超かぐや姫! ~転生者のハッピーエンド計画~ 作:みたらし団子!!
自分も何か書いてみるか!と思い書いてみました!
小説など物語を書くのは初めてなので温かい目で見てください!
※執筆にあたり、プロットの相談やあらすじ作成などのアシスタントとしてAIを使用しています。
ですので文章が変になっているところや時系列がおかしいところがあると思います
ご了承ください。
それでは本編へ!
「あー……っ、マジで疲れた……」
俺の名前は陽川 旭。
9時間に及ぶ地獄のアルバイトを終え、終電間際で帰宅した俺のライフはすでにゼロだった。
新人のトレーニングに、キッチンのオペレーション管理、さらには在庫の仕込み……。ただの学生アルバイトに背負わせる責任の重さじゃないだろ、これ。
だが、そんな激務の疲れも、この瞬間のためにある。
俺は重い体を引きずってデスクに向かい、今日アニメイトで購入してきた戦利品を並べた。
「はぁ……尊い……」
そこに並ぶのは、最近どっぷりハマっている小説『超かぐや姫!』のアクリルスタンドやフィギュアなどだ。
芦花、かぐや、ヤチヨ……。キャラクターは最高に可愛いし、世界観も魅力的。ただ、ストーリーが百合作品特有のなんとも言えない激重展開で、読了後はいつも言葉にならない感情に襲われる。
(過酷な世界だけど、この子たちには絶対ハッピーエンドを迎えてほしいな……)
アクスタを綺麗に飾り付けながら、ぼんやりとそんなことを考える。
明日も朝から大学行って……そのあとまたシフトか……。
家賃、学費、交通費、携帯代に教科書代。全部自分で稼いで払う生活は、控えめに言ってハードモードだ。
あー、仕事しなくていい世界に行きたい……。
そんな現実逃避が頭をよぎったのを最後に、俺の意識はPCデスクの上でプツンと途切れた。
「……ん?」
目を開けると、見知らぬ天井があった。
「なんで俺、生きてんの? ……いや、寝てただけか」
たしか昨日はデスクに突っ伏して寝落ちしたはずだ。ゆっくりと身を起こし、周りを見渡す。
「ってかここ、どこだ?」
四畳半ほどの狭いボロアパート。俺の部屋じゃない。
というか、この部屋の間取り、どこかで……。
「ん、スマホ持ってんな。とりあえず家族に連絡でもして、迎えに来てもらうか……」
画面をタップして連絡帳を開く。
「な...なんで、連絡先が誰もいない!? うっそだろ……オイ……」
そこからはパニックになりつつも、部屋の中を片っ端から調べた。
色々と調べて分かったことがある。まとめるとこんな感じだ。
・自分は転生(?)したということ
・高校生になっていること
・約3年後の未来に来たということ
・一人で暮らしていること
・両親がいないこと
そして、最も重要で衝撃の事実も分かった。
・『超かぐや姫!』の世界に来たということ
「両親がいないってのはまあ元の世界じゃないしわかるけど..まさかかぐや姫の世界だとはなあ....]
(ってことはスマコンが使えるのか!?....アリだな...うん)
「よし、いろいろわかったけどまずはお金だなどうにかしないと....」
「てか結局仕事しなくちゃいけないのか...」
幸い、前世で培った過酷なキッチンのオペレーション能力や仕込みの要領は、この世界でも十分に通用した。
近所の飲食店でさっそくバイトを見つけた俺の、異世界(?)サバイバル生活が幕を開けた。
――そして、この世界に来てから約1年。
結論から言うと、俺はこの世界を最っ高に楽しんでるぜ~~!!!!!
たしかに家賃や生活費を稼ぐためにバイトはしてるけど、前世のあの地獄の激務に比べればだいぶマシだ。それに、稼いだお金をつぎ込む最高の娯楽がある。
なんといってもスマコン!! 元の世界にはなかった仮想空間で遊べる!!
目に入れるのは怖かったけど、やっぱり遊びたいよね!!
『KASSEN』はぶっちゃけ怖かった。リアルじゃないとわかってても剣とか弓、ハンマーで向かってくるのは怖すぎ!! まあ慣れたからいいけど!
そしてもう一つ。このアパートで暮らし始めて、俺の日常には信じられないような日課が追加されていた。
ガチャッ
「ごめん、遅れた!」
「何やってんの?学校遅れるでしょ?」
「すまんすまん」
「もうっ」
そう、俺は『超かぐや姫!』の登場人物である酒寄彩葉と同じ高校に通い、同じボロアパートの隣室で過ごしているのだ。
まさかのまさかである。改めて思うけど、女子高生がこんなセキュリティ皆無のアパートに一人で住んでいるの、やばいな……。
「あ、そうだ! 今日って帰ってくるの遅いのか?」
「うん、明日から3連休だから長めにバイト入れてるし」
「じゃあ、俺が夕飯作ろうか?」
「そう? じゃあお願いしようかな」
「まかセロリ」
こんな感じで、俺と酒寄は結構仲良くやっている。
というか、酒寄って誰かに頼るのが苦手というかいやじゃなかったっけ?
まあいいか、頼られて悪い気はしないし。
そんなこんなで学校が終わり、俺は買い物をして足早に帰路に着いた
元の世界では料理とかしなかったが、興味はあったし、
酒寄と仲良くなりたかったので料理の腕を磨いた。
以前ご飯の話をしたときに人間が食べているようなご飯ではなかったのでおすそ分けをした。
かなり渋られたがおなかの音が鳴ったとたん「いただきます...//」と顔を赤くして受け取ってもらった。
「あの時はかわい...はっ!!危なかった...」
元の世界で成人をしていたからさすがにJKを好きになるのはやばい
まあかぐやが来るまでだな...
かぐやがきたらご飯とかその他もろもろよくなるしそのつなぎだね。
芦花ともイチャイチャして欲しいしね
「さ、酒寄が帰ってくるまでにご飯作りますか!」
深夜のアルバイトを終えた酒寄彩葉は、街灯の少ない夜道を歩きながら大きく伸びをした。後輩のみおちゃんがお客さんにピッチャーの水をぶちまけた後始末から始まり、今日のシフトも怒涛の忙しさだった。
「はあ……3連休がついにやってまいりやした…」
「超久しぶりに1日6時間は寝られる…」
口から突いて出たのは、疲労困憊の独り言。家賃格安のボロアパートに帰れば、おいしいご飯が待っている。
そして待ちに待った休日だ。ふと夜空を見上げると、一筋の光が流れた。流れ星だ。
「願い事?……か…カネ…」
ロマンチックの欠片もない願いを呟いた直後だった。
視界の隅で、信じられないものがチカチカと自己主張を始めた。
「……は?」
彩葉の自宅アパートの目の前にある電柱が、なぜか七色に光り輝いていた。
恐る恐る近づいてみると、光る電柱の側面に、緑色の竹の節のような取っ手がついた扉がついている。パカッ、とその扉が開き、中にはピンク色の服を着た『赤ちゃん』が、すやすやと眠っていたのだ。
「事件…なんですかね?」
誰にともなく呟き、彩葉はスマホを取り出した。警察に通報しようとした指が止まる。
「あの…七色に輝く電柱からですね、子供が出てきて」
「いや赤ちゃんが…あっ、えっと、わけ分かんないですよね」
「私もわけ分かんなくて…」
脳内でシミュレーションしてみたが、どう考えても頭のおかしいイタズラ電話だと思われる未来しか見えない。....勘弁してよ
料理を作り終え、くつろぎながら彩葉の帰りを待っていると...
((ふやあああああああああああああ!!!!))
外から赤ちゃんの大きな泣き声が聞こえてきた
俺はその声を聞いて(あっ、そういえば今日だったか..忘れてた...)
バンッ!と勢いよく部屋のドアが開いたかと思えば、そこには顔を真っ青にしてパニック状態の彩葉が立っていた。
そしてその腕の中には、ピンク色のおくるみに包まれ、この世の終わりとばかりに泣き叫ぶ赤ちゃんが。
「ねぇ!赤ちゃんの泣き止ませ方知らない?!」
「ぎゃあああああああああああああ!!!!」
「ちょ、酒寄!? とりあえず落ち着け! ドア閉めて!」
近所迷惑以前に、こんなボロアパートで赤ちゃんの泣き声が響き渡れば秒で通報されかねない。
俺は慌てて彩葉を部屋の中に引き入れ、ドアを施錠した。
「どどど、どうしよう!? 電柱が光ってて! パカって開いて! この子が!!」
「わかった! わかったから! 深呼吸しろ!」
(おお……! 『超かぐや姫』の始まりの瞬間……!!)
内心ではガッツポーズと滝汗を同時に流しながらも、俺は頼れる隣人としての威厳を保つべく努めて冷静な声を出した。
「貸してみろ。赤ちゃんは抱き方が不安定だと怖がって泣くんだ」
首が座っているかどうかも分からないほど小さな体を、優しく包み込むように抱き寄せる。
少しだけ縦揺れのリズムを取りながら、背中をトントンと優しく叩く。
前世で親戚の子供の面倒を見た経験が、こんなところで役立つとは思わなかった。
俺は彩葉からおずおずと差し出された赤ちゃん——おそらく『かぐや』——を慎重に受け取った。
「よしよし、大丈夫だぞー。怖くないぞー」
「ふぎゃ……あ……うぇ……」
俺の腕の中で、赤ちゃんはしゃくりあげながらも、次第にその泣き声を小さくしていった。
うるうるとした大きな瞳が俺を見つめる。……うわ、なんだこの可愛い生き物。表紙で見た超絶美少女の面影がすでにあるぞ。
「す、すごい……。泣き止んだ……」
彩葉の肩からカバンがズルズルと落ち、その場にへたり込んだ。バイト明けの疲労も相まってすっかり憔悴しきっている。
「疲れてるところ悪いけど、とりあえず事情を説明してくれないか?」
俺はかぐやを抱いたまま、あらかじめ作っておいた夕飯を顎で指した。
「冷めちゃうし、食べながらでいいからさ」
「……つまり、アパートの前の電柱が七色に光ってて、中からこの子が出てきたと」
「うん……。警察に電話しようとしたんだけど、絶対にイタズラだと思われるじゃない? だから思わずここに駆け込んじゃったの。ごめん、迷惑だったよね……」
彩葉は箸でご飯を少しずつ口に運びながら、申し訳なさそうに視線を落とした。
いつもは一人で何でも抱え込もうとする彼女が、ここまで弱気になっているのは珍しい。
まあ人を頼るようになったんだいいことだ
「迷惑なわけないだろ。むしろ一人で抱え込まなくて正解だよ。俺が警察だったら『電柱から赤ちゃんが? はいはい、竹から生まれたかぐや姫みたいですね』って電話切ってるね」
「冗談言ってる場合じゃないってば……!」
「ごめんごめん」
俺の冗談に少しだけいつもの調子を取り戻した彩葉を見て、密かに安堵する。
それにしても、本当に原作通りの展開だ。彩葉がこのかぐやを拾い、ドタバタな非日常が幕を開ける。本来のストーリーなら彼女は一人で苦労してこの秘密を抱えるはずだったが……今は俺がいる
「それで、これからどうするつもりだ?」
「どうするって……警察に行っても信じてもらえないだろうし、児童相談所? でも、この子普通じゃないし……」
彩葉は戸惑いながら、俺のベッドの上でスヤスヤと眠るかぐやを見つめた。
その眼差しには困惑だけでなく、ほんの少しの慈愛のようなものが混じっている。
「俺は、一緒に育ててもいいと思ってるぜ」
「えっ?」
「いや、ほら。俺も暇だし? 酒寄一人じゃバイトもあるし学校もあるしで倒れちゃうだろ。それに……」
俺はベッドに近づき、かぐやのぷにぷにのほっぺを指で軽くつついた。
「こんな不思議な出会い、そうそうないだろ。乗りかかった船ってやつだ。もちろん、酒寄が『絶対に嫌だ』って言うなら別だけどさ」
(本当の理由は、酒寄と芦花、それにこのかぐやが紡ぐ激重な未来を、一番近くの特等席で見守りつつ少しでもハッピーにしてやりたいからだけどな!)
なんてオタク特有の本音は心の奥底に封印しておく。
彩葉は驚いたように目を丸くした後、ふっと肩の力を抜いて、小さく笑った。
「……変なやつ。普通、電柱から生まれた赤ちゃんを一緒に育てようとか言わないよ」
「俺は普通の高校生じゃないからな。家事も料理も任せろ」
「ふふっ、頼もしいね。……じゃあ、お願いしてもいいかな。私一人じゃ、正直どうしていいか分からなくて……怖かったから」
そう言って微笑んだ彩葉の顔は、今まで見たどんな表情よりも柔らかかった。
(あっ、やばい。この笑顔は反則だろ……芦花、早く彩葉と結ばれてくれ!!俺が本気で惚れちまうぞ)
「よーし、そうと決まれば! 明日はベビー用品の買い出しだな! ちょうど3連休でよかったぜ!」
「そうだね。オムツとかミルクとか、全然分からないけど……調べてみよっか」
こうして、俺と酒寄、そして電柱からやってきた謎の赤ちゃん『かぐや』との、奇妙で賑やかな共同生活が幕を開けた。
待ち受けるのは原作通りの激重百合の運命か、それとも予想外のハッピーエンドか。
どっちになるのか
「ふやぁぁぁ……あー、あー!」
翌朝。俺の部屋に元気な赤ん坊の声が響き渡った。
目を開けると、俺の布団の隣に敷いた座布団の上で、かぐやがパッチリと目を開けて手足をバタバタさせていた。
「おはよう、かぐや。よく眠れたか?」
俺が顔を覗き込むと、かぐやはキャッキャと笑って俺の指をギュッと握ってきた。
(うっっっっわ、天使。なんだこれ、これが未来の百合ヒロインの幼女形態……! 尊すぎて視力が上がりそう)
「……んん、おはよ……」
そこへ、隣の部屋から寝間着姿の彩葉が目をこすりながらやってきた。
昨夜は結局、何かあったら怖いということで、俺も酒寄の部屋で雑魚寝することになったのだ。
「おはよう酒寄。かぐや、めちゃくちゃ機嫌いいぞ。……ん? ちょっと待て、なんか臭うな」
「えっ、嘘、もしかして……」
俺と酒寄は顔を見合わせる。
おそるおそるかぐやのお尻のあたりを確認すると、見事に『お仕事』を完了されていた。
「ひゃあああ! ど、どうしよう! オムツなんてまだ買ってないよ!」
「落ち着け! とりあえず昨日コンビニで買ってきたおしりふきと、清潔なタオルだ! あとは俺のTシャツを犠牲にして簡易オムツにする!」
「あ、あんた決断早すぎない!?」
朝のドタバタ劇をなんとか乗り切り、俺たちは急いで身支度を整え、近所の大型ベビー用品店へと向かった。
休日のベビー用品店は、幸せそうな家族連れで溢れかえっていた。
高校生の男女が、タオルでぐるぐる巻きにされた赤ちゃんを抱っこしている姿は、どう考えても浮いている。
「なんか……すっごい見られてる気がするんだけど」
「気にするな。俺たちは今、神聖なミッションを遂行中だ。まずは紙オムツ、粉ミルク、哺乳瓶、それから……」
俺がスマホのメモ帳(昨晩調べた『赤ちゃんのお世話セット』)を見ながらカートを押していると、すれ違った年配の女性客がにこやかに話しかけてきた。
「あらあら、可愛い赤ちゃんねぇ。若いのにしっかりしたパパとママで、偉いわね」
「へっ!? あ、いやっ、ちが、あの、私たちそういうんじゃ……!」
彩葉が顔を真っ赤にして両手をブンブンと振る。
俺はすかさず営業スマイルで対応した。
「ありがとうございます! まだまだ新米でわからないことだらけなんですが、二人で頑張ってます!」
「そう、頑張ってねぇ」
女性が去った後、彩葉が俺の脇腹を思い切りつねってきた。
「痛っ! なにするんだよ!」
「あんたが変なこと言うからでしょ! なんで否定しないのよ!」
「いちいち『実は電柱から拾った赤ん坊を友人同士で〜』って説明する方が怪しまれるだろ! ここは仮面夫婦を演じ切るのが一番手っ取り早いんだよ!」
(それに、俺はあくまで『推しの成長を見守るモブおじさん』だ! 決して彩葉とフラグを立てようなどという邪な気持ちはない! ないったらない!)
「……もう、バカ。恥ずかしいじゃない……」
彩葉が顔を逸らしながら小さく呟いたが、俺は聞こえないフリをしてベビー服のコーナーへ向かった。
そこで、俺は重大な事実に気がついた。
「おい、酒寄。ちょっとかぐやを見てみろ」
「ん? なに……えっ?」
カートのベビーシートに乗せられたかぐや。
昨日の夜は確かに『生まれたての新生児』サイズだったはずだ。
しかし今、目の前にいるかぐやは、明らかに首がすわり、生後数ヶ月くらいまで成長しているように見えた。
「なんか……昨日より大きくなってない?」
「……やっぱり気のせいじゃないよな」
(そうだ、思い出した! 『超かぐや姫』の原作設定! かぐやは通常の人間とは比べ物にならないスピードで成長するんだ!)
竹から生まれたかぐや姫が、あっという間に美しい娘に成長したように。
この世界のかぐやも、数ヶ月、いや数日単位でどんどん大きくなっていく仕様なのだ。
「あー、うー!」
その屈託のない笑顔に、彩葉も結局はため息をついて微笑んだ。
「……はぁ。あんたの謎のテンションにはついていけないけど……まあ、この笑顔を見たら、頑張るしかないよね」
「だろ? さ、帰ってミルクの時間だ、彩葉ママ」
「ママって言うな!」
こうして、予想外のスピードで成長する規格外の赤ん坊と、オタクな転生者、そして苦労人の女子高生による、ドタバタで愛おしい擬似家族生活が本格的にスタートしたのだった。
三連休の様子は考えるのが大変だったのでありません....すみません...
この三連休は人生の中で最も忙しい三連休だったと思う
「……で。結局、この子どうするわけ?」
「どうするって言われてもなぁ……」
深夜2時。
部屋には、俺、彩葉、高校生くらいまで成長したかぐや
空腹を訴える謎の少女・かぐやと、それに釣られてお腹を鳴らしてしまった彩葉。
俺が二人にご飯を作った。
彩葉は俺が夕飯に作ったオムライスの残りを、感情を読ませない顔で黙々と口に運んでいる。
その向かい側で、かぐやは彩葉の顔とスプーンの動きを、穴が開くほど見つめていた。
やがて、見よう見まねでスプーンを握ったかぐやは、彩葉の5食分はあろうかという特大オムライスの山から一気に掬い取り、大きな口を開けて放り込んだ。
「――――ッ!?」
次の瞬間、かぐやの大きな瞳がカッと見開かれ、文字通り星が飛んだ。
「なにこれぇ!? お口の中がとろとろのフワフワで……すっごい!!」
まるでこの世の奇跡に触れたかのような大興奮。それからというもの、彼女は初めて『食事』の喜びに目覚めた獣のように、凄まじい勢いでオムライスを胃袋へと消していく。
「……一応、オムライスって言うんだけど」
「おむらいす!! わたし、これだーいすき!!」
口の周りをケチャップだらけにして無邪気に笑うかぐやを見て、彩葉の張り詰めていた表情がふっと緩んだ。
少しだけ、自分の苦労が報われたような、そんな柔らかい顔。(彩葉、なんだかんだで面倒見いいし、嬉しそうだな……)
そんな微笑ましい空気を壊すのは無粋だと思いつつも、俺は自分の中にある『原作知識』への動揺を誤魔化すように、核心を突く質問を投げた。
「えっと……君はさ、そもそもどこから来たの?」
「んー? どこって……んん? (モグモグ……ゴクッ)あそこ?」
頬袋をパンパンに膨らませた少女は、窓の外にぽっかりと浮かぶ『満月』をスプーンでビシッと指さした。
『あそこから来ましたけど、何か?』とでも言わんばかりの、あまりにもあっけらかんとした態度。
それにピキッと眉をひそめた彩葉が、至極当然のツッコミを入れる。
「へぇ。で? 宇宙人さんは地球に何の用? 侵略の事前調査とか?」
「えー? ぜんぜん違うよー。なんかね、毎日おんなじことばっかりで超つまんなかったの! だから、もっとワクワクするところに遊びに行きたーいって思って、家出してきた!」
軽い。あまりにも理由が軽すぎる。
いくらなんでも、そんなノリで地球にやって来るなんて普通は信じられないだろう。
「……逃げただけじゃん」
「そーだよ! 逃げてきたの!」
「退屈なのはイヤだもんねぇ」
(そっか……。この頃のかぐやは、本当に後先なんて何も考えずに、ただの家出感覚でこっちに来てたんだ)
「君は、どうしたい?」
「は?」
思わず、低い声が漏れた。
今、隣にいるお人好しは、信じられないことを口にした。
「いやさ、かぐや姫みたいにそのうち『お迎え』が来るかもしれないし、それまでなら俺たちでも面倒見れるんじゃないかな……って。な、酒寄?」
私は深々とため息をつき、頭を抱えた。
忘れていた。この同居人は、息を吐くように厄介事を拾ってくる超絶お人好しだったということを。
だけど、私にだって絶対に譲れない『現実』がある。
「却下。得体の知れない面倒を見るとか、絶対に無理」
「でもさ……」
「私たち、学校だってあるしバイトだってあるの。自分の生活を回すだけで精一杯なのに、そんな余裕どこにあるのよ」
「いや、でも最初にこの子を見つけて拾ったのは酒寄じゃん。それを『自分の迷惑になるから捨てます』って、酒寄自身が納得できるの?」
うっ。痛いところを突いてくる。
負けじと反論しようと口を開きかけた、その時だった。
「ねえ、その『がっこう』とかって、絶対やらなきゃダメなやつなの?」
オムライスを完食したかぐやが、不思議そうに首を傾げて会話に割り込んできた。
「……やらなきゃダメ。ちゃんと勉強して進学しないと、将来どうにもならなくなって、未来が消えるの。そこでおしまい」
「えっ、なにそれ。バッドエンドじゃん! その続きは!?」
「無いわよ。お先真っ暗でゲームオーバー」
私が冷酷な現実を突きつけると、彼女は分かりやすく顔をしかめ、子供のように手足をバタバタさせて叫び出した。
「ええーっ! バッドエンドなんてぜったいヤダ! ハッピーエンドがいいー!! ら〜らら〜ら〜♪」
わざとらしく歌い出して耳を塞ぐ宇宙人。さっきまで甘やかしていたあいつも、これには困り顔をしている。
その騒がしい姿を見ていたら、心の奥底に沈めていた昔の嫌な記憶がフラッシュバックしてきた。私はその記憶を振り払うように、冷たく言い放つ。
「暴れたって歌ったって決まってることが変わるわけじゃないし受け入れて覚悟するしか…ない」
それは彼女へ向けた言葉でありながら、自分自身に言い聞かせてきた呪いのようなものだったのかもしれない。
放った言葉は、自分の胸の奥に重く冷たいしこりを残した。
「…………」
私の声のトーンに気づいたのか、彼女はピタリと動きを止めた。
パチパチパチ、と能天気な拍手を打っているヤツが一人隣にいるが、今は無視でいい。
彼女は固まったように黙り込み、大きな瞳で私をじっと見つめてくる。
1秒、2秒、3秒、4秒……。
(……言い過ぎたかな)
沈黙に耐えきれなくなり、私が目を逸らそうとした、その瞬間だった。
「よし! 決めた!」
パンッ、と両手を叩き、彼女は決然とした声で言い放った。
「私が、全部ハッピーエンドにしてあげる!」
「……は?」
「そんで、ハッピーエンドの先まで、彩葉と旭も一緒に連れてってあげる!!」
ドヤ顔で放たれた、あまりにも傲慢で純粋な宣言。
当然のように私も巻き込まれている。こいつ、ついさっき私が懇々と言い聞かせた現実の話をもう忘れたのだろうか。ニワトリか。
「……ハッピーエンドとか求めてない。私は『普通のエンド』で十分だから」
「えー、俺はハッピーエンドがいいなぁ」
「旭は黙ってて!」
ピシャリと旭を睨みつける。
私の人生のエンディングはもう決まっているのだ。あとはそこに向かって、淡々と日々を消費していくだけ。それ以外に道はないし、波風も立てたくない。
「うそうそうそ! そんなわけないでしょ! 絶対ハッピーがいいってば!」
彼女がまだギャーギャーと騒いでいるけれど、もう耳を塞ぐことにした。
ただでさえ油断できない私のギリギリの生活に、これ以上の嵐を巻き起こすわけにはいかないのだ。
……あぁ、私の貴重な3連休は、完全に終わった。
また慌ただしい日々が始まろうとしている。だからお願い、今はとにかく、一分でも多く寝かせて……。