怪人個性の転生アカデミア   作:大枝豆もやし

4 / 4
熱

 

 

 俺はヒーローがあまり好きじゃない。

 別に、アンチになってるわけでも、特定のヒーローを嫌ってるわけでもない。

 正確に言うなら、職業ヒーローに思うところがあった。

 

 前世の俺にとってのヒーローは仮面ライダーだった。

 迫り来る怪人を、何処からともなく颯爽と現れた仮面ライダーが倒し、何も言わずに去っていく。

 どんなに苦しくても、どんなに辛くても、仮面で涙を隠して戦う孤高のヒーロー。

 見返りを求めず、時には守った人々に恐れられ、またある時には裏切られようとも、それでも戦う勇姿に憧れてきた。

 

 

 けど、所詮は物語(フィクション)だ。

 

 

 そんなヒーローは現れない。

 痛くて辛いだけのヒーローなんて誰がすき込んでなるものか。

 前世は勿論、ヒーロー社会と言われる今世でも変わらない。

 むしろ、実際にヒーローがいる今世は余計に思い知らされる。

 幻想は決して現実に現れないと。

 もしかしたらという夢は、現実にあっさりかき消された。

 夢から“冷めた”俺は、今日も熱を持たずにダラダラと腐っていく…。

 

 

 

 

「けど、あんなもん見せられたら、そんなモン吹っ飛ぶよな!」

 

「今日だけは特別だ!見てろよ、俺の変身!」

 

 

 俺は、アイツから貰った“熱”を燃え上がらせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんだあのヒーローは!?」

「何?新人がまた出たの?」

「でもちょっと怖いな…」

「けど強そうだぞ!」

 

 突如現れた影に、野次馬は更に騒いだ。

 液体である筈のヘドロの腕を受け止めたヒーローらしき影。

 ソレは、炎の中で異形へと変貌した。

 

 クワガタ虫を人の形にした外見。

 金色の長い角に、赤い光が宿った眼。

 燃え盛る炎の中、首に巻かれた真っ赤なマフラーが靡いている。

 

 ゴ・ダグバ・バ。

 無個性の少年から受けた火種を受けて。

 商店街を焼く炎よりも熱い心火を燃やしている。

 

「たあッ!」

 

 ダグバが拳を繰り出す。

 ソレは液体である筈のヘドロを捉え、ダメージを与えた。

 

「(今だ!)」

 

 ヴィランが怯んだ隙を逃さず、緑谷が爆豪を引き上げた。

 人質と完全に分離させられた。

 残すはヴィランのみである。

 

「緑谷、そのバカを頼む。コイツは俺がやる」

「う…うん!」

 

 爆豪を担いでその場を後にする緑谷。

 ダグバはヴィランとの間に立ちふさがって手を出させないようにする。

 

「ジャマを…するな!」

 

 再びヴィランが仕掛ける。

 自身の液体の身体を振るった、鞭打のような打撃。

 遠心力で力が乗った鉄球のような先端部を食らえば、人体など簡単に破壊出来よう。

 しかし相手はただの人間ではない。

 ダグバをソレを跳躍して回避すると同時、足を突き出して跳び蹴りをぶち当てた。

 

「グギャアァッ!!?」

 

 二度目の被弾。

 今度はかなりのダメージを受けて。

 何度も地面をリバウンドしながらヘドロはパニック状態に陥った。

 

「こんな、こんなコトが……!」

 

 ありえない。

 液状の身体はあらゆる打撃を無力化する。

 通じるのは一部の個性ぐらい。少なくとも打撃系は一切効かなかった。

 なのに何でだ、いくら異形でも何でコイツのは通じる?

 

 何故痛い。

 何故殴られている?

 何故俺は一方的にやられている!!?

 

「(熱い。だが、悪い気はしねえな)」

 

 身体中から迸る熱。

 嫌悪感はない。むしろ逆にこの熱さが心地良かった。

 いつもなら飲まれそうになる熱が、闘争心が今日は気持ちがいい。

 カチリと歯車がはまったような、そんな不思議な感覚。

 力が漲る。思考が冴え渡る。今ならなんでもできそうな気がする。

 

「クソ…クソクソクソ!クソがあああああああああ!!!」

 

 ヘドロが口から粘液を吐き出す。

 自身の身体を削って繰り出す遠距離攻撃。

 代償はデカいが、相手を拘束するには有効的な手。

 いや、今の彼にはそんな考えなど無い。

 思い通りにいかない事態に癇癪を起しているに近い。

 自分は傷つかずに、遠くから一方的に、相手を殴りたいのだ。

 無論、そんな破れかぶれが通じる筈もなく。

 

 一撃目。首を軽く捻って回避。

 二撃目。上体を軽く逸らして回避。

 三撃目。上体を戻しながら腕を振るって迎撃。

 四撃目。繰り出される前に跳び上がって回避すると同時に距離を取った。

 

 スタッ。

 近くのビルの非常階段に着地し、拳法のような構えを取る。

 トドメをさすつもりだ。

 

「はぁ~~~…」

 

 力を込める。

 液体の筈のヘドロにダメージを与えた力の正体。

 炎のようなエネルギーが足に集中し、収束させていく。

 

 熱い。

 右足が燃えるような感覚。

 昂る闘志と共に、増幅された熱をぶちかます。

 

「おりゃあああああッ!!!」

 

 空中飛び蹴り。

 前世で憧れたヒーローの必殺技。

 子供の頃に何度も真似をして、何度も変身した自分をイメージしていた。

 だが所詮は幻想。憧れになんてなれやしない。大きくなるにつれて現実を知り、やがて憧れを捨てた。

 今世でも同じ。最初は何度も真似をしたが、所詮は真似。本物には成れず、今更捨てたものを取り返すことも出来なかった。

 

 だが、今ならやれる。

 一時とはいえ熱を取り戻した今ならば。

 

「こんな…こんな筈じゃ…!!?」

 

 十数m程蹴り飛ばされたヘドロ。

 近くの建物の壁に叩きつけられ、蹴られた箇所から焼き印のように紋章が浮かび上がった。

 ヘドロは刑罰を受ける罪人のように苦しみながら、受けた印によって徐々に個性を抑えられ、やがて人間の姿へと戻っていく。

 

「ま、待ってくれ!」

「君には聞きたいことがあるんだ!」

 

 無視して去っていくダグバ。

 赤いマフラーを靡かせながら、消火される炎を見届けて姿を消した。

 

 

 

 

 ミスった。

 緑谷に聞きたいことあるのに、格好つけて去ってしまった。

 いや、あの場は先ずその場から消えるのが最適解だから仕方ないか。

 緑谷助けるためとはいえ無免許が個性使った挙句、ヴィランと戦って倒してしまったのだから。

 まあいい。見失ったのならまた見つければいい。

 俺は目を緑にして耳を澄ませ、緑谷の気配を探した。

 

 緑の力。

 いわゆる射撃形態。

 五感をメインに強化された今なら、音だけで正確に位置を把握できる。

 

『デク!!!』

 

 いた。爆豪と一緒だ。何でアイツもいるんだよ。

 

『俺は、テメエに助けなんか求めてねぇ!助けられてもねぇ…!! アァ!?なあ、一人でやれたんだ!!!』

 

 お~お~、荒れてる荒れてる。いつにも増してな。

 アイツ無駄にプライド高いもんな。

 見下してるナード君に助けられたのどんな気持ち~?

 だがよそでやれ。俺は緑谷に用があるんだ。お前は邪魔だ。

 そう思いながら近づいていく途中、満足したのか爆豪はどっかに行った。

 よし、今のうちに…「私が来た!!!」…今度は何だ!?

 

「オールマイト!?」

 

 目視できる距離まで近づけたが、オールマイトの姿に気づいて近くの壁に隠れた。

 

 オールマイト。

 ヒーローに明るくない俺でも知ってるナンバー1ヒーロー。

 圧倒的な身体能力はン・ダグバ・ゼバにも匹敵或いは超えている。

 他のヒーローとは文字通り次元が違う。この人だけ画風が違うのもそのせいかもしれない。

 

「ゲボォッ!!!」

 

 突然、オールマイトは吐血しながらヒョロガリに縮んでいった。

 どゆこと?

 

「君がいなければ、あの時彼がいなければ。君の身の上を聞いていなければ口先だけのニセ筋になるところだった。ありがとう!!」

「そんな…いや、そもそも僕が悪いです!仕事の邪魔して…無個性のくせに生意気なこと言って…」

 

 道のど真ん中で話始める二人。

 いや、そもそも二人の話が成立している時点でおかしい。

 もしかして緑谷最初から知ってたのか?オールマイトがあんなナリだってことに。

 普通ならあの最強無敵のヒーローがあんな姿になったら驚愕する。重度のヒーローオタクのアイツなら猶更だ。

 というか一つだけ言いたい。

 

 

 堂々と街中で正体晒して大丈夫か?

 

 

 普通、こういう大事な話は、人目のないところでしない?

 例えばホテルの室内やカラオケボックスとか。

 いくら人気が無いとはいえ街中で確認もせずに変身解除はオールマイト危機管理能力低くない?

 俺なら予め人がいないのを確認してから変身解除した後に行くわ。

 増してやオールマイトはナンバー1ヒーロー。パパラッチやストーカーがいて当然だから人目には気を付けるべきだと思うんだが。

 

「君はヒーローになれる」

 

 あっ、話聞いてなかった。

 何か緑谷がメッチャ号泣してる。

 さっきのセリフ、オールマイトに認められたのか?

 そりゃ、憧れのヒーローからヒーローになれると言われたら嬉しいわな。

 俺だってクウガに仮面ライダーになれるって言われたら泣く自信あるわ。

 

 本当ならサインでも貰ってネットオークションで高く売ろうと思ったがやめた。

 大ニュースどころか歴史的瞬間の現場に首を突っ込んで面倒ごとに巻き込まれる理由なんても無いし。

 今日のことは見なかったことにしよう。目撃者が俺だけでよかったな、オールマイトよ。今度はちゃんと確認しろよ。

 

 

「君ならわたしの"力"を受け継ぐに値する!!」 

 

「私の個性は聖火のごとく引き継がれてきたものなんだ!!」

 

 

「力を譲渡する個性ちから……それが私の受け継いだ個性!冠された名は……!」

 

 

 

 

 

「ワン・フォー・オール」

「おい待てぇ!!!」

 

 

 流石に我慢できなくなって首を突っ込んだ。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ヒーロー名「エターナル」(作者:オンドゥル太郎)(原作:僕のヒーローアカデミア)

雄英高校。▼ヒーローを目指す箱庭の住人達の中に1人の男が紛れ込む。▼「永遠」のメモリを手に。


総合評価:348/評価:7/連載:12話/更新日時:2026年10月16日(金) 04:15 小説情報

無個性として転生したので、仮面ライダーになります!(作者:姫神ららか)(原作:僕のヒーローアカデミア)

▼生前にて、全ての男が通ったであろう物に憧れを抱いた少年がいた▼仮面ライダー!それは全ての少年たちの心を掴んだもの!▼そして、大人にまで成長し、立派な社会人となったが...▼幼少期からの憧れである仮面ライダーになりたいと思い、電子系や制作系、工学系など、あらゆる物に手を出して、仮面ライダーを完成させようと夢見ていたが...▼ある子供が車に轢かれそうになったの…


総合評価:685/評価:6.35/連載:30話/更新日時:2026年11月04日(水) 21:10 小説情報

魔訶不思議大冒険(作者:一番好きなのは界王拳)(原作:僕のヒーローアカデミア)

孫悟空に憧れた青年が転生してサイヤ人になり、大切な人と共にヒーローを目指して、いつか“最強”のヒーローになるまでの物語。▼タイトル思い付かなかった……。※ドラゴンボールの知識が無くても多分問題ないです。


総合評価:1441/評価:8.14/連載:12話/更新日時:2026年11月03日(火) 09:00 小説情報

チャドの霊圧が消えないヒーローアカデミア!(作者:チャドの霊圧が……消えた?)(原作:僕のヒーローアカデミア)

BLEACHの主人公の親友なのにイマイチ戦績が良くなかった茶渡泰虎そっくりな人物に転生したオリ主が、ヒロアカで霊圧が消えないように気を付けながらヒーローとして多くの人々を救う物語。


総合評価:72/評価:-.--/連載:1話/更新日時:2026年11月05日(木) 11:45 小説情報

転生予定より11年早かった件について、とりあえず経営科でドラゴン旅行会社を起業する(作者:ルクエリシオン)(原作:僕のヒーローアカデミア)

【神様のくしゃみで予定より11年早く転生し、現在15歳。舞台は原作開始の11年前です】▼神様から神の個性『レックウザ』を授かり、ヒロアカの世界に赤ん坊として転生した翡翠凪(ひすい なぎ)。▼だが、着地したのは原作が始まる26年も前の時代。15歳に成長した現在――気付けば原作開始の11年前の世界だった!?▼「まあいいや。省エネで美味しいものを食べて生きていこう…


総合評価:652/評価:6.38/未完:9話/更新日時:2026年09月10日(木) 23:36 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>