【天の国の気まぐれ! 未来センチネル戦中止とピーター・パーカー徹底解剖座談会】
第一章:突如としての戦闘中止令と、安堵の脱力
「さあ行くぞお前ら! センチネルのスクラップ場を作ってやるぜ!!」
坂田銀時の号令のもと、万事屋のリビングに集結したかぶき町の面々――万事屋、真選組、ヤクザ、オカマ、そしてラトタスクの面々が、一斉に戦闘態勢(およびドンチャン騒ぎの準備)に入ったその瞬間だった。
部屋の隅のスピーカーから、再びあのざざざっ、と不気味なノイズが響き渡った。そして、天井を突き破るかのように、作者(天の声)の投げやりで気まぐれな声が響きわたる。
天の声(作者)の宣告:『――あ、やっぱり未来センチネルとガチで戦わせるの、作画コストと文章の長さ的にめんどくさくなったから勘弁してやるわ。センチネル戦は全カット! 代わりに、アメコミ映画界の最大の癒やしにして最大の苦労人――歴代の実写映画版ピーター・パーカー(スパイダーマン)の魅力について、お前ら全員で徹底的に長く語り合え! それが今回のノルマだ。さっさと始めろ!』
「……は……? え……?」
部屋の空気が、マヨネーズのフタが空いたまま放置されたかのように、完全に間抜けな「無」の空間へと変化した。
木刀『洞爺湖』を肩に担いで気合を入れていた銀時は、盛大にずっこけて畳に顔面から突っ伏した。
「……おい。ふざけんなコノヤロー! こっちは新八を生贄にしてセンチネルと殴り合う覚悟まで決めてたってのに、なんだその『めんどくさいからカット』って中学生の夏休みの日記みたいな理由はよ!!」
「銀さん!? 僕を生贄にする気満々だったんですかひどい!!」と、志村新八が眼鏡をバキバキに揺らしながら叫ぶ。
志村妙も、手作りのダークマター風おはぎを優雅に持ちながら、「まあまあ、戦わなくて済んだのなら平和でよろしいじゃないですか。……ねぇ、近藤さん?」と微笑み、近藤勲が「は、はい! お妙さんの言う通り平和が一番ですぅぅ!」と盛大に涙を流した。
こうして、未来の絶望的な鉄の巨人と戦うはずだったかぶき町の決戦は、作者の圧倒的なメタ的気まぐれにより、秒速で消滅したのであった。
第二章:トビー・マグワイア版(サム・ライミ監督『スパイダーマン』)の泥臭さと「大いなる責任」
気を取り直した万事屋のリビング。ちゃぶ台の真ん中には、なぜか映画のパンフレットのコピーのようなものがばら撒かれ、全員が車座になって「ピーター・パーカー語り合い座談会」を強制的に開始させられていた。
最初に口を開いたのは、万事屋の紅一点(?)である神楽だった。
「ふん、ピーター・パーカーと言えば、まず思い浮かぶのはあの初代の冴えない兄ちゃん(トビー・マグワイア)アル!」
神楽は酢昆布をバリバリとかみ砕きながら熱弁する。
「あいつはとにかく人生がハードモードすぎるアル! バイトは常にクビ寸前、家賃は滞納、好きな子(メリー・ジェーン)にはフラれかけ、ピザの配達に遅刻して店長に怒鳴られる……! あれ、完全に我が家の経済状況と一緒アル!」
「おい、トビー版ピーターを銀の字のクズ生活と一緒にすんなネ!」と、キャサリンがギョロッとした目をさらに見開いてツッコミを入れる。
真選組副長・土方十四郎は、愛用のマヨネーズを皿の端にチュッと絞り出しながら、腕を組んで深く頷いた。
「だがな、あの初代の泥臭さこそが『スパイダーマン』の原点だ。特殊能力を手に入れて調子に乗るどころか、自分の無力さや選択のせいで愛するベンおじさんを失い、『大いなる力には、大いなる責任が伴う』という呪いのような教訓を背負いながら、ボロボロになりながらも立ち上がり続ける……!」
土方は少し遠い目をして、煙草の煙をふっと吐き出した。
「マスクがボロボロに破れて素顔が露出した状態で、ニューヨークの一般市民のために命を張るあの姿……。あんなん、不覚にも男の背中として惚れちまうだろうが……!」
「土方さん、珍しくかっこいいこと言いますね。でもあなたの場合は『大いなるマヨネーズには、大いなる痛風が伴う』ってだけですけど」と、沖田総悟が冷めた目で毒を吐く。
「誰が痛風だゴラァァァ!!」
第三章:アンドリュー・ガーフィールド版(『アメイジング・スパイダーマン』)のスタイリッシュさと切なさ
次に手を挙げたのは、夜刀神十香だった。彼女はピザの箱からピザを一枚ひったくると、目を輝かせて語り出す。
「トビーの次に出現した、あの少し背が高くてスケートボードに乗るピーター(アンドリュー・ガーフィールド版)も非常に見事であった!」
「おっ、十香ちゃんもアメイジング版を観てたのか?」と銀時が聞く。
「うむ! あのピーターはなんというか……極めてファッショナブルで、戦いの中での口数(おしゃべり)がやけに軽妙でスタイリッシュだった!」
十香は力強く頷いた。
「ウェブ・シューターを自分で発明する頭の良さもさることながら、グウェン・ステイシーとの甘酸っぱくも、そしてあまりにも切なすぎる結末……! 最後の戦いで愛する者をその手から取りこぼしてしまった時の彼の絶望の涙……あんなものを見せられたら、私の胸の奥がキュッと締め付けられるようだったぞ!」
マダオ(長谷川泰三)がトレンチコートの襟元を押さえながら、しみじみと呟いた。
「……そうだねぇ。アメイジング版のピーターは、ヒーローとしてのカッコよさと、プライベートの圧倒的な不運と喪失感のギャップが激しすぎて、観ていてこっちの胃が痛くなるんだよ……。ハローワークの面接に落ち続けた私の心に、あのスパイダーマンの孤独な背中は痛いほど染みる……」
「長谷川さん、あなたの話を聞いてるとスパイダーマンがただのフリーターの悲劇に見えてくるからやめてください!」と新八が突っ込んだ。
第四章:トム・ホランド版(MCU『ホーム』シリーズ)の等身大の苦悩と成長
そして、最後に真ん中に陣取った志村新八が、眼鏡をレンズが光るほどの勢いで押し上げて語り出した。
「そして何と言っても! MCUに参戦したトム・ホランド演じるピーター・パーカーですよ!」
新八は熱っぽく両手を突き上げた。
「これまでの初代やアメイジング版と違って、トニー・スタークという最高の『保護者』に出会えたものの、背伸びをしたい年頃の高校生ゆえの空回り、そして『アベンジャーズの仲間入りをしたい』という等身大の焦燥感……!」
「ほう、新八にしてはなかなか的を射た意見だな」と銀時が感心したように言う。
新八はさらに勢いを増す。
「特に『ノー・ウェイ・ホーム』での絶望感は尋常じゃなかったです! 自分の正体が世界中にバレた挙句、愛するメイおばさんを失い、最終的には全世界の人々から『ピーター・パーカーという人間の記憶そのものを忘れ去られてしまう』という、ヒーローとしてあまりにも残酷すぎる代償を払って、たった一人でボロボロのアパートの部屋でミシンを叩いて自前のスーツを作っているあの姿……!」
新八の声が少し震えていた。
「あんなの、あまりにも健気で、あまりにも孤独すぎて、観ているこっちが泣き叫びたくなりますよ……! 歴代のピーターの中で一番幸せになってほしいのは間違いなく彼です!」
猿飛あやめも、頬を紅潮させながら大きく頷いた。
さっちゃんの熱弁:「そうよ! トムホ版ピーターのあのピュアで可愛い子犬ちゃんみたいなルックスと、戦闘中の無駄口の多さ、そしていざという時の精神的な強さのギャップは反則級よ! もし私がマルチバースを越えて彼の前に現れたら、秒速で母性と愛欲の網でグルグル巻きにして保護してあげたいわ……!」
銀時の冷徹な一言:「スパイダーマンが真っ先にヴィランよりお前にビビって逃げ出すわ!」
第五章:マルチバースを越えた「ピーター・パーカー」という名の奇跡
壁のホログラムモニターに映るラトタスクの司令官・五河琴里も、腕を組みながらふっと柔らかな笑みを浮かべた。
「……ふん。初代の泥臭い責任感、2代目の切ない喪失感、3代目の等身大の孤独と成長……。三者三様だけど、どのピーター・パーカーにも共通しているのは、どれだけ世界にボコボコにされて、どれだけ大切なものを奪われても、『絶対に諦めず、一般市民のためにマスクを被って立ち上がる』っていう、不屈の善意の魂よね」
分析官の村雨令音も、目を細めて頷いた。
「……ええ。マルチバースの垣根を越えて3人のピーターが並び立った瞬間……あれは、全宇宙のどの精霊の奇跡よりも、美しく温かい愛のドラマでしたね……」
リビングにいる全員が、それぞれの映画のピーター・パーカーの顔を思い浮かべ、妙にしんみりと、そしてどこか誇らしいような温かい空気感に包まれていた。
「――ま、なんだかんだ言ってもよ」
銀時が木刀『洞爺湖』を床に立て、ぐっと伸びをしながらニヤリと笑った。
「あいつら全員、どんなにマルチバースで世界を救おうが、結局は金欠でピザの配達に追われたり、家賃の催促に怯えたりする『ダメ男の系譜』をしっかり受け継いでやがる。……そういう親近感の湧く痛々しさがあるからこそ、俺たちはあのクモ男の背中を嫌いになれねぇってこった」
「おう!」と、十香や新八をはじめとする全員が力強く頷いた。
未来センチネルとの戦いは結局すっぽかされたものの、かぶき町の夜は、アメコミ界最大のヒーローを巡る熱い映画談義によって、最高に最高にくだらなく、そして温かい絆に包まれて更けていくのであった――。
(第三十二話・終わり)