WORLD TRIGGER ~ 飛翔する遊星 ~   作:凸凹凹凸

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説明も無しにいきなりの展開が多いと思いますが、すみません。書きたくて書いてしまいました。

※注意
・閲覧する場合、お目めを暖かくして、生易しい気持ちで読んでください。
設定も合っているか合っていないか……。
・誤字脱字があるかもしれませんが、その際は気軽にコメントなどでお教え頂けたら幸いです。
・文章力が残念かもしれません。


第1話「唐突な開戦」

WORLD TRIGGER~ 飛翔する遊星~

 

第1話「唐突な開戦」

 

 

 

 

 

 

 

 《三門市(みかどし)》、人口28万人。

 ある日この街に異世界(・ ・ ・)への(ゲート)が開いた。

 

 『近界民(ネイバー)

 

 後にそう呼ばれる異次元からの侵略者が(ゲート)付近の地域を蹂躙し、街は恐怖に包まれた。

 こちら(・ ・ ・)の世界とは異なる技術(テクノロジー)を持つ近界民(ネイバー)には地球上の兵器は効果が薄く。誰もが都市の壊滅は時間の問題と思い始めた。

 

 その時、突如現れた謎の一団が近界民(ネイバー)を撃退し、こう言った。

 

『こいつらのことは任せてほしい。我々はこの日の為にずっと備えてきた』

 

 近界民(ネイバー)技術(テクノロジー)を独自に研究し、こちら(・ ・ ・)()の世界を守るために戦う組織。

 

 界境防衛機関《ボーダー》

 

 彼らはわずかな期間で巨大な基地を作り上げ、近界民(ネイバー)に対する防衛体制を整えた。

 

 

 それから4年。

 (ゲート)は依然開いているにも関わらずか、三門市を出ていく人間は驚くほど少なく、《ボーダー》への信頼に因るものか多くの住人は時折届いてくる爆音や閃光に慣れてしまっていた。

 

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

「あー…………ハイハイ、あー……ハイ。ここが麓台町(ろくだいちょう)か。あの近界民(ネイバー)とかいう『空閑(くが)遊真(ゆうま)』が一番最初に目撃されたっていう」

 

「玉狛支部に居るんだろ? よく城戸(きど)本部司令が許したな。オレ怖くてたまんねぇのに」

 

「ホーゴとは違うんだよ。彼は」

 

 整えられた綺麗な公園にて、三人の青年が子供のように公園に設けられた動物のバネが付いた遊具に跨がりながらアイスを食べていた。

 一人は強力な天然パーマを逆らうかのように、女子が使うヘアアイロンで真っ直ぐにしたストレートヘアーの青年はバリバリと直ぐにアイスを平らげ、二人目は少し大きめの黒縁メガネが特徴的な青年は既に食べ終えていて、最後の三人目はチビチビと舐めながら食べている少し長身の青年、その三人組だった。

 

「はぁ……林藤さんに言われた通り、麓台町付近を探索したけど多量のトリオンが検出もしていない。……無問題だ」

 

「大変ねー。シシクっち」

 

 黒縁メガネの青年が本格的遊具に遊び始めると同時に、長身の青年はアイスを食べ終え、一人最新機種の携帯電話を駆使して一人唸っていた。

 この三人、ある調査を頼まれこんな日が昇っている時間帯に居られる訳なのだが、きちんと仕事をしなければ給料が貰えないのはどこも一緒なのである。

 社会人たる者として、しっかりと仕事をこなした上で銭をいただく。それが鉄則。

 

「宇佐美ちゃんが改造してくれたトリオン検索機の取り扱いは大丈夫なのかホムラっち」

 

「……やめろ、厨二っぽい名前で呼ぶな。俺は宍喰(ししくい)焔悟(えんご)という立派な名前がある。外で呼ばれるのはキツイ」

 

 焔悟(えんご)と呼ばれたのは天然パーマを気にする青年だった。直した筈の髪をいじったりしている。

 

「カネ君もちゃんとやれや。検索機は一個だけじゃねえだろ」

 

「カネ君じゃない……紺頼(こんらい)鉦胡(しょうご)だ!」

 

 鉦胡と呼ばれたのは長身の彼で、鉦胡は遊具から離れると携帯を取り出し、画面に映し出された数値を二人に見せる。

 

「そこで全力で遊んでる遠吠(とおぼえ)保護(やすもり)のせいで大変なことになってる! 馬鹿が馬鹿みたいなトリオン量のせいで狂ってるのよ既に! 変態だな!」

 

「いや嫉妬系でしょそれ!? オレのあふれでるこのトリオンというカリスマ性に嫉妬しちゃってる系っしょマジで」

 

「安定のムカつき加減だな保護(ほご)くんよ」

 

「ホゴ言うなや!」

 

 ビュンビュンとバネを揺らして遊具で遊ぶ保護に、焔悟も鉦伍も蹴りでも入れてやろうか、と思い始めた頃。ちょうどなタイミングで焔悟に電話が掛かってきた。

 相手は玉狛支部でオペレーターを務める宇佐美(うさみ)(しおり)からだった。

 

『もしもし? 焔悟さん? もしかして林藤(ボス)に言われてた空閑くんと三雲くんが会ったっていう麓台町に行ってない?』

 

「…………もしかしなくてもそうだけど」

 

『あっちゃ~! それ昨晩言ってたことだったよね~。ごめんごめん~! もうそれ大丈夫だからやらなくていいよ』

 

 なに? と当然焔悟は訝しむ。そして同時に何かを予想していたのか、宇佐美が口が開く前に焔悟は先に問うた。

 

「……もしかしてそこに《空閑遊真》が居るんじゃねぇだろうな?」

 

『…………………………………………………………』

 

 沈黙。だが焔悟の頭の中では、あの平和的差別をするメガネ美少女が見事に固まってることを安易に想像出来てしまった。

 焔悟はあの少しだけ、というか我ら三人に対して少し適当な調査を頼む玉狛支部の支部長・林藤を思い出していた。あのチョビヒゲを。

 

(完っ全に忘れてやがったな!?)

 

 焔悟は嫌う天然パーマをヘアアイロンで真っ直ぐにしたであろう髪を問答無用に掻き、麓台町まで乗ってきたであろう自分の愛車にへと向かった。

 突然の行動に保護と鉦伍は呆気を取られるが、焔悟は口だけで『リ ン ド ウ』と動かしただけで二人に伝わり、早足に車に乗り込む。

 

「上等だゴラァ! 玉狛に帰るぞゴラァ!」

 

 焔悟は思いっきりアクセルを踏み込み、荒い運転で玉狛支部にへと喧嘩腰で帰路についていった。

 もっと安全運転で帰ってもらいたいと願う二人の青年だったが、この天然パーマが怒ったら手が付けられないのは熟知していた。

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

「あちゃ~……林藤支部長のせいで焔悟さん怒っちゃってたよ~ヤダなぁ」

 

 そんな事を呟いたのは、ソファーに腰かけていた黒髪長髪で眼鏡が似合う少女、宇佐美(うさみ)(しおり)だった。

 

「あの、今電話した人って……」

 

 そう聞いてきたのは、またもや眼鏡をかけた人物で、名を()(くも)(おさむ)という少年からだった。その隣に大分小柄な可愛らしい少女の(あま)(とり)千佳(ちか)と、更に隣には少年だと言うのに白髪頭で口を『3』にしている子供然としている今さっき電話を掛けた三人が探していたであろう()()(ゆう)()の姿があった。

 なにやら休憩室のような場所で玉狛支部のメンバーが集まっていた。

 

「玉狛支部の残りのメンバーよ。小南(こなみ)ちゃんより早くボーダーに所属してた人たちなの。なんとレイジさんより年上の人たちなのです」

 

「そこ威張るところか?」

 

「がぁー! なによ! あたしより先にボーダーに居るからって偉い訳でもないじゃない!」

 

 宇佐美がエッヘン、と胸を張って説明するもそれが大雑把で三雲も雨取も半信半疑だ。筋骨整った逞しい体つきに無表情(ポーカーフェイス)を崩さない青年、木崎レイジは飲み物を飲みながら疑問に思った所をツッコむが、長く綺麗な髪を揺らしながらも感情を露にして叫んでいるのは、小南(こ なみ)桐絵(きり え)という美少女から発せられたものからだった。

 

「ふむ……その人たちは強いのか?」

 

 と、そこに疑問に思ってか、白髪の少年・空閑遊真がそんなことを聞いてきた。

 その言に答えたのは、木崎レイジと小南桐絵と同じ隊である烏丸(からすま)京介(きょうすけ)がコーヒーを片手に答える。

 

「有り体にいえば……強い。……だが、俺からしたら《未知数》だな」

 

「未知数?」

 

 なんとも言い難い答えだな、と思っていると、本人もそう思っているのか顔をしかめる。

 

「我らがエリートさんである迅さんも言ってと思うんだけど、玉狛支部は少数精鋭の実力派集団……と大言を吐いていますが、特にこの三人はある特殊的な実証結果を基づいたことで特化した実力者なんだよね」

 

「ほほう……! 興味ありますな」

 

 楽しげに笑みを浮かべて宇佐美の話に身を乗り出す遊真に、宇佐美はますます口を滑らせていく。

 

「ぬっふっふ! しょうがないですなぁ!」

 

「なんか宇佐美先輩生き生きしてますね」

 

玉狛(ウチ)の箔を付けたいんだろ……」

 

 レイジが沢山作られてあったサンドイッチを取りながら意気揚々と語ろうと立ち上がった宇佐美に目を向けて食べ、京介もサンドイッチを咀嚼して宇佐美の話を聞く。

 

「レイジさんたちが玉狛支部第一だとすれば、焔悟さんたちは『玉狛支部第零』なんて本部の方々に言われてたりするんだよ! 代表的なのがその玉狛第零の隊長を務める宍喰(ししくい)焔悟(えんご)さん! レイジさんと同じく接近戦から遠距離戦なんでもござれのオールラウンダー! でもどちらかと言うと接近戦に特別特化(・ ・ ・ ・)してるわ」

 

「そ、そうなんですか?」

 

「あらら? ご存じない三雲くん? う~ん……なんて言えば良いんだろ…………こればっかり実戦で見た方が良いかも」

 

「そうすよ。そんなに喋っちゃってまた焔悟さんに叱れるんじゃありません?」

 

「だ、大丈夫。バレなきゃ……………黙っててね烏丸京介くん?」

 

「なぜにフルネーム?」

 

 遊真がまだ聞きたそうにしていたが、止めた。

 

(よし。まだまだ強い人は居るみたいだな。生で戦闘見てみたいし、後は楽しみにしてよう)

 

 あちら側(・ ・ ・ ・)の世界(・ ・ ・)の住民、近界民(ネイバー)である遊真からすれば、こちら側の世界の強さというものに興味があった。

 向こう側では『殺されなければ死んでしまう』世界の住民。生きるために身につけた強者の実力を誇る遊真にとって、少しでもこちら側の『強さ』を確かめたかったのだ。

 だが、話だけでも情報を知っておけば対応ももちろん出来やすくなるのだが、遊真自らの目で確かめたい欲求もあったのだ。

 

(こなみ先輩も強い(・ ・)し、馬鹿に出来ないぞ)

 

 遊真がそんなことを考えているとは露知らず、三雲と千佳は宇佐美の手作りサンドイッチと、レイジや烏丸のトリガーの扱い方法などに集中していた。

 

「だが、まさか雨取のトリオン能力がここまでとは知らなかった。超A級のトリオン量だ。忍耐力と集中力があって性格も狙撃手(スナイパー)向き。『戦い方』を覚えればエースになれる素質がある」

 

 この話の話題となっている小さな女の子である雨取千佳は、とある事情によりこの玉狛支部に入隊し、界境防衛機関(ボーダー)訓練兵(C級)になるべく、ツーマンセルでレイジに狙撃手(スナイパー)の手ほどきを受けていたのだ。

 レイジは驚いていたのは千佳の桁外れなトリオン量にだった。

 人間の動力源である生体エネルギー、それが『トリオン』であり、そのトリオンは『トリオン器官』とよばれる見えない(・ ・ ・ ・)内蔵(・ ・)で生み出される。そんなトリオンが、あの小さな女の子はA級ボーダー隊員より既に持っているのだという。それにはある程度ボーダーの内情を知っているであろうA級隊員であるレイジがそう言えばかなりの見込みがあるとされている。

 『おお~!』と皆が千佳に視線が集まれば、本人は照れていた。

 そんな賑やかになってきたところで、玉狛支部の玄関からドアが開かれた音がした。どうやら帰ってきたらしい。

 

「うぉーい! 誰も居ないのかー!」

 

 玄関先から少し進んだ場所から声が聞こえると、面白いように玉狛メンバー(三雲たち以外)が黙る。

 あれ? どうして? と不審がった三雲だったが、思わず返事をしようとした小南を宇佐美が超絶笑顔で口を両手で塞いだ。モガモガとする小南を余所に、宇佐美は三雲たちに『しぃ~……!』と小さく言うと、

 

「あ、あれ? マジで? 誰も居ないの? ぅお~い……」

 

 誰も返事しないことによって、留守なのか?! と焦り始めた声の主は急に小声になり、何かブツブツ呟きながら中に少しずつ入って来る。

 

「ぉ……ぉ~ぃ ぃるんだろぉ~? 何でだよ、何で誰も返事しないんだよ。こえぇよ、マジ留守か? 玄関開いてたし…………泥棒…………不法侵入…………変態…………川で挟んだ玉狛支部…………さ、さささ殺人犯っ!?」

 

 かなり怯えているような声で皆が居る部屋まで近付いてくる。

 と、部屋の入り口に烏丸と宇佐美がいつの間にか移動して、なにかをスタンバイしていた。一体なにをするんだろうと三雲たちが疑問に思っていると、ガチャリとドアが開かれる。

 

「ぉ~ぃ 」

 

「「わっ!」」

 

「わああああああああッッ!?!?」

 

 ガシャガシャガシャーッ! と入って来ようとした人は派手に驚きグルグルー! と体を横転させて床に尻餅をついていた。

 

「やーやー保護(ほご)さん。お帰り! 相変わらずの新鮮な驚きっぷりだよ!」

 

「いやー……マジすんません保護(ほご)さん。俺は驚かせる気は無かったんすけど、宇佐美先輩に唆されてて」

 

「あーっ! ずるいなとりまるくん!?」

 

 パクパクと唖然としてる『保護さん』こと、遠吠(とおぼえ)保護(やすもり)はずれた眼鏡を直し、一息ついて、

 

「ムカ着火ファイヤーァァァァァアア!!」

 

「アハハハっ!!」

 

「小南先輩シールド」

 

「ちょっ!」

 

 キシャアッ! と奇声を上げ、奇行を及ぼうとした保護に宇佐美は爆笑して、烏丸も小さく笑みを浮かべて小南の背中に隠れる。

 その間、三雲たちの置いてかれ感も凄いが、それを見越したレイジが暴走しようとしている保護にがっちりとホールドさせて捕縛させた。

 

「落ち着いて下さいよ。遠吠さん」

 

「グググっ!? ぞれを本格的スリーパーホールドをぎめるばえに言えぼぉぉっ!!?」

 保護の首にレイジの立派な上腕二頭筋にてプロレスの絞め技であるスリーパーホールドからバックチョークに移行した辺りで気絶(ブラックアウト)しかけた。そこをすかさず助けに入ってくれたのは小南だった。

 

「あ、あんたら何してんの!?」

 

「悪い。つい」

 

「〝つい〟……じゃ、ないわよ! しかも悪いの全面的にこっちじゃない」

 

 小南は気絶しそうになった不憫な保護を抱き起こすと、虚ろな目で、

 

「キリ……エちゃん……オレ、オレ…………『なにかした?』」

 

「そ、そうよねっ!! うんごめん。大丈夫だから、これ日常茶飯事だから」

 

「日常茶飯事だったんですか!?」

 

「玉狛、怖いところです」

 

「フム……面白いな」

 

 もう呆然とするしかなかった三雲たちは各々思ったことを口走る。

 レイジ、烏丸、宇佐美が各々が保護に謝るが、ビビって小南の後ろに隠れている。

 

「慣れてくださいよ保護さん。これ日常茶飯事じゃないですか」

 

「そうだよ! いつの(・ ・ ・)間にか(・ ・ ・)日常茶飯事になってたんだよ! 怖ぇよ! なにを日常茶飯事にさせてんだよ! いつからだ!? 前からか!? そうですか!?」

 

「落ち着こう保護(やすもり)さん」

 

 まさか、小南に落ち着きを促せられるとはと保護が思っていると、目に入ったのは白髪の少年。

 

(この、目……)

 

 無意識に、真剣な顔となり空閑を見つめた。

 計り知れないトリオン量。肌から伝わる『何か』に敏感に感じ取った保護は、口を開いた。

 

「そうか。君が空閑遊真か」

 

「うん……あれ? 名乗ったっけ? ……あぁ、そうか。話に聞いてたのかな」

 

「そうだけど、それだけじゃない」

 

 『?』と困惑しているが、保護はそれ以上は語らず、レイジたちに向き直る。

 

「林藤支部長から話は聞いてたから、大丈夫。オレもレイジたちの補佐として、教えられるところを教えていきうと思ってる。改めまして言っておこう」

 

 レイジの固い筋肉に軽いパンチを打って、肩に手を回し、

 

「レイジや桐絵、京介よりも早くボーダーに所属し、玉狛で働いてた遠吠(とおぼえ)保護(やすもり)だ。コイツらが言うように保護(ほご)って漢字書いて保護(やすもり)だからそこんトコ宜しくね!? そしてオレは、」

 

 とことんと溜めて溜めて、顔をグイッと上げ、大声で、

 

「お前らより年上だがんなぁぁぁーー!!」

 

「「「えぇぇぇーーっっ!!!」」」

 

 全力で情けない事を叫声(きょうせい)をして、早速三雲たちもどんな対応すれば良いのか困惑状態となっていた。

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 玉狛支部に『(ブラック)トリガー』 がある事を、ボーダー本部は既に知っていた。それも堂々と知らされた形で。

 

「城戸指令の直接命令指揮権を利用して林藤さんを使ったのか」

 

 ボーダーの指揮系統は命令の重複を避けるため直属の上官のみが部下に命令できるようになってる組織の規則(ルール)を利用したのだ。

 

「君らも大変だなぁ。三輪くんの隊だと城戸さん派か……マジ大変だな」

 

鉦胡(しょうご)さん。そして焔悟さん……どうしてここに」

 

 玉狛支部に居なかった二人。紺頼(こんらい)鉦胡(しょうご)と宍喰焔悟が居る場所は、三輪秀次が率いるA級7位の『三輪隊』が玉狛支部を監視していた場所だった。玉狛支部をよく見渡せる場所で、狙撃ポイントとして最高な場所だったが、玉狛支部の隊員たちがそれを知らない筈がなかった。

 

「いや、さっきコンビニ行ったらさ。米屋くんに会ってねぇ。限定版の飲み物買ってあげたら教えてくれてねぇ。さっき君に上げた弁当もボクらの奢りだけと…………まぁ! 気にしないでねぇ!」

 

「汚い! それが良い大人のやることですか!?」

 

「古寺章平くん。大人って……大人って狡い生き物なんだよ……」

 

(なぜ悟ったような顔をなされているのですか鉦胡さん……)

 

 三輪隊の狙撃手(スナイパー)である古寺は眼鏡を掛けた真面目な少年。玉狛の人間と話していたり、ましてや仲良くしてしまっては隊長である三輪や隊にさえ迷惑を掛けてしまう。

 そう、たとえ肉汁が弾け、こんがりと茶色く仕上がった香ばしい匂いを放つ唐揚げ弁当に目が離せない訳じゃない! そう必死に誘惑を消そうとするも、横を見れば、

 

「いやぁ! ほんとに良いスか! 限定版ジュースに唐揚げ弁当! 最高!」

 

「ハッハッハ。飲めー食えー」

 

(米屋先輩ィィイ!!)

 

 さっそく買収に引っ掛かった先輩に古寺は情けなさを感じてしまうが、自分も危うい。空腹なのである。

 弁当など待って来れば良かったと後悔している。

 

「ハハハ、大丈~夫。食べ終えたら帰るし、三輪に見つからないようにしとくよ。だから食べな? 迅くんみたいにただ話したかっただけさ。ぼんち揚げは無いからねぇ」

 

 鉦胡は買ってきたコンビニの缶コーヒーを飲みながら、さりげなく古寺が覗いていた望遠鏡に目を向ける。

 

「朝早くから仕事熱心だね。玉狛支部が覗ける場所も限られてるから狙撃手(スナイパー)としては少々居辛かったんじゃない」

 

「モグモグ……えぇ……。なるべく居場所を悟られないような場所を確保し、そこから狙いを……って! 何聞いてるんですか」

 

「大丈夫だって、君よりボーダーに長く居るんだよ? 狙撃技術の話なら本部にいる(あずま)さんから聞いてるし、なんたってウチには『万能手(オールラウンダー)』が二人も居るからねぇ」

 

「えっ!」

 

「知らなかったの? 玉狛には……」

 

「おい鉦胡! 余計なこと言うなって」

 

「あれ?」

 

 不味いことを知られてしまったかも、と一人焦る鉦胡だったが、だがよくよく考えても別に問題は無いかなと結論つく。きっと焔悟が注意したのは別のことかもしれない。

 

「まぁ取り敢えず、君たち頑張ってよ。ボーダーの仲間同士。派閥とか面倒なのに絡まれてるけど、いつでも声掛けてきてね。あっ、お茶と菓子も置いてくからねぇ」

 

 それじゃ、と手を振って屋上の出入口から出て行った二人に、弁当を食べ終えた古寺と米屋は顔を見合わせ、互いの検討を言い合う。

 

「位置が相手側に割れたので場所を移動します。全体が見渡せる場所も大抵の場所がバレてると思いますが、移動しておきましょう。恐らくああやって会う(・ ・)だけでも十分こちら側の精神疲労を与えてくるのですから」

 

「程よく飴も与え、しっかりと鞭も打ってるってか? 章平、あの人たち未だによく分からんわな」

 

「まぁ、それはそうですが、襲撃とかされませんでしたし、眼中に無いって事じゃないですか?」

 

 あれ? と、米屋はコンビニ袋にゴミを入れて片付けている古寺に聞いた。

 

「古寺知ってたのか、あの二人の実力」

 

「……奈良坂先輩からも聞いてたのし、東さんからも話など聞いてます。…………米屋先輩と話していた宍喰焔悟さん、あの方は攻撃手(アタッカー)だけでは無く、狙撃手(スナイパー)まで経験していると聞きました。しかも腕は東さん並だとか……。それなのに何故攻撃手(アタッカー)なのか不思議ですが」

 

 古寺が辺りを片付け終えると、米屋から大きく吐かれた溜め息に思わず怪訝な顔となる。

 

「む、なんですか。なにか間違ったところでも」

 

「いやいや、章平そこまで知ってて、焔悟さんの凄さを見逃してるとは………ってな」

 

 古寺は首を傾げると、米屋はいきなり槍型用に作られた『弧月』を出現させると、手軸を回すようにして鋒をイメージの相手を刻んで貫く一動作をおこなうと、ギュッと強く握り締める。

 

「あの人な、『遠征組』で、ボーダー内のA級1位の部隊『太刀川隊』の隊長であり、No.1攻撃手(アタッカー)の実力者。太刀川(たちかわ)(けい)がランク入りする前の、…………攻撃手(アタッカー)No.1だった人だったんだぞ」

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

「玉狛支部に、元No.1攻撃手(アタッカー)が所属しているんですか?」

 

「おっ、三雲くん。京介から話を聞いたのかい?」

 

 遠吠保護が残り物のご飯を食べていると、実力派超エリート迅に各師弟を組まされたことに笑い転げていた保護を無視し、レイジと雨取(あまとり)千佳(ちか)狙撃手(スナイパー)師弟と小南と空閑遊真の攻撃手(アタッカー)師弟は訓練先にへと向かったが、烏丸と三雲の師弟コンビはまだ上に居た。

 

「焔悟さんのことなんですけど、話しちゃって大丈夫でしか?」

 

「大丈夫でしょそれくらい。怒らないと思うよ」

 

 それじゃ、と保護がご飯の上に沢庵を乗せたまま三雲に向き合う。

 

「まず玉狛支部に少数の隊員が所属しているんだが、その誰もが『A級』レベル……って迅から聞いたんだったね?」

 

「ハイ。玉狛支部は少数精鋭の実力派集団って言ってました」

 

(ぇぇ~マジか! そんなハードル上げちゃったの迅ちゃん!?)

 

 ビクビクと、なぜかし始めた保護に烏丸が小さく笑みを浮かべている。

 

「あ、えっと、うん。まぁ、それは大言壮語っぽくならないよう務めようという迅ちゃんからのメッセージかもしれないしうん。…………そうだよ! オレたちはA級だぜ多分!!」

 

(え、えぇ~~!!)

 

「ぷくくく…………」

 

 やけくそ気味に言ってきた保護がとても可笑しくて、三雲は困惑し、烏丸はもう肩が動くほど笑っている。

 

「そこ! なに笑ってんだコンチクショウ! 後輩になめられるなんて……なんという屈辱」

 

「何言ってんすか、人を舐めるなんて真似できませんよ。気持ち悪い」

 

「物理的なこと言ってんじゃないのよ? そこん所は分かってるわね!?」

 

 ちょっとテンパるとオネェ気質になってしまう保護に三雲も段々と笑えてきそうになり、耐える。

 

「その、No.1攻撃手(アタッカー)……」

 

「……の話だったよな! そうだったな!」

 

 保護はバクバクと沢庵とご飯だけで済ませ、使い終わった食器を洗う。

 

「〝元〟をつけろよー? アイツ太刀川くんに遠慮して一番を名乗り出たくないらしいし、元から一番とか嫌がってた節があるし」

 

 洗い終えた食器の水滴を完全に拭き取り、食器棚に片付けると、電気ポットからお湯を急須に入れ、湯呑茶碗に注ぐ。

 

「その、焔悟さんという方は……」

 

「まだ玉狛(ウチ)に帰ってきてないなぁ……まぁ、いつか会えるだろうし、そんな良い話なんて聞けないぞ」

 

 三人分のお茶を注ぎ、保護はソファーに座り、三雲は戸惑いながらも対面に座り、烏丸は何となく真ん中の椅子に座った。

 

「太刀川くんがボーダーに入隊する前はね、玉狛にまた一人居たんだよね。【化物】が」

 

「は、えっ?」

 

 三雲が宍喰焔悟の話をするのかと思えば、検討違いが話が出てきたが、保護もそれを知ってか『まぁ聞きなさいって』と話を進める。

 

「その【化物】は、あっ、ちゃんとした人間だよ? まぁその【化物】と呼ばれる人にオレたち三人、宍喰焔悟、紺頼鉦胡、そしてオレこと遠吠保護がその【化物】に直属の指導の元鍛えられた。そしてらまぁ、死ぬほどきつくて堪らなかった。耐えられなかった。まじで」

 

 ズシン、保護から一切の表情が消え、それがどれだけ深刻だったのかすぐに伝わった。

 

「その人って、今は……」

 

「ボーダー本部に異動になり、今は『城戸派』なのか『忍田派』なのか、はたまた『玉狛支部』の支持者か……分からない。何を考えて行動しているのかさえね」

 

「……その人って、凄く強い人なんですか?」

 

「強いよ。なぁ、京介」

 

 話を振られた烏丸は、真剣な顔付きで頷く。

 

「そんな強い人に、そりゃ【化物】と呼ばれた人にオレたちは文字通り血ヘド吐きながら鍛えられた」

 

 保護は思い出したのか、いきなり顔面蒼白になりながらも話す。なにもそこまで無理して話さなくても三雲が思っていると、保護は気を取り直し、

 

「その人に鍛えられたオレたちは、『玉狛第零』としての階級を貰えた。まぁ、すぐに名の通り零の如く早くに無くなった部隊だったんだけど、そこで名を上げたのが〝宍喰焔悟〟だったのだ!」

 

「おぉ~」

 

「いやぁ、やっと本題に入れましたね。保護さん」

 

「うん。オレ話すの苦手だったからマジ焦ってたわ」

 

 この人も何気に素直ですぐに騙されそうな人なんだな、とそこで三雲は思った。

 

「元々、その【化物】に師事した焔悟は炙り焼くようにとことん接近戦をその人としていたよ。その【化物】も接近戦を得意とした人だったからなぁ。マジあれは鬼畜だったわ、引くわ」

 

 内容は省くけど、鬼畜だったよ。とまた蒼白になりながらも笑顔でそう言ってきた保護に三雲はどれだけその【化物】と呼ばれた人に鍛えられたのか、想像できなかった。

 

「きっと、今から太刀川くん達と戦ったらどうなるか分かんないんじゃないかな~」

 




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