奴隷たちが「助けてくれ」と言ってきたので買って自由にさせたら、なぜか敵国やエルフの姫が求婚してくるのはなぜだ。 作:主義
奴隷とコミュニケーションを取る必要性はない。
今でもそう思っているが、あちらから接触してくる以上は避けようがない。
そう、接触してきたのだ。
黒髪の少女ことコリンナ。六人の中で一番幼い感じがする子供だ。身長も140cmというところも幼く見えるのだろう。
僕が自室で『ブラウン商会』のこれからについて考えていた。どのような事業展開をしていくのかを考えるのは、僕の役目だ。今でもそれなりに大きな商会だが、これからもっと様々な国に広げていきたい。
そんなところにノックをせずに入って来たのがコリンナだ。
さすがに無下にするわけにもいかないので、僕はソファーに腰を下ろし、その隣にコリンナも座る。
「それで僕のところに来るってことは何か用があったの?」
「おにいさんとおはなし…したい」
「話か…」
僕としてはコミュニケーションを取る気はないんだけど。でも、コリンナがまだどうするか固まっていないのだとすればここで第一の選択肢こと故郷に帰る方に促すことにしよう。
そうする機会が増えたと考えればいい。
「そうだね。僕もコリンナと話がしたかったんだ」
「うれしい、おにいさんとはなしたい!」
―――――
まず、開口一番に「おにいさんってすごい人!」と言って来た。
「すごい?」
「うん!きずがなくなった!」
「…それは魔術って言うんだよ」
「まじゅつ?」
「うん、すごいことが出来る力ってっていうと分かりやすいかな。何でも出来るわけではないけどね」
「ほかになにができるの、まじゅつは」
「出来ることか、じゃあ…僕の手を見ててね」
「うん!」
僕は右手に魔力を集中させると、小さな火の玉が出現した。
「触っちゃダメだからね。ただ見るだけだよ」
「すごい!おにいさんのてにひがある!」
「うん、これが魔術で出来ることかな」
「そ、それってあつくないの?」
「熱くはないよ。でも、触っちゃだめだよ。キミが触れると普通に熱いからね」
魔術は使用者にダメージを与えることはない。だから火や雷などの魔法を発動しても自分に被害が出ることはないのだ。
だからもし広範囲の魔法をしても自分に被害が出ないため、様々な戦う手段があるのだ。
「やっぱりおにいさんってすごい!まじゅつ、すごい」
「そう言ってくれると嬉しい。でも、僕はコリンナの傷がなくなってよかったよ」
彼女は片腕がなく、片耳は聞こえない、体中に痣や傷と見ているだけで痛々しい。他の五人も酷かったが、彼女も酷かった。
「ぜんぜん、いたくない!」
「それはよかった」
それからも色んな話をして、そろそろ彼女のパーソナルな部分を聞いてみようと質問した。
「コリンナは自分が生まれた場所って覚えているかな?」
「う~んとね……なんとか…ていこく…とか」
「メリザイア帝国かな」
「そうそう!そんななまえだったきがする…」
メリザイア帝国か。これは結構厄介な場所が故郷なんだな。なぜ厄介なのかと言えば、メリザイア帝国は僕が住んでいる、サユエア王国と現在進行形で戦争をしているのだ。
戦争のきっかけが何だったか、覚えていないぐらいに長い戦争だ。
そうなるとコリンナは捕虜とかだが、この年齢の女子が戦地に駆り出されることはほとんどない。いや絶対にないと言えないから、詳しくは分からないが。
だが、未だに戦争しているのは事実だ。
国境が戦地になっている以上は陸路で送り届けるのは不可能に近い。あとは海路ぐらいしか残っていないが、どうにか金をつぎ込めば船で送り届けてもらうぐらいは可能だと信じている。
というか、その方法がダメだと何も思いつかない。
僕としては絶対に故郷にしろ、行きたい場所にしろ、連れて行きたい。そうすることで子供が僕の手元に残ることはない。
「コリンナは…帰りたい?」
「かえりたい…のかな。わかんないの。おとうさん、おかあさんにあいたいけど、ここでのせいかつもたのしい」
「そうかい。ここでの生活を楽しんでもらえているのであれば嬉しいよ」
「うん!たのしいし、おにいさん、とってもやさしい」
良い人と言われて悪い気はしないものの、この感じだとコリンナは実家に帰るという選択肢を取ってくれないかもしれない。
だが、気が変わるかもしれないし、それに備えて彼女が海路で帰れる手段はしっかりと探しておかないとだめだな。
そんなことを考えているとコリンナが急に僕の手を握って来た。
「おにいさん、ありがとう」
「どういたしまして。僕はコリンナたちが幸せに生活してくれれば、どうでもいいんだ。だからコリンナが実家に戻って、家族たちと幸せに暮らしても全然いいんだ」
少しでもコリンナの中で実家に帰りたいという気持ちを芽生えさせるために。それにさっきの話を聞く限りはコリンナも両親に会うことを望んでいる。
まぁ…普通に考えればそうなる。
いつから奴隷だったのかは知らないけど、これぐらいの年なら家族のことが恋しいだろう。
そこでコリンナは予想以外の質問をしてきた。
「…かえったら、おにいさんはきてくれる?」
これは返答が難しいけど、僕はこういう問いが来た時はどう答えるのかを決めている。
「もちろん、まだコリンナと出会ってそんなに経ってないけど、僕にとってコリンナたちは大切なのは変わりないからね」
どうせ家に帰って、家族に会えば僕のことなんて忘れるに決まっている。だから、ここで嘘を付いたとしても問題ない。
僕の言葉を信じたのか、コリンナは子供らしい笑顔を浮かべている。
「わたしもおにいさんのことたいせつで…だいすき。ずっといっしょにいたい!」
「…ありがとう」
「いっしょ!」
コリンナの手が僕の手を握る力は強くなっていく。まるで絶対に離れないと僕に伝えるように。