やったぜ8話
てなわけで始まるよ♪
「…………」
「…………」
「…………」
食堂にて、俺、一夏、篠ノ之さんは昼食を取っていた。俺は豚骨ラーメン、一夏と篠ノ之さんは日替わり定食(鯖の塩焼き定食)を食べている。三人とも無言。他二人はどうなのか知らないが、俺はなんとなく口を開きずらいので黙っている。
なぜ、こんな無言の三人で昼食を取っているのか。それはこんな出来事があったからだ。
○
「………なあ、物は試しに一人頼んでみようかというあてはあるんだが」
一夏の言葉に俺はうなずく。
「任せるよ。俺にはもともとあてなんてないし、頼れる相手なんて先生くらいのもんだ。でも、先生に頼るのは最後の手にしたいしな」
「わかった。とりあえず、そいつも誘って一緒にこれから飯食いに行こう」
「おう」
俺が頷くと、一夏は教室の端、窓際へと向かう。俺も一夏の後に着いて行く。
「なあ、箒」
「…………」
「篠ノ之さん、飯食いに行こうぜ」
一夏が篠ノ之さんに声をかけるが、篠ノ之さんは無視。あてって篠ノ之さんのことか。
(どうするんだ、一夏。がっつり無視されてるぞ)
(どうしよう。どうにかしないと俺も頼れるの箒くらいだし)
俺たちが小声で相談をしていると、
「ねえねえ、ナッシー」
俺の背中に乗っかってくる人物がいた。というか布仏さんだった。
「私たちも一緒について行ってもいい?」
見ると俺と一夏のすぐ近くにもう二人女子がいた。
(一夏、こうしよう。この子たちも一緒に連れていくんだ。男二人に篠ノ之さんで行くより、頼みずらくなるかもしれないけど、同じ女子がいる方が篠ノ之さんも来てくれるかもしれない)
(なるほど。それでいこう)
「よし、みんなで学食に行くか」
「うんっ」
俺の背中で布仏さんが嬉しそうに笑い、後ろの二人も小さくガッツポーズしている。
「てなわけで、行こうぜ」
一夏がもう一度篠ノ之さんに向き直る。
「……私は、いい」
「まあそう言うな。ほら、立て立て。行くぞ」
「お、おいっ。私は行かないと――う、腕を組むなっ!」
一夏が無理矢理篠ノ之さんを立ち上がらせ、ぐいぐいと引っ張って行く。
「なんだよ歩きたくないのか?おんぶしてやろうか?」
「なっ……!」
ボッと顔を赤くする篠ノ之さん。いや、そこまでするのは……。
「は、離せっ!」
「学食についたらな」
「い、今離せ!ええいっ――」
篠ノ之さんの腕に絡ませていた一夏の腕が、肘を中心に曲げられる。「あっ」と思った瞬間にいつの間にか一夏の体が反転。一夏は床の上に投げ飛ばされていた。
「…………」
な、何があったんだ!?さっきまで立っていた一夏が床の上に寝ている。しかも、ものすごく痛そう。まわりの女子もぽかんとしている。
「腕上げたなぁ」
「ふ、ふん。お前が弱くなったのではないか?こんなものは剣術のおまけだ」
一夏が腰をさすりながら立ち上がる。今の動きは「おまけ」ってレベルじゃなかったように思うんだが。
「え、えーと……」
「私たちはやっぱり……」
そう言って二人の女子が少しづつ後ずさりしていく。
「ほら、あんたも」
「えー。やだー」
俺の背中に引っ付いていた布仏さんを引きはがし、三人は(一人は引きずられて)退散していった。
「…………」
一夏はぱんぱんと服についたほこりを払う。篠ノ之さんは「私は悪くないぞ」と言いたげに、腕を組んでそっぽを向いていた。
「箒」
「な、名前で呼ぶなと――」
「飯食いに行くぞ」
がしっ。一夏が篠ノ之さんの手を強引につかむ。
「お、おい。いい加減に――」
「黙ってついてこい」
「む……」
「行こう、航平」
「おう」
一夏のにべもない言葉に篠ノ之さんはされるがままについてきている。
以上、回想終わり。
○
そんなこんなでただいま学食にいる俺たち三人。あー、豚骨らーめんおいしい。
「なあ、そういやさあ」
「……なんだ」
味噌汁に口を付けながら篠ノ之さんが返事。一夏も焼き鯖の身をほぐしながら続ける。
「俺たちにISのこと教えてくれないか?このままじゃ来週の勝負で何もできずに負けそうだ」
「くだらない挑発に乗るからだ、馬鹿者め」
それを言ったらおしまいだ。……まあ、その通りなんだけどな。
「それをなんとか、頼むっ」
箸を持ったまま、ぱしりと手を合わせて篠ノ之さんを拝む一夏。おっと、俺も。
「…………」
しーん。無視された。それどころか黙々とほうれん草のおひたしを食べている。
「なあ、箒――」
「ねえ、君たちって噂の子でしょ?」
いきなり、隣から女子に話しかけられた。見ると、三年生のようだ。リボンの色が違う。一年は青、二年は黄色、三年は赤だ。癖毛なのかやや外側にはねた髪が特徴的で、人懐っこい顔立ちをしている。さすが三年生だけあって容姿だけでなく雰囲気も大人びている。
「はあ、たぶん」
一夏が返事し、横で俺がうなずくと、先輩は実に自然な動きで俺の隣の席にかけた。組んだ腕をテーブルに乗せ、若干傾けた顔を俺たちに向けてくる。
「代表候補生のコと勝負するって聞いたけど、ほんと?」
「はい、そうですけど」
俺はうなずきながら返事をする。噂ってそこまで広まってるのか。
「でも、君たちって素人だよね?IS稼働時間いくつくらい?」
「いくつって……二〇分くらいだと思いますけど」
「俺もそれくらいです」
「それじゃあ無理よ。ISって稼働時間がものをいうの。その対戦相手、代表候補生なんでしょ?だったら軽く三〇〇時間はやってるわよ」
具体的に何時間以上がすごいのかわからんが、このままではオルコットさんと戦っても負けるのは明らかなようだ。
「でさ、私が教えてあげよっか?ISについて」
言いながらずずいっと身を寄せてくる先輩。おお。なんて親切な人だ。
「「はい、ぜ」」
二人で顔を見合わせ、是非に、と言おうとした言葉は、
「結構です。私が教えることになっていますので」
食事を続けながらいきなり言った篠ノ之さんの言葉に遮られた。あれ?いつの間に教えてもらうことになったんだっけ?
「あなたも一年でしょ?私の方がうまく教えられると思うなぁ」
「……私は、篠ノ之束の妹ですから」
言いたくなさそうに、それでもこれだけは譲れないとばかりに篠ノ之さんが言う。
「篠ノ之って――ええ!?」
先輩はここぞとばかりに驚いた。そりゃあなぁ、ISを作った人の妹が目の前にいればしょうがない。俺だって事前に知っていなければこのくらい驚いていただろう。
「ですので、結構です」
「そ、そう。それなら仕方ないわね……」
さすが世界的な天才の妹。その名前を聞いただけでこの反応とは。
「なんだ?」
「なんだって……いや、教えてくれるのか?」
「そう言っている」
「それって、俺にも教えてくれるの?」
「………ああ」
あ。今、間があった。ほんとは嫌なのか?というか、これまでの反応を見てるとなんか……。
まあ、ともあれ、これでISのことを教えてくれる人は確保できた。あとは残りの時間でどれだけできるかだ。
「今日の放課後」
「「ん?」」
「剣道場にこい。一度、腕がなまってないか見てやる。梨野の実力がどれほどのものなのかも」
「いや、俺たちはISのことを――」
「見てやる」
「……わかったよ」
「はい」
篠ノ之さんの有無を言わせぬ声に俺たち二人はうなずくしかなかった。
いやー、書いてると長いですね。
やっと、ここまで来たって感じです。
この調子で頑張ります。
追伸
前回の話に主人公が一夏に布仏さんを紹介する場面を入れていなかったので入れておきました。
そんな重要なことでもないし、会話二、三個分ですが。