできない」

 

 俺の言葉に頷いた鈴。そのまま俺と鈴はまわりに視線を向ける。

 

「わたくしも行きますわ」

 

「僕も覚悟はできてる」

 

「私だって黙っていられるか。もちろん参加する」

 

 この場の全員の意思が統一された。あとは――

 

「とりあえず役割分担だな。先生たちよりも早く福音を見つけ、その場に急行。撃破する」

 

『……………(こくっ)』

 

 全員が頷く。

 

「俺は機体が訓練機だし、知識面でもみんなにはかなわない。だからその辺のことはみんなに任せたい。その代り――」

 

 俺はその場の全員を見渡す。

 

「箒には俺が話を付けてくる」

 

 

 

 ○

 

 

 みんなと別れてから俺はとある一室の前に立っていた。

 今頃みんなは福音を補足するために躍起になっていたり、追加装備をインストールしたり、それぞれ準備を進めていることだろう。残念ながら訓練機の俺には追加装備の類はない。知識も少ない俺では補足する手伝いもできないだろう。――だから、俺は今ここにいる。

 俺は大きく息を吐き、扉に手をかける。

 

「……………」

 

 部屋の中には二人の人物がいた。

 一人は体中に包帯を巻き、意識がないまま布団に横たわる一夏。

 もう一人はそんな意識のない一夏の傍らで、まるで祈るように、贖罪するように、戒めるように俯く箒の姿があった。戦闘の途中で無くしたのか、いつも結んでいるリボンはなく、髪は顔を隠すように垂れている。

 

「よぉ」

 

「……………」

 

 箒の傍らに立ち声をかけるが、箒は一瞬俺に顔を向けただけですぐに俯いてしまう。

 

「………いかにも落ち込んでますって感じだな」

 

 箒の反応はない。

 

「………なあ。一夏がこうなったのって、お前のせいなんだよな」

 

 俺の言葉に一瞬肩を震わせる箒。

 

「俺さ、この作戦が始まる前からなんでか不安だったんだ。作戦もしっかり立てた。準備もしっかりした。きっとうまくいくだろうって……みんなで納得してたはずだった。――でも、なんでか不安は消えなかった。ぶっちゃけ失敗したとき……一夏が負傷したとき、俺、〝やっぱりな〟って思ったよ」

 

 箒の横に腰を下ろし、一夏の眠る顔を見つめながら続ける。

 

「なあ、箒。お前……浮かれてただろ?」

 

 俺の言葉に箒はきつく結んだ拳をさらに握りしめる。

 

「………まあ……今更あの時お前が浮かれてなかったら、なんて言うつもりはないよ。もしもの話をしたって一夏の負傷が無かったことになるわけじゃないし。そんなこと考える暇があったら、今俺たちができることをやるさ」

 

 俺は肩をすくめながら言う。

 

「………今、俺は俺にできることをしているつもりだ。セシリアも、鈴も、シャルも、ラウラも、みんなできることを全力でしてる。……お前はどうなんだ?」

 

 俺は箒の顔を覗き込むように訊く。

 

「お前の今できること、やるべきことって一夏の横でそうやって俯いてることなのか?」

 

「…………私は……」

 

「ん?」

 

 俺の問いに箒が答えるが、その声は小さく、俺は耳を箒の口元に近づける。

 

「わ、私……は、もうISは使わない………」

 

「………っ!」

 

 箒の言葉に俺は箒の胸倉を掴む。

 

「おい、今のは俺の聞き間違いか?今なんて言った?」

 

「私は、もうISはもう使わない」

 

「――っ!」

 

 バシンッ!

 

 俺は箒の頬にビンタをくらわす。

 

「お前何寝ぼけたこと言ってるんだよ!」

 

 箒の目を見据え、にらみつけ、胸倉を掴んだまま顔を寄せる。

 

「周りからずるいって言われながら、それでも自分の姉にわがまま言って専用機もらって。今度はIS使わないってか。随分とわがままばっかりだな」

 

「…………」

 

「専用機を持つってことは責任を持つってことなんじゃないのか?少なくとも代表候補生のみんなはお前みたいなわがままは言わないだろうぜ」

 

「――っ」

 

 俺の言葉に息を呑む箒。

 

「お前はみんなと違って実力で〝こいつ〟を手にしたんじゃない!お前はただ周りよりいい環境にいただけだ!」

 

 俺は箒の右手を掴み、その腕に巻かれた金銀二つの鈴のついた赤い紐――紅椿の待機状態であるそれを箒に見える位置に無理矢理掲げる。

 

「実力で手に入れたんじゃないなら、お前の背負う責任ってのは他の人のそれよりも何倍も重要なんじゃないのか?それをそんなわがまま言いやがって。勝手にもほどがあるだろ!」

 

 怯えたように紅椿から視線を外す箒。その姿に、俺はどうしようもない失望感を感じる。

 俺は箒を掴んでいた手を乱暴に離す。支えを失った箒がその場にへたり込む。

 

「そうか……。俺にここまで言われて何も言い返さないとはな。………お前はそこでずっとそうしてればいいさ。正直失望したよ、箒」

 

 踵を返して部屋を去ろうとした俺。その背後から

 

「――ど……」

 

 漏れ出た箒の声に俺は足を止める。

 

「どうしろと言うんだ!もう敵の居場所も分からない!戦えるなら、私だって戦う!」

 

「……………本当だな?」

 

 俺は箒を見据えながら聞く。

 

「今度は自分の言葉に責任を持てよ?その言葉に嘘偽りないな?」

 

「あ、ああ!」

 

 俺の目を睨み返しながら箒が力強く頷く。

 

「………よしっ!じゃあ行くぞ!」

 

「はっ!?い、行くってどこへ!?」

 

 俺は箒の手を掴みずんずんと進む。背後から箒が困惑した声で訊く。

 

「福音のところだよ」

 

「だ、だがその居場所が……」

 

「大丈夫だ。それなら今ラウラが――」

 

 そう言ったところで曲がり角から軍服姿のラウラと鈴が現れる。

 

「おお、お兄ちゃん。ちょうどよかった。今呼びに行こうと思っていたところだ」

 

「ということは……」

 

「ええ。ラウラが見つけたわ」

 

 俺の問いに鈴とラウラが頷く。

 

「ここから三〇キロ離れた沖合上空に目標を確認した。ステルスモードに入っていたが、どうも光学迷彩は持っていないようだ。衛星による目視で発見した」

 

「流石ドイツ軍特殊部隊の隊長だな。鈴の方は?」

 

「当然。甲龍の攻撃特化パッケージはインストール済みよ」

 

「シャルとセシリアは?」

 

「ああ、それなら――」

 

 ラウラの言葉を引き継ぐようにシャルとセシリアもやってくる。

 

「たった今、高機動パッケージのインストールは完了しましたわ」

 

「準備オッケーだよ。いつでもいける」

 

「よし、あとは――」

 

 言いながら足を止め、俺は箒に視線を向ける。

 

「私……私は――」

 

 先ほどまでの暗い雰囲気は消え、今箒の瞳には決意の色が見える。

 

「戦う……戦って、勝つ!今度こそ、負けはしない!」

 

「よっしゃ!」

 

 俺は箒の言葉に頷き、ぞの場の全員に視線を向ける。

 

「俺らが今からすることは完全に命令違反だ。罰もうけることになるだろう。でも、死ぬほどの処分は下されない。だから――」

 

 俺はそこで言葉をいったん区切り、大きく息を吸う。

 

「全員生きて帰って、ちゃんと処分を受けようぜ!」

 

『おう!』

 

 みんな笑いながらもしっかりと答える。

 

「――まあ、千冬さんなら死ぬほどつらい罰を科す可能性はあるけどな……」

 

 俺は小声で苦笑い気味に呟いたが、俺の言葉は誰にも聞こえていなかったようだった。

 




次回、福音戦!
戦闘描写苦手なのに!
マジ憂鬱っす!
でも頑張るっす!
読者の皆さん、オラに元気を分けてくれ!
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