「くっ……かはっ……!」
ギリギリと首に食い込む指に息苦しさで声が漏れる。
しかも眼前にはエネルギー状の『銀の鐘』が俺の全身を包む。
(あぁ……これは……まずい………)
目の前で輝きを増す翼。一斉射撃まで秒読み。何とか逃げ出そうともがき、破れかぶれに近接ブレードを振るうが空いた手に受け止められる。その掴む力は強く、押しても引いても放してはくれない。
さらに一層輝きを増す翼に俺は覚悟を決め、瞼を閉じる。
ィィィィンッ……!!
『!?』
謎の音とともに俺の首を締め上げていた福音の手が離される。
いきなりのことに驚きながら目を開けた俺が見たものは、強力な荷電粒子砲によって狙撃され、吹き飛ぶ福音の姿だった。
(い、いったい何が……)
戸惑いながら周りを見渡した俺は近くで驚愕の表情で佇む箒の姿を見つける。その視線を追って行った先には
「俺の仲間は、誰一人としてやらせねえ!」
白い輝きを放つ機体を纏った一夏がいた。その姿は見慣れた白式ではなかった。
○
「織斑先生!」
作戦室に突如数人の女生徒が駆け込む。その姿を一瞬振り返り確認した千冬はすぐに目の前のモニターに視線を戻し口を開く。
「今は作戦中だ。入室の許可はない。すぐに出て行け」
「でも、織斑君が……!」
「そんなことはわかっている」
苦悶の表情でつぶやく千冬。その視線の先のモニターには福音のいる海域の情報が表示されていた。そこには福音の他に航平を含む専用機持ちの機体反応、さらに数分前に新たに加わったもう一つの反応――白式の反応が表示されていた。
「くそっ!あのバカどもが……!」
くちびるを噛み、組んだ腕をグッと力強く握りしめる千冬。が、今の千冬には現状を見守るしかない。
周りを包囲している教員を救援として向かわせたいところではあるが、そうしたことで万が一福音が包囲の穴から逃亡すれば大変なことになる。結果、今は彼らに任せるしかない。
ピピーッ!
突如、モニターからアラームが鳴り、包囲していた教員の機体反応が一つ消える。
「どうした!?いったい何が起きた!?」
千冬の言葉に傍らにいた真耶が即座に解析する。
「っ!?大変です織斑先生!機体反応の消えた地点近くを移動する未確認機の反応が!」
「何っ!?」
真耶の言葉に千冬はモニターに視線を戻す。機体反応の消えた地点をアップにした映像に確かに新たな機体の反応が表示されていた。
「どうやら福音が海上を飛行する途中、とある国の海上基地上空を通過したらしく、海上基地より攻撃が加えられ、迎撃した福音によって基地を破壊されたようです。その後たまたま居合わせたその国の国家代表が海上基地より出撃した模様です」
「くそっ!なんてことだ、よりにもよってこのタイミングで……。それで、とある国というのは?」
「それが――」
その国名を聞いた途端、普段冷静なはずの千冬は驚愕に顔を歪めた。真耶の口から出た国名は現状千冬の中で想定していた国の中で最も最悪な国だった。
○
「ぜらあああっ!!」
一夏の放った零落白夜の一閃が福音のエネルギー翼を断つ。が、一夏の放つ二撃目も、俺の放った斬撃も回避される。そうしている間に一撃目で切り落とされた翼も再構築され、こちらへの協力無比な連続射撃を行ってくる。
「くっ!」
「くそっ!」
そうやっているうちに俺の打鉄のエネルギーも一夏の白式のエネルギーも残量が残り20%をきる。
一夏より前から戦う俺はまだもっている方だが、一夏の機体は『第二形態移行』したことで新装備《雪羅》が追加されたせいか、エネルギーの消費が激しい。
この《雪羅》の能力は、状況に応じていくつかのタイプに切り替えるものらしく、時に荷電粒子砲、時にエネルギーのクローを、時にエネルギーを無効化する零落白夜のシールドを生み出す。
そんな装備があることで一夏のエネルギー消費は著しく、俺たちはそろって焦りを感じ始めていた。
「一夏!航平!」
そんな中ダメージ量のために離れたところにいたはずの箒がやってくる。
「箒!?」
「お前、ダメージは――」
「大丈夫だ!それよりも一夏、これを受け取れ!」
箒が一夏に手を伸ばし、触れる。
その瞬間
「なっ!?白式のエネルギーが――」
「回復!?箒、これは――」
「今は考えるな!行くぞ、一夏!航平!」
「「お、おう!」」
言われて慌てて近接ブレードを構える俺と、意識を集中させ雪片弐型のエネルギー刃の出力を高める一夏。
「うおおおっ!」
巨大な光の刃を両腕で支えてふるった壱夏の横薙ぎの一閃を福音は縦軸一回転して回避し、一夏に視線を向けると同時に光の翼を広げる。が、
「箒!」
「任せろ!」
一夏に向けられた翼を紅椿の二刀が並び一断の斬撃で断ち切る。
「逃がすかぁぁっ!」
さらに脚部展開装甲を解放し、急加速の勢いを乗せた回し蹴りが本体に入る。
予想外の攻撃に体勢を崩した福音に
「ざりゃぁぁぁっ!」
さらに追撃として斬撃を浴びせる俺。真上から斬り下ろし、そのまま上に切り返す。そしてさらに斬り下ろし、最後に一発本体へと蹴りいれる。
俺の蹴りで吹き飛んだ先にいた一夏が雪片弐型を構え、残りの光翼をかき消す。
最後の一突きを繰り出そうとする一夏。が、福音は体から生えた翼すべてで一斉射撃を行おうと身構えるが、
「させるか!」
俺の投擲した近接ブレードによって射線を無理矢理曲げられ、その攻撃はあらぬ方向へと飛んでいく。
「おおおおおっ!!」
福音の胴体に刃を突き立て、一夏はさらに全ブースターの出力を最大まで上げる。
押されながらも、一夏の首に手を伸ばす福音。その指先が一夏の喉笛に食い込んだところで、銀色のISはやっと動きを止めた。
アーマーを失い、スーツだけの状態になった操縦者が海へと墜ちていく。
「しまっ――!?」
「あぶねっ!」
一夏が反応するよりも先に俺は落下する人物に追いつき、海面すれすれでキャッチする。
「ったく、アンタはいつもツメが甘いのよ、ツメが」
ダメージから回復したらしい鈴も俺のもとにやってきながら一夏に言う。
シャルもラウラも無事だったらしく、ふたりで並んでいる。セシリアもこちらへと向かってきている。
「なんにしてもこれで――」
俺は安堵の溜息を吐きながら口を開くが、その言葉を遮るよう
「いやー、IS学園一年生の専用機持ちの皆さん、お疲れ様。おかげで手間が省けたわ」
突如として上から声が聞こえた。
『っ!?』
全員が驚きながら視線を向けた先には、夕闇に染まる空を照らす夕日を背に一人の人物がいた。
その人物はピンク色の装甲のISを纏っていた。その装甲は全体的に丸みを帯びており、顔は目元を覆うバイザーによって表情は読み取れない。が、露出している口元には笑みを浮かべていた。また、左の頬骨のあたりにハートの入れ墨をしていた。
ISの左肩の装甲には頬の入れ墨と同じ形のハートのペイントが施されていた。
ピンクのISを纏った女性は変わらぬ笑みを口元に浮かべたまま口を開く。
「それじゃあ、まあ、悪いけど福音の操縦者、ナターシャ・ファイルスをこっちに渡してもらえる?でないと――」
そう言いながら手に持ったセシリアのスターライトmkⅢほどのレーザーライフルを持ち上げる。
――警告!ロックされています!
「殺しちゃうぞ♡」
今回は少し短めでした。
キリがいいところまで書こうと思うとこういう結果に……。
そして新たに現れた謎のピンクのISの女性。
次回もお楽しみに~(´▽`)ノ