IS~無い物だらけの物語~(休載中)   作:大同爽

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お久しぶりです。
前よりは期間をあけずに投稿できましたが、やはりなかなか頻繁には無理ですね。

さて、実は今回はご報告があります。
報告についてはあとがきにて


第69話 帰りのバスの中で

 翌朝。朝食後、すぐにISや専用装備の撤収作業を行った。

 そんなこんなで十時を過ぎたあたりで作業は終了。全員がクラス別にバスに乗り込む。昼食は帰り道途中のサービスエリアで取るらしい。

 

「あ~……」

 

 俺の隣ではボロボロの一夏が座る。かくいう俺も昨日しっかり寝たにもかかわらずいまだ瞼が重い。それでも一夏ほどではない。いうなれば俺は眠気だけ。一夏はなぜか疲労度Max。

 

「どうしたんだよ、なんか異様に疲れてないか?」

 

「ああ……ちょっとな……」

 

「???」

 

 俺の問いに疲れた笑顔で頷く一夏に俺は首を傾げる。

 

「すまん……航平、飲み物持ってないか……?」

 

「あー……悪い、さっき飲んじゃった」

 

「そっか……いや、いいんだ。……誰か、持ってないか……?」

 

 一夏が周りに声をかけるが。

 

「……ツバでも飲んでいろ」とラウラ。

 

「知りませんわ」とセシリア。

 

 ……ホントに何があったの?シャルも気を利かせて飲み物出そうとしたのをラウラが無言で止めてるし。

 最後の望みを込めたような目で一夏が箒を見るが

 

「なっ……何を見ているか!」

 

 ボッと顔を赤く染め、一夏の頭にチョップを叩きこむ箒。地味に痛そうだった。

 

「ふ、ふんっ……!」

 

 そのまま顔をそむける箒。結局誰も一夏に飲み物をくれることはなかった。マジで何をしたんだよ、一夏……。このようすなら二組のバスにいる鈴もこうなのだろうか。

 

「なあ、本音は何か知ってるか?」

 

「ううん。ぜーんぜん」

 

通路を挟んで隣にいる本音に訊くが、本音はのほほんと首を振るだけだった。

 

「……まあいいか。本音は飲み物持ってないか?一夏がかわいそうだ」

 

「あるよー。ちょっと待って――」

 

「「「い、一夏っ」」」

 

「はい?」

 

 本音がカバンに手を入れたところで三人の声が同時に聞こえたので俺と一夏が振り返ると、それと同時に見知らぬ女性が車内に入ってきた。

 

「ねえ、梨野航平くん……あと、織斑一夏くんっているかしら?」

 

「梨野は俺ですけど……」

 

「織斑一夏は俺です」

 

 一番前の席にいたことが幸いし、俺たちは呼ばれたまま、素直に返事をする。

 

「そっか……君たちが……」

 

 女性は俺たちを見つめて目を細める。あれ?この人どっかで見たような……。

 その女性はおそらく二十歳くらい。少なくとも俺たちよりも年上だろう。俺の金髪に近い鮮やかな髪が夏の日差しを受け、眩いまでに輝いていた。

 服装は格好いいブルーのサマースーツ。スーツと言っても千冬さんのようなビジネススーツではなくおしゃれなカジュアルスーツだ。

 

「あ、あの、あなたは……?」

 

 一夏がどこかソワソワした様子で訊く。女性の大人っぽい雰囲気にどぎまぎしているようだ。

 

「私はナターシャ・ファイルス。『銀の福音』の操縦者よ」

 

「え――」

 

「あ――」

 

 驚きの声をあげる一夏。俺は言われて思い出した。そう言えば俺はこの人を知っている。

 

「大丈夫でしたか?一応旅館についてすぐに医療班のひとにお願いしましたけど」

 

「ええ、おかげさまで」

 

 俺の問いに女性が笑顔で頷く。

 

「それで、今日はお礼を言いに来たの。――織斑くん」

 

「は、はい」

 

 女性が一夏に視線を向け、一夏が返事をする。

 

「あなたのおかげで〝あの子〟を止めることができた。本当にありがとう」

 

「い、いえ、そんな……俺は何も……」

 

「そんなことないわ。あなたがいてくれたからこそよ。ありがとう」

 

 ほほ笑みながら言うナターシャさんの言葉に一夏が照れたように頬を掻く。

 

「そして――梨野くん」

 

「はい」

 

「あなたには感謝してもしきれないわ。あなたが私を抱えて逃げてくれたからこそ、私は今こうしてここにいられるんだもの」

 

「そんな……俺はただ逃げただけですよ」

 

「いいえ。あなたが私を抱えて逃げ切ってくれたからこそよ。あそこで捕まっていたら今頃どうなっていたかわからないわ。きっと、無理な裁判にかけられてザイエスに有利な結果になっていたわ。だから――」

 

 ほほ笑みながらナターシャさんが顔を寄せてくる。俺は咄嗟のことに困惑している間に頬にいきなり唇が触れた。

 

「ちゅっ……。これはお礼。ありがとう、ナイトさん」

 

「え?あ……はい……」

 

 何が起こったのかいまだに頭の追いついていない俺は呆けた顔で突っ立ていたことだろう。みな唖然としている中――

 

「あらあら、こんなところで大胆にキスするなんてどこのビッチかと思ったら……ナターシャさんじゃないの」

 

 女性の声が聞こえてきた。その声はどこかで聞いたような気がした。

 声の方を見るとそこには軍服に身を包み口元に意地悪い笑みを浮かべた女性が立っていた。顔の左頬骨のあたりにはピンクのハートの入れ墨があった。

 

「あなたは……」

 

 そんな女性にナターシャさんは鋭い視線を向ける。女性もその視線を真っ向から受け睨み返している。

 

「あの……あなたは?」

 

 そんな中俺が訊く。

 

「あら?私のことわからない?一度会ってるんだけどな~……」

 

 ニヤニヤと笑みを浮かべた女子が言う。さらに謎だ。

 

「あなたのIS、ヘッドギアで顔の半分くらい覆ってたはずだけど?」

 

「ああ、そういえばそうね」

 

 呆れ顔でナターシャさんが言い、その女性は頷くがあの顔はきっとわかってて言ったのだろう。

 

「でも~、声はそのままだったんだから気付いてもいいんじゃない?私寂しいわ。あんまり寂しくって――殺したくなっちゃう♡」

 

 そう言って笑みを浮かべた女性の殺気に俺は背筋を震わせると同時に気付く。

 

「あ、あなたは……まさか……」

 

「あら?気付いてくれた?私の名前はバーンエッジ。ザイエス所属の国家代表操縦者よ。そして――あの時あなたを追い回したISの操縦者よ」

 

 女性の言葉にあの場で遭遇していたメンバーが身構える。

 

「あん。そんなに身構えないでよ。別にお礼参りに来たわけじゃないんだから」

 

 先ほど感じた殺気を引っ込め、女性が笑みを浮かべたまま言う。

 

「よく言うわ。今完全に殺気剥き出しでいたじゃない。いやね、躾のなってない狂犬は。見なさいよ、怯えちゃってるわ」

 

 呆れ顔で庇うように俺を抱くナターシャさん。正直柔らかい感触が頬に当たって落ち着かないんですけど。

 

「そんなの、軽い挨拶くらいの物よ。まあ、どこぞのお礼と称してキスするような盛りのついた雌犬よりはましなんじゃないかしら?」

 

「あら、それこそキスなんて挨拶みたいなものよ。――そう言えばザイエスにもいたわね。砂漠地帯での長期演習で、オアシス見つけて全裸で水浴びして風邪をひいた痴女が。あれは誰だったっけね?」

 

「……ナターシャ?喧嘩売ってるんだったら言ってよ。買ってあげるから」

 

「あら?そんなこと言っていいの?あなた今回の件でIS使えないように取り上げられてるんじゃなかったかしら?またこんなところで問題起こしたらどうなるかわかったものじゃないわよ?」

 

「そういうあなたこそ、福音はコアを凍結されて本国に輸送されたんじゃなかったかしら?」

 

「うふふふ」

 

「あははは」

 

 笑顔で殺気を向け合う二人の女性に俺たちは動けずにいた。下手に動けば巻き込まれそうな異様な雰囲気だった。そんな二人には割って入ったのは――

 

「おやおや、何をしているのかな?」

 

 男性の穏やかな、しかし存在感のある声だった。

 新たに現れたその人物ははっきり言って異様な人物だった。

 初夏にもかかわらずバーンエッジさんのものに似たロングコート軍服に身を包み、頭にはツバのついたベレー帽のような帽子を被っている。何より目を引くのはその右腕と顔であった。その右腕は普通のそれではなく。左腕の倍近いリーチに四倍近い太さの機械の義手であった。また、顔は右目を含め、四分の一近くを機械で覆っていた。

 

「リ、リボル大将……その……こ、これは……」

 

 謎の、リボル大将と呼ばれた初老の男性の登場に青い顔になったバーンエッジさん。先ほどまでの余裕の表情が消えていた。

 

「私は君に何をするように言ったかな?」

 

「え、えっと……昨日の件の謝罪です……」

 

「そうだね。では、もう一度訊こう。――君は何をしているのかな、〝バーンエッジ少尉〟?」

 

「っ!」

 

 リボル大将に視線を向けられ、バーンエッジさんが息を呑む。俺も感じた。その瞬間一瞬空気がピリリと張り詰めたようだった。

 

「……ふぅ。すまないね、IS学園の諸君」

 

 ニッコリと微笑みながらこちらに顔を向けたリボル大将の雰囲気は元の温和な老人に戻っていた。

 

「私の名前はリボル。ザイエス所属の軍人、階級は〝大将〟だ。彼女、バーンエッジ少尉の上官だ」

 

 そう言って恭しく礼をするリボル大将。その様は大将という地位に就くほど人物というより優しい紳士的なおじいちゃんといった雰囲気だった。

 

「今回の件はすまなかったね。暴走状態の福音による攻撃に彼女、バーンエッジくんが独断専行してしまい、君たちに迷惑をかけてしまった。今回こうして出向いたのもその件の謝罪を、と思ってね。バーンエッジくん?」

 

「…………」

 

「バーンエッジ少尉?」

 

「っ!……こ、この度は申し訳ありませんでした」

 

 笑みを浮かべたまま若干の威圧感を増した声で呼ばれたバーンエッジさんはビクッと体を震わせた後、おずおずと頭を下げた。

 

「本当にすまなかったね。彼女の独断先行の処分は今後本国での上層部会議にて決定が下される。それまで彼女は専用機の使用停止と本国への返還、国家代表資格の停止となっている。詳しく処分が決定され次第改めてIS学園に謝罪と報告にお邪魔させてもらう」

 

「……はっ、独断先行…ね。本当はただのトカゲのしっぽ切りなのではないんですか、リボル大将?」

 

「おや?」

 

 背後から聞こえて来た声に笑みを浮かべたままリボル大将が振り返る。その先には腕組をしてバスの入り口に背中を預けるように立つ千冬さんがいた。

 

「これはこれはブリュンヒルデ。お久しぶりですね。最後に会ったのはいつだったかな?」

 

「私がドイツで教官をしていた時、あなたが軍に視察に来た時ではありませんでしたかな」

 

「おお、そうだったね。元気そうで何よりだ、ブリュンヒルデ」

 

「そういうリボル大将こそいまだ現役のようで。それと、私は〝元〟です。そう呼ぶのはやめていただきたい」

 

 雰囲気は旧知の間柄の人物に久しぶりに会ったような会話だったが、ふたりの間には言い表せない重苦しい威圧感があった。

 

「さて、用が済んだのならとりあえずお引き取り願いたい。こちらにもいろいろと予定がつまっている。ここは休憩で立ち寄っただけのサービスエリアなのでね」

 

「うむ、確かに少し長居しすぎたようだ。ここにいない中国の代表候補生にも会わねばいけないので急がねばね。――それでは諸君」

 

 そう言いながらリボル大将がこちらに視線を戻す。

 

「騒がせて悪かったね。また近いうちに会おう」

 

 そう言ってニッコリと笑ったリボル大将はバーンエッジさんを引きつれてバスから下車していった。

 

「………まさかあのリボル大将自らやってくるとは思わなかったわ」

 

 ナターシャさんは詰めていた息を吐き出しながら呟く。

 

「さて、私もそろそろお暇するわ。お邪魔したわね」

 

 そう言って俺の頭を撫でたナターシャさんもバスから降りて行った。その後を追うように千冬さんもバスを降りていく。

 

「……なんて緊張感だよ」

 

 今まで身構えていた一夏は大きくため息をつきながら椅子に座り込む。

 

「こ、コワかった~」

 

 俺も席にへたり込む。と――

 

「ん?どうした、本音?」

 

 横から俺の顔をじっと見つめる視線を感じ、見ると本音が俺の顔をじっと睨んでいた。

 

「………ふんっ!」

 

 数秒間睨まれた後、怒ったようにそっぽを向く本音。

 

「なんだよ、どうしたっていうんだよ、本音?」

 

「べっつに~」

 

 不機嫌そうにそっぽを向いたまま答える本音に俺は首を傾げながら近くにいたシャルロットに視線を向ける。

 

「なあ、何で本音は不機嫌なんだろう?」

 

「……知らない。自分で考えたら?」

 

 ん?なんかシャルも冷たい。なんで?

 

「それより、航平。一夏のど乾いてるんだよね?僕の飲物渡してあげてよ」

 

「お?そりゃ助かる」

 

 シャルの申し出に俺は頷く。が、何だろうこの嫌な予感。やけにシャルの笑顔が怖い。

 

「はい、どうぞ!」

 

「へぶ!」

 

 投げつけられたペットボトルが見事に顔面ヒット。

 なんでこんなにふたりは不機嫌なのか。結局二人は学園に帰るまでムスッとした顔を続けていた。

 




改めましてお久しぶりです。
気付けばこの作品も69話。
ここまで来るの速かったようですけどこの小説を書き始めたのはだいたい二月。
約9か月くらいたったわけですね。

さて、お知らせです。
実はこの度リアルの方が忙しいので二作品同時に続けるのが難しくなってきました。
なので、この「IS~無い物だらけの物語~」を一時的に休載したいと思います。
現在投稿しているもひとつの方、「IS~平凡な俺の非日常~」は続けるので、そっちの話が終わり次第こっちの連載も再開しますのでそれまですみませんがお待ちください。
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