奴隷たちが「助けてくれ」と言ってきたので買って自由にさせたら、なぜか敵国やエルフの姫が求婚してくるのはなぜだ。 作:主義
僕の目の前に広がっている光景を未だに信じられない。
目の前には見たことのないような高級な馬車が止まっていて、そこから女性が下りて来る。
「あなたのお嫁さんになりにきました」
「は……?」
なんでこんなことになった。
のんびり生きようと思っていた。
あの日の俺が助けなければ。
――――――
僕が生まれた家は『ブラウン家』は簡単に言えば貴族だ。
貴族の癖に土地を持たないという滅多にいない一族だ。
だが、商いの方ではそれなりの成果を出している。それもあって『ブラウン家』はまだ貴族と呼ばれているのだ。
両親は死んだ。貴族の癖に戦場に生き、死んだ。あの人たちは好奇心で全て行動するタイプの人間だから、死んだのは自業自得としか言いようがない。
元々両親に対して特別思い入れがあったわけでもない。亡くなったことを聞いた時は「あ、死んだのか」ぐらいしか反応できなかった。
使用人たちはそんな俺のことを冷たい人間と思ったかもしれないが、それが僕という人間なのだから仕方ない。
両親の子供は俺しかいない。自然と僕が家督を継ぐことになるが、この家系で継ぐのは『ブラウン商会』ぐらいだと思っていた。
だから父親の書斎であの手紙を見た時は素直に驚いた。
『父は戦場で死ぬかもしれないので、隠し財産の場所だけ記しておく』と書いてあり、最後には『色々と面倒なことになるから早いうちに使ってくれ、息子よ』と。
どこからか盗んだ金なのかは知らないが、そんな危ない金を息子に預けるんじゃないとは言いたいな。
使い切ってから死になさいと。
記された場所に行くとそこは何の変哲のない場所だったが、紙に記された通りに押したり、引いたりしていると地下に降りることができた。
そこには使いきれないぐらいの金貨があった。
両親はこれをどうやってと…素直に疑問に思った。商会の利益は違うところにしっかりと保管されているため、商会とは関係ないところでこれだけの財を成したのか。それとも本当に不当な手段を使って手に入れたものか。
まぁ…あの両親は好奇心の赴くままに行動するため、犯罪に手を染めたとしても別に驚かない。
それにしても早く使えと言われても、これだけの金貨を使い切るとか無理だぞ。両親の所為で変なことに巻き込まれるのだけは避けたいので、父親の言葉に従って早く使うことを決心する。
しばらく考えた末に僕が一番お金が使える場所として思いついたのが、オークションと奴隷市場だった。
防具や装備など戦う系のものも良い値があるが、使う予定がない。何故なら、僕の戦闘の能力は最低と言ってもいいからだ。
まぁ…でもあって損になるものではないから多少は買っていくが。
そして一番に思い付いたオークションは武器や人などが出品される。お金持ちの道楽だ。落札額が億を超えることも珍しい話ではない。
ここならお金を消費するのには一番良い。
もう一つ思い付いたのは奴隷市場。
これは名前から分かるかもしれないが、奴隷が専門的に売られている場所だ。状態が良く、女であれば高い値が付く。奴隷も庶民では手の届かないぐらいの値段はするのだ。別にお手伝いさんは困っていないが、買ってお金を持たせてどこかに旅立たせればいい。
僕は別に善人というわけではない。これからの全ての面倒を見るようなことはしたくない。だって面倒だから。あとのことは本人でどうにかしてもらうしかない。また奴隷に戻るかもしれないが、それは運命ということで受け入れてもらうしかない。
―――
最初に足を運んだのは奴隷市場だ。
オークションに関しては一カ月に一度と定期的に行われる。次に行われるのは今日から2週間後だ。
そこまで待っているのも怖いため、早めにお金を使うため奴隷市場に来た。
「ここが奴隷市場」
予想していた通り、雰囲気は最悪だ。奴隷自体は国で禁止はされていない。だからといって、表通りで堂々と奴隷を売っているわけではない。
奴隷が売られているのは路地裏や人の目に付きにくい場所だ。
そしてその中でも奴隷市場は一番奴隷が多く売られている場所だ。
一先ず、適当に歩いていると檻の中にみすぼらしい服を着た男女のエルフや目が完全に死んでいたり、体の一部が欠損している人間やそれ以外の種族。そんな者たちがここで金銭と引き換えに手に入れることが出来る場所だ。
どの奴隷を買ってもいいが、さてどれを買うかと思っていると「た…ぁす…け…」という声が自然と聞こえてきた。
声のした方向に視線を向けるとそこには…見知ぼらしい服を着た…女らしき存在やエルフが檻の中にいた。体が腐敗を始めているのか分からないが、見るに堪えない。
「た、たぁすけぇ…て」
明らかにこの女らしき存在から声が発せられているが、ほぼ無意識だ。生きているのか、死んでいるのかも判断ができないほどに汚れている。
だが、僕としてはどんな奴隷を買ってもいい。善人ではないが、生きたいと望んでいる奴の方が助け甲斐がある。
「生きたい?」
そう問いかけるとその女らしき者は静かに首を縦に振ったように見えた。
「そうか」
僕はこの奴隷の所有者と話して、あの女だけは安いのでその所有者が持つほとんどの奴隷を購入することにした。
合計6人を買ったが、それでもまだ金銭的には余裕がある。だが、それでも少しずつ使い、お金が無くなっていることは良いことだ。
この金の出所が分からない以上は。
そして奴隷をこのままに街中を歩かせるわけにもいかないため、六人全員を馬車に乗せて家まで帰ることにした。
―――――――
この時はまさか…あんなことになるとは思いもしなかった。
僕が助けた奴隷が王女だったり、王だったりするとは。
そして求婚してきたりするとは。