奴隷たちが「助けてくれ」と言ってきたので買って自由にさせたら、なぜか敵国やエルフの姫が求婚してくるのはなぜだ。 作:主義
選択する日まであと四日に迫っていた。
ここまで来たら最後の一人とも話してみようと決めて、ブリアナに割り当てた部屋に向かった。
ノックすると少し物音がした後にブリアナが出てきた。
「ご主人様、今日はどうされたのですか?」
「ちょっとブリアナと話したいと思ったんだけど…」
「私もご主人様とお話したいと思っていました」
「じゃあ、外でも歩きながら話そう」
「わかりました」
そして、僕とブリアナは外の小さな庭園を歩きながら会話をする。
「ブリアナの故郷は、リロニエルで合ってる?」
「はい、その通りです。私の故郷はリロニエルです」
リロニエルはエルフのみが住んでいる国。
行ったことがないので、あくまで人づてに聞いた話などしか知らない。
「やっぱりそっか。ブリアナは故郷に帰りたい?」
「帰りたくないと言えば、嘘になります。私が奴隷になってもう数年経っていますので、今の故郷がどのような状況なのかは気になります」
久し振りに故郷へ帰る可能性が高い。
これなら少し後押しすれば帰ってくれるかもしれない。
「そうだよね。自分の故郷はやっぱり気になるよね」
「はい、現状だけでも知っておきたいです」
「それなら帰った方がいいよ。うちの商会や屋敷で働くにしてもそれなりに大変だ。完全に故郷のことなんてどうでもいいってわけじゃなかったらね」
イーデンのことがあるので、ブリアナも僕よりは年上だろう。でもエルフの中ではまだ子供に分類されるぐらいのはず。
それなら家族とか、友達がまだ恋しい年齢のはず。それを信じて、帰る方に促すことしかできない。
ちょっと露骨に帰らせようとし過ぎたか、ブリアナが不安そうな顔をしながら「…ご主人様は私のことが嫌いですか?」と聞いてきた。
「それはない、僕はブリアナのことは嫌いじゃないよ。ただ少しでも故郷のことが気になるなら一度帰ってから、またここに来ればいい」
さすがにここで『嫌い』だとは言えない。それに嫌いではないし。僕としては六人がそれぞれ故郷に帰る事を望んでいるだけ。
それもただ面倒だからというだけだし。
「僕はいつでも歓迎するからさ」
まあ、そんなにすぐ帰ってこないでは欲しいけど。いつかたまに帰って来るぐらいは別に構わない。
「嬉しいです」
「……」
「ご主人様は本当に優しい方です。私たちに対して住む場所や食事を与えてくれた。故郷に帰るチャンスも与えてくださり、いつでも帰って来ていいと言ってくださる」
なんか、ブリアナだけじゃないけど、僕のことを過大評価というか、なんか変な方向に評価している人たちがいる。
僕はそんな聖人みたいな人間ではない。
でも、六人からすればそう見えてしまうのは仕方のないことなのかもしれない。
「私がどんな存在だったとしても、ご主人様は受け入れてくれますか?」
その問いの意味は分からなかった。
でも、ブリアナがこの問いに対してどんな回答を望んでいるのかはすぐに分かった。
「もちろん、僕はブリアナが犯罪者だったとしても受け入れるよ」
「……ご主人様は優し過ぎます」
だってもう買っちゃった。
買った以上は、今ここでブリアナが犯罪に手を出したとしたら、責任は全て僕だ。
「私を買ってくださったのがご主人様で本当によかったです」
そう話している時のブリアナは満面の笑みだった。その笑顔を見ると、あの時に買って良かったんだと思えた。
元々ただお金を使うために奴隷を買っただけに過ぎない。ブリアナたちの方が副だった。あくまで主の目的はあのお金を消費することだけ。
でも、感謝される悪い気はしないんだよな。
そんなことを僕が考えているとは知らず、ブリアナは話を続ける。
「私の命はご主人様の手によって救われました。この御恩、ブリアナは一生忘れません」
「…みんな、ちょっと感謝し過ぎだよ」
「ご主人様にとっては、別に大したことでなくても、私たちにとっては大きなことなのです。あの時、ご主人様に出会えたからこそ、今の私があります」
「そうか。でも…皆が元気そうでよかった」
さすがにあの檻の中に入っていた時は、今のような姿になると思わなかった。
治療魔術だって万能なものではない。
普通の傷などであれば問題なく、治せるけど、六人の傷はちょっとひどすぎた。
だから治療してみないことには何とも言えなかった。
そしてどうにか治療魔術で全てを治せたが、後遺症なども残っていないか心配だった。
だけど、ここ最近の六人を見ている感じだとその辺りも問題なさそう。ということは僕は六人を助けることは出来たんだろう。
別にあの後、僕じゃない誰かが六人のことを買って助けたかもしれないけど。
「ご主人様のお陰で元気になりました」
「そっか…本当によかった」
「なので、ご主人様はもっと自分のことを褒めてあげてください。これを助けられた私が言うのはなんか違う感じもしますが…」
「…褒めるか…」
「はい、ご主人様は自分に対してもっと優しくしてあげてください」
イーデンにも同じようなことを言われた気がする。やっぱり子供は純粋だから、相手の気持ちとかが分かってしまうのだろうか。
「もし、どうしてもご主人様を優しくしてあげられなかったら、その時は私を含めて皆さんでご主人様のことを褒めますので。少しでもご主人様が自分に自信を持って、自分を大切に出来るように」
助けた相手にこんなことを言われるとは思ってもいなかった。でも、ブリアナの言葉を全て正しい。
僕は自分に対して価値を見出せていないのは事実だから。
さすがにここまで言われたら、僕も出来る限り笑顔を作って「そうだね、自分のことを大切に出来るようにするよ」と言った。
「はい、そうしてください、ご主人様」
まさか自分よりも年下に見える子に、こんなこと言われるとは。