妹たちが依存し過ぎていたので、しばらく離れて暮らすことになった。久し振りに帰るとさらに悪化していたようで「結婚しよう」と言われたんだが。 作:主義
転校手続きは両親と祖父母が上手いぐらいにしてくれたようで、僕はこっちの高校に通うことになった。
僕が通うことになったのは若葉峯中学校・高等学校。
こう高校名を聞くだけでも分かる人がいるかもしれないけど、中高一貫。妹たちは同じ学校の中等部に通っているため、同じ場所に通うことになる。若葉峯中学校・高等学校は広大な敷地に中等部と高等部げ並列しているため、妹たちが来ようと思えば高等部の校舎に来れてしまうのだ。
さすがに妹たちは変な真似はしないと思うけど、僕としては最近の妹たちを見る限りは違う高校に編入させて欲しかった。
まぁ…このことに関しては既に決まってしまっていることなので今更僕の力でどうすることもできない。僕はただ何も起きずに高校生活が送れることを信じて祈る事しかすることはない。
――――――
初日の登校は指定されている時間よりも少し早く行くことにした。早く着いて校舎内を少しは見て回りたいという思いがあったからだ。
高等部と中等部の登校時間に大きな差異はないため、僕が出る時間は早いため、妹たちはまだ家を出なくていい時間だ。それにメイドさんが言うには妹たちはいつも時間ギリギリまで家を出ないような人だ。
それなのに今日は僕と同じ時間に出ると言ってきかない。
「まだ二人はゆっくり出ても問題ないだろう」
「問題はないけど、にいにと一緒に登校したい」
「ぼくも兄さんと一緒に登校したので、今日は早起きしました」
そんなところで頑張らなくていいよと思いつつも、起きてしまったものは仕方ない。
「登校中、学内では家の中でみたいにくっ付いたりするのはダメだから」
なぜか早雪は僕の言葉に驚いているような素振りを見せている。
「な、なんで…?」
「なんで…って普通に考えて兄妹の距離感じゃないよ。普通の兄妹は抱き着いたりするような文化はない」
それに家みたいなことをされると、僕の新たに始まる学校生活は決して良いものにならない気がする。周りから変な目で見られるに決まってるし。
「兄さんはぼくたちのこと嫌いなの?」
「嫌いなわけじゃないよ。ただ世間的に妹から抱き着かれているようなところは見られたくない」
社会的に殺される可能性も全然ある。何より一番の目的は妹たちを少しでも引き離すことにある。妹たちの「結婚したい」という気持ちが本当なのか、嘘なのかは分からないが、どちらにしても僕と妹の距離はちょっと近すぎる。
「どうしても困った時以外はなるべく合わないようにしよう。どうしてもの時はいいけど」
僕の助けがどうしても必要な時は全然来てもらっていい。でも妹たちの自立を促す意味でも、なるべく彼女たちだけで行動してもらいたい。
それに元々、僕が来るよりも前は二人で普通に学校生活が送れているわけだし。
妹たちは完全に納得してくれている感じはないものの、仕方ないと感じで首を縦に振ってくれた。
―――――
早く着いたら、妹たちと別れて校舎内を見て回った。別れる瞬間、妹たちは涙目になり、上目遣いで見てきたので危なかったけど、ここは心を鬼にした。
ある程度見終わると職員室に行き、これから担任の先生になる人と会う。
「西園寺くん、これからよろしくね」
「はい、よろしくお願いします、先生」
挨拶を済ませると先生の後に付いていき、教室へと向かう。
「改めて私の名前は糸永《いとなが》美保《みほ》。担任の先生だから、解決できる範囲のことだったら相談して、力になるから」
「ありがとうございます」
教室に着き、先生に紹介され、自己紹介などを済ませたら、先生に言われた場所に座る。その場所とはラッキーなことに窓側の一番後ろの席。
転校生にこんな席が割り当てられるとは思っていなかった。まさかこんな良い席に巡りあえるなんて。
そしてSHRが終わるとクラスの人たちから質問をされる。
『なんで今、転校してきたの?』
『どこに住んでいるの?』
『好きな食べ物ってなに?』
質問は本当に色々だったけど、聞いてくれているうちが花だと思って答えられる範囲のことは答えた。
午前中の授業はあっという間に過ぎ、昼休みの時間になった。この高校では学食か、売店か、弁当などを作ってくるかの三つの選択肢だ。
そして今日に限って言えばお弁当を作ってこなかったため、学食か売店しかない。だけどクラスの人たちの雰囲気を見る感じだと売店は授業が終わってすぐに向かわないと売り切れてしまうぐらい人気らしい。
となれば僕に残っているのは学食だけだ。
席から立ち上がったタイミングで隣の人から声を掛けられた。
「あれ、西園寺くんは学食に行くの?」
「うん、そのつもりかな」
隣の人の名前はたしか…山本《やまもと》美穂《みほ》さんだったと思う。隣ということもあって、クラスで一番最初に自己紹介をしてくれた人なので少し覚えている。
まだ転校して数時間だが、どうやら山本さんがすごい人気者なのは分かる。だって休み時間の度に彼女の周りにはいつも人が集まっているのだ。それは他クラスからも。
「そっかぁ…じゃあ、付いていてもいいかな?」
「なんで…?」
俺は山本さんと挨拶をした程度だ。特別よく話しているわけでもないし、何より知り合いでもない。
そんなただの転校生と貴重な昼休みを過ごすことに何かのメリットがあるのかな。
「なんで…って…私が一緒じゃだめですか?」
「別にダメということはないけど、ただ単純に気になりまして。僕とあなたは今日知り合ったばかりなのに」
「学級委員が転校生と親交を深めようとするのはだめなことですか?」
「そ、そんなことないです」
「西園寺くんが私と食事を食べたくないというのであれば、私は身を引きますが」
こんなことを言われて、断れる精神を僕が持ち合わせていない。それに既に周りからの視線もかなり集めている。
そして僕は山本さんと一緒に学食へと足を運ぶ。学食までの道のりもそれなりにあるため、色んな生徒から見られ注目の的のようになっていた。
学食でも注目が集まるが、ミックス定食を頼み、空いている席に座る。すると当たり前のように、山本さんは僕の隣の椅子に腰を下ろす。
「それでは頂きましょうか」
「そうですね、いただきます」
そこからはお互いのことについて少し話した。僕から話すことはなく、山本さんの方から話題を振ってくれるのは本当に助かった。
「西園寺くんはまだこの高校に慣れていませんよね」
「…そうですね」
「じゃあ、放課後は私が案内してあげますね」
「あ、はい…」
山本さんがなんでここまで僕に構うのか分からない。ただ普通に善意で転入生に優しく接してくれているだけかもしれないけど、なんか山本さんは少し違うと感じてしまう。