男女比が偏っている世界で女性アイドルのマネージャーになる   作:主義

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アイドルのマネージャーになるべきか、ならざるべきか

あの日から頭によぎるのは『私たちのマネージャーになってくれませんか?』という言葉。ずっと考えつつも、未だに答えが出せないでいる。

 

 

 

約束の日まではまだ3日ある。今日も自室でどういう答えを出すべきかとずっと考えている。

 

 

オレはアイドルのことを応援しているし、推している。だが、それはあくまでファンとして推しているのであって、運営側になりたいわけではない。運営側になれば彼女たちの人生を多少なり背負うことになる。10代や20代の子にとって、この時間はとても大切だ。

 

 

 

アイドルとして頑張るために、それを支える運営側はとても大事なのだ。もちろんアイドル自信も大事だけど。

 

 

 

オレはアイドルに対してそんな責任を終えるか。彼女たちのために心血を注いで、取り組み、TOPアイドルにさせてあげられるか。

それぐらいの覚悟を持っていないのに、アイドルのマネージャーとしてのオファーを受けるなんてできるわけがない。

 

 

 

そんなことを考えていると、部屋のインターホンが鳴った。玄関を開けると…齋藤麻衣が立っていた。

 

「ごめん、迷惑だったかな?」

 

 

「…いや、そんなことはないよ」

 

 

「やっぱり急にあんなことを言ったのは迷惑だったよね」

 

 

「…迷惑ってことはないよ。確かに色々と悩んでいるけど、推しているアイドルに頼ってもらえるのは嬉しいし」

 

 

「よかったぁ…」

 

まぁ、普通こういうことは運営側がやるべきことだと思うけど。あくまでアイドルはアイドルとして生きていれば。

 

 

 

 

さすがに玄関で立ち話をするわけにもいかないので、部屋の中にあげることにした。アイドルを自分の家にあげるなんて思いもしなかったけど。

 

前世であればアイドルが男の家に来るなんてスキャンダルでしかない。それに相手はファンなんだから、もっと警戒してもおかしくはない。でも、今の麻衣さんはオレに怯えている様子はない。これがこの世界の価値観なんだろう。

 

 

今日は両親がいなくて本当に良かったと心の底から思った。

 

 

 

彼女を自分の部屋に通して、冷蔵庫にあった麦茶を出す。さすがに彼女も男の部屋ということもあって、少しそわそわしている感じが伝わって来る。

 

「こんな狭い部屋でごめん」

 

 

「い、いえ、ここが正行くんのお部屋なんだね」

 

本当はリビングが良かったんだけど、いつ両親が帰って来るか分かったものじゃない。急に帰って来て、両親が彼女を見つけたらちょっとマズイことになる。

 

 

「推しに部屋を見られるのって恥ずかしい」

 

オレはアイドルのファンだ。アムールのファンなので、メンバーのポスターやペンライトなど部屋はグッズで溢れている。その中でも今、部屋にいる麻衣さんこと齋藤麻衣のグッズがちょっと多い。

 

 

 

「私はとっても嬉しいよ。正行くんが本当に私のことを推してくれているんだって実感できるからさ」

 

どうやら彼女にとっては嬉しいようだ。さすがにここまでしているとちょっとキモがられるかもしれないと少し焦ったけど、そんなこともなくて安心した。

 

 

「それで今日はどうして来たの?」

 

ちょっと突き放すような言い方をしてしまうけど、本当になんで来たのか分からないというのが正直なところ。約束の日まではまだ時間があるし、会うのはあの公園だ。それになんで彼女がオレの家を知っているのかもわからない。

 

 

「…急にあんなことを言われて正行くんも困惑したと思う」

 

 

「さすがに困惑はした」

 

アイドルから呼び出されて、あんなことを言われる体験はさすがにしたことがないし。

 

 

「私もあの日、帰っている時に思ったの。さすがに1週間でその答えを出してって言うのはちょっと無理がある気がするの」

 

 

「…………」

 

 

「だから、これは正行くんが良ければだけど、1週間ぐらい私たちの仮マネージャーだとして働いてみないかな?」

 

 

「…仮マネージャー?」

 

 

「うん。言葉だけで、マネージャーになってって言われてもイメージがしにくいと思うの。ちょっとだけでもマネージャーというお仕事と私たちの普段を知ってから決めて欲しい」

 

あの日、彼女に呼ばれた日から怒涛だけど、この提案は悪い話ではない。マネージャーという言葉の意味は知っているし、スケジュール確認だったり、アイドルのメンタルケア、先方との打ち合わせ、グループの方向性を決めたり色々とイメージはできる。でも、オレはマネージャーとして働いたことはないので、それはあくまでイメージに過ぎない。

 

 

それなら彼女の言う通り、体験してから決めても遅くはない。そこで合わなかったり、オレが無能で彼女たちの方から「やっぱり無し」と言われる可能性だって全然あるとオレは思っている。

 

 

 

「もし、体験して正行くんが『やりたくない』って思ったら、それでもいいと私は思ってるの。一度は体験して欲しいかな…って」

 

まだ考える時間はある。でも、人生は何でも経験した方がいいと思うし、何よりアイドルの裏側を見る機会なんてこれからあるか分からない。

 

それに推しがここまでしてくれているんだし、無下にするのは気が引ける。

 

 

 

これ以上、考えても答えは出なさそうだし、もう決めよう。

 

 

 

「わかりました。麻衣さんの提案にのりましょう。仮マネージャーとして1週間、体験させてもらえますか?」

 

 

「うん!もうプロデューサーには了承を取っているから大丈夫だよ」

 

何から何まで本当に早い。ここまで行動できる人とは思っていなかった。

 

 

 

 

 

そしてその後も彼女と話して、仮マネージャーの期間や具体的な内容などを教えてもらった。両親が帰って来るよりも前に彼女には帰ってもらい、オレは部屋に一人だけになった。

 

去り際に彼女は「これからもよろしくね!」とアイドルスマイルで言って、去っていった。

 

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