【かぶき町・MCU大座談会 〜全員狂気のフェーズ別セレクション〜】
第一章:夜の路地裏に集いし者たち
「ちょっと待ってくださいよ銀さん! なんですかさっきから街のあちこちで爆音が聞こえると思ったら、映画館の前で勝手にデートの続きやってるわ、真選組の隊長にバズーカ撃たれてるわ、挙句の果てには警察のトップが生肉擦りつけて電柱に抱きついてたって本当なんですか!?」
夜のとばりが降りたかぶき町の路地裏に、聞き慣れた甲高いツッコミの声が響き渡った。
メガネのフレームを光らせながら猛烈な勢いで走ってきたのは、万事屋の良心にして唯一の常識人――志村新八である。その隣では、酢昆布をモシャモシャと咀嚼しながら、どこか面倒くさそうに鼻をほじる神楽がトボトボと歩いていた。
「まったく、アルよ。銀ちゃんが一人でいい女を連れてこっそり映画デートなんて10年早いアル。私なんてな、夜食の恵方巻きを一本丸かじりする予定だったのに、お前らのせいで台無しアル」
「お前はいつでも何か食ってんだろ!」と、銀時がボソッと突っ込む。
十香は、新八と神楽の姿をじっと見据え、ふむと顎に手を当てた。
「む……お前の後ろからやってきた二人組は、銀時の仲間か? 見たところ、あのメガネの少年は常にツッコミでカロリーを消耗していそうな顔をしているし、赤い傘の少女は底知れぬ胃袋の気配を漂わせているな」
「おう、こいつらは俺のところの腐れ縁のガキどもだ。紹介するよ、ツッコミ担当の新八と、戦闘力だけはやたら高い宇宙人の神楽だ」
新八は十香に向かってピシッと頭を下げた。
「あ、どうも! 志村新八です! 銀さんがいつも多方面にご迷惑をおかけして本当にすみません!」
だが、その和やかな空気を切り裂くように、足元から地獄の底から這い上がるようなうめき声が聞こえてきた。
「ぐふぅ……っ! お妙さんの愛のパンチは、相変わらず星の爆発よりも重いぜ……! 全身の骨という骨がマルチバースの彼方に粉砕されたでござる……!」
先ほどお妙の愛の鉄拳(物理)によって夜空の星の如く彼方のビルへと吹き飛ばされたはずの真選組局長・近藤勲が、ボロボロのトランクス一丁の姿で血を流しながら這いずってきたのだ。
そして、その近藤の背後から、静かに、しかし圧倒的な殺気を纏った足音が近づいてきた。
「あら、近藤さん。さっきのパンチじゃまだ足りなかったかしら? それとも、今度は私の特製『ダークホルダー風・闇のダークマター炒め』をその口に無理やりねじ込まれたいのかしら?」
淡い着物に身を包み、優雅な微笑みを浮かべながら現れたのは――志村妙その人であった。
第二章:強制開催される「MCU座談会」
「お、お妙さん……! 殺さないで、僕はただマルチバースの愛について語り合おうと……!」
命乞いをする近藤の頭に、お妙はヒールをぐっと踏みつけながら冷たく言い放った。
「ふん、変態ゴリラの語るマルチバースの愛ほど聞いていて吐き気がするものはありませんけれど……まあいいわ。今夜は特別に、あなたたちのその暇つぶしに付き合ってあげてもよろしくてよ。ただし、まともな映画の感想を言えなかったら、近藤さんはもちろん、そこの天パの銀さんもまとめて私の手料理の実験台ですからね」
「えぇ……!? なんで俺まで巻き添え食ってんだよ!」と銀時が絶叫する。
十香は面白そうに両手を叩いた。
「ほぉ! 面白い! 映画館でポップコーンを貪った私に死角はない。この世界の者たちがどのようなヒーローを愛しているのか、大いに聞かせてもらおうではないか!」
さらに、上空の空中艦〈フラクシナス〉の司令官席から、インカムを通じて五河琴里の冷徹な声が割り込んできた。
『聞こえてるわよ、バカ兄貴! デートの邪魔ばっかりしてないで、どうせ暇ならそいつら全員巻き込んでMCUの徹底考察座談会でも開きなさいよ! ラトタスクのメインコンピューターも、あなたたちの的外れな映画談義をデータ分析するのを楽しみに待ってるんだから!』
「お前の趣味のためにこっちが生徒の実験台にされかけてんだよ!」
――こうして、志村新八、神楽、近藤勲、志村妙、十香、坂田銀時、そして上空の五河琴里(+途中から乱入する変態副司令)、総勢名優(?)たちによる、「かぶき町MCUインフィニティ&マルチバース・サーガ大座談会」が強制的に幕を開けたのだった。
第三章:各キャラクターの熱弁と、フェーズ別セレクション
1. 志村新八の「優等生オタク」セレクション
「僕からいかせてもらいますよ!」と新八がメガネを押し上げて一歩前に出た。
「僕の推しキャラは、男性なら何といっても『スパイダーマン(ピーター・パーカー)』! そして女性ならトニーを支え続けた『ペッパー・ポッツ』です!
フェーズ1は、すべての始まりである『アイアンマン』。トニーの天才的傲慢さと、それを支えるペッパーの知的で凛とした強さが最高なんです!
フェーズ2は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』。落ちこぼれたちが音楽を通して絆を深める青春群像劇として完璧!
フェーズ3は『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』。あの絶望的なバッドエンド、全宇宙の半分が消え去る衝撃は今でも忘れられません!
フェーズ4以降は『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』。歴代スパイダーマンの集大成でありながら、ピーターがすべてを失って孤独を選ぶあの切なさは涙なしには見られません!」
2. 神楽の「暴力的美味」セレクション
「ふっ、新八のチョイスは優等生すぎてツマラナイアルな」と神楽が鼻を鳴らし、酢昆布を噛み砕いた。
フェーズ1:『アベンジャーズ』(みんなでニューヨークの街並みを盛大に破壊しながらシャワルマを食いに行く終わり方が最高アル)
フェーズ2:『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(ナターシャの華麗な足技と、裏切りと陰謀の連続が好みアル)
フェーズ3:『マイティ・ソー バトルロイヤル』(ハルクとソーがアリーナで殴り合う景気の良さが好きアル)
フェーズ4以降:『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』(国の誇りをかけて戦う女たちの泥臭さがシビれるアル!)
「私の好きなキャラは、男性なら『グルート』(あの『私はグルート』だけで全宇宙を救えるから)、女性なら『ブラック・ウィドウ(ナターシャ・ロマノフ)』アル!」
3. 近藤勲の「変態愛欲」セレクション
地面に這いつくばったまま、近藤が必死にアピールを始めた。
フェーズ1:『インクレディブル・ハルク』(暴走する愛のエネルギーを感じる!)
フェーズ2:『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(ナターシャとバナーの淡い恋模様に胸を打たれた!)
フェーズ3:『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(仲間割れの痛みが僕の心に染みる!)
フェーズ4以降:『シー・ハルク:ザ・アトーニー』(法廷モノでありながら第4の壁をぶっ壊すメタ構造が僕の叫びと重なる!)
「ぼ、僕の選ぶキャラは、男性なら『ハルク(ブルース・バナー)』、女性なら『シー・ハルク』や『ブラック・ウィドウ』だ! あのお妙さんのような凛とした美しさと圧倒的な暴力の洗礼を全身で受けたい……っ!」
「一言もしゃべらずにお前のその頭をハルク並みに叩き潰してあげましょうか、近藤さん」とお妙が笑顔でバットを構えた。
4. 志村妙の「恐怖の現実主義」セレクション
お妙はふっと優雅に微笑み、冷徹な視線を周囲に向けた。
フェーズ1は『アイアンマン』。男というものは、どれだけ金持ちで調子に乗っていても、最愛の女性(ペッパー)に一喝されれば大人しく首根っこを捕まえられるという、素晴らしい教育的描写がされていらっしゃるわ。
フェーズ2は『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』。神様だろうと何だろうと、身内のゴタゴタで女を泣かせる男は一度お姉さんの手料理(ダークマター)で胃の洗浄が必要ね。
フェーズ3は『アベンジャーズ/エンドゲーム』。散々周りに迷惑をかけたトニーが最期に娘と妻を残して散っていく姿……あれよ、男は黙って家族のために散るか、あるいは私に一生頭を下げて生きるかの二択しかないのよ。
フェーズ4以降は『ブラック・ウィドウ』。言葉の通じない男どもを、女性陣が肉弾戦で容赦なくボコボコにしていくあの爽快感、とっても教育的で素晴らしいわね。
「推しキャラはもちろん、男性なら容赦のない『トニー・スターク』(しつけがいがありそうだから)、女性なら最強の戦闘狂『ブラック・ウィドウ』よ!」
その言葉に、近藤は「ひっ……お妙さんの教育的指導、怖すぎるけど愛おしい……!」と震え上がった。
5. 十香の「食欲と雷の」セレクション
十香は胸を張り、力強く宣言した。
フェーズ1は当然『マイティ・ソー』。傲慢だった神が地上に落とされ、真の力と仲間を得る成長の物語は胸が熱くなった。
フェーズ2は『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』。みんなで円卓に座ってハンマーを持ち上げるパーティーシーン、あれは見ていて腹が減るが最高の時間だ!
フェーズ3は『マイティ・ソー バトルロイヤル』。これまでの重苦しい雰囲気を完全にぶっ飛ばして、テンポよく大暴れするあの爽快感は忘れられん!
フェーズ4以降は『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』! ワンダの圧倒的な魔法の力と、愛ゆえの暴走は少し共感できる部分がある!
「私の推しは男性なら『ソー』、女性なら『スカーレット・ウィッチ(ワンダ)』だ!」
6. 坂田銀時の「泥臭い曇らせ」セレクション
銀時が鼻をほじりながら、面倒くさそうに答えた。
フェーズ1はもちろん『アイアンマン』。ゼロから這い上がる泥臭さがたまんねぇ。
フェーズ2は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』。落ちこぼれのクズどもが流れ流れて家族になるっていう、万事屋に通じるダメ人間ロードムービーだからな。
フェーズ3は『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』。すべての希望が粉々に砕け散り、サノスのバッドエンドで終わるあの絶望感が最高にエンタメしてやがった。
フェーズ4以降は『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』。誰もが記憶を失っても、あいつがボロボロのミシンで作ったスーツを着てニューヨークの空を飛ぶ姿だけで、酒が三杯は飲める。
「俺の好きなキャラは一貫して『アイアンマン(トニー・スターク)』だ。超金持ちなのに自分の不始末で散々周りに迷惑をかけ、挙句の命懸けで世界を救うっていう、あのダメ人間の極みみたいな親父の背中が最高に愛おしいんだよ」
7. 五河琴里の「司令官的こだわり」セレクション
上空の艦内から、インカムを通じて琴里が熱弁を振るう。
フェーズ1は『アイアンマン』。組織の私物化と天才の孤独のバランスが絶妙よ。
フェーズ2は『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』。作戦立案と情報戦の緻密さが私好みなの。
フェーズ3は『アベンジャーズ/エンドゲーム』。量子世界を利用したタイムトラベルのロマンと、すべての因果を精算する結末は司令官として見習うべきところがあるわ。
フェーズ4以降は『エターナルズ』。神々が抱える業と数千年の孤独のドラマ、悪くないわね。
「私の推しキャラは男性なら『トニー・スターク』、女性なら『ナターシャ・ロマノフ』よ! 自分の頭で考えずに行動するバカどもを尻目に、知性と武力で世界を回す姿こそ真のリーダーよ!」
8. 神無月恭平(副司令)の「変態的乱入」セレクション
突如として、インカムに副司令・神無月の声がねっとりと割り込んできた。
「おっと、私の出番ですね司令! 私の選ぶフェーズ別ベストはすべて『敵が主人公を徹底的に精神的・肉体的に追い詰める絶望の瞬間』で統一されています!
フェーズ1:『アイアンマン2』のウィップラッシュに鞭で絡め取られるトニー!
フェーズ2:『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』の絶望的なロキの偽装死!
フェーズ3:『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』でサノスに指パッチンされて消えていく無力なヒーローたちの断末魔!
フェーズ4以降:『ロキ』シーズン2で時の織り機を支えながら崩壊していくロキの全裸(?)に近い精神的崩壊!!
推しキャラはもちろん、全宇宙の生命を半分にして私の心に深い傷を残してくれた『サノス』様と、すべてを奪われて泣き叫ぶ『ワンダ』様です! ああ、私もあの指パッチンで存在を消し去られたい……っ!」
「聞こえない、通信を切断しなさい川越!!」
琴里の激怒の叫びとともに、神無月の音声は盛大にミュートされたのだった。
第四章:かぶき町の夜が明ける
MCUのインフィニティ・サーガからマルチバース・サーガに至るまでの徹底的なキャラクター&フェーズ別座談会は、気づけば夜が白み始める時間まで続いていた。
新八は声が枯れ、神楽はスヤスヤと眠りこけており、近藤はお妙の鉄拳によって完全に宇宙の星(あるいは地面の染み)と化し、十香は満足そうにポップコーンの袋を抱きしめている。
かぶき町のひんやりとした朝の空気を吸い込みながら、銀時と十香、そして上空のフラクシナスのクルーたちはそれぞれの場所で静かに息をついた。
メタ発言も、暴走するゴリラも、変態副司令もすべてを飲み込んだこのカオスな世界線で、二人の奇妙なデートの物語は、最高に不条理で賑やかな余韻を残しながら、新たな朝へと続いていくのだった――。
(第十九話・終わり)