【銀河を超えた大感涙! 『ノー・ウェイ・ホーム』とアメイジングの救済】
第一章:熱気は最高潮へ! 万事屋映画批評会の次なる議題
歴代実写版ピーター・パーカー(スパイダーマン)の魅力について熱く語り合った万事屋のリビングは、深夜を過ぎてもなお、冷めるどころかますます熱狂的な熱気に包まれていた。
ちゃぶ台の上には、志村妙が差し入れた(相変わらず怪しい漆黒の光を放つ)「特製ダークマターおはぎ」と、スナックお登勢から掠め取ってきたビールや日本酒の空き瓶が乱雑に転がっている。
部屋の隅に設置されたポータブルDVDプレイヤーの横で、坂田銀時は天パの頭をポリポリとかきながら、気怠そうに、しかしその瞳に確かな熱を宿して口を開いた。
「えー、前回のピーター・パーカー徹底解剖に引き続き、天の声(作者)から新たな指令が下された。……次は、歴代スパイダーマン映画の集大成にして、マルチバースの最高傑作『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』について、とことん長く熱く語り尽くせとのことだ。特に作者の野郎はな……『アメイジング・スパイダーマン(ピーター2)が、落下するMJ(ミシェル・ジョーンズ)を無事に救出するあの名シーン』が死ぬほど好きらしくて、そこを重点的に語らねぇとまた変な刺客(センチネル)を送り込むぞと脅してきてる」
「あのシーンかーーーッ!!」
志村新八が、畳を両手でドカンと叩いて立ち上がった。眼鏡の奥の瞳が、これまでにないほど激しく燃え上がっている。
「分かってます! 分かってますよ作者さん!! あそこはもう、全スパイダーマンファンが映画館の暗闇の中で声を上げて号泣した、映画史に残る『魂の救済』の瞬間じゃないですか!!」
夜刀神十香も、手にしたピザを一口で平らげると、深紅の瞳を爛々と輝かせて身を乗り出した。
「む……! あの高所からの落下シーンだな! 覚えているぞ! 初代(ピーター1)、2代目(ピーター2)、そして3代目(ピーター3)の三人のスパイダーマンが、次元の壁を越えて手を取り合い、自由の女神像の決戦場へと飛び込んでいくあの胸熱な展開……! 私の胸の奥のコア(霊結晶)が、感動で破裂しそうになったぞ!」
「うむうむ、あれは本当に鳥肌が立ったネ!」と、神楽も酢昆布をモグモグ噛みながら激しく頷いた。
第二章:マルチバースの奇跡! 歴代ピーター・パーカーの集結と共闘
新八はホワイトボードの前に駆け寄ると、マーカーで激しく文字を書き殴りながら熱弁を振るい始めた。
「まずですよ! 『ノー・ウェイ・ホーム』の凄さは、ただ過去作のヴィラン(ドック・オック、グリーン・ゴブリン、エレクトロ、サンドマン、リザード)が勢揃いするだけじゃないってところなんです! トム・ホランド演じるMCUのピーター(ピーター1)が、メイおばさんを失い、絶望と復讐の闇に呑まれそうになったあの最悪の瞬間に……次元の裂け目からトビー・マグワイア(ピーター2)とアンドリュー・ガーフィールド(ピーター3)が現れる! あの瞬間、映画館の空気が変わりましたからね!!」
真選組副長・土方十四郎が、愛用のマヨネーズボトルを握りしめたまま、深く煙草の煙を吐き出した。
「……フン。ただの同窓会映画じゃねぇんだよな。トビーのピーターは、自分もベンおじさんを殺した犯人への復讐心に囚われた過去を語り、アンドリューのピーターは、愛するグウェンを救えなかった痛みを今も抱えていることを明かす。……先輩である二人のピーターが、自分たちと同じ傷を負おうとしている若きトムホのピーターを、全力で言葉と存在で支えようとする……。あんなん、男の絆として最高に美しすぎるだろうが……!」
「土方さん、またマヨネーズ握り締めながら目頭熱くしてやがる。キモいですぜィ」と沖田総悟が冷ややかに言い放つが、その沖田の口元も心なしか柔らかい。
「うるせぇ総悟! あそこは泣くところだろ!! 特に自由の女神像の足場で、戦闘開始直前に三人がポーズを決めながら『愛してるよ、みんな(I love you guys)』って言い合うシーン!! あの和やかさと覚悟の混ざった空気感、たまらんのだよ!!」
「ソウヨソウヨ!」とキャサリンもカタコトで声を張り上げる。
「アタシなんてネ、トビーのピーターが『腰が痛い』って言い出して、アンドリューのピーターが腰をポキポキ鳴らしてストレッチしてあげるシーンで、お腹抱えて笑いながら泣いたネ!」
「あのユーモアと切なさの塩梅が最高なんだよなぁ」と銀時も懐かしそうに目を細めた。
第三章:誰もが涙した「アメイジング(ピーター3)によるMJ救出」という名の奇跡
「そして……! いよいよ本題ですよ!!」
新八の声が、一際高く万事屋の天井に響き渡った。リビングにいる全員の視線が、新八の一点へと集中する。
「物語のクライマックス、自由の女神像の足場がグリーン・ゴブリンの爆撃によって崩落し、トムホ版ピーターの恋人であるMJ(ミシェル・ジョーンズ)が、はるか高所から夜の海へと真っ逆さまに落下していくあの瞬間――!」
「ああっ……思い出しただけでも胸が苦しくなるわ……!」
猿飛あやめ(さっちゃん)が、胸元を締め付けられるように身をよじらせる。
新八は力強く両手を広げ、シーンの熱量をそのまま描写するように語り続けた。
「トムホのピーター1が彼女を助けようと手を伸ばしますが、ゴブリンのグライダーに邪魔されて届かない! 誰もが『またしてもスパイダーマンの恋人が……!』と息を呑んだその瞬間、一瞬の躊躇もなく飛び出したのが――アンドリュー・ガーフィールド演じるピーター3(アメイジング・スパイダーマン)だったんです!!」
「むっ……! あの場面だな!」と十香が身を乗り出す。
「そうです! かつて『アメイジング・スパイダーマン2』で、時計塔から落下する最愛の恋人・グウェン・ステイシーに向けてウェブを放ち、あと一歩のところで地面への衝撃を和らげられず、その手の中でグウェンを死なせてしまったという、消えることのない地獄のトラウマを背負い続けてきたピーター3……! 彼が、別の世界線のピーターの命より大切な存在(MJ)が落ちていくのを見た瞬間、自分の命すら省みずに夜空へ飛びダイブしたんです!」
新八の眼鏡の奥から、ボロボロと大粒の涙が溢れ出し始める。
「ウェブ(クモの糸)に頼るんじゃない! 自分が直接その体で飛び込み、落下速度を合わせ、しっかりと自分の両腕でMJの身体を抱き抱え、安全に着地する……! 着地した瞬間、無事を確認されたMJから『大丈夫?(Are you okay?)』と聞かれた時の、あのピーター3の表情……!!」
部屋の中に、鼻をすする音が満ちあふれた。
「……あいつ、自分から『大丈夫か?』って聞かなきゃいけないのに、助けられたMJの方から心配されて……胸がいっぱいになって、声も出せずにただ『うん、うん……』って頷くんだよ……っ!!」
新八は袖で激しく顔を拭った。
「あの一瞬の表情だけで!! 彼がこれまでの数年間、どれだけの後悔と孤独の中でグウェンを失った痛みを抱えて生きてきたか、そして今、別の世界線の自分(ピーター1)の未来を救うことで、ようやく自分の魂も救われたんだということが、観客全員に痛いほど伝わってきたんです!!」
第四章:万事屋とラトタスクを包み込む大号泣の嵐
「うおおおん!! 陛下(ティチャラ)の散り際に続いて、またしても全米が泣いたぁぁぁ!!」
黒駒勝男がちゃぶ台に突っ伏し、愛犬のメルちゃんを抱きしめながらボロボロと大泣きを始めた。
「あんな……あんな悲しい過去を背負った男が、時間を超えて、世界を超えて自分のトラウマを乗り越えて誰かを救うなんて……! ワイらのようなちっぽけな極道の仁義なんて霞んでしまうほど、男のドラマとして最高やないか……!!」
西郷特盛も、マスカラで真っ黒になった顔を大きなハンカチで覆いながら号泣している。
「なんてことなの……! グウェンを救えなかったあの日の悲しみが、MJを抱きしめたあの瞬間に、少しだけ癒やされたのね……! アタシの母性が、もう決壊して止まらないわよ……っ!」
あず美も、その長大な顎をガタガタと激しく震わせながら、大声で泣き叫んだ。
あず美の涙の絶叫:「ピーター3ィィィ――ッ!! アンタはアメイジングよ! 名前の通り最高の『アメイジング・スパイダーマン』よ――ッ!! アタシのこの顎の悩みなんて、アンタの背負ったトラウマの深さに比べたら鼻くそ同然だわ――ッ!!」
通りすがりのモブのツッコミ(心の声):「だからお前の顎は鼻くそサイズじゃねぇんだよ!」
長谷川泰三(マダオ)も、トレンチコートの袖をびしょびしょに濡らしながらむせび泣いていた。
「私のような無職でも……やり直せない過去の後悔がたくさんある……。だが、あのピーター3のように、誰かの未来を救うことで自分も救われる日が来るのだろうか……ぐすっ……!」
そして、壁のホログラムモニターに映し出された上空の空中艦〈フラクシナス〉の艦内――。
司令官の五河琴里は、チュッパチャプスの棒をきつく噛み締め、真っ赤になった目を手で覆いながら、必死に涙をこらえていた。
「……っ……ばかみたい……! アニメや映画の演出だって分かってるのに……あんなの、泣かないわけないじゃない……! アンドリューのあの泣きそうな顔……反則よ……!!」
分析官の村雨令音も、睡魔を完全に忘れたような優しい瞳で、モニターの向こうの万事屋の面々を見つめていた。
「……ふぅ。自分の悲劇を繰り返させないために立ち上がる姿……あれこそが、マルチバースの愛が生んだ『救い』の奇跡ですね……」
副司令の神無月恭平だけは、「ああっ……ピーター3に抱きかかえられて『大丈夫?』と優しく声をかけられるMJのポジションに、私もなりたい……!」と身悶えし、琴里から即座に「神無月、沈黙しなさい」と激しい蹴りを食らっていた。
第五章:敵を「倒す」のではなく「救う」スパイダーマンの魂
涙を拭った坂田銀時が、静かに一升瓶を持ち上げ、自分のグラスにトクトクと酒を注いだ。
「――なあ、お前ら」
銀時は酒をくいっと煽り、どこか遠い目をして呟いた。
「この『ノー・ウェイ・ホーム』のもう一つの凄まじいところはな……ピーターたちが最後まで『ヴィラン(敵)たちを殺して解決しようとしなかった』ことなんだよ」
「……うむ」と、十香が真剣な表情で頷く。
「グリーン・ゴブリンも、ドック・オックも、エレクトロも……みんな元々は事故や悲劇によって狂わされた『被害者』だった。だからピーター1は、メイおばさんの遺志を継いで、彼らを殺して元の世界に送り返して死なせるんじゃなく、彼らの精神や身体を治療する『治療薬』を作って、救おうとした」
銀時は木刀『洞爺湖』の柄をトントンと叩いた。
「敵をただ叩き潰して勝ち誇るんじゃねぇ。どれだけ自分がボロ雑巾になろうが、敵の根底にある『狂気という名の病』を治して、元の人間として送り返してやる……。侍の国のかぶき町の住人としても、あの甘っちょろくも気高い精神には、一本取られたと言わざるを得ねぇよな」
「銀さん……」新八が胸を打たれたように銀時を見つめる。
「ま、おかげでトムホのピーターは全世界から自分の存在を忘れられるという、エグすぎる孤独を背負う羽目になったわけだが……」
銀時は天パの頭をポリポリとかきながら、ニヤリと笑った。
「だが、あのラストシーンで、手作りのチープな布製スーツを着て、雪が舞うニューヨークの街へと一人で飛び出していったあの背中……。あれこそが、正真正銘の『あなたの隣人、スパイダーマン』の完成だったんだよな」
「「「 うむ!! / はい!! / 本当にその通りや!! 」」」
万事屋のリビング、そして上空の〈フラクシナス〉の艦内までもが、一つの温かく深い感動の波によって完全にひとつとなった。
マルチバースの脅威も、未来センチネルの恐怖も、そして日々の日常のくだらない悩みも――すべては映画という名の最高の物語と、それを語り合う仲間たちの熱い絆の前に、最高の肴となって消えていくのであった。
「よし! 今夜は朝まで『ノー・ウェイ・ホーム』のノーカット上映会と酒盛りだぁぁぁ!!」
銀時のその声とともに、かぶき町の夜は、どこまでも温かく、どこまでも賑やかに更けていくのであった――!
(第三十三話・終わり)