IS~無い物だらけの物語~(休載中)   作:大同爽

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第89話 シロの実力

 

「全っっっ然ダメ」

 

 第二アリーナにて俺が打鉄を纏って全力で走らせた様子を見て、開口一番シロが呆れた様子で言う。

 何故俺がシロから罵られているのか、それは数十分前にロボ研の部室でベリアル先生が今度のキャノンボールファストの話題を出したことで始まった。

 聞いて驚いたが、シロは出ないらしい。彼女やベリアル先生、シトリー先生が所属している組織の制約とか諸々のために出場しなかったらしい。

 なら、俺は?という話になり、あれよあれよという間に何故かシロにアドバイスをもらうことになった。

 なったのだが――

 

「全然ダメ。まるでダメ。話にならない。ねぇ本気でやってる?もしそれで本気なら向いてないからやめた方がいいよ」

 

「辛辣!辛辣すぎねぇか!?」

 

「妥当な評価でしょ」

 

俺の言葉にシロがため息まじりに言う。

 

「まあまあ、シロちゃん。そんなに言うほど悪くなかったように思うよ?」

 

「シトリーさん……!」

 

「まあ無駄な動きとか多かったのは事実だけど」

 

「シトリーさん……」

 

 あげて落とすのはやめていただきたい。一瞬喜んだのに……。

 

「というか、そんだけ言うんだったらお前もやってみろよ!」

 

「は?私が?なんで?」

 

 俺の言葉にシロが眉を顰める。

 

「そんだけ言うんだ、お前相当自信があるんだろうなぁ!?まさか、自信ないのにあそこまで俺の事ダメだししたんじゃねぇよな!?」

 

「はぁ?」

 

 俺の言葉にシロがギロッと俺を睨む。

 

「まあ確かに正論だな」

 

 と、俺の言葉にベリアルさんが頷く。

 

「あんだけ言ったんだからお前も実際に走って見せればいいじゃねぇか。実際に見せた方が自分のと違いもわかるしよ」

 

「それは……まあ……」

 

 ベリアルさんの言葉にシロが言い淀む。

 

「はぁ……わかりましたよ。一回だけだから」

 

 ベリアルさんに頷き、俺の方を睨みながら言う。

 そして、スタート位置に立ったシロはISを纏う。彼女のISは組織で所有している訓練機らしく、ラファールで、しかし、学園のモノと色が違い、白地に灰色のラインが走っている。

 

「じゃあ行くよ~。位置について、よぉ~い……ドン!」

 

「っ!」

 

 シトリーさんの掛け声でシロが走り出す。

 

「っ!?」

 

 その様に俺は息を飲む。

 初動からして俺とは違う。一瞬で加速しあっという間に走っていき

 

「っ!」

 

「ほい、おかえり」

 

 目の前で急ブレーキをかけて止まる。

 

「は、はえぇ~」

 

 アリーナの円周を走り切ったシロに俺は呆然と呟く。俺なんかとは比べ物にならないスピードだ。

 

「どう?」

 

「……参りました」

 

「フンッ」

 

 諦めて降参する俺に満足そうにシロが鼻を鳴らす。

 

「確かにシトリーさんの言う通り、それなりに走れてるかもしれない。でも、カープを曲がるときやちょっとした姿勢の微調整で無駄な動きが目立つ。そう言うところを直せばあんたのスピードはもっと良くなる。でも、たぶんあんたの場合もっと根本的な部分がダメ」

 

「根本的な部分?」

 

 シロの言葉に俺は首を傾げる。

 

「あんた、ISでカスタマイズしてないでしょ?」

 

「…………?」

 

 シロの言葉に考えるが、意味が分からず首を傾げる。

 

「はぁ……、いい?確かにISは操縦者に合わせてある程度は自動で調整してくれる。でも、それはあくまでもある程度なの。自分に合った機体にしたかったら、自分の感覚に合わせて出力をいじったりいろいろ必要なの」

 

「なるほど?」

 

 なんとなくわかったようなわからないような……。

 

「俺はISのらねぇからわかんねぇが、俺の知り合いが前に大雑把に説明してくれた例え話だと――」

 

 思い出しながら言うベリアルさん。

 

「ISを靴だとするだろ?同じメーカの靴である程度自分にあったサイズの靴はあっても多少の誤差はある。それを中敷きとかでクッション性を加えたり、靴紐の結び方とかを変えることで走りは全然変わる…ってことらしいぞ」

 

「なるほど、そっちの方がわかりやすいっすね」

 

「まあ多少違うけどそう言うことと思ってたらいいわ」

 

 ベリアルさんの言葉に頷く俺にシロも頷く。

 

「というわけで、走るときのテクニックを身に着けて、機体そのものをカスタマイズすれば、まあよくなるんじゃない?」

 

「うんうん。私もそう思うよ~」

 

 というわけで、とシトリーさんが言い

 

「せっかくだからシロちゃん、カスタマイズの仕方教えてあげたら?」

 

「……はい?」

 

 シトリーさんの言葉にシロが呆けた顔をする。

 

「な、なんで私がこいつに……?」

 

「いい機会じゃない。せっかくロボ研に来てるんだし、多少は知識があった方が手伝いもはかどるでしょ」

 

「それは……まあ……」

 

「と言うわけでけってぇ~い!早速よろしく~!」

 

 と、俺とシロをぐいぐいと押すシトリーさんにしぶしぶシロに連れられ俺は歩き出し

 

「あれ?二人は来ないんですか?」

 

「行きたいのはやまやまだけど、私たちは教師として来てるからねぇ~。仕事がアレコレあるんだよ~。ね、ベリアル?」

 

「んあ?お、おう。そういう訳でふたりで行ってこい」

 

「そうですか……」

 

 ベリアルさんの言葉にシロが頷き

 

「まあ教える以上はビシバシ行くから」

 

「お、おう。お手柔らかに……」

 

 シロの言葉に俺は苦笑いを浮かべ着いて行くのだった。

 

 

 ○

 

 

 

「それで?何かあいつらに聞かせられない話でもあったのか?」

 

 廊下を歩くベリアルは自身の肩に乗っかるシトリーへ小声で訊く。

 

「ん~、大した話じゃないんだけどね、というか、あの二人じゃなくて、主に航平君に、だけどね。シロちゃんには後で話しておくつもりだったから」

 

「何かあったのか?」

 

 シトリーの言葉にベリアルが視線をシトリーに向けて足を止める。

 

「ん~、実はさぁ、さっきの航平君の走り」

 

「おう、まあ悪くは無かったな」

 

「うん、思ったより悪くなかった。思ったより、ね」

 

「なんだその含みのある言い方は?」

 

 ベリアルは訝しそうに首を傾げる。

 

「事前に見せてもらった彼の普段の成績、それに加えてここに来てから実習とか放課後の練習の様子を見るにもっと出来が悪いと思ってたんだよ」

 

 ベリアルの視線を受けてシトリーが言う。

 

「でも、ベリアルも気付いてるでしょ?そんな彼が急に動きがより洗礼された。格段に良くなった」

 

「……まあな」

 

「何が原因で?これまでの練習の成果と思えない。じゃあ何か……ずっと考えてたんだけど、今日やっとわかった」

 

 頷くベリアルにシトリーは続ける。

 

「たぶん彼、記憶を取り戻しかけたことで技術の一部を身体が思い出してるんだよ」

 

「だが、あの生徒会長の話では記憶を取り戻しかけた時の技量は目を見張るものだった。国家代表レベルって。それにしては今日の走り無駄も多いし、とても国家代表レベルとは思えなかったが……」

 

「だから言ったでしょ、技術の一部だって?それに身体が覚えてたって彼自身にそれを使える自覚が無きゃそれをうまく活用できないんだよ」

 

「なるほどな……」

 

 納得したようにベリアルが頷き

 

「で、それがどうすんだ?」

 

「うん、話聞く限りじゃ半信半疑だったけど、あれ見ちゃったら本来の彼が国家代表レベルて言うのもあながちあり得ない話じゃない。でも、これまで男性操縦者は確認されていなかった。なら、表に出ていないところ、裏組織関連の可能性が高い」

 

「つまり、うちで保管してる裏組織所属の工作員で情報からあいつの正体を探ろうってことか」

 

「そゆこと~」

 

 ベリアルの言葉に笑みを浮かべて朗らかにシトリーが頷く。

 

「それで情報出るのか?」

 

「さぁ?」

 

「さぁって……」

 

 肩を竦めるシトリー。

 

「見つかるかはわからない。でも何もしないよりは彼についてわかる可能性はあるでしょ?」

 

「まあな……」

 

「その辺は私が手続きしとくから。なんかわかったらすぐに知らせるよ」

 

「おう。まあ期待せずに待ってるよ」

 

「うん、任せて~」

 

 頷くシトリーにベリアルは歩き出し

 

「さて、言った以上は仕事すっか。手伝ってくれな」

 

「自分でやってよ。私は自分の分終わらせたんだから」

 

「書類仕事は苦手なんだよ」

 

「がんばれ~」

 

 ブツブツと文句を言いながら職員室へと歩いて行くのだった。

 

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