妹たちが依存し過ぎていたので、しばらく離れて暮らすことになった。久し振りに帰るとさらに悪化していたようで「結婚しよう」と言われたんだが。 作:主義
「にいにと結婚したい」
「兄さんと結婚したい」
こんなことを言って来る妹たち。
どんな風に教育したら、こんなことを中学三年生が兄に言って来るんだよ。
「…久し振りに冗談を言って来るなんて、二人も変わったな」
僕は冗談で片付けようとしたけど、どうやら妹たちはそれを許してくれないらしい。
「にいに、冗談じゃない。早雪はにいにと結婚したい」
「ぼくも兄さんと結婚したいよ。この気持ちは嘘じゃない」
久し振りに妹たちに会ったと言っても、僕は彼女たちの兄だ。
嘘を付いているか、本当のことを言っているのかなんてある程度は分かる。
今の二人はとても真剣な眼差しで僕のことを見ている。それだけで彼女たちが嘘を言っていないのは分かってしまう。
だが、もちろん僕たちは兄妹だ。その気持ちに答える訳にはいかない。
「それはだめだよ。僕は二人のことをとても大事に想っているけど、その大事は異性としてじゃなくて、兄としてだ」
兄として妹のことを大事に想う。いずれは良い相手と巡り合って幸せな日々を過ごしてくれればそれでいい。
だが、その相手に僕は絶対にあり得ない。
「早雪はにいにのことが好き。これはにいにがなにを言っても絶対に変わらない」
「そうだよ。ぼくも兄さんのことが好きなのは変わらない。いくら、にいにがそれを拒んでも好きだから」
僕は彼女たちと縁を切りに来たわけでもなければ、言い合いをするために来たわけではない。
ただ両親から言われて、家に帰って来て妹に会っただけ。ここでずっと二人に「諦めてくれ」と言ってもそれを素直に飲んでくれるとは思わない。
ここは話を切り上げるのが一番いい。
「その話はまた後でにしよう。久し振りに帰って来たんだ。ちょっと家の中を見て回りたいし」
「それならにいにのために早雪が案内する」
「早雪だけずるい。ぼくも兄さんのことを案内するよ」
妹たちのことを見ると、なぜか断れなくなる。兄として妹に案内してもらえるのは嬉しいことだ。さっきの『結婚しよう』って言葉なければな。
そして僕は二人の妹に家の案内をしてもらった。
やっぱりいなかった年月が長かった分、うろ覚えなところもあって案内してもらえて助かった。
最後に二人と一緒にリビングに戻って来た。リビングには大型テレビや何個かのソファーがあり、ここでパーティが出来るぐらいに広い。
「にいにが帰って来ること教えてくれればよかったのに」
「まぁ…あの人のことだから、ぼくたちをびっくりさせようと思ってたんじゃないかな」
「それに関しては僕も驚いた。二人にもしっかり伝えられていると思ってんだけど」
メイドの方たちは僕が来ることを知っていた感じだけど、一番知らせるべき妹たちがそれを知らなかったとは。
「早雪たちがにいにのこと大好きなのは知っているはずなのに…」
「仕方ないよ。ぼくたちの気持ちなんて全く考えてないんだから」
なんか妹たちから両親へと好感度が低くなっている気がする。僕の残っている記憶だと、妹たちはそれなりに両親に懐いていたイメージ。というかまぁ、僕の知っている記憶がかなり前の話だけど。
「にいにと早雪たちを離したのは今でも許せない」
「ぼくもそれだけは許せない。ぼくたちが兄さんのことを大好きなの知っているはずなのに、ぼくたちと兄さんの距離を離そうとしたのは本当に絶対、許さない」
そのことをまだ根に持っていたんだ。
「まぁ…二人の考え方も分かっているけど、あの時の二人はずっと僕の後を付いて来ていたから、このままだとずっとこのままだと思ったんだよ。だから少し強引な方法だけど、こういう方法を取ったんだと思う」
「にいには早雪のこと嫌い?」
「そんなことないよ」
「ぼくのことは?」
「もちろん、嫌いじゃないよ」
すると早雪が僕の右腕を抱きしめてきた。
「だったら、ずっとにいにの側にいてもいい。なにがダメなの?」
「ダメというか、いつか二人にもこれからの人生を共に生きて行きたいと思えるような人と出会えるんだ。そんな人と出会うためにも、僕の側にずっといるのは…」
「早雪はにいにのことが大好き。それ以上に大好きなことなんてこれからもない」
「ぼくも兄さん以上に大好きな人は絶対にできないと断言できるよ。それぐらいにぼくは兄さんのことが好きだから」
ここまで二人が変な方向に言っていると思わなかった。本当に父さんも母さんも、もちろん二人の教育に力を入れて欲しかった。
仕事の方が忙しいのは分かっているつもりだけどさ。
この感じだと父さんと母さんが思い描いていた感じと真反対だ。この状態を父さんたちは知っているんだろうか。
知っているのに、僕を呼び戻したのか。
これならもうしばらく僕と妹たちを離しておいた方がいいと思うが。
そんなことを考えていると今度は僕の左腕を望月が抱きしめてきた。
「今は兄さんもまだ受けて入れてくれないけど、ぼくはずっと諦めないよ。だから兄さんも覚悟してね」
「早雪もにいにことをメロメロにするよ。にいにが早雪のことしか考えられないように頑張る」
僕は両腕に抱き締めて来る妹たちに視線を向けて、ため息を吐く。
本当にこれからどうすればいいんだ。