奴隷たちが「助けてくれ」と言ってきたので買って自由にさせたら、なぜか敵国やエルフの姫が求婚してくるのはなぜだ。 作:主義
奴隷に対する治療は粗方終わった。その結果として僕は五人の治療が終わった時には「しばらく魔法は使いたくない」と漏らすぐらいには疲労したけど。
でも、現状は失明しそうな感じも体に何かしらの影響がある感じもない。あれだけ魔力をつぎ込んでも、体が無事なのならこれから必要な時は使ってもいいかもしれない。
奴隷たちは治されている最中、ずっと驚いた表情をしていた。そんなことを気にも留めず、ずっと治し続けたが。
そろそろ、奴隷たちと色々と話してみる必要がある。
これから僕が奴隷たちにしようとしていることを含め、話さないことには進まない。
僕は使用人たちに頼んで奴隷を僕の部屋に集めてもらった。
「来てくれてありがとう」
そう言うと、奴隷たちの中で最初に言葉を発したのは赤髪のエルフだ。
「いえ、ご主人様がお呼びとあらばすぐに駆けつけます」
「そこまで畏まる必要はないけど、まあ簡単にそういうのは変わらないか」
まずはそれぞれの名前を聞くことにした。奴隷だとしても生まれた瞬間から奴隷でなければ、名前は存在するだろう。
最初に赤髪のエルフから名乗り始めた。
「私の名前はブリアナと申します。エルフ族に連なるものであり、今はご主人様の忠実なる奴隷です」
それからは青髪の青年、金髪の竜人、黒髪の少女、白髪の女性、紫髪のダークエルフの女性の順で名前を明かしてくれた。
「ボクはシリル。本当にご主人様には感謝しても感謝しきれない程の恩があります。これからボクの一生を使って、ご主人様から受けた恩は少しでも返す努力をするつもりです。ボクは見た目通り、人間です」
「アタシはセシリア。竜人族」
「わたしはコリンナって言うの。おにんげんです、おにいさん、たすけてくれてありがとう。わたし、とってもうれしい」
「シェリル、それが私の名前です。見た通り、人間です。助けて頂いたことには感謝致します。あなたが助けてくれなければ……いや、想像したくもありませんね」
「名前……あまり覚えていませんが、イーデンという名で呼ばれていたことがあります。ですので、私を呼ぶ時はイーデンと呼んで頂けると。ダークエルフとして生を受け、今まで生きてきました」
それぞれの名乗りが終わった。
良かったのは全員にしっかりと名前が存在していたことだ。あと少しの付き合いではあるけど、名前はしっかり覚えておかないと。
「これからキミたちはどんな風にしていきたい……って問いかけてもさすがに答えは出ないと思う。まだあの環境から救われてそこまで時間が経っていないしね」
10代の子供が今まで奴隷として生きてきて、急に自由になり、これから先の未来を決めてくれと言われても簡単に答えは出せない。
「だからこれから僕はキミたちに選択肢を出す。出す選択肢の数は三つだ。その中でこれからの自分の道を決めてくれ」
「まず一つ目として、行きたい場所や戻りたい場所などに行く。これは僕が最低でも2年は何もしなくても生活できるぐらいの金貨を渡す。必要なものであれば僕が調達し、行きたい場所まで馬車を出してもらう。そしてその場所で新たな人生を送るというもの。そこで働いたり、恋をしても構わない。もうキミたちを縛るものは何もないのだから」
個人的な気持ちを言っていいのであれば、これを選んで欲しい。これであれば金貨を渡して準備を整え、送りだしたら僕の責任は全て終わりだ。
この子たちのこれからについて心配する必要もない。後は自分の人生だから。
「次に二つ目として、僕が運営している商会で働くというもの。これはあまりお勧めできないが、新たな職として僕の商会で働き、そこから賃金を得て、自由に暮らしていくというもの。もし、選ぶにしてもうちの会社の労働環境はあんまり良いものではないからその辺りは承知した上でね」
選んで欲しくない選択肢。さすがに選択肢を一つだけしか出さないわけにはいかないから出しているけど。
これだと僕は責任を持たなければならない。僕の会社の従業員ということになれば、賃金も会社から出る訳で、従業員を護るのは僕の責任だ。
「三つ目はうちの家で働くというもの。これは本当にオススメできない。一応、うちの家はそれなりに広くて使用人は何人いたとしても問題ない。今でも事足りているが」
これは本当に選ばないで欲しい。僕は助けるだけでこれから先に責任を終えない。
「この三つの中でそれぞれ自分の道を決めてくれ。さすがに今日すぐに答えを出せなんてことは言わない。今日から2週間後にもう一度、同じことを聞く。その時に答えを出してくれると嬉しい」
そこで解散しようと思った矢先に竜人族の……た、たしかセシリアと名乗った子が手を挙げた。
「質問いい?」
「いいよ。なにかな」
「どこにでも送り届けてくれる?」
「送り届けるよ。どんなに遠くても」
僕としてはその選択肢を選んでくれるのが一番いい。だからこの選択肢はとても魅力的に見せないと。
ここで『どこでも無理かなぁ』なんて口が裂けても言えるはずがない。
「ほんとに?」
「本当だよ。僕は絶対に希望の場所に送り届けてあげるから」
「そうなんだ、ありがと」
それ以上、呼び止める言葉もなかったので、僕はこの場から立ち去る。
彼らがなるべく一つ目の選択を選んでくれることを切に願う。その時のために金銭や必要なものは早いうちから用意しておこう。