IS~無い物だらけの物語~(休載中)   作:大同爽

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すいませんごめんなさい。
ホント不定期ですみません
リアルで忙しくて、時間のある時に少しずつ書いてはいるのですが……。
ホントすいません。


第68話 ただいま

「作戦完了――と言いたいところだが、お前たちは独自行動により重大な違反を犯した。帰ったらすぐ反省文の提出と懲罰用の特別トレーニングを用意してやるから、そのつもりでいろ」

 

「……はい」

 

 一足先に帰還した俺はすぐさま医療スタッフに福音の操縦者を預け、俺自身も診断と治療をしてもらったところで、他のメンバーも帰還。その後旅館の大広間に正座させられた俺たちに浴びせられたのは、それはそれは冷たいお言葉だった。

 俺たちの前には腕組をして立つ千冬さん。その姿と言葉に俺たちは勝利の余韻にも先ほどのザイエス軍の攻撃のことに触れることもできなかった。なにせかれこれ三十分はこのままなのだから。

 帰ってすぐには疲労と緊張その他もろもろで急激な眠気が襲ってきたが、正座させられ千冬さんに睨まれていてはそんな眠気もどこかへと姿を消してしまった。

 

「あ、あの、織斑先生。もうそろそろそのへんで……。け、けが人もいますし、ね?」

 

「ふん……」

 

 怒り心頭の千冬さんに対し、真耶さんは一人おろおろとわたわたと救急箱を持ってきたり水分補給パックを持ってきたりと忙しそうにしている。

 

「じゃ、じゃあ、一度休憩をしてから診断しましょう。あ、診断の終わっている梨野君はそなまま休んでいただいていいですよ。他の皆さんはちゃんと服を脱いで全身見せてくださいね。――あっ!だ、男女別ですよ!わかってますか織斑君!?」

 

 ………流石にそこは一夏も分かってますよ、真耶さん。

 とは思いつつも先ほどまでなりを潜めていた眠気と疲れが戻ってきたことでそれを指摘する気力もない。

 ちなみに『脱いで』のあたりで女子が一斉にそれとなく体を隠していたあたり一夏は信用無いのかもしれない。……その信用無い人間に俺も入っていないことを祈っています。

 さらにちなみに俺以外のメンバーはみんなISスーツのまま、俺は一足先に着替え、体操服のハーフパンツと半袖シャツ姿だ。

 周りでみんなが水分補給をする中俺はそろそろ限界が近くなってきていた。瞼が非常に重い。

 

「あの、真y…山田先生。それじゃあ俺は部屋に戻ってもいいですか?ちょっと眠気がやばいです」

 

「あ、そうですね。どうぞ。本日の予定は特にないのでゆっくりしていてください」

 

「りょうかいでふ」

 

 いかん。ろれつが回ってない。速く部屋に戻ろう。

 

「じゃあ、先に休むわ」

 

「おう、おつかれ」

 

「お疲れ様、航平」

 

 みんなに声をかけ、手を振りながら大広間を後にしようとしたところで

 

「………航平――」

 

「……はい?」

 

 背後から呼ぶ声に振り返りながら返事をしたところで、俺は何かに包み込まれる。

 

「え………?ちふ…ゆ……さん?」

 

「…………」

 

 俺を包むもの――というか人は驚いたことに千冬さんだった。俺は驚愕やら眠気やらで何が起きているのかいまいち理解できずにいた。ただひとつわかるのはこれが、とても心地良く安心できるということだった。

 

「あの……千冬さ――」

 

「あまり心配をかけさせるな、馬鹿者」

 

「えっと………すみま…せん…でした……」

 

 言葉は厳しいが、千冬さんからはそれ以上の気持ちが感じ取れた。

 

「………しかしまあ、無事で何よりだった。よく帰ってきた」

 

「………えっと……ただいま、千冬さん」

 

 千冬さんの言葉になんとも言えない感慨深い気持ちになるとともに、なんとも言えない安心感と幸福感を感じた。

 

「ま…たく……こ…バカ…すこ……これ…じょう…しんぱ…させ…る…な」

 

 あれ?なんか……千冬さんの声が遠い気が……。

 

 

 そこまで考えるのがやっとだった。俺の思考はそこで途切れ、深い暗闇の中に落ちていくような感覚。しかし、不思議と俺の中にあるのは言い表せないほどの安心感だった。

 後から聞いた話だが、俺は千冬さんに抱きかかえられたまま、まるで電池のきれたおもちゃのように、まるで死んだように眠りについたらしい。しかし、その寝顔はその眠り方とは裏腹に(真耶さん曰く)とても心地よさそうなまるで子供のようなあどけない寝顔だったらしい。

 

 

 

 

 ○

 

 

 

「紅椿の稼働率は絢爛舞踏を含めても四二パーセントかぁ。まあこんなところかな?」

 

 空中投影のディスプレイに浮かび上がる各種パラメータを眺め、その女性、篠ノ之束はまるで子供の用に無邪気に微笑む。

 

「それにしても――」

 

 そう言いながら、今度は別のディスプレイを呼び出した束。そこには白式の第二形態の戦闘映像が流れていた。

 それを眺めながら、束は岬の柵に腰掛けた状態でぶらぶらと足を揺らす。

 

「白式には驚くなぁ。まさか操縦者の生体再生までかのうだなんて、まるで――」

 

「――まるで、『白騎士』のようだな。コアナンバー〇〇一にして初の実戦投入機、お前が心血を注いだ一番の機体に、な」

 

「……やあ、ちーちゃん」

 

「おう」

 

 森の中から静かに姿を現した千冬。が、そのことに驚いた様子もなく平然と答える束。

 ふたりは互いの方を向くこともない。背中を向けたまま束は先ほどまでと同様に足をぶらつかせ、千冬はその身を木に預ける。

 ふたりの間にある確かな信頼が、――互いの顔を見ずともわかる、そんな信頼がふたりの間にはあった。

 

 

 ふたりはその後、とある例え話を交わす。それは白い例え話と紅い例え話、そして、ある男子高校生に関する例え話。そして――

 

 

 

「さて、束。例え話はこの辺にしよう。ここからは……実のある話をしようじゃないか」

 

「実のある話か~。いったい何だろうね」

 

 千冬の言葉に束はとぼけたように笑う。

 

「わかっているのだろう?航平のことだ」

 

「あぁ……ゴンベイね……はいはい、なるほど」

 

 ケラケラと無邪気に笑う束。そんな束を見据え、千冬が口を開く。

 

「わざわざお前に頼んで調べさせたんだ。何もわかりません、じゃ困るぞ」

 

「わかってるよちーちゃん。ちーちゃんがわざわざ私に頼むんだもん。でも、妬けちゃうね。あの子がそんなにお気に入り?」

 

「……………」

 

 束の問いに千冬は無言で返す。その顔に表情はなく、肯定とも否定とも取れる。

 

「………まあいいや」

 

 束は肩をすくめ、仕切り直すようにパンと手を一つ打つ。

 

「ぶっちゃけ、今ある機材では詳しいことはわかんないね。今ある数値じゃホントにただのどこにでもいる平凡な人間の男だよ」

 

 新たに呼び出したディスプレイを眺めながら束は言う。

 

「だが、お前には何かあるんじゃないか?あいつの正体に関する何かが……」

 

「ふ~ん?どうしてそう思うのかな?」

 

 千冬の半ば確信した言葉に束は訊く。

 

「そんなもの、お前がアイツに興味を持っているからだ。でなければ、航平のことを〝ゴンベイ〟などとは呼ばんだろう?」

 

「…………」

 

 千冬の指摘に答えず、束はただ笑みを浮かべているだけだった。

 

「………確証はないけど、一つだけ教えて……というか忠告してあげる」

 

 束は笑みを浮かべたまま口を開く。

 

「って言っても、これはちーちゃんもなんとなく気付いてるんじゃないかなぁ?」

 

「…………」

 

「ゴンベイが……彼がまともな人間だとは思わないことだね。彼の過去――生まれも、育ちも、何もかも、ね」

 

「…………」

 

 無邪気な笑みを浮かべ振り返る束に千冬は無言で返す。

 

「まぁまだ確証はないんだけどねぇ!」

 

 冗談めかして言う束。

 

「まっ、結果が出るのを楽しみしててよ。いや、ちーちゃん的には結果が出ない方がいいのかな?」

 

「黙れ」

 

 束の冗談めかした言葉に千冬が怒気を孕んだ口調で言う。

 

「わー怖い怖い。これ以上ちーちゃんが怒る前に退散しようかな」

 

 束の言葉の後に、まるで示し合わせたかのように、岬に吹き上げる風が強くうなりを上げる。

 舞い上がる砂に顔をそむけた千冬が視線を戻すと、そこにはもう束の姿はなかった。

 

 

 ○

 

 

 心地いいまどろみ。それはまるで温かなお湯につかっているかのような感覚。

 が、その心地良い感覚が徐々に薄れていく。まるで使っていたお湯から体を起こすような感覚だった。それと同時に今までとは違う、しかしとても心地良いぬくもりが自分を包んでいるのを感じる。

 

「ん………」

 

 いまだ重い瞼をゆっくりと開く。

 真っ暗な、しかし窓から差し込むうすぼんやりとした(おそらく月の)光によって部屋の中を照らしていた。

 どうやって戻ったかわからないが、どうやら旅館であてがわれている部屋らしい。

 部屋の真ん中にしかれた布団で眠っていたらしい俺。かろうじて見える視界でそれだけ理解し、そろそろ逃避していた現実を受け止めるべきだろう。

 俺の視界の大半を覆い尽くす色は黄色。薄暗い部屋の中でも色がわかるのはそれが目の前にドアップであるからだろう。

 頬に当たる感触も意識したくはないが感じる。

 俺の頭を抱くように眠る人物。少し視線を上に向ければ見慣れた彼女の顔が見える。

 

「おい、本音。本音さーん。起きてくれませんかー?起きてくれないと身動きが取れないんですけどー?」

 

 俺は言いながら動かせる右手で彼女、布仏本音の肩のあたりを叩く。ちなみに左手は下敷きにされていて動かせそうもない。というか多分寝てる間に心地良くて自分で抱き返してるんだろう、俺が。

 まったく何度目だろうか、この感じで目覚めるのは。最初の何週間はなかったが、本音が相部屋の間は一週間に二、三回はこれで目が覚めた。

 

「ん……ん~……」

 

 何度か肩を叩いたところで本音が反応を示す。そのおかげで緩んだ手から頭を抜け出し、体を起こす。そのままゆっくりと下敷きにされていた左手を抜く。

 

「ほら起きろ、本音。……というかなんでいるんだ?ここは俺と一夏、織斑先生の部屋だろ」

 

「んにゃ………ナッ……シー?」

 

 いまだ寝ぼけたように目をこすりながら体を起こす本音。その姿は見慣れたキツネの着ぐるみのようなパジャマ姿だった。

 

「はいはい、そうですよ~。航平ですよ~」

 

「……………」

 

 数秒間俺の顔をぼんやりと見つめた後、ふいに俺に抱き着く本音。

 

「お、おい、どうしたっ?まだ寝ぼけてるのかっ?」

 

「………起きてるよ」

 

 俺の言葉にボソボソと返す本音。その声音に違和感を感じた。なんだかいつもの本音ではないようだった。

 

「………どうかしたか?」

 

 抱き着く本音の背中に手を添え、子供をあやすように撫でる。

 

「………心配した」

 

 呟くように紡がれた本音の言葉。

 

「もう会えないかと……帰ってこないかと思った」

 

「…………」

 

 本音の言葉に俺は何も答えることができない。なんて答えればいいのだろうか。

 

「………悪かった」

 

 俯き、顔を俺の胸のあたりに押し当てる本音の表情は見えない。そんな本音の頭に手を置き、精いっぱいの謝罪の気持ちを込めて撫でる。

 

「……やだ。絶対許さない」

 

 拗ねたような口調で呟く本音。

 

「そう言うなよ」

 

「ぜ~ったいにいやっ」

 

 さらに力を込めて抱き着く本音に苦笑いを浮かべながら俺は訊く。

 

「………じゃあ、どうすれば許してくれるんだ?」

 

「…………今度……かい…ものに……」

 

 俺に顔を押し付けているので籠ったような声になっている。そのせいか聞き取りずらい。

 

「ごめん、良く聞こえなかった。なんて?」

 

「だから!」

 

 がばっと抱き着いたまま顔を上げる本音。

 

「今度買い物に付き合って!そしたら許してあげる!」

 

「…………そんなことでいいのか?」

 

「いいの?ダメなの?どっち?」

 

 ふくれっ面で訊く本音に少しの間を空け、微笑む。

 

「………喜んでお供させていただきます」

 

「ならよし!」

 

 途端にいつもの柔らかい笑みを浮かべ、抱き着き直す本音。

 

「………あの、ちなみにこれはいつまで続くんでしょうか?俺、腹減ったんだけど……」

 

「もう少しー。もう少しこのままでいたいのー」

 

「へいへい」

 

 今が何時かはわからないが、おそらく夕食の時間はとうに過ぎているだろう。

どうやら俺の夕食はまだまだ先のようだ。

 

「………なぁ、本音……」

 

「ん?何?」

 

 俺の呟きに本音が顔を上げ、視線を俺の顔に向ける。

 

「……ただいま」

 

 俺の言葉に少し間を空けた本音は

 

「おかえりー!」

 

 満面の笑みとともに元気にそう返してくれたのだった。

 




はい、というわけで最新話更新です。
前回アップしたのがいつなのか思い出せないほど前です。
というかだいたい三週間も前です。
本当にすいません。
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