憑依絶唱シンフォギア〜その愛を胸に秘めて 作:曇り後晴れ
知らない天井だ。身体が重い……ここは……ベッドの上……?
「ここ……は……?」
震える声が
「響! 良かった! 目を覚ましたのね響!」
「え……?」
身体を起こした直後に誰かに抱きつかれた。甘い……匂いだ。
「だ……れ……?」
冗談ではなく本当に何が起こっているのか理解が追いつかない。誰かに抱きしめられているのはわかる。上体を起こして混乱する中で部屋の中にいただろう人物に抱きしめられた。今わかる事態はそれのみ。
「良かった! 響が生きていてくれて本当に良かった!」
響……確かにそれは僕の名前だ。【音無 響】……それが僕の名前だ。
「っ! ゴメンね響……ようやく起きた時直後に混乱……してるよね……?」
柔らかな声の人物の正体がようやくわかる。そう思ってその人物と目を合わせようと視線を直そうとして……僕は絶句した。
「え……? だれ……?」
「響!? どうしたの響!?」
少女の表情が驚愕と悲しみの感情に固まった。彼女の事を覚えていない事があり得ないかのようなショック……そう言いたげな表情だった。
「ゴメンね……君は……誰? 僕はどうして……ここに……?」
「覚えて……無いの……?」
もう1度混乱する意識の中で問いかける。その瞬間彼女は大粒の涙を零して膝から崩れ落ちる。だけどその涙には既視感があった。それが酷く悲しいとして感情が流れ込む。
「響! 良かった! 本当に生きてて良かった!」
「ゴメンね未来……また心配……かけちゃったね……」
再び僕の頭にイメージが流れ込む。そうだ……
「お医者さん……呼んで来るね? 響が目を覚ましたって……伝えなきゃ……」
「待……って……」
白リボンの後姿を見送りそうになって何とか彼女を呼び止める。
「ありがとうね……」
「うん……今は……休んでね……」
彼女は耐えるように胸を押さえて部屋を出て行った。
「胸……」
僕は自身の痛む胸を確認しようとして……目を疑った。
「これ……女性の……」
存在しない筈の胸の膨らみと傷跡が何かを思い出そうとして……僕は意識を手放した。
ここは……?
『あはは……ごめんなさい。貴方を巻き込んでしまったみたいです』
黄色の影に包まれた柔らかな声が暗闇に響いた。
『ここは夢の世界みたいなものです。私の声も……貴方の識る記憶の欠片です』
君は……誰だ?
『なんなんでしょうね? でも……私は貴方に伝えなければなりません。
【生きるのを諦めるな】
もしも貴方が良ければ……彼女を……守って……』
待ってくれ! 行かないでくれ! もっと教えてくれ!
『ごめんなさい……時間が来たみたいです』
それだけ告げて僕の意識は何かに引き摺られるように光に包まれた。
「目が覚めたか響?」
優しい声がそこにあった。
「あれ……どうして……」
「響は……ツヴァイウィングのライブに行って……ノイズに襲われたんだ。でも生きていてくれて……本当に良かった……」
男性……いや、「お父さん」は「私」を抱きしめた。その温もりに涙が止まらない。そっか……この世界は……私は……
【ノイズ】【ライブ】【病院】【心臓】……何となく……嫌な予感がした。そしてその答えを……無意識に口にしていた。
「戦姫絶唱……シンフォギア……」
「響? どうした?」
「何でもないよお父さん……」
もしも「僕」が「私」なのだとしたら……なんて……残酷なんだろう……?
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