:【なんやかんやで馴染む教壇と、混ぜるな危険の空間震警報】
なんやかんやあって一週間。
「……というわけでだ。ここで主人公が覚醒して覚醒技をブチかますわけだが、ジャンプのアンケート順位を保つためには、この手前のページで『見開きドーン!』が必要になってくるわけよ。テストに出るから赤線引いとけ」
「「「絶対出ねぇよ!!!」」」
教壇で黒板にテキトーな落書きを描きながら講義(?)を進める坂田銀時に対し、教室中から一斉に怒号のようなツッコミが飛ぶ。
そう、なんと恐ろしいことに、銀時はなんやかんやで学校にめちゃくちゃ馴染んでいた。
国語の授業は完全にジャンプの批評会とパチンコの確率論講座に化けていたが、「自習が多くて楽」「テストの範囲を『ジャンプ最近の3話分』から出してくれる」という理由で、生徒たちからは微妙に大人気(?)の怠惰教師として定着しつつあったのだ。
最前列の席では、鳶一折紙が微動だにせず、銀時の一挙手一頭足を生け捕りにするような眼光でメモ帳にペンを走らせている。
「(坂田銀時、授業中に三回あくび。左手をポケットに突っ込む癖、非常に愛らしい……)」
「折紙さん、ノート取るフリして先生の観察日記描くのやめてもらっていいですかね!?」
銀時が頭を抱えた、その時だった。
第二章:ウーウー響く不穏なサイレン
ウゥゥゥゥゥ―――ッ!!!
ウゥゥゥゥゥ―――ッ!!!
突如、校内に地獄の底から響くようなけたたましい警報音が鳴り響いた。
校内放送のスピーカーがガビガビとノイズを吐き出す。
『緊急避難警報! 緊急避難警報! 本校周辺の空間位相に著しい乱れを検知しました! 大型空間震の発生が予測されます! 全校生徒・職員は、ただちに地下シェルターへ避難してください! 繰り返す――』
教室内の生徒たちが一斉にざわめき立つ。
「く、空間震警報だっ!?」
「マジかよ、こんな急に!?」
緊迫した空気が走る中、一人だけ完全に別次元の表情を浮かべている男がいた。
壇上の銀時である。
「……おいおい、マジかよ。空間震警報って何だよそれ。俺、そういう『デート・A・ライブ』の本編の設定みたいな本格的なやつ、一番面倒くさいんだけど」
折紙がすっと立ち上がり、無機質な声で銀時に告げた。
「坂田銀時。避難誘導を開始してください。私は生徒の安全を確保したのち、別行動に移ります」
「お前が一番別行動に移りそうだから怖ぇんだよ!……よし、野郎ども! 聞けぇ!」
銀時は黒板消しをパンパンと叩き、教室中の生徒たちを見渡して威厳たっぷりに(?)指を突き立てた。
第三章:避難誘導と、不毛なMCUトーク
「いいかお前ら! 慌てず騒がず、秩序を守って地下シェルター……いや、地下に隠された『秘密基地』へ向かうんだ!」
生徒の一人(モブ男子)が慌てて手を挙げた。
「先生! シェルターですよね!? なんで秘密基地って言い換えたんですか!?」
「細かいことはどうでもいいんだよ! それより全員、避難しながら周囲を捜索しろ! 廊下の落とし物、理科室の棚、下駄箱の裏……どこかに『ピム粒子』が落ちてねぇか徹底的に探すんだ!!」
教室中に沈黙が流れた。
モブ生徒「……はい?」
銀時は大真面目な顔で腕を組み、力説を始めた。
「いいか!? このまま空間震とやらに巻き込まれてヤバい事態になったら、俺の胃に穴が空いて話が最終回になっちまうんだよ! だから空間震に巻き込まれる前に、ピム粒子を集めて量子世界に突入し、過去に戻ってタイムマシンで歴史を変えるんだよぉぉぉ!!」
モブ生徒(眼鏡)が頭を抱えて叫んだ。
「何タイムマシンネタアップデートしてんだよ!!! さっき裏でユーザーから『ピム粒子を探せを追加しろ』ってまだ訂正指示出されたばっかりだろーーーが!!! 指示されるたびに必死でMCUネタねじ込んでくんなよ!!!」
隣のモブ生徒(女子)もキレ気密に被せる。
「っていうか先生! タイムマシン作るにしても何でマーベルの物理法則持ち込もうとしてんの!? 江戸時代とデート・A・ライブの要素だけでお腹いっぱいなのに、MCUまで混ぜたらAIの処理容量が破綻するでしょ!! 廊下にピム粒子なんか落ちてるわけねぇだろ!!」
すると、最前列で話を聞いていた折紙が、無表情のままスッと挙手した。
「……ちなみに私は、エンドゲーム以降のMCU作品なら『サンダーボルツ*』が好きです」
「お前もボケに乗っかるな急に!!!」
モブ生徒たちが一斉にずっこける。
「映画の好みを語ってる場合かよ!! 無表情でコアな作品チョイスしてくんな!!」
銀時もドヤ顔で鼻の穴をほじりながら乗っかった。
「まあ俺は普通に『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』かな。歴代ピーター集結は胸熱だったわ」
「先生まで普通に乗っかって語り始めてんじゃねぇよ!!! だから何で避難警報が鳴り響く中でMCUの感想会が始まってんだよ!! 早く避難させろぉぉぉ!!!」
第四章:パニックと、妹からの着信
モブ生徒たちのキレキレなツッコミが教室中にこだまする中、折紙は静かに銀時へ近づき、真顔で言った。
「ピム粒子はありませんが、私のポケットに婚姻届なら入っています。サインすれば過去ではなく未来へ行けます」
「未来への一歩が重すぎるんだよ!! 一番の絶望未来に叩き落とされるわ!!」
押し問答を繰り広げていると、警報音がさらに一段高い音量で校舎を揺らした。
ウゥゥゥゥゥ―――ッ!!!
「やべぇ! 本気でヤバい雰囲気が漂ってきたぞ! ピム粒子もマーベルも諦めてとりあえず逃げるぞお前らぁぁ!」
「「「最初からそうしろや!!!」」」
生徒たちが悲鳴を上げながら廊下へとなだれ込んでいく。
ワチャワチャと混乱する教室の中で、銀時のポケットから「ピロリ〜ン♪」とお馴染みの電子音が鳴り響いた。
画面を見ると、差出人はもちろん【琴里】。
電話に出ると、白リボンモードとは思えない、冷徹で緊迫した黒リボンの声がスピーカー越しに突き刺さった。
『――兄さん。遊んでる場合じゃないわ。空間震の発生源は、あなたの学校の目と鼻の先よ』
「琴里……! お前、ピム粒子持ってきたか!?」
『持ってきてるわけないでしょバカ兄貴!! アベンジャーズに助けを求める前に、目の前の現象と向き合いなさい!!』
「無理無理無理! 俺は国語の教師! パチンコとジャンプの解説しかできないただの天パ! 面倒くさい事態とか絶対に無理ぃぃぃ!!」
校舎の外で、ドスンと空間が歪む重低音が響き渡る。
いよいよ、物語の核心である事態が目前に迫っていた――!
(第四話・終わり)