「あぁん?」
スコールとともに部屋から出て来た男の姿にオータムは顔を上げ
「なんだ、そいつもう目が覚めたのか?エムに半殺しにされたって聞いてたのになぁ」
ニヤニヤ笑いながら言うオータムの言葉にニッと笑った男は
「よぉ、オータム。相変わらず頭悪そうな顔してんな」
「っ!?てめぇ、ダウンプーア!んだよ戻ったのかよ!」
オータムは男――ダウンプーアの言葉に驚く。
「一応聞いてやる、881002040602」
「310806292232」
「チッ、本物か」
「非常用のコードか。てことは、〝前の俺〟にも試したんだな」
舌打ちするオータムの様子にダウンプーアは笑いながら言う。
「あぁ?てめぇ覚えてねぇのか?」
「ああ。少しも覚えてねぇ。今しがた概要は母さんから聞いたがな」
「そうかよ」
「まあ強いて言うなら、うっすらとぬるま湯にでも浸かってた夢でも見てた気分だけがなんとなく残ってるくらいか。なんか鈍ってるみたいで肩凝った感じがするよ」
ダウンプーアは「ん~」と伸びをしながら首を回すとポキポキと鳴る。
「ダウンプーア」
と、そんな彼のもとにエムがやって来る。
「やあ、エム。なかなか手荒に起してくれたみたいだな」
「半分はお前のためだが、もう半分はお前の顔で平和ボケした顔をしてるのがイライラしたせいだ。許せ」
笑いながら皮肉を込めて言うダウンプーアにエムも口元に笑みを浮かべて返す。
「チッ、生意気なガキ同士でつるみやがって」
そんな二人の様子にうんざりしたようにオータムは髪をかき上げる。
「じゃあちょっと間はカンを取り戻すために療養ってところか?」
「冗談だろ?」
オータムの言葉にダウンプーアは肩を竦める。
「今はとりあえず大暴れしたい気分なんだ。何かを壊したい。俺、ずいぶん善人ヅラしてたみたいだからたまっちゃって……」
ダウンプーアは言いながら右肩に左手を当ててグリグリと回す。と――
「おい、ダウンプーア。なんだそれは?」
「ん?」
と、エムの言葉にダウンプーアはエムの指さす自身の左手に視線を向ける。そこには赤いリボンが結び付けられていて――
「なんだ、このボロ布?」
「それ、記憶が戻る前のあなたが後生大事につけていたわよ?」
と、首を傾げるダウンプーアに言う。
「ふ~ん……」
スコールの言葉に頷きながらダウンプーアはそのリボンに手をかけ、外そうと引っ張り
「っ!!?」
「どうした?」
痛みでも走ったように一瞬眉を顰めたダウンプーアにエムが訊く。
「…………」
エムの言葉に答えずリボンを見つめながらダウンプーアは人知れず困惑する。
(何だ今の感じは?なんなんだこれは…?何故外せない?)
困惑しながら数秒思案し
「……いや、なんでもない」
かぶりを振って顔を上げ
「それより、今後の予定は?なんか作戦とか練ってるの?俺やりたいことがあるんだけど」
「あら、そうなの?何かしら?」
スコールは興味深そうに訊く。
「俺、あのIS学園ってところに世話になってたんだろ?覚えてねぇが世話になったんならちゃんと〝お礼〟しておきたいな、と思ってさ」
「へぇ?」
ダウンプーアの言葉にスコールは興味深そうに目を細める。
「いいわね、それ。私も息子がお世話になった人にはしっかりと〝挨拶〟しておきたいわ」
スコールは頷きながら言い
「ちょうどいいわ。今仲間にと声をかけている人物がいるんだけど、あなたの目的に」
「へぇ、それは気になるね。是非合わせてほしい」
「ええ、もちろんよ」
二人はそう言ってニヤリと笑い合った。
――はじまったみたいだ
――もう完全に、以前の〝俺〟に戻ったようだね
――……おそらく俺も、もうじきこの頭の中から消されるだろう
――しかし、君もしぶといねぇ
――ゴキブリ並の生命力だ、賞賛に値するよ
――ま、後は頑張って
――君とはほんの少しの付き合いだったけどなかなか……楽しかったよ
――それ…じゃあね
――バイ…バイ……