滞ってた更新、やっとのこと再開です!
一夏が生徒会長の挑発に乗って数分後、俺たちは場所を移動し武道場に移動した。
移動したのだが――
「キュ~……」
武道場の畳の上で胴着姿の一夏が目を回していた。
「あちゃぁ~……ちょっとやりすぎちゃったかしらね~?」
一夏の前に立つ同じく胴着姿の生徒会長が乱れた胴着の胸元を直しながら言う。
と言うのも、この武道場に移動してから一夏と生徒会長が試合をすることになったのだが、一夏への勝利条件が「生徒会長から一本取ること」だったのだ。
え?それでいいの?そんな簡単でいいの?と思っていた俺と一夏の予想に反して生徒会長は強かった。まぁ~強かった。
それでも一夏も健闘した……したのだが、何がどうなったのかわからないけど、気付いたら一夏は生徒会長の胴着の胸元をガバッと開き、その豊満な胸と下着を丸見えにさせてしまっていた。
それでスイッチの入った生徒会長の攻撃によって一夏が一瞬宙に浮いた。冗談じゃなく数秒間宙を舞った一夏は気付けば畳の上に大の字で倒れていたのだ。
「さて、気絶しちゃった一夏君にはそのままちょっと寝ててもらって、次は航平君の番ね……って、何してるの?」
「さぁ?」
「ぶぅ……」
いい汗かいたぁ~と言う笑顔でこちらを向いた生徒会長は首を傾げる。
生徒会長の言葉に俺は首を傾げ、俺のほっぺたを引っ張って本音は頬を膨らませて不満げな表情を浮かべる。
ちなみに俺も胴着姿である。
「ナッシー、いまお嬢様のことエッチィ目で見てた~!」
「うっ……」
「あら?そうなの?」
本音の言葉に俺は声を漏らし、生徒会長はニヤリと悪戯っぽく笑う。
「……まあそりゃ見ましたよ?見たさ。そりゃ見るよ!でもそれは条件反射と言うか男のサガであって――」
「ふうぅ、運動してちょっと熱くなっちゃったわねぇ~」
「っ!」
「ナッシー!!」
「いたたたたたたたたっ!!」
俺に見せつける様に胴着の胸元をパタパタと開いて仰ぐ生徒会長。
その柔らかな白い肌とちらりと見えた谷間に視線が釘付けになるが、それを遮るように本音が俺の頬を引きちぎらんばかりに引っ張る。
「お嬢様もお嬢様だよ!」
「あはは~、ごめんごめん。まさか本音ちゃんがここまで怒るとは……」
本音の剣幕に生徒会長も苦笑いを浮かべる。
「ほんへ、そほそほはなひてほひいんあへほ?」
「もうお嬢様のことエッチィ目でみない?」
「……………うん」
「いま間があった~!!」
本音の言葉に頷いた俺だったが、納得できないらしい本音は手を放してくれない。
「はいはいはい!イチャイチャするのは後にしてもらっていいかしら?ここ借りてられる時間も限りがあるのよ」
「……は~い」
生徒会長の言葉に本音が渋々と言った様子で手を放す。
本音が引っ張っていた頬はまだジンジンと痛む。
「さ、航平君、早く畳に上がっておいで」
「……はぁ」
生徒会長に促され、俺は畳に上がる。
「聞いてるわよ。定期的に織斑先生に稽古つけてもらってるのよね?ナターシャ先生とバーンエッジ先生からも特別指導をしてもらってるし」
「ええ、まあ」
「これは期待してもいいのかしら?」
「……………」
生徒会長の言葉に俺はため息をつき
「生徒会長……一つ忠告しときます」
「あら?何かしら?」
笑みを消さないまま少し警戒の色を強くする。
そんな生徒会長に俺は髪をかき上げながら視線を鋭くして睨みつけ
「あんまり気を抜いてると――怪我しますよ?」
○
そして数分後、畳の上に俺はひっくり返って足の間から顔を覗かせていた。
「えぇ……」
そんな俺を見ながら生徒会長が唖然としている。
「さっき超決め顔で『あんまり気を抜いてると――怪我しますよ?(キリッ)』って言ってたのなんだったの!?」
「言いましたよ?気を抜いてたら怪我しますよ……俺が」
「そっち!?」
俺の言葉に生徒会長がツッコミを入れる。
「ナッシー大丈夫~?」
「大丈夫。受け身だけは自信があるんだ」
「その体勢のまま会話するのやめて」
俺の前に屈んで股の間の俺の顔を覗き込んでくる本音に応じていると微妙な顔した生徒会長がツッコむ。
「で?さっきはなんか流れで気にしてなかったんですけど、なんで俺も試合してんですか?」
「だからその体勢で話をしないでよ」
俺が生徒会長に視線を向けると、生徒会長が困ったように顔を反らしながら言う。
「え?なんでですか?」
「その…どこ見ていいか困るっているか……あなたの顔を見て話そうと思ったら否が応でもあなたの股間とお尻が視界に入るし……」
「??? 俺ちゃんと下穿いてますよ?」
「そうだけど!!」
首を傾げる俺に生徒会長が叫ぶ。
「しょうがないっすね……」
「なんでしぶしぶなのよ……」
俺は言いながら体勢を戻して立ち上がる。
「で?なんで俺まで試合する必要があったんですか?」
「ん~……まあ正直ついでかしらね。二人が今どのくらいの力量か見たかったし」
「はぁ……なるほど……」
生徒会長の言葉に俺は一応納得する。
「で?今の俺はどんなもんでした?」
「ん~…悪くはないのよ。一夏君と同じかちょっと及ばずくらいかしらね?」
俺の質問に生徒会長がう~んとうなりながら言う。
「ただなんて言うのかしらねぇ……なんかちぐはぐなのよね」
「ちぐはぐ?」
生徒会長の言葉に俺は首を傾げる。
「なんていうかね?あなたの動きは基本的には素人に毛が生えた程度なのよ。でもね?所々で熟練者並みの動きをするというか、細かい所作がしっかりしてるって言うか」
「どういうことですか?」
「ん~……上手く説明できないのよ」
首を傾げる俺に生徒会長は頭を掻く。
「たぶんだけど、あなたはまだ自分の体の使い方をわかってないのよ」
「なるほど、ちょっと何言ってるかわかりません」
さらに難解になった説明にさらに首を傾げる。
「航平君って記憶ないでしょ?」
「ええ、まあ」
「たぶんだけど、記憶を失う前の航平君、かなりの実力者だったはずよ」
「え、そうなんですか!?」
驚く俺に生徒会長は「たぶんだけどね」と頷く。
「本来なら記憶を失っててもある程度動き方は体が覚えてるものだけど、航平君の場合それすらも忘れてるのね。超・記憶喪失とはよく言ったものね」
感心した様子で生徒会長は言う。
「つまり、航平君は体の動かし方さえおもいだせば今の何倍も強くなると思うわよ」
「はぁ~……なるほど」
「まあきっと今後も特訓を続けていれば何かのタイミングで思い出せるかもね」
「わかりました。とりあえず今のまま頑張ってみます」
生徒会長の言葉に俺は頷く。
「それじゃ、今日はこの辺で。私は一夏君を医務室にでも連れて行ってくるわ」
「あ、はい」
「じゃあねぇ~バイビ~」
と、ひょいと一夏を背負った生徒会長は笑いながら手を振って去って行った。
「……………」
残された俺と本音はそれを見送る。
生徒会長が見えなくなると、俺はふと自分の掌を見つめる。
何度かそれを閉じたり開いたりし、最後にギュッと握りこむ。
「……本当の俺、か」
ちなみに投げられた航平君の体勢は俗に言う「まんぐり返し」です