そして、あっという間に時間は流れ、気付けばキャノンボール・ファスト当日。
俺は今、本音と一緒に試合会場で観戦していた。俺たち訓練機を使っての面々は午前に、そして、今から一夏たち専用機組がレースを行う。
午前の俺のレースは練習の成果もあって無事優秀な成績を収めることができた。これで後でシロからネチネチ言われずに済みそうだ。
「ねぇねぇ、ナッシーは誰が勝つと思うー?」
「ん~、難しい質問だなぁ~」
本音の問いに俺は腕を組んで考える。
「箒と一夏は追加パッケージ無しで十分に早い。でも鈴とセシリア、ラウラとシャルロットの機体も追加パッケージでものすごく早くなってる。う~ん、難しい……」
「なるほどねぇ~」
俺の答えに納得したように本音が頷く。
「じゃあナッシー的に誰に勝ってほしいー?」
「……さらに難問、というかそれ誰か一人言ったらなんかいろいろ角が立ちそうなんだけど」
「だよねぇ~」
俺の言葉にケタケタと笑う本音。
「まああれだ……みんな頑張れ~!!」
「頑張れ~!!」
俺が叫ぶ隣で本音ものほほ~んと応援する。
俺たちの声が聞こえたのか一夏が何かを探すようにキョロキョロと客席を見回している。
「お~い!」
そんな一夏に本音は手を振るがやはりかなりの集客だ。俺たちのことを識別できないようだ。
とか何とか言ってると一夏が箒に引っ張られてスタート位置に連れられて行く。
「お、もうそろそろ始まるのかな?」
「みたいだねぇ~。さ、誰が勝つかなぁ~?」
俺たちが見守る中、会場にアナウンスが響く。
『それではみなさん、一年生の専用機持ち組のレースを開催します!』
そして、シグナルランプが点灯した。
3……2……1……Go!
ランプの点灯と同時に一列に並んでいた一夏たちはいっせいに走り出す。
みんなまるで撃ちだされた弾丸のように駆ける。
そしてあっという間に第一コーナーを過ぎ、セシリアを先頭に列ができる。
と、そんな中で鈴が前に進み出て横を向いていた衝撃砲を前面に向けて連射する。
その弾丸をかわそうと横にロールしたセシリア。それを爆発的な加速で鈴が抜き去る。
得意げな顔で笑う鈴だったが、その市井も一瞬だった。鈴の背後にぴったりと付いていたラウラが前に躍り出る。
咄嗟に衝撃法を放とうとする鈴だったが、ラウラの判断の方が早かったらしく大口径リボルバー・キャノンがわずかに早く火を噴く。
それによりコースから一瞬外れセシリアとともに最後尾へ。
一夏とシャルロットと箒もそんな中で前に躍り出ようと乱戦をしながらラウラを追いかけ、鈴とセシリアも再び追い上げ始める。
白熱のレースは二周目に突入――そんな時、異変は起きた。
突如、トップを走っていたラウラとシャルロットが上空から飛来した機体によって撃ち抜かれる。
「!?」
コースアウトするラウラとシャルロットを見下ろす襲撃者。
直後、会場にアラームが鳴り響く。
「きゃあああっ!」
誰かの悲鳴が聞こえる。突然の事態に大会主催者側もどう対応していいかわからず、パニックは客席に広がっていった。
「ナッシー!?」
「落ち着け本音!みんなも!とにかく落ち着いて行動しないと大騒ぎになる!」
「落ち着いて!みなさん、落ち着いて避難してください!」
近くでスタッフが叫ぶが、混乱した観客にはその声は届いていない。
「クソッ!このままじゃ怪我人も出るかも――」
「ナッシーあれ!!」
と、本音の言葉に彼女の指さす方向を見れば
「っ!一夏っ!」
一夏が謎の襲撃者による一撃を受け、吹き飛んでいた。
そのまま壁際まで吹き飛んだ一夏に襲撃者はさらに追撃のためにその銃口を向け――
「っ!」
放たれたビーム攻撃は一夏に当たらず、一瞬早く間に入ったシャルロットのシールドに防がれた。
その衝撃にシャルロットのシールドは大破する。
しかし、襲撃者はそれでは終わらず一夏とシャルロットにその銃口を向ける。が、一夏に向かって銃口を向けていた襲撃者にセシリアが最大出力で突進。そのまま襲撃者をアリーナのシールドバリヤーに何度も叩きつけるように突進し、バリヤーの壊れた四回目の突進とともに市街地の方角へと飛び去る。
その後を一夏と鈴が慌てて追いかける。
「っ!」
「ナッシー?」
その光景に俺は唇を噛む。そんな俺に本音が不安げな顔で見る。
「本音、みんなのこと頼めるか?」
「え…?こ、航平は……?」
「俺は……行って来る!」
「っ!」
俺の言葉に本音が息を飲む。
「本音も気を付けろ!この状況、我先に逃げる観客が前の人間押したり大変なことになるはずだ!みんなに十分落ち着いて行動するように言ってやってくれ!」
俺は言いながら観客と逆方向に駆け出し――
「待って!!」
そんな俺の腕を本音が掴む。
「本音……?」
「待って!お願い!行かないで!!」
俺の腕を掴む本音の様子に俺は息を飲む。
「どうした?」
「わかんない!わかんないけど、嫌な感じがするの!」
「嫌な感じ?」
縋りつく様に言う本音の言葉に俺は呆然と聞く。
「わかんない!わかんないけど今ここでナッシーを行かせちゃいけない気がして…!」
「…………」
本音の言葉に俺は優しく微笑みかける。
「大丈夫。お前の心配するようなことないよ」
「でも……」
「大丈夫。帰ってきたら一緒にお菓子食べようぜ」
そう言って俺は本音の手をやんわりと解き
「相川さん悪い!本音のこと頼む!」
「え!?あ、うん!」
近くにいた相川さんに本音を任せ、俺は駆けだしたのだった。