妹たちが依存し過ぎていたので、しばらく離れて暮らすことになった。久し振りに帰るとさらに悪化していたようで「結婚しよう」と言われたんだが。 作:主義
僕がここにきて、数日が経った。その数日で分かったことはやはり妹たちは変な方向に成長してしまっているということ。
兄である僕のことを本気で愛しているのだ。最初はただの言葉だけかと思ったけど、一緒に暮らすようになってその言葉に嘘がないのは自然と分かってきた。
何故なら、隙を見せるとキスをしてこようとするのだ。一緒に寝るとかだったら、まぁアウトだけど、まだ許容できる範囲だ。この年の兄弟が一緒のベッドで寝るのはさすがに以上時代だけど。
なんでここまで妹たちが好いているのかは分からない。妹たちとの思い出でそんな愛されるようなことをした覚えはない。
何か変な病気にでも掛かっているんじゃないかと心配になるぐらいだ。
でも、メイドさんとかに妹たちのことを聞くと「お二人はずっとこうです」と言われてしまった。
どうやら僕が祖父母の家に行ってすぐに妹たちは部屋に閉じこもって、学校にも行かなくなってしまったことがあったそうだ。両親やメイドが説得をしても全く聞かず、部屋から出たがらない。
僕はそんなことが起こっているなんて知らなかった。妹たちはこっちでの生活を謳歌しているものだと。
閉じこもるのは約2ヶ月ぐらい続いた。
でも、さすがにこのままでは本人たちが気付いたのか、ある日を境に普通に生活をし始めた。閉じこもる前と同じように。まるで閉じこもった2ヶ月がなかったかのように。
そんなことをメイドさんから聞いた。
メイドさんからは「私から聞いたことをお二人には内緒でお願いします」と言われたので、本人たちにはもちろん言わないけど。
でも、そういうことがあったというのは心に留めておく。
――――――
僕は久し振りに街を散歩しようと外に繰り出した。
「にいに、どこ行く?」
「兄さんの行きたい場所を教えてくれたら、ぼくたちが案内してあげる」
なぜか妹たちも付いてきた。本当は僕一人だけで街に繰り出す予定だったけど、出て行く直前に見つかってしまった。
そして「にいに、早雪も行く」「兄さん、準備するから待ってて」と言われてしまった。そう言われたらさすがに置いていくわけにもいかない。
外だとしても二人は変わらず、僕の両腕に抱き着いて来るのだ。こんな距離の兄妹は広い世界を探してもそう多くはないだろう。そこまで顔立ちが似ているわけではないので、端から見れば彼氏彼女のように見えているのかもしれないが、本当は兄妹だ。
普通であればこんな距離でいるべき存在じゃない。
だが、離れてと言って離れてくれるような妹たちじゃない。もしそれでどうにかなるんだったらとっくにやってる。
「にいには行きたいところないの?」
「ないというか、久し振りに街を見て回りたいと思っただけなんだ。目的があるわけじゃなくて、ただ歩いてみたい」
駅から家に来るまでの道のりだけでも変化は感じられた。でも、あくまでこの街に一部分でしかない。もっと見て回って、これから過ごすことになる街をしっかりと知っておきたい。
「兄さんのいた頃とは随分変わったよ」
「そう見たいだね」
「にいには昔の方がよかった?」
「別にそうは思わないけど、ちょっと寂しくはあるよ」
変わるのは仕方のないことだと分かっているものの、寂しい気持ちもある。一生続くものの方が少ないんだから、変わるのは当たり前なんだけど。
逆に妹たちはこの街の変化を近くで見てきたはずだ。その妹たちはどう思っているんだろうか。
「二人から見てこの街はどう?」
ちょっと抽象的な聞き方になってしまったけど、聞いてみたい。
二人はちょっとの間、沈黙が続いた。
数十秒してからまず、望月が話し始めた。
「ぼくはこの街のことがすきだよ」
「そっか…望月にとってこの街は大切な場所なんだね」
「そう。だって兄さんと育った場所だから。それだけでもこの街はとても大切な場所だし、街の人も温かいから好きかな」
望月にとってやはりここは大切な場所なんだ。話している時の望月は優しい顔をしていた。本当にこの場所が大切なんだと伝わって来た。
そして次に早雪も問いに対する答えを話してくれた。
「早雪も望月と一緒でこの街のことが大好き。どんなに変わっても変わらないものもある。早雪のにいにへの気持ちとか。この街の風景は変わっても、にいにとここで過ごした時間は変わらない。だから好き」
「…そうか」
早雪もこの街のことが好きなんだ。どんなに変わっても、僕たちが一緒にここで過ごして、成長してきたことは変わらないから。
「だからこれからもこの街で、にいにと過ごせるのは嬉しい」
「うん、ぼくも兄さんとこの街でもっとたくさんの思い出を作れるのは嬉しいな」
妹たちはちょっと変な方向に成長してしまったけど、根っこの部分はそこまで変わっていないのかもしれない。
僕は二人と街を歩きながらそんなことを思った。