【空中艦フラクシナス発進! ゾンビ世界の絶望と、ブレイド延期問題の真実】
ドゴォォォォォン―――っ!!!
校舎裏の広場に、突如として強烈な風が吹き荒れた。
上空に突如現れた巨大な影――空中艦〈フラクシナス〉から放たれた転送の光が地面を撃ち抜き、空間がぐにゃりと歪む。
「――まったく、何やってるのよバカ兄貴!!」
光の中から颯爽と姿を現したのは、黒いリボンをなびかせ、チュッパチャプスを咥えた五河琴里であった。
ラタトスクの司令官としての威厳を漂わせ、最新鋭の転送装置で銀時を回収しに降臨したのだが――その眼前で繰り広げられていたのは、世界を救うための戦闘ではなく、MCUのマルチバース作品に対するガチの不満爆発討論会であった。
「いいか!? 『マルチバース・オブ・マッドネス』のイルミナティの扱い、あれは流石にやりすぎだろォ!!」
銀時が耳から湯気を出しながら、ASTの隊員たちに向けて絶叫していた。
「ブラックボルトは自分の声で頭蓋骨自壊して死亡、リード・リチャーズは紐状にスライスされて細切れ、キャプテン・マーベルは像の下敷き! そして何より……キャプテン・カーターの扱いがあまりにも雑すぎんだろ!! あんな誇り高いシールドの戦士が、自分の投擲した盾を跳ね返されて真っ二つにされるとか、いくらなんでもファンの思い出演出に頼りすぎの『やられ役』にしすぎだろ常識的に考えて!!」
「なんですってぇぇぇ!? キャプテン・カーターのあの美しき散り様こそがマルチバースの残酷さとワンダの脅威を際立たせていたのよ! 『一日中だって戦える(I can do this all day)』のセリフからのあの悲劇、最高じゃないの!!」
「最高じゃねぇよ! お前らマーベルファンはすぐ推しが惨殺されるコレジャナイ展開に耐性つきすぎなんだよ!!」
広場の真ん中で、銀時とAST隊員がガチの掴み合い一歩手前で唾を飛ばし合っている。
琴里「…………」
降り立ったばかりの司令官の頭上に、巨大で真っ赤なクエスチョンマークがいくつも点滅した。
第二章:プロフェッサーX推し・銀時の熱すぎるチャールズ論と、ハンク・ピム戦犯論
「それにだ……!」と、銀時はさらにヒートアップし、地団駄を踏んだ。
「一番許せねぇのは、プロフェッサーX(チャールズ・エグゼビア)の退場劇だよ!! なんだあの殺され方は!!」
「プロフェッサーX……? ほら、車椅子の強力なテレパシーの老人でしょう?」とAST隊員が首を傾げる。
「そうだよ!! あのチャールズ・エグゼビアだぞ!! FOX版『X-MEN』三部作から『フューチャー&パスト』に至るまで、人類とミュータントの共生を夢見て、その圧倒的な精神感応力――オメガクラスのテレパシーで幾多の危機を救ってきた、あの御方だぞ!!」
銀時は両手を大きく広げ、映画ファンとしての血肉の叫びをぶちまける。
「あんななぁ、セレブロの精神世界でワンダに首をポキッと折られて瞬殺されるとか、もっと苦戦しろや!! 最強のテレパーシーなんだぞあの人は!! せめてワンダの精神の奥底に潜り込んで、彼女の過去のトラウマや子どもたちの記憶に干渉して、一瞬でも『行動原理の揺らぎ』を起こさせるくらいの心理戦の駆け引きを描けよ! なんかこう、脳内で激しいサイキック・バトルが火花を散らした挙句に、限界を超えて力尽きるならまだ納得もいくわ! なんで初見のホラー映画のモブみたいな殺され方で退場させられなきゃならんのだ! チャールズをなめるな!!」
あまりの熱弁に、周囲がサーッと静まり返る。
すると、ASTのモブ隊員Aが腕を組み、真剣な顔で別の角度から切り込んできた。
「いや、でも銀時さん。マルチバース全体の悲劇の引き金を辿るなら……やっぱりハンク・ピム(ピム博士)こそが最大の戦犯じゃないですか?」
「お、ピム博士戦犯論か!?」
モブ隊員Aは熱く語り出す。
「だって『What If...?』のシーズン1第3話もそうですけど、量子世界で奥さんのジャネットを救いたい、あるいは娘のホープを亡くした悲しみは痛いほど分かります! でもだからってピム粒子でアベンジャーズ候補生を片っ端から暗殺したり、ゾンビ化したジャネットを現実世界に連れ帰って『マーベル・ゾンビーズ』の地獄のパンデミックを引き起こしたり……愛する妻を救いたい気持ちはめちゃくちゃ分かりますけど、世界全体を巻き込みすぎなんですよ!!」
銀時も深く首を縦に振った。
「それな!! 奥さんを想う純愛は泣けるんだけど、その結果として全宇宙がゾンビ化したり地球防衛線が崩壊したりしてんだから、スケール感が狂ってんだよピム博士ぇぇぇ!!」
名前のない少女――十香も、腕を組み深く頷いた。
「むぅ……確かに愛する者を救いたいという情熱は尊いが、その代償として世界中の生命が脅かされるとなると、まさに狂気の沙汰と言わざるを得ぬな……!」
最前列でメモをとっていた鳶一折紙が無表情のまま淡々と付け加える。
「……ですが、ピム粒子の暗殺・感染兵器としての有効性は非常に高い。愛ゆえの狂気こそが、マルチバースを動かす最大のエネルギー」
「不穏なまとめ方すんな!!」と銀時が突っ込む。
第三章:マーベル・ゾンビーズのワンダ戦犯論と、ワカンダの誇り
さらに議論は、アニメ『マーベル・ゾンビーズ』の恐ろしい結末へとヒートアップしていく。
「そしてな……!」と、銀時は白目を剥いて叫んだ。
「『マーベル・ゾンビーズ』におけるワンダ(スカーレット・ウィッチ)の戦犯っぷりも相当だぞ!!」
「なんですって!?」とワンダ推し隊員が噛みつく。
銀時は身乗り出して指を突き立てた。
「だってそうだろ!! ゾンビ化してもなお強大な混沌の魔力を撒き散らしてさぁ! 最終的にミズ・マーベル(カマラ・カーン)の持つ光の力や彼女の素直で純粋なエネルギーを利用して、ゾンビの感染をマルチバース全体に拡散させようとするあの最悪のバッドエンド!! ゾンビ世界になっても周囲を巻き込んで全滅に追い込むとか、やっぱりゾンビーズにおけるワンダも超絶戦犯じゃねーか!!」
ワンダ推し隊員も負けじと叫ぶ。
「それは彼女がゾンビ化して自我を失っていたからであって、根底にあるのは愛するヴィジョンを失った悲しみよ!! ミズ・マーベルを利用したのも、その強大すぎる能力が仇となった悲劇なのよ!!」
「悲劇で片付けられる規模を超えてんだよ全員ゾンビ化してんだから!!」
AST隊長が溜め息をつきながら割り込んできた。
「でもね……あの絶望的なゾンビ世界で、生き残ったスパイダーマンやワスプ、そしてブラックパンサー(ティ・チャラ)たちが最後まで諦めなかったのは救いだったわよ。特にティ・チャラ……片足を切り落とされ、ゾンビたちの『餌』として生かされていたという最悪の状況でありながら、彼の魂は折れていなかった!」
十香も深くうなずき、胸の前で両腕をクロスさせた。
「うむ! どんなに肉体が腐り果てようとも、ワカンダの王としての誇りと、人類の未来を守るための『ワカンダ・フォーエバー』の精神だけは決して死なないのだ! あの片足でゾンビサノスという圧倒的脅威に対し、身を賭して立ち向かった特攻こそ、マーベルアニメーション史上に残る最高のカタルシスだったぞ!」
銀時、十香、AST隊員たちが一斉に胸の前で両腕をクロスさせる「ワカンダ・ポーズ」を決め、戦場で奇妙な一体感が生まれた。
第四章:琴里の『ブレイド』への熱い想い
このカオスすぎるMCU批評会に対し、空中艦フラクシナスの司令官である五河琴里は、ついにこめかみに青筋をバキバキに立てて絶叫した。
「もういい加減にしなさいよお前らぁぁぁぁぁぁっ!!!」
キィィィンと耳鳴りがするほどの怒号とともに、琴里は咥えていたチュッパチャプスを真下に投げつけた。
「なんなのこの空間は!? こっちは空間震の緊急事態なのよ!? ラタトスクの精鋭クルーとASTの戦闘部隊と、目の前のテロリストみたいな天パ教師と名前のない精霊が、なんで綺麗に円陣組んで『ピム博士の戦犯度』と『ワカンダ・フォーエバー』についてガチの映画批評戦繰り広げてんのよ!! 誰か仕事しなさいよ誰か!!」
銀時は鼻の穴をほじりながら、全く動じずに返した。
「いやぁ琴里さ、映画の解釈違いで世界線が崩壊しかけてる現場に居合わせたら、誰だって現実逃避にMCUの考察語るしかねぇだろ。なあ?」
「「「「完全に同意します。」」」」
(折紙、十香、AST隊員全員が綺麗にハモる)
「同意するなーーーっ!!!」
頭を抱えて絶叫する琴里。……だが、ふと彼女は胸を張り、チュッパチャプスの予備をポケットから取り出すと、急に司令官らしい(?)キリッとした表情で語り始めた。
「……まぁ、マルチバースやゾンビの絶望感もいいけれどね」
琴里は遠い目をして、どこか夢見るような少女の瞳で空を見上げた。
「私が本当に熱望して、期待して待っているのはね……MCU版『ブレイド』なのよ!!」
「「「「え……?」」」」
全員の視線が琴里に集まる。琴里は熱っぽく拳を握り締めた。
「マハーシャラ・アリが主演に決まってから、ダークでスタイリッシュなヴァンパイア・ハンターのヒーローがMCUのマルチバースにどう殴り込んでくるのか! あの漆黒のトレンチコートを翻し、刀一本で夜の闇を裂くアクションが大きなスクリーンで観られる日を、私はずっと楽しみに待っているのよ!! 監督交代や脚本の書き直しで延期が続いていたって、作品へのこだわりと最高のクオリティを追求している証拠じゃない!! 私は諦めずに期待し続けるわ!!」
司令官としての威厳と、一人の映画ファンとしての熱い情熱を爆発させる琴里。
広場に、感動的で静かな風が吹き抜けた。
……が、周囲の空気はどこか遠く、冷ややかな温情に包まれていた。
一瞬の静寂。
銀時、折紙、名前のない少女、そしてAST隊員全員が、哀れみと憐憫の混ざった生暖かい視線を一斉に琴里へ向けた。
「……琴里」
銀時がそっと琴里の肩に手を置いた。
「『ブレイド』はな……監督が何度も降板して脚本も書き直しまくって、もはや都市伝説の域に入ってんだよ。無理だろ、もう察しろよ」
折紙も無表情のまま単調に追撃する。
「……現実を見るべき。『デッドプール&ウルヴァリン』でウェズリー・スナイプス本人が出てきて『俺が唯一無二のブレイドだ』ってメタ発言した時点で、公式からの『これで我慢してね』というメッセージ」
名前のない少女も悲しそうに首を振った。
「うむ……あの『デッドプール』でのサプライズ出演で満足しておくのが、精神衛生上よろしいのではないか……?」
モブ隊員たち「「諦めが肝心ですよ司令官……」」
「全員で現実突きつけて励ましてくんなぁぁぁぁぁっ!!! 制作難航してるのは分かってんのよ!! それでもマハーシャラ・アリのブレイドが観たいのよ私はぁぁぁ!!」
半狂乱になる琴里の叫び声が、かぶき町の空に虚しく響き渡るのだった。