復活させた割になかなか更新しなくてすみません(-_-;)
カランコロンと下駄の音が周りから響く。
オレンジ色に染まる空に目を向けながら周りの音に耳を澄ませと、笛の音や太鼓のお腹に響くようなどっしりとした音が背後の石段の上から聞こえてくる。
この感覚をどこか懐かしく思うのは俺の中にある俺の覚えていない昔の記憶のせいなのかもしれない。
「ナッシ~!」
背後からカランコロンと音を立てながら俺に呼びかける声に振り返ると見慣れた笑顔の本音が立っていた。その姿は薄い桜色の浴衣に赤い帯を巻いた姿だった。髪型はいつも通りなのだが浴衣に合わせたのか赤いリボンでとめられていた。
対する俺も紺色の浴衣に下駄をはいている。何せ今日は――
「さあ、ナッシー!楽しい楽しい夏祭り、存分に満喫しちゃお~!」
「お~!」
ふたりで拳を高々と上げ宣言する。
なぜ本音とここにいるのかと言えば、話は数日前に遡る。
○
「ねぇ、ねぇ、ナッシー」
「んー?なんだよ、本音?」
夏休みも終盤。出されている宿題を片付けるために机に向かっている俺に背後から抱き着き頭の上に顎を乗せている本音。正直冷房効かせていてもこれだけくっつかれると暑くて仕方がない。
「ナッシーってこの夏どこか行ったー?」
「んー……一夏たちとプール行ったくらいかな」
「これ行かない?」
言葉とともにポケットからチラシを取り出す。
「……花火大会?」
チラシは全体的に黒で背景に大きな花火の写真がプリントされ、火のようなデザインで「花火大会」と書かれていた。
「どう?行かない?」
「花火大会って花火見る以外に何かあるの?」
「あるよ~。タコ焼きに焼きそばにイカ焼きにお好み焼き、綿菓子にリンゴ飴にベビーカステラにかき氷、型抜きもおいしいよね」
「食べモノばっかりだな。他にないの?」
「他には…金魚すくいとかヨーヨー釣りとか、くじ引きに射的とか」
「へ~……面白そうだな」
「でしょ~?」
チラシを見ながら言った俺の言葉に本音が楽しそうに頷く。
「どう?行く?」
「んー、面白そうだし行こうかな」
「やった!」
「そうだ、シャルや更識さん、一夏たちも誘って――」
「それはダメ!」
「っ!?」
俺の提案にいきなり大声を出した本音に俺はびくりと体を震わせる。
「ど、どうした急に」
「その……ふたりで行きたいの」
「……………わかった」
俺は数秒考え込んで頷く。
「たまには二人でってのも悪くないか」
「う、うん!」
俺の言葉に嬉しそうに頷き、満面の笑みを浮かべる本音。
「そ、それじゃあ来週の土曜日にねー!」
「お、おう」
元気に手を振りながら去って行く本音を見送りながら俺は花火大会について誰かに聞いておこうと思うのであった。
○
「そう言えば本音、その浴衣似合ってるな。かわいいと思うぞ」
ふたりで石段を登りながら俺はふと本音の方を振り返って言う。
「えへへへ~、ありがとう~」
嬉しそうに笑いながら浴衣の袖に手をしまってフリフリと揺らす。
「でも、なんか不思議な感じだな。いっつもダボダボの袖で隠れてる本音の手が出てる」
「そ~?」
「うん」
などと話しているうちにいつの間にやら俺たちは石段を登り終えていた。
そこには薄暗くなる空の下明るい屋台が奥の神社へと続く石の道の周りに所狭しと並んでいた。
「人多いな」
「まあ仕方ないんじゃないかな~」
俺の言葉の通り時に私服、時に浴衣の老若男女が溢れていた。
「はぐれるとまずいし手でも繋ぐか」
「っ!」
俺の言葉にグリンと俺の方を見る本音。いつもは眠たげに半分ほどしか空いていないその双眸が見開かれている。
「ん?嫌か?」
「そんなことないよー。ささ、繋ごう繋ご~」
「そっかそっか。ほい」
俺がすっと手を差し出すとギュッと握る本音。その握り方は普通のものではなく俺の指に本音の指をからませるものだった。
「…………」
「この方がほどけないよね~」
俺がその手と本音の顔を交互に見ているとニパーっと笑いながら答える。
「それもそうだけど……こういう繋ぎ方もあるんだなぁって思って」
普通に手と手を握るようなやり方しか知らないので何とも新鮮だ。
「それじゃあ行くか」
「うん!」
俺の言葉に楽しそうに笑った後、繋いでいる俺の腕にギュッとしがみついてくる。
「…………」
「人多いから広がらない方がいいでしょ?」
「……そりゃそうだな」
本音の言葉に納得し、俺たちは歩き出した。
「そう言えばナッシーも浴衣似合ってるよ」
「ありがとう」
「その浴衣どうしたの?」
「花火大会についてちふ…織斑先生と山田先生に訊いたら――」
「おい航平」
「あ、千冬さん、真耶さん。どうしたんですか?」
「今度花火大会に出かけるんですよね?」
「ええ、友達と」
真耶さんの問いに頷く。
「そこで私たちであるものを用意したんです」
「あるもの?」
真耶さんの言葉に首を傾げると微笑みながら真耶さんは千冬さんに視線を向ける。
「ほら、織斑先生」
「………ん」
真耶さんに促されてぶっきらぼうに手に持っていた紙袋を俺に差し出す千冬さん。
「これは……?」
受け取った紙袋の中を確認すると中には折りたたまれた大きな布が入っていた。
「それは浴衣です」
ぶっきらぼうな千冬さんに代わり真耶さんが答える。
「浴衣?」
「そうです。花火と言えば浴衣、夏祭りと言えば浴衣です」
「その……なんだ…お前は記憶が無いわけだし、どうせ楽しむなら色々と経験しておくのもいいかと思ってな」
「真耶さん……千冬さん……」
紙袋と千冬さん真耶さんを交互に見てジーンとくる。
「まあ本当なら私としては人の多いところに行くなら変装の一つでもしてほしいのだが」
「ダメですよ!せっかくのお祭りなんですから女装はなしです!」
「山田君がこう言ってきかなくてな」
「とか何とか言って織斑先生も決めるときにさんざん考えてらっしゃったじゃないですか」
「それは…あの青の浴衣よりこちらの方が航平には似合うと思ってだな……」
「そうですね~、確かにそうですね~」
「何か言いたそうだな、山田君」
「いえいえ、何も!」
ギロリと真耶さんを睨みつける千冬さんに慌てて否定する真耶さん。その二人の姿になんだかおかしくなり俺は笑みを浮かべる。
「ありがとうございます。ありがたく使わせてもらいます」
「フン……まあ…楽しんで来い」
「当日は着つけも手伝いますからね」
「――ってことがあってさ」
「へ~」
俺の回想に納得したように頷く本音。
「織斑先生って意外とナッシーへの面倒見いいよね~」
「まあ織斑先生と山田先生は俺の親代わりみたいなところがあるしな」
屋台を見渡しながら俺は頷く。
「ところでさっそく何か食べるか?そろそろいい時間だろ」
「そうだね~……そう言えばナッシーお金持ってるの?」
ふと気付いたように本音が首を傾げる。
「大丈夫。織斑先生がこれで遊んで来いってお小遣いくれたから」
「なんか本物の親みたいだね~」
本音の言葉に納得しながら俺たちは屋台巡りをしたのだった。
○
「いや~、食べた食べた。遊んだ遊んだ」
神社の境内にふたりで座り込みながら先ほどまで焼きそばの入っていた容器を袋に仕舞い、脇に置く。そこには焼きそばの他にお好み焼きやたこ焼きやイカ焼き、各種お菓子のゴミなどが置いてある。
「おいしかったね~。こういう縁日の出店って不思議なおいしさがあるんだよね~」
そう笑顔で言う本音の横には俺と同じくらいの食べた後のゴミが置かれている。
「屋台の食べ物もおいしかったけど、くじ引きとかも面白かったよ。でも結構やったのに当たりでなかったな。あれ当たりはいってんのかねぇ~」
言いながら棒状の紙でできたおもちゃを前後に振りながらシュルシュルと伸び縮みさせる。
「それは永遠の謎だね~」
のほほ~んと笑いながら水風船のヨーヨーをパンパンと弾きながら遊ぶ本音。
「そう言えばそろそろ花火が上がる時間だな」
「そうだねー」
ぼんやりと空を見上げながら呟く俺たち。
「……なあ、本音」
「ん~?」
「ありがとうな」
「え?」
俺の言葉に本音が顔をこちらに向ける。
「本音が誘ってくれなきゃ俺はこんな楽しいことを経験せずにいただろうからさ。まあ覚えてないだけかもしれないけどね」
「…………」
「だからさ、何も知らない…何も無い俺に俺の知らない経験をさせてくれてありがとう」
「ナッシー………」
俺の言葉に本音はじっと俺のことを見ているだけだった。
「ねえ、ナッシー……」
「ん?」
じっと俺のことを見ていた本音が口を開く。
「その……私…私、ナッシーのことが――」
ドォォン!!!!
本音の言葉を遮るように轟音が響く。それはまるで爆弾でも爆発したかのような大きな音だった。
見上げると真っ暗な夜空に明るい花が咲いていた。
「お、花火始まったみたいだな」
俺は座っていた境内から腰を上げ、立ち上がる。
「へぇ~話でしか聞いてないけどホントに大きな音だな。それにでっかい。綺麗だな」
「…………」
本音に同意を求めるように言ったが本音からの返事はない。
俺はそこから数分間続く花火に目を奪われていた。
「そう言えば何か言いかけてなかったか?」
花火も終わり、変える支度をしようと振り返って本音の顔を見たとき、先ほど本音が何かを言いかけていたことを思い出す。
「え!?あ、うん。それは……」
俺の問いに歯切れ悪く目を泳がせる本音。
「うん……なんでもない。それほど重要なことじゃないよー」
「そうか?」
「うん」
笑顔で頷く本音。
「じゃあ……花火も終わったしそろそろ帰るか」
「うん………ねぇ、ナッシー!」
「ん?」
ゴミをひとまとめにし、片付けていた俺は顔を上げる。
「どうした?何かやり残したことでもあったか?あ、なんか他に食いたいものでもあるとか?」
「そ、そうじゃなくて……その……」
もじもじと何か言いたそうにしている本音に首を傾げる俺。
「ナッシー……手を出して!」
「手?」
俺は首を傾げながら右手を差し出す。
「……こっちはダメ!左手!」
「は?なんで?」
「ISついてるからダメ!速く左手!」
よくわからないまま言う通り左手を差し出すと本音は自分の髪を止めていたリボンを片方ほどき、俺の手首に結ぶ。
「で、私も……」
もう片方のリボンもほどき、今度は自分の右手に結ぶ。
「これでよーし!」
「……何が?」
満足げな本音とは裏腹に俺はまだよくわかっていない。
「何これ?」
本音に向けて左手を掲げてリボンを指さす。
「ん~…お守り、かな?」
「お守り?」
「ナッシーってたまに危なっかしいところあるからさ、ナッシーに記憶があってもなくてもこれがある限りナッシーの居場所はここだよーって」
いつもののほほんとした笑顔で自分の右手のリボンを俺の掲げる左手にコツンとぶつける。
「………そっか」
俺は数秒ほど自分のリボンと本音のリボンを見比べ、口を開く。
「ありがとう、本音。大事にするよ」
「うん!」
「ただいま戻りました~」
「あ、お帰りなさい、航平君」
IS学園に戻ってきた俺は真耶さんと千冬さんの元を訪ねた。
「ただいま、真耶さん、千冬さん」
「どうだ?楽しかったか?」
「ええ!そりゃもう!屋台の食べ物は美味しかったし、ゲームも面白かったし、花火は綺麗でしたし」
「それはよかったですね」
「はい!あ、これふたりにお土産です!俺がとった金魚です!」
「ありがとうございます、大事に育てますね」
「まあありがたくもらっておこう」
俺の差し出した金魚を真耶さんは嬉しそうに、千冬さんはぶっきらぼうではあるものの受け取ってくれた。
「ところで、航平」
「はい?」
「さっきから気になっていたんだが、その左手のリボンは何だ?行くときにはなかっただろう、それは」
「ああ、これですか?」
左手を上げ、浴衣の袖を少しめくってリボンを出す。
「これは……大事なお守りです」
はいと言うわけで夏休み編突入ですが、いきなり夏休みが半分過ぎているΣ(・□・;)
まあ夏休みなんてあっちゅうまですよね。
この間終業式だったと思ったら気付けばもう明日は始業式なんてのはよくある話ですよね。
最近平凡なの方を最新話上げていたのでもうちょっとバランスよく交互に生いきたいところですね。
ではまた次回をお楽しみに!