銀魂✖️デートアライブ✖️Gemini   作:ゼロナナ

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15話

【大江戸座の暗闇と、母親の愛の尊さ】

バリバリバリッ……!! ボリボリボリッ……!!

昭和の香り漂う古びた映画館『大江戸座』の暗闇の中、スクリーンから放たれる青白い光が、ポップコーンのバケツを両手で抱え込んだ少女の顔を照らししていた。

「……なぁ、十香。お前、ポップコーンの減り方早くねぇか? まだ映画始まって十五分だぞ。バケツの底が見えてんじゃねぇか」

「なにを言う銀時! 映画館の暗闇と塩味の効いたポップコーンは、精霊の精神安定において不可欠な宇宙の真理なのだ! 見ろ、あの宇宙(そら)を駆けるアライグマの勇姿を! 素晴らしいではないか!」

十香は目をキラキラと輝かせながら、上映されている『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の画面に釘付けになっていた。

だが、数時間後――。

映画館のロビーに投げ出された二人は、上映が終わったばかりのスクリーンから漂う圧倒的な満足感と、そして何とも言えない胃もたれを抱えながら、ボソボソと感想戦を始めていた。

第二章:MCU実父クズすぎ問題と、母親の愛

ロビーの長椅子に腰掛け、銀時がペットボトルの緑茶をグビッと飲み干しながら腕を組んだ。

「ふぅ……。にしてもだ、十香。お前、さっきの『VOL.2』の後半観ててどう思った?」

「うむ……!」と、十香は力強くうなずいた。

「あの、ピーター・クイルの本当の父親だという『エゴ』……最初は優しげな顔をして現れて、どんなに素晴らしい父親かと思いきや……自分の野望のために宇宙中の星を侵食しようとした挙句、ピーターの母親に直接『脳腫瘍』を植え付けて殺した張本人だったなんて……あれは胸糞が悪かったぞ!」

「だよなぁ!!」

銀時が膝を叩いた。

「なんだよあのオッサン! 自称『生きた惑星』とか名乗ってカッコつけてる割に、やってる事のゲスさが人間のクズの比じゃねぇだろ! 息子とキャッチボールして喜んでたのは何だったんだよ、全部演技かよ!」

銀時は頭をガシガシとかきむしる。

「ていうかさ、よくよく考えたらさ……MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の実父って、大体クズか、方向性間違えて子供を精神的に追い詰めるヤバい奴ばっかじゃねぇか!? オーディンは勝手に姉の存在隠蔽するし、サノスは毒親オブ毒親だし、残る実父どもは揃いも揃って『お前が俺の野望の道具になれ』みたいな奴しかいねぇの!」

「ひどい話だな……! 親の愛情というものは、もっとこう、無償で温かいものであるべきなのに……!」

十香が神妙な顔つきでポップコーンの空き箱を握り締めたその時だった。

「――愚問だな」

「……っ!?」

静まり返ったロビーの影から、凛とした、しかしどこかトチ狂った低音ボイスが響いた。

第三章:桂小太郎とエリザベスの乱入、そして母の愛を語る

スルスルと闇から滑り出てきたのは、白磁のような肌に涼しげな目元、そしてトレードマークの長髪をなびかせた男――桂小太郎であった。彼はなぜか映画館のスタッフジャンパーを無理やり羽織り、真剣な面持ちで腕を組んでいた。

その傍らには、無言のままシュールに佇むエリザベスが、カサカサと素早くプラカードを取り出してこう書き殴っていた。

【プラカード:親父の背中より、母の作るハンバーグ】

「おい、いつの間に潜り込んでやがったヅラ!」

銀時が反射的にツッコミを入れると、桂はふっとフキダシを漏らし、流麗な手つきで自身の長髪をかき上げた。

「ふっ……銀時、言葉を慎むがいい。拙者はただの不法侵入者ではない。映画館の片隅にて、あの壮大なる銀河の叙事詩――『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』における親子の絆、とりわけ『母親の愛の偉大さ』について深く瞑想していたところなのだよ」

桂はスッと人差し指を立て、いかにも知った風な口調で語り出した。

「考えてもみよ。ピーター・クイルが宇宙の荒波にもまれ、いかなる絶望の淵にあっても心の支えとして持ち続けていたのは、他でもない――亡き母メレディスが遺してくれたカセットテープであり、彼女が最期に息子へ注いだ無償の愛の記憶でござる! どんなに冷酷な生きた惑星(エゴ)が宇宙を支配しようとも、一人の母が我が子に向けた真摯な愛情の前には、いかなる星の侵略も無力化されるのでござるよ!」

「お、おう……。なんか急にまともで熱いこと言い出したぞこの野郎」

銀時がわずかに圧倒されていると、桂の隣でエリザベスがすかさず新しいプラカードを掲げた。

【プラカード:母の愛は地球を救うが、小遣いは五百円だった】

「リアルな私生活の思い出を挟んでくるな! 母の愛のスケールが急に中学生の財布事情に落ちたぞ!」

十香は、目の前に現れた長髪の怪しい男と、喋らないのにやたら主張の激しい白い生き物をジト目で観察しながら、桂に向かって尋ねた。

「お前が……桂か。銀時が言っていた、頭のネジが外れた相棒というやつだな。……ふむ、お前は今『母親の愛』について熱く語っていたが、お前にとって母親の愛とはそれほどまでに尊いものなのか?」

十香の問いかけに、桂はふっと目を細め、どこか遠い目をした。

「……むろん、でござるよ」

桂の口調が、いつになく静かで、どこか郷愁を帯びたものに変わる。

「拙者にも母上はいた。幼き日、藩の政争や武士としての厳格な教育のなかにあって、母親の温もりだけが拙者の心を繋ぎ止める唯一の光であった。たとえ世のすべてが敵に回ろうとも、母上だけは常に拙者の味方でいてくれた……。だからこそ、エゴのような身勝手な実父が母の愛を冒涜し、命を奪ったことに対して、拙者は銀河の彼方からでも一刀両断の怒りを覚えざるを得ないのさ……!」

「ヅラ……お前、たまにはまともなセリフ吐くじゃねぇか……」

銀時が少しだけ感心したように目を細めたその瞬間――。

エリザベスが猛烈な勢いで新しいプラカードをガサゴソと書き換えた。

【プラカード:ちなみに我が母(中の人)は、今でも実家でパチンコのチラシをチェックしている】

「一気に現実の生活感と哀愁が押し寄せてきたわ!! 美しい思い出の語りを台無しにするな!!」

銀時が思わず叫ぶと、桂は慌ててエリザベスのプラカードを引っぺがし、「こらエリザベス! 今のは雰囲気作りのための繊細な叙情シーンであって、貴様の母親のパチンコ事情を暴露する場ではない!」と真剣な顔で小言を叩き始めた。

十香はその様子をぼんやりと眺め、それからふっと小さく微笑んだ。

「……母親の愛、か。私にはよく分からないが……銀時が私に『十香』という名を授けてくれたときや、お前たちがこうしてくだらない言い争いをしている空気のなかに……もしかしたら、それに似た温もりがあるのかもしれないな」

十香のその言葉に、銀時は少し照れくさそうに後頭部をポリポリと掻き、桂は「ほう、名前を授けたか! 素晴らしい! では今日の記念に『攘夷がJoy! 母親の愛は永遠なりスペシャル』と銘打って、全員で蕎麦を食いに行くぞ!」と全く文脈を無視した提案を大声でぶち上げた。

夕暮れのかぶき町の映画館の前。

マーベル映画の重苦しい毒親問題から始まったはずの会話は、いつの間にか狂気と人情が入り混じるいつものドタバタへと溶け込んでいくのだった――!

(第十五話・終わり)

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