【バズーカを持った顔だけのゲス野郎と、真面目に狂っている攘夷志士】
「ふぅ……やっと静かになったと思ったら、どいつもこいつもマルチバースの歪みより頭のネジが狂いすぎやがる……」
映画館の前で桂を追い払い、銀時と十香がほっと一息をついた、まさにその瞬間だった。
ドゴォォォォォン―――ッ!!!
かぶき町の裏路地から、突如として爆音と凄まじい硝煙が巻き起こった。
「な、なんだ!? 敵襲か!?」
十香が反射的に大剣を構え、銀時が「うわっ、なんだまたヅラのバカが自爆でもしたのかよ!」と耳を塞ぐ。
その煙の向こうから、のそりと姿を現したのは――赤茶色の短髪に、どこか気だるげで、しかし極上の美少年然とした顔立ちをした男であった。
彼の肩には、こともなげに担ぎ上げられた巨大なバズーカ砲。その銃口からはまだフツフツと白煙が立ち上っている。
「ちっ……あのヅラ野郎、足だけは妙に速いんでィ。今度こそあの長い髪をまとめて生け簀の餌にしてやろうと思ったのに……」
そう呟きながら、赤ん坊のように冷徹な、しかし涼しげな瞳を向けたのは――真選組一番隊隊長、沖田総悟であった。
その顔立ちは確かに、道行く女性が思わず振り返るほどの整った美形――だが、その内面から漂うオーラは、どう見ても「取り柄と言ったら顔だけのゲス野郎」そのものである。
「おいおい……。よりによって、一番関わっちゃいけない凶悪なサディスト犬がこんなところに湧いて出やがったぞ……」
銀時が頭を抱え、盛大に舌和田をした。
第二章:現場でのドSと天パの遭遇
バズーカを地面にドンと立てかけた沖田総悟は、ボーッとした目つきで銀時を見据えた。
「おや、旦那じゃねぇですか。こんなガキ連れてデートですか? 随分と趣味がいいことで……って、おや? その女の子、随分と威勢よく大剣なんて振り回してまさァ。ひょっとして、真選組の新しい手配書に載る予定の不法滞在者ですか?」
「誰が不法滞在者だ、このドSの目隠し野郎!」
十香がカッと目を見開いて怒声を浴びせると、総悟はふっと不敵な笑みを浮かべた。
「おや、口の利き方がなってねぇ野郎だ。こいつは教育が必要だなァ。ま、ちょうどいい。さっきまで追いかけてたヅラを取り逃がしたとこですし……代わりにアンタらをまとめて、このバズーカの的として粉々に吹き飛ばしてやりますぜ」
そう言って、総悟はスッとバズーカ砲の銃口を銀時たちのほうへ向けた。
「おいおいおい待て待て待て! なんだお前は! デート中の一般市民(※自称)に向いきなり実弾兵器向けてんじゃねぇよ! お前のその整った顔立ちのせいで世間の風当たりが弱くなって調子に乗ってんじゃねぇぞ、この顔だけのゲス野郎!」
銀時が冷や汗を流しながら木刀の柄を握りしめ、必死のツッコミを入れる。
「顔がいいって褒め言葉は、この江戸じゃ処刑の免罪符になりませんぜ、旦那。さあ、耳を塞いでくだせぇ。耳鳴りで一生パチンコの音が聞こえなくなる特等席を用意してあげまさァ」
緊迫した空気が路地裏を支配し、総悟の指が引き金にかけられようとしたその瞬間――!
路地裏の物陰から、さっき追い払われたはずの桂小太郎が、なぜかポップコーンの入ったバケツを抱えながらヌッと姿を現した。
「待て総悟! その無垢なる少女と我が盟友・銀時を標的にするなど、武士道に反するでござる!」
「あ、いたのかよヅラ! お前もう帰ったんじゃねぇのかよ!」と銀時が叫ぶ。
「ヅラではない、桂だ!! そして総悟、貴様が日頃から愛好しているそのバズーカの撃ち方にこそ、真の映画愛が足りぬと見た! いち早くMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の奥深さを語るがいい!」
「……は? なんですかコイツ。急に頭のイカれたテロリストが映画の講釈垂れ始めましたよ」
総悟が呆れたようにバズーカを下ろすと、なぜかその場の空気が「戦闘」から「ガチのMCU映画談義(なぜか強制)」へとシフトせざるを得ない雰囲気に包まれてしまった。
第三章:それぞれのMCU愛(原作通りの口調と呼び方で)
「……はぁ。まったく、これだから江戸の治安はめんどくせぇんだよ」
銀時が大きくため息をつきながら、仕方がなさそうに頭を掻いた。
「おい総悟、お前みたいなゲス野郎が普段どんな映画観てやがるか知らねぇがよ、せっかくのデートを邪魔した罰だ。お前の好きなMCUのキャラと、フェーズごとの好きな作品くらい吐いてから地獄に落ちやがれ」
総悟はふっと不敵な笑みを浮かべ、バズーカを担ぎ直した。
「ほぅ……いいでしょう。私の歪んだ美学に共感できるか見ものですねァ。
私の好きなMCUキャラはズバリ――『パニッシャー(フランク・キャッスル)』です。裁判も法律も無視して、自分の気に入らない悪党を容赦なく銃と暴力で血祭りに上げるあのストイックでゲスいまでの私刑スタイル、実にリスペクトできますねァ。
そしてフェーズごとの作品ですが――
フェーズ1は『アイアンマン』。トニー・スタークが自分の利益のために我が道をいく傲慢さが最高です。
フェーズ2は『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』。信頼していた組織が内側から腐敗してグチャグチャになる陰謀劇は、見ていて最高にワクワクしまさァ。
フェーズ3は『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』。正義の味方同士が仲間割れを起こして、身内で泥仕合の足の引っ張り合いをする姿は、人間味があって実に美しい。
フェーズ4以降は『デッドプール&ウルヴァリン』ですかね。倫理観を完全無視して切り刻み合う血みどろのコンビネーションは、私の理想の殺し合いそのものです」
「お前の好み、一貫して『他人の不幸と血みどろの泥仕合』しかねぇじゃねぇか!! 最悪のドSセレクションだなオイ!!」
銀時が激しくツッコミを入れる。
続いて、桂小太郎が胸を張り、毅然とした態度で言葉を紡いだ。
「ふっ、総悟の歪んだ嗜好とは違い、真の革命家たる拙者のチョイスを聞くがいい! 拙者の好きなMCUキャラは――『キャプテン・アメリカ(スティーブ・ロジャース)』でござる! 時代に取り残されながらも、自らの信念と義のために国家を敵に回すあの硬派な生き様、まさに攘夷志者の鑑!
そしてフェーズごとのベスト作品はこれだ!
フェーズ1は原点にして至高、『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』。あの昭和の硬派な戦争映画的空気感がたまらんのだよ!
フェーズ2は、やはり『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』。歴史の闇に抗う孤独な戦士の姿に、拙者の胸は熱くなる。
フェーズ3の最高峰は『アベンジャーズ/エンドゲーム』! 過去に戻り、愛する者と添い遂げるためにすべてを投げ出すスティーブの生き様は、まさに大江戸の維新そのもの!
フェーズ4以降は『エターナルズ』でござる! 千年にわたる歴史の呪縛と戦う姿に、拙者の魂が震えたのだ!」
「お前のチョイスは全部キャプテン・アメリカに寄生してんじゃねぇか! あとエターナルズのチョイスが妙に浮いてるぞ!」
次に、十香が胸を張り、誇らしげに手を挙げた。
「ふふん、私をなめるなよ二人とも! 私の好きなMCUキャラは――『ソー(マイティ・ソー)』だ! あの圧倒的な雷の力、そして何より戦いの後に大皿いっぱいの肉や酒を豪快に平らげるあの潔い食いっぷり、最高にカッコいいではないか!
私のフェーズごとのフェイバリットはこれだ!
フェーズ1は当然『マイティ・ソー』。傲慢だった神が地上に落とされ、真の力と仲間を得る成長の物語は胸が熱くなった。
フェーズ2は『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』。みんなで円卓に座ってハンマーを持ち上げるパーティーシーン、あれは見ていて腹が減るが最高の時間だ!
フェーズ3は『マイティ・ソー バトルロイヤル』。これまでの重苦しい雰囲気を完全にぶっ飛ばして、テンポよく大暴れするあの爽快感は忘れられん!
フェーズ4以降は『ソー:ラブ&サンダー』! 愛と雷の力で家族や仲間を守るあの姿は、今の私にぴったりだ!」
「お前はひたすらソーの脳筋パワーと食べるシーンに引っ張られてんな! まあ十香らしくていいけどよ!」
最後に、銀時がやれやれと首を振りながら、鼻をほじって答えた。
「はいはい、俺様の番だな。俺の好きなMCUキャラは一貫して『アイアンマン(トニー・スターク)』だ。超金持ちなのに自分の不始末で散々周りに迷惑をかけ、挙句の命懸けで世界を救うっていう、あのダメ人間の極みみたいな親父の背中が最高に愛おしいんだよ。
で、俺のフェーズごとのチョイスはこうだ。
フェーズ1はもちろん『アイアンマン』。ゼロから這い上がる泥臭さがたまんねぇ。
フェーズ2は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』。落ちこぼれのクズどもが流れ流れて家族になるっていう、万事屋に通じるダメ人間ロードムービーだからな。
フェーズ3は『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』。すべての希望が粉々に砕け散り、サノスのバッドエンドで終わるあの絶望感が最高にエンタメしてやがった。
フェーズ4以降は……まあ、色々あるけど、やっぱりピーター・パーカーの不運を全方位で応援したくなる意味を込めて『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』だな。誰もが記憶を失っても、あいつがボロボロのミシンで作ったスーツを着てニューヨークの空を飛ぶ姿だけで、酒が三杯は飲める」
「お前の選定基準は結局『酒が飲めるかどうか』と『どれだけ主人公が曇らされているか』だけじゃねぇか!」
沖田総悟、桂小太郎、十香、そして坂田銀時――。
かぶき町の路地裏という名のマルチバースの交差点で、ドSのバズーカ、攘夷志者のポ活、精霊の食欲、そして天パのアル中論が完全に交錯し、最高にカオスで不条理な映画談義の夜が更けていくのだった。
(第十七話・終わり)