「それで、朝の件ですけど……」
「あぁ、そうだったわね」
お茶を飲み、一息ついたところで一夏が切り出す。
本音も真面目な話だということを感じ取ったのか大人しくなる。
「なんで、あんな提案をしたか、だけど……端的に言えばクレームが来たからなのよ」
「「クレーム?」」
会長の言葉に俺と一夏は首を傾げる。
「そう。あっちこっちから寄せられてきたのよ、一夏君と航平君をどこかの部活に入れろって」
「でもそれは……」
「二人の言いたいことはわかるわ」
顔を見合わせて一夏が言いかけた言葉に会長は頷く。
「うちは女の子たちばかりだから当然部活も女の子だけ。どこに入っても男の子である二人では競技に参加することもできないし、航平君に至っては記憶喪失のせいでそもそも部活動にまともに参加できるかどうかも怪しい」
「わかってるなら――」
「でもね、クレームが来た以上、私たちも動かないわけにはいかないのよ」
俺の言葉を遮って会長がため息をつきながら言う。
「で、いろいろと議論した結果、緊急処置として今朝のようになったってわけよ」
「なるほど……」
「でも、それなら言ってくれれば俺らだって」
「あら?賛成してくれた?」
「それは……」
「それに、もしそれで自分たちで入る部活を決めるって言われても、それはそれでうちにクレーム来ただろうしね」
「へ?なんでですか?」
「もう二学期にもなってしまったら、いまさらあなたたちがどこか一つに自主的には言っても不平不満はでるのよ。つまり、どうしてもこういう形で二人をどこかに強制的に入れるしかなかったってわけ」
首を傾げる俺に会長は
「あ、その代わり、お詫びと言ってはなんだけど、これから二人の特訓、私が見てあげるわ」
「「はぁ!?」」
「あ、でも、航平君はバーンエッジ先生とナターシャ先生に師事してるんだったわね……まあたまに意見させてもらうってことで先生たちにも伝えておきましょう」
驚愕する俺たち二人をよそに会長は勝手に話を進めていく。
「い、いやいやいや!勝手に話進めてますけど」
「俺ら指導の手は足りてるんで!」
「あら?受けておいた方がいいと思うけど?」
俺らの言葉に会長は笑いながら言う。
「いや、だからいいですって。大体、どうして指導してくれるんですか?」
「ん?それは簡単。君たちが弱いからだよ」
何でもないことのようにさらっと言われたことで、一瞬俺はその言葉の意味が分からなかった。
一夏も同じように呆けた顔をするが、すぐにむっとした表情になる。
「それなりには弱くないつもりですが?」
「ううん、弱いよ。無茶苦茶弱い。だから、ちょっとでもマシになるように私が鍛えてあげようというお話。あ、航平君はいいわ。バーンエッジ先生とナターシャ先生に教わってれば大丈夫」
「は、はぁ……?」
会長の言葉にムッとしながらもまあ自分が弱いのは事実、バーンエッジ先生とナターシャ先生に教わっていれば大丈夫とお墨付きをもらえたのもあって一応は冷静になれた。
なにより、近くに俺より怒ってる一夏を見ていれば、こっちは冷静になるというものだ。
怒りを抑えるようにぐっとこぶしを握り締めた一夏は立ち上がり会長を指さす。
「じゃあ、勝負しましょう」
「あ、バカッ」
「俺が負けたら従います」
「うん、いいよ」
俺が止める間もなく一夏が言い、会長はにっこりと笑いながら頷いた。
その顔は『ウケケケ、罠にかかった』とでも言わんばかりの表情だった。
一夏もそれを見て、やってしまった、と言う顔で呆けていた。