奴隷たちが「助けてくれ」と言ってきたので買って自由にさせたら、なぜか敵国やエルフの姫が求婚してくるのはなぜだ。 作:主義
治療魔術を習得した日のうちに奴隷たちを集めた。
治すのなら早いうちにしてしまった方が良い。
それにもしこの魔術がダメであれば他の方法を検討しないといけない。正直、魔術でダメとなると、もう方法はほとんどないと言ってもいいんだけど。
「それじゃあ…まずはキミから来てくれる?」
僕が指差したのは青髪の青年だ。別に誰でも良かったけど、一番重症な人間を早いうちに治療したい。
青髪の青年は片目を失明、片腕がなく、顔には火傷の跡とヒドイ有様だ。
「…分かりました、ご主人様」
彼は大人しく僕に付いて来てくれた。そしてまずは彼を別室へと案内し、服を脱ぐように言うと脱いでくれた。
その体には無数の火傷や痣があり、あんまり見ていて良い気分になれるものではないな。
「痛かったら僕の手を強く握って。そしたらすぐに止める」
「はい、ご主人様」
そして僕は片手を青年と繋ぎ、もう片方の手を青年の痣の部分に優しく置き、治療魔術を施していく。施すと言っても痣が無くなるイメージを持ちつつ、ただ僕の魔力を触れている部分から流しこむだけ。
数秒して、僕は痣の部分から手を離すとそこから痣は無くなっていた。
「どう、痛くない?」
「い、いたくはありませんけど…え…な、なんで…」
「なんでってあんまり見ていて良いものじゃないからね。それにこれからキミたちは奴隷じゃないんだし、治せるんだったら治した方がいい」
それから僕はまず痣や火傷を体から消していく。青年はずっと驚いたみたいだけど、僕としてはそんなこと気にせずに治療を進める。
ここからは大きな仕事だ。まずは失明している目の方に手を当てて、同じように魔力を流し込む。
普通であれば数秒で終わるが、失明を治すのがそんな時間で終わるはずがない。
約10分の間、ずっと魔力を流し込み続けた。
さすがに10分の間、魔力を流し込むのは疲れて、倒れそうになった。だがここで倒れるわけにもいかないので、どうにか踏ん張って次の治療も続ける。
青年の治療が終わると使用人に「今日は自室で休むから、子供たちは自由にさせてあげてくれ」と言い、青年を連れて行ってもらった。
自室に着いてベッドにダイブすると、疲れが一気にやってくる。
「まさかここまで疲れるとは……」
治療魔術は他の魔術と比べて圧倒的に忍耐力がものをいう。ずっと同じ魔力量に調整しつつ、治したい部分に魔力を流し込まないといけない。
疲れるし、僕の魔力の全てが無くなった気さえする。
しっかりと休めば体力は回復するし、魔力も戻って来るだろうけど。
魔術を使うことに代償は付き物だ。貴族は魔術を使えるが、あまり魔術を使うことはオススメされていない。何故なら魔術に頼らなくても済むのであれば頼らない方がいい。
人類には身に余るものが魔術というものだ。その身に余る魔術に手を出せば必ず代償となって返って来る。
魔術は自らの体を酷使するため、寿命が短くなると言われている。
それが事実なのか、嘘なのかは分からない。
そして一つ分かっているのは、魔術を使えば自らの体が内部から悲鳴をあげ、失明や両腕両足の麻痺などの危険性があることだ。
僕としてはその危険性を理解した上でも、魔術を使おうとしている。見ず知らずの子のためにそんな危険を冒す必要性があるのかと思わないわけではないが、僕としては彼ら彼女らと巡り合った時点で運命を感じている。
であればその運命を信じて、これからの子たちを治そう。
それに僕には僕の命にそこまで価値があるものではない。
生まれた落ちたその日から僕は自分の人生に対して疑問を抱いている。僕は何をするために生まれ、生きているのかと。
その答えが未だに出ていない。
このまま答えが見つからないこそ、僕は自分の命はとても軽いとすら思っている。
だからこういう命の危険を冒すような行為すらも出来てしまうんだろう。
感想などがあればよろしくお願いいたします。